2015年5月18日月曜日

"OiATER" Tom Dobrowolski & Jeremiah Zhang




OiATER (Tom Dobrowolski & Jeremiah Zhang, )



各氏絶賛、Tom Dobrowolskiによる多段Oil and Water手順。
3×3→2×2→2×2→1×1(ギャグ)→フルデックor Out of this Worldという構成。

あまり詳しくないのですが、繰り返しつつ枚数を減らしていく(増やしていく)O&Wって、これが初めてだったりするのでしょうか? でないにしても、かなり早い作例だったりするかな。だとしたら、各氏の絶賛っぷりにも頷けます。
カウントを用いず、クリーンにディスプレイされるよう構築されており、そこもモダン。またFull Deck Oil And Waterに使われる技法は、さらっと書いてありますが非常に強力なもの。

ただ……、今読んでおもしろいかというと、正直ちょっと微妙ではあります。

だってほら、我々、水漏れ油漏れに親しんでいますし。



本書の手順、主体が2×2というのがひっかかる。どうしても釈然としないものを感じます。また減らしてからフルデック現象へのつなぎ方もぎこちなく、洗練されておりません。

先述のFull Deck用の技法も、DaOrtizが(おそらく別個に発案して)Utopiaで解説してたしなあ。

捨てたカードと手元のカードでの分離現象などもあって、あれ、これは水漏れ油漏れの先行例?と思ったりもしましたがだいぶ毛色がちがいました。

それからちょっと解説で損してると思いました。手順原案がTom Dobrowolski、その後のブラッシュ・アップを二人で行い、解説の筆を執るのはJeremiah Zhangの方なんですが、露悪的という程でもありませんが文章がいまいち魅力を伝えられていない気がします。



徐々に減らす構成、そしてカウントではなくディスプレイを用いるクリアな現象、というとどうしても水漏れ油漏れと比べてしまい、しかもそれが非常に出来がよいので、本冊子についてはううん、今ひとつ。

ただ、おまえそれは絶対無理だろう系技法や、先述した捨てカードとの間のOWなど、実験的な要素が結構あり、刺激的でした。

O&W史の中では重要な冊子やもしれず、その辺は一度、識者の方の話を伺ってみたい所ではあります。

2015年5月1日金曜日

"Put Your Hands Up" Yoann Fontyn






Put Your Hands Up (Yoann Fontyn, 2011)


 スタイリッシュで華麗なハンドリングとモダンな構成で知られるフランスのカード・マジシャン、Yoann Fontynのレクチャーノート。

 面白かった。面白くはあったが、ほとんど何も覚えていない。


 技法5つと手順7つを解説しているのだが、解説がハンドリングの説明に留まっており、動画でみれば十分の内容。やはり動作の意味づけであるとか構成の動機であるとか、つまるところ"何を見せたいのか"が書かれてないと、あんまり文字でやる意味もないですね。

 あとはまあ私の怠慢ではあるんだけど、台詞のない手順(で特に現象が複数起こる、込み入ったもの)って、どう演じて良いものかよくわからないんですよ。

 実際にはYoannも何か喋りながらやってるのかもしれませんが、ならそれは書いて欲しいなあ。
 まあこれは私の最近の好みなので、Yoannに当たるのはちょっと違うかもしれませんが。




 全体として、評判通りのスタイリッシュさ。かなり難しい技法も使います。ただ『見えないように行う』技法ではあまりなく、常に何らかの観客から見える動作、それも『自然な動作』ではない動作に紐付けられているので、難しい系統の中では難しくもない部類かも。
 演出を切り離して見た場合、手順の構築も美しく、その技法と同じくスムーズでダイレクトです。

 演出なんかを気にしなくてよい一発ネタ手順ですと、このあたりが上手く噛み合って非常によいです。手に持った4が一瞬で4枚のAになるNitro Aceなんかは大変好みでした。


 演技動画が付いてきますがご本人はかなり上手いです。ノートについても読みづらいところや説明不足に思う所はありませんでした。