2015年12月31日木曜日

”Diverting Coin Magic” Andrew Galloway




Diverting Coin Magic (Andrew Galloway, 2006)



John Ramsayの直弟子として知られるAndrew Gallowayのコイン・マジック作品を集めた小冊子。本書と対になるDiverting Card Magicっていう本もあるのだけれどそちらは手に入ってない。読んでみたい。

GallowayはRamsayの弟子という事で、Ramsay作品を演じたDVDで有名。またミスディレクションについても名高い。この本についても、ミスディレクションの勉強になると聞いたので読んでみた次第。あとまあ単純に、コイン本は少ないので、いい物が無いかといろいろ探しているのですよ。

内容は2つに分かれていて、前半は基本的な技法を丁寧に解説。そして後半はそれを用いた現象。飛行、銀銅入れ替わり、パース、グラスなどなど、異なった7作品でおおよその範囲をカバーしている。曲芸的な難しさは無く、シンプルでよい手順が多い。またミスディレクションについてもそれぞれ言及されている。


さて、ミスディレクションと言えばマイルストーンであるBooks of WonderがVol. 2でも1996年だから、数字だけ見ればGalloway本の方が後ではあるんだが、でもこれは『古い』ミスディレクションの本だ。それは注意を発散させるミスディレクションであり、重要な箇所を『見せない』ミスディレクションでもある。

なのでこの本の手順は、面白んだけれども、どうにも決定力に欠けてしまう感じはある。現象を形作るために必須の瞬間がぼやけてしまうから。いやどうだろう。Gallowayが演じたら気にならないのかもしれないんだけれども……。

クラシック・パスやトップ・チェンジの瞬間に一瞬気をそらす、というのは有効で、それは直前と直後で状態と近いからだ。しかしフェイク・パスはそうはいかない。どうしても曖昧さが出る。

……かといって、その瞬間をはっきりと示すには非常に高い技量が必要になるわけで、コイン・マジックって難しいなあ。



本書のアプローチは、ひとつのツールとしては十分に強力なのだが、これをコイン・マジックの主柱に据えるのはちょっと違う気がする。面白い副読本といったところか。