カードマジック THE WAY OF THINKING (松田道弘, 2011)
いつもの通り、である。
それ以外はあまり言う事が見付からなかった。
いつも通り、とは
・文章が読みやすい
・紹介されるエピソードが面白い
・手品がマニアックすぎる
である。
松田道弘のカードマジックのシリーズは、特にここ最近、新刊と言うよりもアップデート版という感じがする。個人的なテーマへの飽くなき研究の過程は、面白いが、読み物としての面白さが強い。
The Way of Thinkingと名打ち、帯には「近代の優れたカードマジックを、創作や改案の根底にあった考え方によって分類し、」とあるがそんな事は全然無い。いつも通りの内容だ。
個々の作品について、改案の狙いや動機などは詳しく書いてあり、実にためになるが、いつもちゃんとしてあるので特別な感じはしない。
あえていうなら、Slydiniのヘリコプターカードにおいて、動作だけが書かれて意味が解説されなかった部分の意味解析だろうか。これは実に面白かった。だが以前にVernonのアンビシャスカードで同じような事をしていたし、新趣向でもないだろう。
作品だが、これもいつも通り。
『いくら「また同じ絵かいな」と言われても、画家が執拗に同じモチーフの絵を描き続けることがあるように(p.87)』だ。
技術的には確かにどんどん洗練されている印象。
一方で、”長い手順が嫌だ”という意見には同感できるものの、ここまでそぎ落として良いものかと思う作品も多い。特にTwist系。
こんな感じ。
4枚の赤裏のカードを見せる。一枚を表向きにすると全部表向きに。
裏を見せると全部違う色になっている。
Twist部分を限界までそぎ落とし、2段目のオチに重点を置いたため、もうTwistじゃなくてカラーチェンジ(?)に近い。
We'll Twistの裏色変化やMaxi Twistの1-5はどんでんがえしのオチとして発展したが、確かにそれが独立していけない理由はない。新奇な所、鮮やかな所だけを抽出した手際は鮮やかだ。
演技や演出、現象の意味について全く触れられていないせいで、余計にそう感じるのかも知れない。
新刊だがいつも通りの内容でマニアック。
このシリーズを一冊も読んでいない人にはお勧めできない。
間違いなく面白くはあったのだが、文句ばかりになってしまった。期待した分だけどうしても。
勝手な勘違いの逆恨みじゃないかと言われればそうなのだが、あの惹句はやっぱり期待してしまうって。あと誤字もちょこちょこあって混乱したし。
全著作を読んだわけではないが、個人的には松田道弘のクロースアップ・カードマジックが一番おすすめ。
って、絶版になってやがる。しかも古書価格がルポールより高い。
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