2012年5月3日木曜日

"大原のこころみ Birth" 大原正樹







大原のこころみ (大原正樹,2012)




おすすめ、たくらみ、とはちょっと趣向の異なったワントリック解説のレクチャーebook。



カードあての最中、突如、手の中にカードケースが出現。何事かと思うと、その中から選んだカードが出てくる。

意外性が高く、難易度はそこまで高くなく、そして観客の目の前で堂々と”いかさま”をする快感があり、というなかなかの良トリック。現象もユニーク。


セオリーとしては、技法の習得に関するコツをいくつか解説。自明のような話もあるが、明文化されることは少ない気もする。またいわゆるJazz Magicに通ずる”あいまいさ”も含まれており、勉強になるだろう。
深い解析だが、非常に簡潔な文章で、さくっと読める。

トリックもセオリーも含め、初級→中級のステップアップ段階に非常に有効。といった所か。



ただ、本現象の解析に Tommy WonderのCup and Ball、およびDoc Easonに代表されるCard Under the Glass/Case との比較があるのだが、これはちょっと筋が違う気がした。

『いつの間にか現象』にこだわりがある自分の誤読かもしれないが、これでは本作品全体を『いつのまにか現象』の文脈で捉えてしまいかねない。よくないレッドへリングと思う。

上述の現象とは『出現の瞬間がヴィジュアルにアピールされる』という点で決定的に異なっており、直接に同一の文脈には置けない。
比較するのならせめてTom Stoneの、手の中に靴が出現するChanpagneであろう。David Stoneの演技で見知っている方も多いと思う。このStoneの現象が『いつの間にか現象』として成立するのはロード元の不可能性の高さゆえである。

本作品はロード元の位置的な不可能性はあまり高くなく、むしろテーブルに出ていた事を記憶されていた場合現象が減ずる可能性すらありうる。


また全体の構成が完成するまでの経緯の章で、「マジシャンはカードケースを出現させて、どう言うのだろうか?」という問いを立てているのだが、少なくとも演技側面からは明確な答が出されていないように思う。
この現象に対して演者の立ち位置はどこにあるのか。



色々言ったが、ユニークな現象、簡潔な構成、簡潔な文章、細かい考察と、良い冊子であった。
ただしロジックが簡明で無個性化されている分、ミスリードが起こりうる。しっかりと疑いを持って読むべき。気付かぬ間に説得されぬよう、ちゃんと考え上で吸収したい。

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