2013年11月14日木曜日

"Small World" Patrick G. Redford







Small World  (Patrick G. Redford, 2013)




引き続き、Out of This Worldのe-book。



そういやPrevaricatorは面白かったよなあ、と思い出してP G. Redfordのサイトを再訪したら、彼もOut of This Worldの冊子を出していたので購入。

こちらも少枚数&複数段だが、大分イメージは異なる。章題が凝っているので、とりあえずそれを引き写すところから始めてみよう。


Contents
The Man Who Sold The World (Introduction)

Tiny World (6 Cards)
Small World (10 Cards)
Mad World (10 Card variation)
Perfect World (10 Card Number Match)
Unexpected World (Prediction with 10 cards)
Full Routine

Bonus
Opposites (still) Attract
Wild World
Practical Applications

Addendum
Charlier Shuffle
Afterthoughts
It's the End of World

ホントーにこんな具合で二色刷になっているのだ。解説図のカードも赤黒表記。まあグレースケールで印刷して読んでたので、あまり関係ないけど。

少枚数で特徴的、とSeparation Anxietyで書いたが、後で調べると思ったよりは作例があった。Henderson/Armstrongの他に、Alex Elmsley、Michael Skinner、J.K. Hartmanなど。

しかし、ここまで刈り込んだ物は珍しいのではないだろうか(*)?初段は3+3のたった6枚、次も5+5の10枚で本当にTiny で Small。
3段からなる、相手にじっくりと"選択"させる手順。先のSeparation Anxiety内で、Out of this Blah Blah Blahの欠点として、10枚ずつに分けるのは直観的に困難、という話をしたがここでは何せ3枚or 5枚なのでその問題はクリア。

またスイッチのぎこちなさも、相当程度クリアになっている。手順の中間というか、比較的半端なところで唐突に”急ぐ”必要がある他の作例に較べ、3枚では中間が存在しない。そして3枚で既に一度現象を見せているため、5枚時にやや急いでも不自然は減じている。

さらに3段目では、観客が自由にカードを入れ替えた後、見ると数字の並びが一致しているというクライマックス。

元来、複層化された手順が好きなもので、これはかなり好み。


最終段に"Perfect"で畳みかける所もよい。が、ここの手法がいまいち。元々4枚用の策略を無理矢理5枚に当てはめているため、かなりごちゃついている。コンセプトは良いのですがね。Swindle Moveもちょっと違うしどうしたものか。


総じて面白く、"選択させる"演出が行ける人なら買って損無し。僕は断然好き。
ただし最終段はそのまま行うのはきついと思う。演者の負担も急に増加する。



variation手順はスイッチがちょっと違う程度の改悪で特筆することなし。
おまけ手順も少枚数Out of this WorldをQKで行うもので、さらにJを増やして同性のペアができてしまったりとかあるがこれも特筆するほどの事はないだろう。


*Behr Fileにあたったところ、どうも4+4の8枚は有るらしい。

2013年11月13日水曜日

"Separation Anxiety" Bruce Bernstein







Separation Anxiety (Bruce Bernstein, 2013)



Bruce BernsteinによるOut of This Worldのバリエーション単品ノート。実体版もあるらしいのですが、送料が嵩みそうだったので僕はe-book版で購入。

Out of This World、好きなんですがなかなか良い”答え”が見付からない。素晴らしい現象なんですが、ハンドリングもプレゼンも、あと一歩、消化しきれないところが有ります(*)。それで面白そうなのを見付けるとついっと手が伸びる。

ましてや、Bruce Bernsteinの作ですからね! 氏のUNREAL は、色々あって途中で置いてしまってますが、とても凄い本でしたのでこのSA も結構期待です。


ということで2段からなるOut of this World。現象の説明は今更でしょう。特徴的なのは、2回繰り返すこと、使用枚数が少ないことでしょうか。10+10で20枚。

カード構成はJon Armstrong/Brad HendersonのOut of This Blah Blah Blahと同じで、実際に相当意識しているらしく本文中で何度も言及されています。BBBは良い手順だけどここが難しい!その点SAは、みたいに仰られるのですがまあどっちもどっちかなと思う次第。正直大差ない。

BBBは、観客がちゃんと10枚ずつに配り分けるように、じっくり選択させていく手順。カードは演者が配ります。一方のSAは、完全に観客に渡してしまい、適当に配ってもらえます(適当に分けたはずなのに10枚ずつになってる!というちょっとしたおまけ現象あり)。


意識的なBBB、無意識的なSAという感じでしょうか。
スイッチ段を除けば、構成はSAの方が洗練されているような気もしますが、絶対的な優位性という程ではなく、どちらの演出が自分に合っているかという問題に集約されると思います。あとSAはちょっとした細工が必要です。逃げる必要のない細工なので個人的には許容ですが、人によっては嫌うかも。

ただBBBの20枚のカードを等分に分ける、という作業はなかなか面倒に思います。1つ2つ3つ、たくさん、と言いますかマジカルナンバー7的なそれと言いますか、非直観的な数量かなと。なので個人的にはSAの方がやや好み。



Out of this Worldの宿痾たるスイッチのぎこちなさは残るものの、前後段で編み込まれた構成の巧みさであったり、ハンズフリーな感じであったりが中々よい手順でした。演技時間も短めで済みますし、これはちょっと試してみたいです。特に構成によって生じる微妙なサトルティは、読んだだけだと、どれほどの効き目があるかちょっとピンときませんし。

ただ単品作品冊子・細工必要ということだけ留意した方がよいかもです。 またe-book版は動画埋込されているのですがBernstein氏は残念ながら下手です。動画では全く通用するように見えません。




*BBB対SAでも主眼になりましたが、誰が現象の主体なのか、その原理は?といったところが今ひとつ、僕の中で安定しません。透視?コントロール? うーん。
なお、手法はともかく現象としてはDerren BrownのUndertakerが最高峰であり異論は認めない。しかしながらDerrenレベルのオーラがないと、ただのチープなトリックに堕してしまうのでどうにも。いつか地下墓所で手品をする機会が巡ってきたら、トライしてみたいと思います。