2021年3月30日火曜日

"Thoughts from Vegas" Ted Karmilovich

 Thoughts from Vegas (Ted Karmilovich, 2011)


メンタリストTed Karmilovichのノート。A4リング綴じ、わずか8ページで、かつ売りネタの改案が多くてこれだけ読んでも正直あんまりわからない……のですが、わからないながらも織り込まれた工夫の鋭い切れ味は感じられます。


17

演者はある観客に「あなたは17だな」と言う。その観客はまったく自由にカードの名前を言い、演者はデックから言われたカードを取り出すが、裏を見るとまさに17と書かれている。むろん他のカードの裏は別の数字。

Charlie Bucknerの“11”の改案で、タネはPhil Deckの流用、らしい。この冊子ではどちらも解説がないので、この“17”だけ読んでも再現は難しい。とはいえ、細部は私も想像だけれど、「完全なフリーコール」「デックはあらかじめ出してある一つだけ」「かなり自由に表を見せられる」と、このプロットとしてはかなり理想に近いんじゃないか。ちょっと手に入れて演じてみたい。


Projection Epic

Mental Epicのかなり良い改案。大枠の原理はそのままではあるものの、問題になりがちな「すり替え」や「予言の紙と予言の順番の紐付け」がほぼ解消されている。ちゃんと紙に1と書いて、それを見せ、それから予言を書くことができるのだ。

解決方法もなかなか面白く、巧妙というか力技というか、込み入った物理トリックの推理小説みたいで面白い。ちょっと演じてみたい。


Director's Cut 3-D

Simon ShawのDirector’s Cutの改案で、これも元ネタをよく知らないからちゃんとは分からないんだが、3人相手に拡張したもの。映画のポスターが書かれたカードの束から、3人の観客がそれぞれパケットを取っていき、表のカードを見て混ぜる。それを連続で当てていく。

Riobooに似た原理のがありましたが、こっちはDirector’s Cutの原理を利用してるので演者側の負担がかなり少ない。これもちょっとやってみたくなる良い手順。Director’s Cutの日本語版があればなあ。


Horizontal Change Bag

透明チェンジバッグのアイディア。よくある「いくつか取り出して、それぞれ違う内容であることを見せる」よりも、かなり自然でフェアに見える改め方法。


こうして書き出して改めて気付いたのですが、どの手順も「これはちょっと演じてみたいなあ」と思わされる内容でした。巧妙でありつつ地に足がついていいて、現象もストレート。この冊子単体で成立してるものではないのが残念です。うーんやっぱりこの人のまとまった作品が読みたいぞ。