2015年7月31日金曜日

”Close-Up Elegance” David Costi










 


Close-Up Elegance (David Costi、2004)





 イタリアのマジシャン、David Costiの作品集。
 AscanioとRene Lavandが推薦文を書いているとかそれはもう買いだろう、という事で買ったのですが結果としてはいまいちでした。『マジックはアートである』派で、作品はちょっとした部分での改案がメイン。パターだけの解説というのもあります。それはもちろん、構わないのですけれど、その肝心の細かな部分があまりちゃんと記述できていないのです。特に収録されている某Double Liftなどは、この文章だけから正しく全体像が理解できる人がいるとはちょっと思えない代物。

 手順はクラシカルでシンプル。またワーキング・プロらしく極めてずるいものも有ります。
 たとえばCard Collegeにも採られているAmex(The Credit-Card Force)を用いたCard on Back。観客が自由に選んだカードが、デックの中から消え、演者の背中にピンで留められているというもの。これはToo Perfectに近い美しい手順です。
 上では『細部の描写が不十分』と書きましたが、それはあくまで徹底されていないという意味であって、たとえばこのCard on Backでは非常にさりげない検めが入っていたりなど、為になる箇所はそこそこあります。Amexも非常に微妙な細部にこだわっており面白い。

 その他、Reverse Matrixではいまやみんなが使っているタイミング差によるミスディレクションが明記されていて、Costiがオリジナルかは分かりませんが、かなり古い使用例と思います。特殊なClick PassやEmpty Dealなど面白い技法も出ていますが、出版が遅かったせいもあってちょっと新奇性はないですかね。クレジットマニアなら面白いかもしれませんが。あ、Charlie FlyeがDVD演じていた(気がする)指先にゆっくりコインが現れるやつも、どうも本書の技法のようです。

 そこそこ面白い技法、そこそこ面白い手順がありながら、解説がちょっとざっくりしすぎていて上手くまとまっていないと思いました。せめて内容がどれかに偏っていたら、筆者の考えも捉えやすくなっていたかもしれません。もったいない本でした。