2012年5月22日火曜日

"Telepathy in Action" Orville Meyer









Telepathy in Action (Orville Meyer, 1961)



ある”秘密”に基づいたフルアクト。
合わせた手が離れなくなる、椅子から立てなくなる、手のひらの上のコインが見えなくなる、飴の味が変わる。これらが”催眠術”無しで、ギミックも何も無しで行える。


んんんん。難しい一冊。


確かに言っている通りのことは出来る。
しかも催眠術どころか、いわゆるタネも仕掛けも無く、たった一つの”秘密”だけで。
でもこれを成立させられるのは、相当、メンタリストとして、あるいは演技者としての適正が必要だろう。
またいわゆる”仕掛け”に頼らないって事は、それだけ演技者への負担が大きいという事でもある。

一発で成功できるたぐいのネタではない、とは冊子中にもあるのだが、一方でステージ系というか、ちゃんとした場でないと出来ないネタでもある。お客さん60人以上が目安で、前に呼ぶのも20名近くが良いとか。

つまり失敗できない場でしか(ほとんど)成立しないのだが、しかしはじめは失敗しやすいという、とっつきにくさ。
部分的に手順に組み込む方法とか、バックアップやアウトを解説してくれたらば、かなり敷居は下がったろうが。仕方ないのでこの辺は自分で考えることとする。


かなり難しく(英語もやや読みにくい)冊子だった。
この手順の実効性にもちょっと疑問は感じる。少なくとも、万人に出来る物ではない。

いわゆる催眠術アクトと外形上同一ながら、被験者を嗤い者にする構造をうまく避けているところは好感が持てた。




しまったLybraryでも売ってた。
どうせBookletならe-bookで買えば良かった。

2012年5月15日火曜日

"Bold and Subtle Miracles of Dr.Faust" David Hoy





Bold and Subtle Miracles of Dr.Faust (David Hoy, 1963)




伝説のMentalist、David Hoyのあまりに大胆な手順を解説した小冊子。


David Hoyという人はメンタルマジックの世界で名声高く、伝説的な逸話がいくつもある。最近読んだところでも、Barrie RichardsonのAct Twoで、ほとんど奇跡としか思えないBill Readingでコンベンションを静まりかえらせる場面が描写されていた。


その割に、Hoyの手順を伝える本というのは少ないようだ。ネットでざっと書誌を見た限りでは、本書の他にMagic with a MassageThe Meaning of TarotThe E.S.P. Lecture CD(LP盤のESP According to Hoyと同じくLP盤のESPecially Yoursの復刻)があるが、どれも『いわゆるマジック』からは外れる内容らしい。

Magic with a Massageはマジック集ではあるが、メインテーマは”キリストの教え”を伝える事。ゴスペル・マジックというジャンルになるのだが、日本人にはビザー・マジック以上になじみがなく、食指が動かない。
The Meaning of Tarotは単なるタロット読本(解読書?)らしい。
The E.S.P. Lecture CDも、一般に向けての”超能力”の講演。


ラインナップの謎は、Hoyの経歴を見て解けた。
元々はバプテスト教会のエヴァンジェリスト(伝道者)で、その後マジシャン、メンタリストを経て、最後は超能力者をしていたようだ。なるほどなあ。

Super-psychic:The Incredible Dr.hoyという本も出ているみたいだがこれは伝記。



そんなわけで、本書はHoyの殆ど唯一の作品集。
(他の本を知ってる人が居たら教えて欲しい)

36頁、収録作10で印刷もかなり劣悪な小冊子だが、内容は今読んで尚、あまりある衝撃を持っている。

実は寡聞にして、Hoyの高名なThe Bold Book Testの秘密を知らなかったのだ。
読んで納得、これ以上なにかを削る事も、これ以上何かを付け加える事も出来ない、このアプローチでの完成形。ヴァリエーションを目にする機会もなかろうというもの。

似たようなアプローチで、もっと手の込んだ物に、Chan CanastaのBook testがあるが、あちらが大胆さと思考能力を同時に駆使するのに比べ、Hoyの物はほとんど大胆さだけで成り立っており、演者への負担が極めて少ない。
殆ど究極のBookTestと言って過言ではないなと。
Canastaのものは、3人の観客を使う代わりに、1冊の本で、心の中で決めて貰った頁の、指定された行数目、指定された箇所の単語を読み取るというとんでもない物なのだが、いかんせん難易度が高い。

他の何作かは、いろいろなところで改案を見たせいもあって、さすがにそこまでの感銘は受けなかったが、どの手順も極めて単純化されているのが特徴であり長所と思う。
あれもこれもと詰め込まれがちなBlind Fold Actも、手の間にかざされた品物を3回あてるだけで終えるというシンプルさ。
一致するESPカードは、カードを山に重ねたりはしない。Booktestも、相手が選んだ言葉が封筒の中に収められていたりもしない。



総括、

大胆な、ずうずうしい手段、というような意味合いのBold Approachに基づいた手順は、どれも薄氷を踏むような危うさと隣り合わせだが、鮮やか。
現象もストレートなら、ハンドリングもストレートで、よどむところがない。


特に2種類のBook testと、Tossed out deckには今読んでも衝撃を受ける。極めて大胆だが、しかしかろうじて万人が演じられるぎりぎりのライン。


うん、すごい本だった。


もっとHoyの奇計を読んでみたいところであるのだが、前述の通り、本書以外にはめぼしいものがない。
確認できた限りでは、Hoy’s Bill Switchという技法と、Voodoo Dollという手順があるらしいのだが、どこに発表されたのかまでは判らなかった。

2012年5月11日金曜日

"カードマジック THE WAY OF THINKING" 松田道弘





カードマジック THE WAY OF THINKING (松田道弘, 2011)




いつもの通り、である。
それ以外はあまり言う事が見付からなかった。


いつも通り、とは

・文章が読みやすい
・紹介されるエピソードが面白い
・手品がマニアックすぎる

である。



松田道弘のカードマジックのシリーズは、特にここ最近、新刊と言うよりもアップデート版という感じがする。個人的なテーマへの飽くなき研究の過程は、面白いが、読み物としての面白さが強い。



The Way of Thinkingと名打ち、帯には「近代の優れたカードマジックを、創作や改案の根底にあった考え方によって分類し、」とあるがそんな事は全然無い。いつも通りの内容だ。

個々の作品について、改案の狙いや動機などは詳しく書いてあり、実にためになるが、いつもちゃんとしてあるので特別な感じはしない。

あえていうなら、Slydiniのヘリコプターカードにおいて、動作だけが書かれて意味が解説されなかった部分の意味解析だろうか。これは実に面白かった。だが以前にVernonのアンビシャスカードで同じような事をしていたし、新趣向でもないだろう。



作品だが、これもいつも通り。
『いくら「また同じ絵かいな」と言われても、画家が執拗に同じモチーフの絵を描き続けることがあるように(p.87)』だ。

技術的には確かにどんどん洗練されている印象。
一方で、”長い手順が嫌だ”という意見には同感できるものの、ここまでそぎ落として良いものかと思う作品も多い。特にTwist系。
こんな感じ。

4枚の赤裏のカードを見せる。一枚を表向きにすると全部表向きに。
裏を見せると全部違う色になっている。

Twist部分を限界までそぎ落とし、2段目のオチに重点を置いたため、もうTwistじゃなくてカラーチェンジ(?)に近い。


We'll Twistの裏色変化やMaxi Twistの1-5はどんでんがえしのオチとして発展したが、確かにそれが独立していけない理由はない。新奇な所、鮮やかな所だけを抽出した手際は鮮やかだ。

しかしオチをショッキングにしていた”文脈”は失われてしまったように思う。


演技や演出、現象の意味について全く触れられていないせいで、余計にそう感じるのかも知れない。




新刊だがいつも通りの内容でマニアック。
このシリーズを一冊も読んでいない人にはお勧めできない。

間違いなく面白くはあったのだが、文句ばかりになってしまった。期待した分だけどうしても。
勝手な勘違いの逆恨みじゃないかと言われればそうなのだが、あの惹句はやっぱり期待してしまうって。あと誤字もちょこちょこあって混乱したし。


全著作を読んだわけではないが、個人的には松田道弘のクロースアップ・カードマジックが一番おすすめ。
って、絶版になってやがる。しかも古書価格がルポールより高い。

2012年5月9日水曜日

"Act Two" Barrie Richardson






Act Two (Barrie Richardson, 2005)




Theater of the Mindの続刊。最近さらにCurtain Callという続刊が出版されて三部作になった。


メンタルマジックの本という分類ではあるが、三本ロープのプレゼンテーションや、ほどける結び目なども収録されており、中にはかなり難度の高いカードマジックなどもあるので、メンタリスト以外が読んでも楽しめるだろう。
パーラー系で、複数の観客を必要とする物が多い。


方法的には、常にシンプルで大胆。
いくつかキーとなる手法があり、様々なプロブレムの解法として繰り返し使用されている。この巻ではDr.Daleyのスイッチ(フォローザリーダーのラストに使われるアレ)と、二人の観客を使ったFishingが使用される事が多かった。
前巻同様、Hellis Switchも出番が多い。

前巻はACAANの特集があったが、この巻ではThink A Cardにスポットが当たっている。即席のPrincess Trickなど中々面白いのだが、考える事がけっこうあって僕の頭では処理が追いつかなさそう。

また純メンタリズムは個人的な体験であるほど効果的と思っているので、複数の人にカードを覚えてもらう解法が多かったのが、今ひとつぴんと来なかった原因だろうか。


カードと言えば、Fred RobinsonのDiagonal Palm Shift(のバリエーションらしきもの)も解説されており、うれしかった。
簡単な解説なので、残念ながらRobinsonのオリジナルタッチがどこなのかはわからないし、どこが重点だったのかもわからないのだが、それでもありがたい。Magic of Fred Robinsonでは、Barrie Richardsonのエッセイ内で言及されるのみで解説がなく、ずっとモヤモヤしていたのだ。
エッセイと読み比べ、どこがRobinsonのオリジナルタッチなのか考えてみるのも楽しい。

この技法を使ったCard to Pocketの手順は、スチールもポケットへのロードも、観客の視点が集中している中でゆっくり堂々と行うもので、技量と度胸とが相当必要な上級カードマジック。





演出には常に重きを置いており、詳細に解説されている。Richardsonがマジシャンではなく、マジックも使う講演者、という立場の人であるためだろう、やや話が長く、人によっては退屈な演出という印象を受けるかも知れない。

個人的には、有名なパズル(バネとリング)を使った、複数段におよぶ「ひっかけ」と人間の思考の盲点についての手順が特に面白かった。



Barrie Richardsonの手品は、面白く、シンプル。
発表者が書いている本というのは少なく、それがゆえに目新しいのかもしれない。

一方で、絶対的な不可能性や、悪魔的に巧緻な仕掛けはない。
あえて不可能性を下げている側面もある。
そういった事を考えるきっかけとしても良書。

うむ、Curtain Callも読むのが楽しみだ。


2012年5月3日木曜日

"大原のこころみ Birth" 大原正樹







大原のこころみ (大原正樹,2012)




おすすめ、たくらみ、とはちょっと趣向の異なったワントリック解説のレクチャーebook。



カードあての最中、突如、手の中にカードケースが出現。何事かと思うと、その中から選んだカードが出てくる。

意外性が高く、難易度はそこまで高くなく、そして観客の目の前で堂々と”いかさま”をする快感があり、というなかなかの良トリック。現象もユニーク。


セオリーとしては、技法の習得に関するコツをいくつか解説。自明のような話もあるが、明文化されることは少ない気もする。またいわゆるJazz Magicに通ずる”あいまいさ”も含まれており、勉強になるだろう。
深い解析だが、非常に簡潔な文章で、さくっと読める。

トリックもセオリーも含め、初級→中級のステップアップ段階に非常に有効。といった所か。



ただ、本現象の解析に Tommy WonderのCup and Ball、およびDoc Easonに代表されるCard Under the Glass/Case との比較があるのだが、これはちょっと筋が違う気がした。

『いつの間にか現象』にこだわりがある自分の誤読かもしれないが、これでは本作品全体を『いつのまにか現象』の文脈で捉えてしまいかねない。よくないレッドへリングと思う。

上述の現象とは『出現の瞬間がヴィジュアルにアピールされる』という点で決定的に異なっており、直接に同一の文脈には置けない。
比較するのならせめてTom Stoneの、手の中に靴が出現するChanpagneであろう。David Stoneの演技で見知っている方も多いと思う。このStoneの現象が『いつの間にか現象』として成立するのはロード元の不可能性の高さゆえである。

本作品はロード元の位置的な不可能性はあまり高くなく、むしろテーブルに出ていた事を記憶されていた場合現象が減ずる可能性すらありうる。


また全体の構成が完成するまでの経緯の章で、「マジシャンはカードケースを出現させて、どう言うのだろうか?」という問いを立てているのだが、少なくとも演技側面からは明確な答が出されていないように思う。
この現象に対して演者の立ち位置はどこにあるのか。



色々言ったが、ユニークな現象、簡潔な構成、簡潔な文章、細かい考察と、良い冊子であった。
ただしロジックが簡明で無個性化されている分、ミスリードが起こりうる。しっかりと疑いを持って読むべき。気付かぬ間に説得されぬよう、ちゃんと考え上で吸収したい。

2012年4月24日火曜日

レパートリー・ゼロの呪い。あるいは、Tommy Wonderの手品は簡単。

唐突に、手品がしたいという熱がわき上がり、しかし出来る手品をリストアップしようとして1,2個しか浮かばず、一気に熱が冷める。反動で厭世的な気分になる。


マジックを初めてかれこれ7年近くにはなると思うのだが、最初の半年ほどを除けばずっとこんな状態。レパートリーは一向に増えない。


手順を追える、技術的に問題なく、なめらかに行える、ばれずに行える、
という事と、
演じられる、人に提供できる、人を楽しませられる、人に伝わる、
という事の間には天地ほどの開きがあり、自分にはそれを埋める才覚が少ない、努力が足りない。
あるいは、実際以上に”開き”を大きく見てしまっているのだろうか。


実際、手品が不思議かどうかがよくわからん。
なぜ自分がそういう動作をしなければいけないのだったか、すぐに判らなくなる。

ただ不可能性があるだけで、そこに演者としてどう関与すればいいのか、難しい手順が多い。
というか、殆どの手順は、とりつく島もないほどだと、自分にはそう見える。


Tommy Wonderの手品は技術的にも演技的にも難しいのだが、しかし各動作について”マジシャンがどう感じているべきか”という点まで細かく設計されていて、共有できる楽しい不思議としてしっかりと完成している。

だからWonderの演技をまねするのは楽しい。
各動作にちゃんと、動機がある。体がいとも簡単に動く。


ただし、Wonderの通りに行ったら、自分は楽しくとも、コピーキャットのそしりは免れまいし、なによりただただWonderとの格の差を思い知らされるばかりでもある。


パフォーマーとしてのペルソナを形成せい、という話なのだろうが。
ああ、マジックできるようになりたいなあ。

2012年4月23日月曜日

"トランプの不思議 復刻版" 高木重朗






トランプの不思議 復刻版 (高木重朗, 2011. 原版 1956)




日本カードマジック黎明期を支えた、専門的なカード入門書の復刻版。

技法解説と技法を使った例題手順の解説があり、その後、”あらかると”として精選されたカードマジックが10解説されている。


どこかの書評で、”節度”という言葉が使われていたのだが、言い得て妙である。


技法の解説は簡明、説明不足になるぎりぎりまで削がれており、余計な記述もなくさらっと読める。ちょっと説明不足かなあとも思うのだが、直後の例題部で、前後の流れから丁寧に解説されており、問題なく習得できるようになっている。

また例題も、”あらかると”で選ばれた作品もなかなかの傑作揃い。カード技法に加えて、記憶法であったり、跳ねるマッチであったり、灰であったりと、ちょこちょこ違った要素を絡めてくるのがまた粋。

無理に自分のバリエーションを押しつける事もなく、初心者のために書かれた良い本。


むろん、初心者以外が読んでも楽しい。Harry Lorayneの無意識的読心術や、最後の一枚、など掘り出し物がごろごろ出てくる。



だが。

確かに、入門書としてわかりやすく、しかも(当時の)最先端技法も丁寧に組み込んだ、まさに最高の書であったろうが。
現在の視点からこの復刻版を見ると、結局、マニアの為のものになっているのが残念。

本の外形や段組、文字種まで再現したのは、オリジナルの尊重という意味では非常に共感でき、個人的な趣味からも大歓迎なのだが、”入門書”に求められることではない。どうしても読みにくい”感じ”がしてしまう。
また値段もやや高めと思う。

そんなこんなで、どうしても敷居が高くなってしまっているのが勿体なくもあり、しかし仕方ないなあと思う点でもある。
松田道弘の解説も、初心者のためというより、この本の思い出のために書かれている。出典を詳述してくれたのは非常にありがたいが、内容はおおよそ懐古的で、本書の解説ではあっても、初心者への補遺ではないなあ。帯の”歳月の経過を埋めるべく”ってのはそう言う意味だったのか。

シークレットアディションを初めて紹介したのが本書で、それまでは同様の効果のためにパームを使っていた、などの逸話は、カードマジックの目まぐるしい歴史的流動を感じさせて、マニアとしては非常に楽しめたので、文句を言うのも筋違いではあるのだが。



今、このレベルの入門書があればなあ、とつくづく思う。


2012年4月20日金曜日

"Psychomancy" David Britland





Psychomancy (David Britland, 1986)




カードマンだけど、メンタルも興味あるんだ。(序文より、意訳)



その気持ち、よくわかります。
生粋のカードマニアDavid Britlandが、カードの技法を用いて創作したメンタルマジック集。

幸いにBritlandは趣味が良い方のマニアなので、カードの技法や原理を使っているとはいえ、なるべく見えないよう控えめな使用法です。
総じて、メンタルとしても通じる作品になっているかと思います。


最初の方こそ、VernonのChallengeを名刺で行い、オチに予言を加えたものや、デックの裏に人の名前が書いてあって、というカードマジックの演出だけ変えたような物が続き、いささか退屈もしたのですが、後半は立て続けに面白い現象が飛び込んできて、目が覚めました。


ふたつほど紹介しましょう。


Royal Decree
著者はPrincess Card Trickの変型と書いていますが、B'waveの親戚と言った方が判りよいでしょう。B'waveと比すると、どうしても少し不格好なのですが、プレゼンテーションが素晴らしい。細かいところはタネに直結するので書けませんけれども、B'waveよりクリアーな現象になっていて、僕はこちらの方が好きです。

B'waveは確かに傑作ですが、”あまりに確信が強かったから、この一枚だけ裏色が~”というくだりで、どうしても、じゃあ初めからその一枚だけを封筒に入れとけよ、と思ってしまい、演じる事ができませんでした。追い打ちもやりすぎな気がしますし。
その点、Royal Decreeは予言ではなく、リアルタイムでのテレパシーという演出で、最後にカードを見せる瞬間がクライマックスになるように上手く構成してあり、演出の点ではこちらに軍配を上げたい。

B'waveよりも負担は大きいのですが、これは演じてみたいです。


The Four Bit Machine
もう一つ、特に気に入った作品です。
4×4に並べた数字から一点選んでもらい、その縦横のラインにあたる物を消して、残りからまた選んでもらい、最終的な合計が予言されている、という有名な原理を使った現象なのですが、最後の予言の隠し方、現し方が非常にしゃれています。
ずっと目の前に置いてあった物が、実は予言だった、というものなんですが、その隠し方は――、ま、これも気になった方は、買って読んでみてください。

僕はWonderのCup and Ballみたいな”いつの間にか”現象が非常に好きなのですが、それに似た感覚でした。
これも演じてみたいですねー。


最初は外れかと思いましたが、どうして、なかなか楽しめました。




これで手元にあるBritlandの作品集は全てです。本棚にはBritland著のChan Canasta本とかもありますが、それはまたいずれ別枠ということで。





ところで魔法陣から十字に消していくフォース(Mel Stover Calender Forceとかいうらしい)ですが、どなたかこれをボンバーマンの演出でコミカルに演じて下さる方はいらっしゃいませんでしょうか?

日本でなら、このやや理不尽なフォースが非常に合理的に出来るんです。今がチャンスです。逃すと次はないですよ。さあ。

2012年4月17日火曜日

"ConCam Coins To Glass" R. Paul Wilson





ConCam Coins To Glass (R. Paul Wilson, no date)



Paul WilsonのCoins to Glass。


これは非常に面白かったです。
売り文句は”グラスはフチが指先でつままれているだけ。手は決してグラスの上にかざされない。”で、自分にしては珍しく、今風なビジュアル系現象のレクチャーノート。


カバーなしのCoins to Glass自体はDavid StoneやそもそもDavid Rossなんかもやっていた気がしますが、それらとは別物、よりカジュアルでオープンな形です。
ほんとに人差し指、親指でつまむだけ。

その状態でグラスの中にコインが移動する。

何でもかんでもビジュアルが良いというわけじゃないですが、コインマジックってなかなか新規な技法や改案がないので、こういう新しさは非常に嬉しい所。色々と考えるきっかけにもなります。


一方で、難点を上げるとすれば。

Coin Oneに代表されるようなビジュアル・オープン系コインマジックの宿命として、ラストの一枚がなかなかしんどい。本作も、良い解決とはやはり言えない気がします。
また本手順の核になるTitan Dropですが、難易度は決して高くないはずなのに、意外と安定しないのですよね。手のコンディションのせいかもしれません。


総論。
提示された限定的な条件の下に考えれば、独力でも似たような解には至るとは思います。まあそれはそれとして、答合わせ的な意味で読んでも損はないと思いますよ?

2012年4月16日月曜日

”Deckade” David Britland






Deckade (David Britland, 1983?)




David Britlandのカードマジック作品集。7つの手順を解説。


年号がないんですが、Cardopolisより前の発表のようです。
うーん、これは完全にアイディア集、しかもマニアックでなかなか有効な使い道が思いつきません。

「使い道はたくさんあるが基本原理だけ紹介するよ」とばかり言われて、かなり消化不良です。もちろん、これを作者からの挑戦と見て、いろいろといじくりまわしてみるのも良いでしょうけれど、Cardopolisのようなひねった手順を期待していたので残念でした。


例えば。
Sandswitch
サンドイッチでカードが間に現れると同時に、デックのトップのカードがカラーチェンジする。
With 4
一枚余分を隠した状態でのBizarre Twist。Twist後、真ん中のカードが実はDouble。


ううん……。前者は意味がよくわからない。後者は、何度か読んでみたんですが、どう考えても物理的に不可能というもの。



ちゃんと完成した作品もありますが、エレベーターカードの最後の一枚が、上に上がらず、先の二枚の間から出てくる、とか、それってどうなんだろう、という感じです。


ひとつ、非常に良かった事があるとすれば、クレジットです。
以前、Bizarre Twistに凝っていた時期に開発したオリジナル技法について、ちゃんとした先例が判明しました。掌Palm vol.21(2000)で金沢Cullこと山崎真孝がほぼ同一の技法を発表されていますが、さらに遡って初出はMarc Russellだったようです。
BritlandとStephen Tuckerが編集していた雑誌TALON(1978-1981)のIssue7に発表されたとか。Issue 7の発行が何年なのか、までは記載されてませんでしたが、積年のもやもやが晴れてすっきりしました。


総論、マニアックなアイディア自体は大歓迎なのですが、その調理例を見せてもらえなかったのが至極残念です。Cardopolisが面白かっただけに、内容的にもコスト的にも、どうしてもがっかり感がぬぐえません。



DeckadeCardopolisの後、Equinoxという作品集が出ているようです。Deckadeは、このとおり、今ひとつでしたが、しかし総合的に面白い作者と思うので、Equinoxも機会があれば手に入れてみたいと思います。

まあ何のかんの行って、Bizarre Twistの色々なアイディアとか、けっこう楽しめたのです。




Russellの技法はある問題さえクリアできれば、理論的には完璧なのですが、どうにもDaniel CrosのCros Twistや両手でやる原案に較べ、絶対的によい、というほどでもないのですよね。不思議なものです。