2014年4月23日水曜日

CRIMP買いました。





俺、CRIMP 買いました。




CRIMPって?

カードをほにゃららしてロケーターにする、っていう技法ですが、今回のは単にその名を冠してるだけの個人出版の雑誌です。別にCrimp使う手品縛りとかそういう事でもないです。掌 誌がくさぐさのパームについて熱く語る雑誌でないのと一緒です。



◆じゃあCRIMP誌って?

いまも発行されている雑誌の中では、おそらく最も毀誉褒貶が激しく、しかしその悪名の割に最も入手の困難な雑誌です。あと最も読みにくい雑誌(推定)でもあります。千金に値すると言う人がいる一方で、「ケツを拭く紙にこんな金を払うヤツがいるとは信じがたい」と塵紙扱いする人もいます。なお後者の発言はRichard Kaufman氏のものです。
まあKaufmanの意見には多分に私怨が込められている気がしますけど。



◆どうして手に入らないの?

発行人がSadowitzだからです。全然売ってくれないんです。



◆どういうこと?

いつかも触れたように、元々キ○ガイじみたペルソナのSadowitzが、近年はアイディア盗用に対して偏執狂のようになっていて、Cards on the Tableの日本語版も許してもらえませんでした。このCRIMPも刊行中なのに、身元の分かっている信用できるマジシャンにしか売られていないのです。いちげんさんお断りなのです。


◆いくらするの?

初期の物は£1.37です。今のレートで300円もしません。
最近のは£10のようです。


◆を、一冊いくらで買ったの?

X000円です。てへ。



◆……馬鹿なの?

仕方ないのです。金に物を言わせるしかなかったのです。



◆面白いの?

Peter DuffieやRoy Walton、Andrew Gallowayなどイギリスの有名マジシャンが寄稿者として名を連ねていますし、VernonやMarloの未発表作品も出てたりしたみたいです。
僕はまだ1冊目しか読んでませんが、面白かったですよ?


A3厚紙2枚を折った、8ppの冊子で、手順が2~3と、後はパロディ広告だったり、ジョーク記事(らしきもの)だったりです。
全体的に読みにくいです。



◆さっきも言ってたよね、それ。


手書きなんですよね。しかも罫線とか下書きとかも無しで、白紙に思うさま書いたような。
加えて文章が(たぶん)俗語とか使ってるし、変な言い回しもあるし、というか文字が小さくなりすぎてつぶれており、物理的に見えなかったりします。

まあでも手順はちゃんと読めました。おもしろかったです。



◆集めるの?

できたらそうしたいですけど、さすがにお金が続かないですねえ。そもそもほとんど出回らないですし。 1992年から今までで80冊ぐらい出てるみたいですけど、特に最近のは「いちげんさんお断り」ルールのせいで、手に入らないどころではないですから。

まあ手頃な価格で買えそうな限りで、オークション探そうかなと思います。
ただイギリスからの出品が多くて、そういう人って国内のみ発送だったりしてなかなかめんどうです。


とまれ、噂のCRIMP、やっとさわれました。

2014年4月22日火曜日

"Penumbra issue 11" 編・Bill Goodwin & Gordon Bean






Penumbra issue 11 (編・Bill Goodwin & Gordon Bean, 2009)


Goodwin編集の不定期雑誌。他とは一線を画す練度の高い作品は、今回も健在。



Color Shuffles (Part Two):Ronald Wohl

前号からの続き。
観客に一度混ぜてもらい、上1/3程度を取ってもらうがその中の色の状態をそれなりにコントロールする、という何に使うのかよく分からない原理、その応用編。

カード当てがメインですがBook Testなどにも拡張。わりと面白かったです。特に他の原理と組み合わせたカード当てはかなりやらしく、気持ち悪そう。

なおPart 3へ続くそうですが4年ちょっとたった今もまだ新刊は出てません。
ひどい。



A Spectator Named Kennedy:Michael Weber

Weber!
鮮やかなるセンターディール・デモ。広げたデックの中から演者が3枚適当に選び、それを覚えてもらったらデックを閉じる。そして配ると、覚えたカードが相手の手に来ているのです。

が! 演者の手にはさらに強力な役が!

凄いんですが要になってる技法が苦手でして。
高難度の技法を多用しますが、理想的には全く気配のない、素晴らしい構成の手順。
Weberやっぱり天才だなあ。



'N Synch:Raj Madhok, Gregory Wilson

電話越しにも行えるメンタル手順。相手が見ている腕時計を媒介として、相手の思い浮かべた数を当てる的なそれ。
キモイが相手について事前情報が必要。


Tell A Phony Too:Raj Madhok

'N Synchで必要な事前情報を、これまた電話越しに取得してしまおうという試み。物はEddie Fieldsの Tell A Phonyというカードマジックなんですが、一連の作業から選ばれたカード以外の情報も取得するというもの。
Tell A Phony自体がちょっと微妙。まあ電話越しに行うという制限を考えれば仕方ないんですが


'N Synch 2:Raj Madhok

フィッシングというかブラフというかを用いる事で、'N Synchから事前情報を不要にしたもの。
きもい。


The Open Ditch:Bill Kalush

Open Prediction。凄い。これもかなりの技量が必要だが、技巧系の解決としてはTalk About Tricksの傑作Llasser Open Predictionをも上回るクリーンさ。Llasserと違って観客がカードを配る。しかしこれも難しいなあ。

あとLasser OPは初めにちゃんと予言が提示され、観客に選択を迫るタイプなんですが、こっちは配って枚数が少なくなっていくうちに「あれ?さっきのは、もしかして……」となるタイプなので厳密にはOPからは外れる気もします。このへんはいずれOpen Prediction Project レビューの時にでも。


文中でもちょろっと触れられてましたが、この「もしかして……」という感覚を上手くあおってやらないと、観客はあんまり不思議に思わないかもです。そういう意味でも難しい。



The Two-Ton Prophet:Gordon Bean

観客が自由に言ったカードが、演者の言った枚数目から出てくる。

と、これだけなら何も不思議ではないのですが、問題は演者が枚数目を言った後で、観客がカードを言うという事。当たり前ですが紙に書いてもらったりとかはしませんし、変なフォースも用いません。
これが現象として『不思議』かというと、どこかつかみ所が無く、観客に受けるかは微妙に思います。でも面白い研究で、手法もかなり大胆ですが面白いです。

Stewart Jamesのある手順を、いち部分だけで演じられるように再構成したそうです。



と言うわけで実に面白かったです。
キモイ系メンタルの他に、不可視となるまで鍛える必要のある超絶技巧なカード・マジックが多く、インパクトのある巻でした。天上の世界をかいま見た感じ。

このレベルの冊子がもっと出てほしいなあ。

2014年4月2日水曜日

"7 Card Effects" Gabi Pareras





7 Card Effects (Gabi Pareras, 2014)




Gabi Parerasによる7手順。


先に行っておくと、私はGabi Parerasのファンだ。

Gabiの手順は巧妙かつよどみなく、スペインにおけるクラシックの体現者と言った風格がある。
本書以外にもいくつかダウンロード商品を出しており、これらはできれば秘密にしておきたいほどの逸品。

その上で、本書はいまいち。


収録は、タイトル通りに7手順。簡単にだけ紹介。

◆Sandwich's Vallarino
   Jean-Pierre VallarinoのSandwich Volant(いわゆるFlying Sandwich)

◆Card in the box
   ごくシンプルなカードの入れ替わり。Doug EdwardsのPack a Wallop?

◆Sandwich at number
   サンドイッチと消失。

◆The Time Machine
    Steve FreemanのTime Machine、ガフ使用。

◆Pure Touch
   相手が選んだカードとカットした枚数を当てる的なあれそれ。

◆Triple Divination
   三人の観客が選んだカードを当てる。

◆Poker Prediction
   ポーカースタッキング。

全体的に小品な事もあるが、なにより記述がまずい。
私がGabiに期待する所というのは、微妙なタッチであったり、緻密な構築やその背景の論理であったりなのだが、本書の記述は動作の箇条書きであり、手順の最低限の骨子だけしか書かれていない。レクチャーの覚え書き程度の内容と言えばいいか。

手順自体は小粒ながら悪くない感じだし、実際にGabi Parerasが演じたら不思議なのだろうけれど、この情報だけからGabiの特徴や空気を読み取るのは難しい。
そんなわけで、Gabiの作品自体は今後も追いかけたいのだが、少なくともGabi Parerasの作品集としては、本書はあまりお薦めしない。クレジットもないし。
一風変わった(スペイン風の)レパートリーを増やしたいというなら、やや読みづらいものの悪い内容ではないかもしれないが。


もし氏があの洗練されたタッチを記述する術を持たないのだとしたら、あまりにも残念だ。次の作品の英訳を待つ。