2019年9月30日月曜日

"Card College Lightest" Roberto Giobbi




Card College Lightest (Roberto Giobbi, 2010)

ロベルト・ジョビーのセルフ・ワーキング・カードマジック解説本第3弾。

ライト・シリーズ最終巻。セルフ・ワークとルーティン構成が素晴らしかった1巻、ヴァラエティに富んだ傑作補完としての2巻ときて、さあ最後はどうなるか。

まず構成の話から。正直なところ、明確な構成のあった1巻と比べると
かなり弱く、単にいろいろ紹介しているだけになってしまっている。2巻もそういった傾向にはあったが、それ以上に。2巻ではいちおうトリックを3つの章に分け、それぞれオープナー向き、中継ぎ向き、クローザー向きとして、最後にアクトの組み立て方を解説してまとめていた。

でもライテストではそういうことは無く、トリックが章分けなしにただ連続で解説されている。全体を貫くテーマのようなものはない。いちおう最後に、セルフ・ワークと組み合わせれば効果絶大な『技術のいらない技法』が解説されている。フォールス・カットやフォールス・シャッフル、デックスイッチなど。それらは単にセルフワークと組み合わせて強力なだけでなく、セミ・オートマティックや普通のカード手品などへの橋渡しとしても大変に素晴らしいものになりうる。のだけど――――Giobbiの書きぶりはいささか散漫というか、あくまでオマケとして書いているような感じ。

トリックはというと、これもちょっと変わっている。これまでと違って手順構成に配慮する必要が無くなったこともあり、セットが重めだったりパケットだったりの名作、たとえばNumerologyやSwindle of Thoughtのような大傑作Ramasee Principleを使ったパケットもの、またサイステビンスを使った巧妙なカード当てCheers, Mr. Galasso!などが収められていて、これらは本当に素晴らしい。一方で、実質『気合で当てる』としか言いようのない手品や、これをセルフワークと言い張るのかというデックバニッシュなどの怪作も入っており、だいぶGiobbiの趣味の感じが強い。手品とは言えないような単なるギャグ(しかも面白くない)まで1作品として入っており、それでこれまでより少ない18作品。うーむ。

悪い本というわけではないが、どうしてもトリロジーのための数合わせに感じる。特に1巻の素晴らしさからするとだいぶ尻すぼみ。あと手順の癖もちょっと強い。重ねて言うが、悪い本ではない。ただもっと素晴らしい一冊になれた可能性がちらつくだけに、とてももったいなく思うのだ。

これも翻訳出るんですか……? 乗りかかった船ということではあろうが、えらいな。


(急いで書いたので、あとで直すかも 9/30→表現を直しました 10/1)