2016年6月7日火曜日

"MISCELLANEA" Hector Chadwick



MISCELLANEA (Hector Chadwick, 2016)


謎の人物Hector Chadwick(*)が、 Mind Summitとかいうメンタル・マジック~メンタリズム系の大会で販売したレクチャーノート(御本人の言葉によれば"パンフレット")。
今はもう売り切れになっていますが、Mental Mysteries of Hector Chadwickも割とマメに再販してくれていたので、これもいつか再販するかもしれません。まあ無理してプレミア中古を買う内容ではないかな、と思います。
そのことは前書きやオーダーページにご本人も書かれていて、「こいつは万人向きじゃあない。2つのトリックと4つのエッセイを収録しているが、君が使う可能性があるトリックは1つきりで、まともに取り合うだろうエッセイは2つだけだ。」との事。
とはいえ面白かったですよ。まあ、私は氏のファンだからですが。


Envelopener
 Bank Nightオープナー。ショーのオープニング・アナウンスなども絡んでくるので演じる人はそういなさそうですが、氏のショーの感じが伝わってきて面白いです。封筒3つのBank Nightと、観客が自由に言った数字の予言の複合で、こういう合わせ技は往々にして失敗するんですが、これはうまいやり方です。
Achoo
 考えなしに使ってしまっている台詞はないかい?という話。
Words, Words, Words
 言葉に依存しすぎないメンタリズムを目指したいという話。
Audience Two
 演技の時にはまだ存在しない”観客”と、それへの対処方法の話。
Dat Claim Or Dis Claim
 メンタリストは自らの演じているものをまずきちんと否定するべき、という話。
Shriek
 観客が混ぜ、配り、抜き出し、……などして最終的に選ばれたカードが予言されている。手法自体は珍しいものではないが、確率1/52をより不思議に、不可能に見せるような小さな策略が随所に仕込まれている。最後のCross Cut Forceさえ許容できれば良い手順と思う。
 ただ、演出上の確率の計算に若干の嘘があって、いや嘘ではないんだけど不誠実な所があって、観客によってはよくない印象を与えるかもなあという気もします。

という内容のパンフレットでした。エッセイのテーマは、どれも最近の書籍ではしばしば見かけるもので、切り口としても論旨としても、このパンフレットならではという程のものではないです。ただHector Chadwick氏は文章が上手いので、読んでとても楽しいというのはあります。
手順については、昔の書籍でも細部のうまさが際だっていましたが、今回は特に、手法的に新しいところはなくて、細かい演出や手順の運びで魅せる感じでした。
そんなわけでファンとしては読んで楽しかったですが、無理して買うほどではないかなという感じ。

まとまった本の2冊目も書いてらっしゃるとかでいつになるか分からないけれど楽しみです。


*なお正体は、Derren Brownのショーで脚本共著も務めたStephen Long氏だとか