2021年10月31日日曜日

“More Plots and Methods” Michał Kociołek

 More Plots and Methods (Michał Kociołek, 2021)


Michał Kociołekの新刊。前著と同じく4作品+おまけ1の小冊子。相変わらずたいへん賢い、のではあるが……。

前著Plots and Methodsは素晴らしく面白く、なので本書もすぐに買いましたが、本書には前著と一つ違うところがあり、それはガフを用いないということ。どれもひと揃いのレギュラーデックがあれば演じられるし、中には(頑張れば)借りたデックや即席で出来るものもあります。ただそれが良い方に働いたか、というと個人的には疑問。

Synch
 えぐいDo as I Do。デックの半分ずつを使い、お互いがお互いのカードを当てるタイプのもの。前著でも使っていた某原理を活用して、とてもじゃないが追えないものになっている。

Mr. Liar
 カード当て。観客がカードを選び、自分で中に戻したあと、4人にポーカーの手札のように配る。それを読み上げる声を聞き、演者は選ばれたカードを当てる。

3H
 カード当て。3人の観客が密議して一つ時刻を決める。その枚数目のカードを覚える、というのを3度行い、そのあと演者は2枚を見つけ、1枚を言い当てる。グレイコード使用。

The Dreamer
 カード当て。自由な箇所からポーカーの手札のように5枚のカードを取ってもらい、そのうちハイカードを言い当て、さらに残りのカードも当ててしまう。

Esoteric
 おまけ。タロットカードを使ったカード当て。観客が自由に選んだパイルのカード(3枚)と、もっと自由に選んだカード1枚の計4枚を当てる。ちょっと変な選ばせ方ながら自由度は高く、タロットカードの特徴を原理面でも演出面でもフルに活用していて面白い。

全体的に、原理とフィッシングを組み合わせ、不確実な筋をうまく収拾していくタイプが多く、かなり演者に負担がかかるように感じました。筆者は繰り返し「一見複雑に思えるが分かれば簡単」と述べているものの、いや、僕の頭では厳しそうというのが正直なところ。また現象もカード当てに偏っていて、前著に比べて精彩に欠けました。

前著は『複数の原理、技法、ガフ、演出が高度に噛み合った』結果、素晴らしい一冊になっていました。本書ではそのうちのガフを捨てた皺寄せが、演者の負担と現象に利いてしまっており、かなり難しく、現象も狭まったのではないかと思います。著者自身、ガフ無しな点については「自分の作品としては珍しい」と言っており、本分ではないのかも。とはいえ、原理の組み合わせのうまさ、原理っぽさを感じさせない演出や工夫はやはり図抜けていますし、不確実性の扱いや、あえて遠回りするような構成、フィッシングの使い方などは、原理系手品の新たな地平といった感じ。その筋の方は買いましょう。

とはいえ僕には高度すぎた。もうちょっとズルをした手品が好きですね。またぜひ、全ての手段を投じた作品群で3巻目を出してほしいところ。