2021年11月30日火曜日

“Wabi-Sabi” Harapan Ong

 Wabi-Sabi (Harapan Ong, 日本語版2021)


Harapan Ongの小冊子。元々は2017年に、香港レクチャー用に作ったものらしいです。『侘寂』というそれっぽいタイトルなので何か含みがあるのかと思ったけれども別段そんなことはなかった。Principiaとも共通する、あの手この手を駆使した端正なカードマジックが7手順に、おまけが1つ収録されています。

カードマジック研究家としてのHarapanの特徴がよく現れた冊子で、どの手順も狙いがはっきりしています。射程も広く、DaleyやWaltonのプロットへの再訪といったものから、Alex Hansfordの技法の活用といったごく最近のものまで。数理トリックもやるし、ギミックの使用も躊躇いがありません。全体的にスマートでビジュアル。なかでもLast Trick、Follow the Leader、Oil and Waterは面白かったし、これらのプロットが好きなら、読んで何かしらの刺激になることは間違いないでしょう。

一方で、それぞれのトリックに対する執着をあまり感じないというか、演者がこれらをペットトリックにしているという感じはしません(文章化の際のアク抜きが上手いだけかもしれないけれど)。それでも嫌な感じがしないのは、よくある改案のための改案ではなく、個々に確かな狙いがあって、それがしっかり達成されているからでしょう。これは Principiaでもそうで、だからPrincipiaは気になるけど高いし分厚いし、と迷ってる人がいたら、このWabi-Sabiを手に取ってみればだいぶ雰囲気がわかると思います。