2018年5月31日木曜日

"Turnantula" Bob Farmer


Turnantula(Bob Farmer, 2018)

 作品自体はそこまで高く評価しないのだけれど、なぜか惹かれる著者というのがいて、たとえば僕の場合はBob Farmerがそうです。このTurnantulaという冊子は、Turnantulaというターンノーバー技法とそれを使ったさまざまな手順を解説した72ppの冊子で、先に言ってしまうけれど、手順自体はあんまり面白くありません。ただ本の構成は非常によかった。

 本書は技法とその使用例の解説書なのですが、販売ページに行くと、技法の実演動画が置いてあります。しかもこの動画、解説までします。つまり最初に裏を明かした上で、本書を売っているわけです。単体技法にフィーチャーした本として、非常に誠実な売り方でしょう。

 まあ……残念なことに肝心の技法は、動画で見てもそこまで魅力的ではありません。ハーフパスの亜種なんですが、自然な動作に擬態している割には、どうやっても気配が出そうというか……。ただ商品の売り方としては非常にいいと思いましたし、どういう現象に仕立てるのかという興味もあり買いました。

 まあ……残念なことに、技法自体がちょっといまいちなので、どの手順にもいまひとつ食指が伸びなかったです。ただパケットからフルデック、即席からガフ、有名プロットから特殊なものまで、かなりいろいろな方向性を示しています。ハーフパス技法なのにデックがケースになる変化現象までありました。他の人の作例も載せており、これも非常によいアクセントになっています。

 気に入ったのはDavid OestreicherのSympathetic Turnantulaで、赤4枚黒4枚で行う奇妙な同調現象。あとおまけで載っているRemraf Reversalという技法は、Turnantulaより用途は狭そうながら、非常に使えるやつではと思います。こちらはBraue Reversalの親戚みたいな技法です。上ではいろいろ言いましたが、Turnantulaそのものも、注視下でなければかなり使えるように思います。

 そんなわけで「単一技法をあつかった冊子」としては非常によいものでした。動画で見て技法が気に入った人はマストバイですし、そうでなくとも、単に読んだり研究したりするのにとてもいい内容です。