2014年2月27日木曜日
"Sympathy (for the devil) cards" Paul Vigil
Sympathy (for the devil) cards (Paul Vigil, 2007)
Paul Vigilによる単品e-book。
簡単にできるSympathetic Cardsと、プロットに沿った強烈なオチ。
メンタル寄りの手順でちょっと有名なPaul VigilのSympathetic Cards現象。同じ値のカードで構成された2つのパケットのうち、片方を観客が混ぜるが、ふれていないもう一方のパケットとなぜか同じ並びになる、という現象。
1-10などそろったカードでやるのが普通だが、Vigilの場合は相手が適当に取り上げた枚数のカードを使って行う。さらにそれを2つに分け、片方を観客にある特殊なやり方で混ぜてもらう。この部分が売りの一つなのだが、これ、どれだけ混ざったように見えるかなあ……。ただ表裏がある程度バラバラになるので、後で見たときに"混ざった"感は強いか。元ネタはHoward Adamsだそうです。
第二弾はさらにカードを混ぜてもらった後、その数字の並びを携帯電話に入力してもらうと……、というものでなかなか素敵に気持ち悪い。前後の整合性を合わせるのであれば、シンパセティックな変化現象というより一致現象なのだね。
技法要らずで簡単。混ぜる部分には流石にそこまでの説得力はないかもだが十分に面白い原理。
あまり扱われないプロットでもあり、覚えておいても損はない感じです。
ただ2つほど気にくわない所がある。
まず1段目だが、メイトの一致現象として演じるのはいささか不整合。観客が適当にとって分けた時点で、すでに両方の山の組成が同じだったという不可能が起こっていた事になるが、演者はその点を消化できない。第2段もある事だし、ここは色の一致程度に留めた方が良いのではないかな。最後の組だけメイトにするとフィニッシュ感もでるし。
また第二弾の手法として、Luke Jermayのアイディアが紹介されるのだけれど、これはちょっと通用しないので実用しないように。読んだ時点でこりゃ駄目だと気づきそうなものだけれど、「いやでも意外と通じるのかな……」とか思ってやったりしたら駄目。個人的な経験から断言できますがやっぱりこれは通用しないです。痛い目を見た。
追記
① Sympathy for the Devil(It's me!) って手順を読んだ記憶がなきにしもあらず。
思い出したらまたどこかで載せます。
②Vigil氏、これらのe-bookの販売やめたのですね。物質本と違って、こうなると(正規では)手に入らないのが痛い。
2014年2月26日水曜日
"Penumbra issue 10" 編・Bill Goodwin & Gordon Bean
Penumbra issue 10 (編・Bill Goodwin & Gordon Bean,2006)
碩学Goodwinの発行するPenumbra誌、その第10号。例によってよく練り込まれた手順や、ひと味違ったアイディアが光りますが、この刊は作品数すくないこともあってか、他の刊よりは軽いです。
The Sound Of One Coin Clinking:David Gripenwaldt
有名な禅の公案「隻手音声」めいたタイトルで、実際にそういう不条理は起こるのですが、それは現象として前に押し出している物ではないです。あくまで裏で起こっている事が不条理というか。そのためちょっと残念。
状況設定を書くとネタバレになりそうなので控えますが、応用範囲はごくごく狭そうなものの、マジシャン心をくすぐるおもしろいコイン・マジックのアイディアです。
Perfect Order:Shoot Ogawa
緒川集人のマニアックなトライアンフ。きわめてクリアーに表裏を混ぜた後、選んだカード以外の向きがそろうトライアンフ現象。その後、カードの順番もそろってしまう。
ここまでやるかというディスプレイ。ある意味ではJennings&Goodwin Displayを上回る物があります。また初期状態はPerfect Orderでないため、ちらっとですが表面を見せても大丈夫です。ただ全体的にハンドリングが難しいのでなかなか安定しなさそう。
Fat Brothers DVDのおまけで演じているのが、およそこれですが、しかしShootさん演技はいまひとつですね。平板で。
Triple Alliance:Roy Walton
Waltonの良さが僕にはどうもわからない。シンプルで力強い構成はよいのですが、1枚と4枚がトランスポ、その後おまけにデックの表裏が変わる!
という、おまけの意味がわかりません。
Color Shuffles (Part One):Ronald Wohl
前後編に分かれたColor Shuffleの前編。手法と、その基本的なアプリケーションを解説。
観客が(見た目上)よく混ぜた後、カットして上1/3程度を取り上げるのですが、そのパケットに含まれる赤いカードの枚数などを制御するというもの。
何の役に立つのだろうなあと思ったのですが、用法が色々あげられており、なるほどこういう使い方も考えられるのね、という事で創作の案出し過程として読んでておもしろいです。ただ現象が面白いかというとちょっと微妙かもな。
しかしまだ前半だそうで、これどう発展させるのか後半を楽しみにします。
なお次のissue 11が出たのは3年後だったようでこれは酷い。
2014年1月13日月曜日
"Troika:3 Mentalism Daydreams" Brad Gordon
Troika: 3 Mentalism Daydeams (Brad Gordon, 2008)
メンタルマジック3+1。
「元々カーディシャンだったけどメンタリズムにも興味が出てきたんだ!」 ということでそれはよく分かります。
意外にもカード技巧ぽい所は無く、割と度胸だよりというか雰囲気だよりの手順が多くて評価が難しい。どこまで通じるのかなぁ?
Purposive Reverie
デックの中にあるたった1枚の特別なカードを観客が選ぶ。外見としての自由度は高いが、あまり"選択"した様には見えないよなあ。MavenのFan Forceみたいなものでなかなか怖い。
Match Box
マッチの箱が重くなる。とあるギミックが利いている。
The Locket Connection
ロケットをペンデュラム代わりにしたカード当て。ここのフォースは前例有りそうだけど秀逸。ただ小道具を導入しすぎてよく分からない現象になっている気がする。
O.vert U.tility T.ranscript
純・サイコロジカル・カードフォースに失敗した時用のアウト。リーディングに逃げるのはよくある手口である。
うーん、あまり語ることが無かった。かなり場の雰囲気に左右される手順が多く、ちょっとでも挑戦的な相手とかだと端から成立しないような。Eugine Burgerとかなら出来そうですが、僕の手には余るかな。
面白くはあって、知っておいて損はない感じなのだが、強力な魅力には欠けた。所々の工夫は光るのだけれど、全体として半端な感じ。もうちょっとどちらかに振れて欲しかった。
"Penumbra issue 5" 編・Bill Goodwin & Gordon Bean

Penumbra issue 5 (編・Bill Goodwin & Gordon Bean,2003)
碩学Bill Goodwinによる不定期刊行冊子、Penumbraの第5号。
他の号のレビューでも既に書いたが、そんじゅそこらの個人誌とは異なり、大変面白く、そして十分に練り込まれた作品が掲載されている。
今回は純・カードの作品は少なめ。
A Double Shot:Jim Patton
エラスティック・ループを使った連続Aプロダクション。David BritlandのAngel Aces(Card Kinetics,1988)をベースにしており、2枚のカードがそれぞれ左右に飛び出す部分がJim Pattonによるアイディア。
またこの部分だけを用いたカード当ても解説。
カード当ての方では、このアクティブなギミックを見えない形で使用しており面白い。実体化現象の趣もあり、やられたら気持ち悪そう。
なおエラスティック・スレッドが同梱されている。
The California Angel:Bruce Cervon
Pattonの現象に対するCervonのハンドリング。よりマジックっぽい見栄え。またDouble Shotのセット別案あり。解説者も言及しているのだが、これが非常に省力化された方法で驚く。
The Cherry Control:Ricky Smith
見えないトップ・コントロール。
カードを差し込んだ後、ファンを広げ、閉じるともうトップに来ている。
個人的にはBow-To-Sternの方が好きだが、あれよりもだいぶ楽+角度などの制限もすくなそう。
Ricky Smithは露出が少ないが、Dan and Daveをフラリッシュの魔道に落としたり、Earickの手順を非マジシャン相手に演じたり、というド変態レベルの逸材らしいので、今後も注目したい。
Color Scheming:J.K. Hartman
Penumbra issue 3に掲載されたLee AsherのThe Continental DivideのHartman流バリエーション。Card Duperyにも収録されている。
色がバラバラのデックを示した後、怪しい動作無しで赤黒分かれてしまう。
Asherのものが、バラバラ→分裂→再びバラバラなのに対して、こちらはバラバラ→分裂でかつエンドクリーン。ただしセットアップが必要。
Asherのものもチェックしたいのだが、Penumbra issue 3 が手に入らないのですよね。動画販売もしているみたいだが高い上にOne on Oneみたいで尻込み。モダンなAsherのエフェクトの、クラシック手法での表現といったイメージか。簡単に見えて意外と難しい。
Business Trip:Patrick Schlagel
左手の掌に指輪を置き、右手をかざすと、指輪が左手薬指にはまっている。貫通・移動現象。癖が無くたいへん使いやすそう。
「指輪を自然に持ち歩くためにも結婚しましょう」うるさいですよ。
Centrifugal Nightmare:Scott SteelFyre
Professor's Nightmareの表現技法。同じ長さになった3本のロープが、カバー無しで目に見えて違う長さになっていく、というもの。なるほどなー。あんまりロープ詳しくないのですが手軽かつビジュアルで素敵です。
というわけでPenumbra面白いです。 なによりGoodwin(だと思う)の解説の筆が良い。個々のマジックが非常に奥行きのある物に見えます。誰か日本でもこういう冊子出してくれないかしら。
2014年1月7日火曜日
捨行、あるいはもう開く事のなかろう本について
あけましておめでとう御座います(今更)。
今年の投稿を見返すと、これが見事に冊子しか読んでない。
大判本もいくらか買って読んでるんですが、だいたい途中で止まって放置しておりこれは良くないです。
年度末までに何冊かは読み切りたい所存。
さて当たり前の事ではありますが、本ブログは"通読・読了"した本をレビューしています。
しかしこれまでには、読む事を断念した本や、流し読みして買わなかった本も存在します。読んでいないのだから語る資格はないのですが、しかし読み進めない選択をした理由も確固として存在する。たまにはそういう事を口にしても良いかなと思いましたので、今回は未読了のままもう開かないと決めた本についての雑感です。
なお記憶に頼って書いているので、間違ってるかも知れない事を先にお詫びしておきます。
Naked Mentalism Jon Thompson
文字通り裸で出来るメンタルマジック!との事。
結局は単語の頻度をベースにしてて、あとは即席の対応みたいな話だったと思う。中盤以降は単語頻度リストみたいなのがずっと続いている気配で、さすがに言語違うとどうにもなあと思って以降放置。
今ちょっと広告みたら、プライミングとかの話もちらほらあり、ひょっとして読み返したら面白いのか?
どなたかから好意的な意見があれば背中を押されて読み直すやも。
Enigmath Werner Miller
数理トリックが好きだ。トリックより数理部分が好きだ。
とか書いてありつまらない数理トリックの見本みたいなe-book。3トリック目あたりで読むのを断念。ある枚数目に返して貰って、ダウンアンダーしてアンダーダウンしてアンダーダウンしてダウンアンダーすると当たる、みたいなそこに何の意味も意義も見いだせない感じだった。
これが5巻まで続いているらしい。
続く=人気あるという頭で1巻を買ったのだが、電子出版(自費出版)では全然当てにならない指標だったと己がうかつさを呪った。
Mind Blasters 1&2 Peter Duffie 編
イングランドのマジシャンから集めたメンタルマジック集。
とにかく判ってない。何も判っていない。
読心術、と口先で言っておけばなんでもメンタルマジックになる訳じゃないんですよ。
予言もそう。T.A. Waters先生の薫陶を受けて育った私としては、とりあえず予言にしとこう、程度の予言マジックには我慢がならんのです。
特に酷かったのでいうと、トランプの表になにか書いて貰いそれをデックの真ん中に戻した状態から当てる、とかさ。まずトランプに書かせる理由がわからなくて不自然きわまりないし、デックの中に入れても演者がそれ持ってるわけだし隔離方法としてさっぱり機能してない。
とこういう駄作としか言いようのない駄作があまりにも多く、ページ数も多く、あまりにも不毛だったので途中で断念。2に至っては開いてすらいない。
基本的にこういうオムニバスとは相性が悪いようです。
もし面白い作品知ってる方が居たら教えてください、そこだけ読みます。
最新メンタル・マジック徹底解説! 林敏明
ウィザーズ・インの柳田昌宏が最も得意とするメンタルマジック作品集!
ウィザーズ・インの柳田氏、危険信号①。
オリジナル作品を年に200も作る、とか前書きに書いてあり危険信号②。
(ていうか個人選集なのかよ、タイトルから想像つかないよ。おまえの最新マジックなのかよ)
メンタルマジックと言いつつカード作品しかない、危険信号③。
クレジットが無くまるで全て一から考えましたという空気、失格。
主張ではなく空気なのがミソ。そういう誤解を招くように招くようにと計画的に記述されている気がする。なんかここまで来るとね、本人が書かず他者が筆を執るこの形式も、クレジット不備などについて責任の所在をはぐらかすため故意にやっているのではないかとさえ邪推してしまうね。
これは買わなかった本。まだ部室にあるはずだがいい加減破棄してしまえと思う。
いやちゃんとクレジット完備だったよ、とかだったら教えてください。買って詫びます。
ともあれ今年もよろしくお願いします。
最近はあまり欲しい本も出ないので、家に積んであるのをじっくり消化したい所存。
あと手品が出来るようになりたい。
もとい、不思議な手品ができるようになりたい。
切に。
2013年12月13日金曜日
"Missing" 新沼研
Missing (新沼研, no date)
"観客にトランプをよく混ぜてもらった後、自由に1枚のカードを選んでもらいます。
観客自身の手で、カードをデックの中に紛れ込ませてもらいます。
一見、観客のカードを探し出すことは、全く不可能に思われる状況の中、
マジシャンは確実に観客のカードを見つけ出します。
(観客から借りたトランプで即席に演じることができ、即座に繰り返し演技することができます。)"
マニアも騙す新原理、MKCLの発見!
そして思いも寄らぬ発展系までも解説。
MAGIC誌の名コラムTalk About Tricksでも特集が組まれた、新進気鋭のクリエイター新沼研の不可能すぎるカード当て。
観客が混ぜたにもかかわらず、というのがこのシリーズのコンセプトらしいです。前作は持っていないのですが、今回は対一人でしかも新原理を謳います。
これがちょっとすごい原理で
なんて。
言うとでも思ったかぁああああ!!!
何が!!
新原理だ!!!!
これは!! ただの!! Distant Keyじゃねえか!!!!!!!!
たたくと決めたのでコレは徹底的にたたきますけど、お粗末も良いところ。
今でこそ、ショップでは”古典原理の再発見”と唄ってますが、これ販売予約開始した時点では”新沼研の頭脳が産んだ新原理!マニアをも騙す!”みたいに唄ってましたからね。
いやさ確かに、これを独自に発見したこと自体は凄いと思います。それは並々ならぬマジックのセンスであろうと。そしてマジックにおいて、過去の発表作全てをチェックするというのもまた不可能です。特にこれなどは、あまり人気が無く使われない原理でもあります。仮にIbidemの××号とか、New Pentagramの△△号に載ってる、とかなら仕方ないですよチェック漏れは。でもこの原理の手近な参照元って、カードマジック事典、セルフワーキング・マジック事典 レベルですからね。
そして発覚の経緯もお粗末きわまりない。
クイズに正解した人に先行プレゼント!とやって当たった5人だか7人だか誰かにつっこまれて、発売の本当の直前、というか実質的にはリリースしてから判ったという次第。
つまり全国のマニアから7人をランダムピックアップした程度で、元ネタ重複が判るレベルによく知られた原理という事です。先例をあまり知らないように情報を絞った環境で創作する、というのは発想を柔軟にするためであれば、有りかも知れない。でもなんですか、発表前にまともに人に見せてもいなかったんですか新沼氏は。それで”新原理”なんて広告を大々的に打ったのですか?仮にもマニアを相手に商売している人ではなかったのですかあなたは。
本の内容自体は、そんな言うほど悪くはないです。
ただ発表までのプロセス、内部でのスクリーニングがあまりにお粗末であることが露呈しました。はっきり言ってこれは信用をなくすと思う。というか、僕は信用を完全になくした。3 Secrets とかは割と好きで好意的な印象も持っていたのですが、よほどの事がない限り、もう新沼研の関連作品は、”新沼”というだけで購入検討さえしないでしょう。
修正後の売り文句でさえ、"この“原理”を知らない方にとっては、この原理を知るだけでもこの解説書を読む価値は十分にあるでしょう。"と宣う始末だものなあ。それならセルフワーキング・マジック事典やジョン・バノン カードマジック、Card College Light Seriesとか読めばいいですよ。コスパ的にも内容的にも。
書いているうちに当時の怒りが再燃してしまいましたが、改めて公正に言っておくと、経緯が酷いだけで内容自体はそんな悪くもないです。
Missing:
Missing Effective:上記現象の舞那遊による演出案。典型的な「理由を後付けしている感じ」で、マジシャン側の都合が見え隠れしてあまり好きではない。文化的下地がない我国ではやはり難しいな、カット。
Hunter:Jokerが選ばれたカードをじわじわと追いつめていく。延々と配る必要があるが、配る理由はあるし、配りながら事態が進行していくのが見えるのであまり苦にならなそう。現象も面白い。
Mirror:相手が持っているファン(裏向き)の中から、相手のカードを見事に当てる。相当無意味にごちゃごちゃやるけど、それでも当たる瞬間は気持ち悪いだろう。
Distance(初回限定):Missingとは関係なし。相手がカードを混ぜ、選び、もう一度混ぜた状態からあてる。セット面倒だけど優秀な不可能パズル型マジック。
MirrorとHunterは、どちらも現象としてかなり気持ち悪いし、原理の応用としても面白く、出来は悪くない。というか良い。とても作業っぽいけど、作業っぽいけども、悪くない。ふつうDistant Keyから想定しないような現象で、こういう展開案を出せるのは凄い事です。
文章直して、Distant Keyの応用現象集 冊子として売れば良かったのにね。それだったらとても評価されたとおも
あーそれでも、この作品点数で2500円は、ちょっと、ないかな。
追記。
ところで、このタイプの手法を”観客に混ぜさせた”と謳うのは、すごく違和感有ります。
Six Impossible Thingsの時にも似たようなことを書きましたが、多くの手順は、どうにも制限がありすぎて堅苦しく、「私があれだけ混ぜたんだからもうどこにあるか本当に判らない」と観客に思わせるに至らないような気がします。
というか観客に混ぜさせてなお当たる、って書かれていたら、普通「選んで戻した後、混ぜる」と思いますよね。Missing 予約しちゃったのは、それを可能にする新原理を期待してたのです。大変に残念でした。
まあ、よく見たらそこは「紛れ込ませて」としか書いてないので、それは私の迂闊であり、逆恨みに過ぎないのですが。
2013年12月3日火曜日
Red Light: "Cards on the Table"
ほんとうならば、
ブログタイトルにも掛けて盛大に、
We Are Officially Greenlit!!
とでも叫びたかったところです。
しかし翻訳許可を求めたところ、
残念ながら、Sadowitz氏の答はNOでした。
というわけで、こっそりと8割方 訳してはいたのですが
Cards on the Tableの翻訳はストップです。
いや、一応最後まで訳しますが、これが世に出ることはありません。
法の抜け道的な物も考えなくは無かったのですが、
これが原作者の確固たる意思なのですから、
やはり私はそれを尊重しなければと思います。
気になる方は、是非、ご自身でお手にとって確かめてみて下さい。
非常に面白い作品が詰まっています。
ページ数も少なく、英語も平易です。
本書と、あとCard Zonesに納められた作品だけしか、
今は容易に手に入りませんが、
それらが後世に与えた影響は絶大です。
あるいは、もしどこかでお会いする機会があれば、
一つ二つ、演じれなくもないよう研鑽しておきますので、
お声かけください。
では。
2013年11月14日木曜日
"Small World" Patrick G. Redford
Small World (Patrick G. Redford, 2013)
引き続き、Out of This Worldのe-book。
そういやPrevaricatorは面白かったよなあ、と思い出してP G. Redfordのサイトを再訪したら、彼もOut of This Worldの冊子を出していたので購入。
こちらも少枚数&複数段だが、大分イメージは異なる。章題が凝っているので、とりあえずそれを引き写すところから始めてみよう。
Contents
The Man Who Sold The World (Introduction)
Tiny World (6 Cards)
Small World (10 Cards)
Mad World (10 Card variation)
Perfect World (10 Card Number Match)
Unexpected World (Prediction with 10 cards)
Full Routine
Bonus
Opposites (still) Attract
Wild World
Practical Applications
Addendum
Charlier Shuffle
Afterthoughts
It's the End of World
ホントーにこんな具合で二色刷になっているのだ。解説図のカードも赤黒表記。まあグレースケールで印刷して読んでたので、あまり関係ないけど。
少枚数で特徴的、とSeparation Anxietyで書いたが、後で調べると思ったよりは作例があった。Henderson/Armstrongの他に、Alex Elmsley、Michael Skinner、J.K. Hartmanなど。
しかし、ここまで刈り込んだ物は珍しいのではないだろうか(*)?初段は3+3のたった6枚、次も5+5の10枚で本当にTiny で Small。
3段からなる、相手にじっくりと"選択"させる手順。先のSeparation Anxiety内で、Out of this Blah Blah Blahの欠点として、10枚ずつに分けるのは直観的に困難、という話をしたがここでは何せ3枚or 5枚なのでその問題はクリア。
またスイッチのぎこちなさも、相当程度クリアになっている。手順の中間というか、比較的半端なところで唐突に”急ぐ”必要がある他の作例に較べ、3枚では中間が存在しない。そして3枚で既に一度現象を見せているため、5枚時にやや急いでも不自然は減じている。
さらに3段目では、観客が自由にカードを入れ替えた後、見ると数字の並びが一致しているというクライマックス。
元来、複層化された手順が好きなもので、これはかなり好み。
最終段に"Perfect"で畳みかける所もよい。が、ここの手法がいまいち。元々4枚用の策略を無理矢理5枚に当てはめているため、かなりごちゃついている。コンセプトは良いのですがね。Swindle Moveもちょっと違うしどうしたものか。
総じて面白く、"選択させる"演出が行ける人なら買って損無し。僕は断然好き。
ただし最終段はそのまま行うのはきついと思う。演者の負担も急に増加する。
variation手順はスイッチがちょっと違う程度の改悪で特筆することなし。
おまけ手順も少枚数Out of this WorldをQKで行うもので、さらにJを増やして同性のペアができてしまったりとかあるがこれも特筆するほどの事はないだろう。
*Behr Fileにあたったところ、どうも4+4の8枚は有るらしい。
2013年11月13日水曜日
"Separation Anxiety" Bruce Bernstein
Separation Anxiety (Bruce Bernstein, 2013)
Bruce BernsteinによるOut of This Worldのバリエーション単品ノート。実体版もあるらしいのですが、送料が嵩みそうだったので僕はe-book版で購入。
Out of This World、好きなんですがなかなか良い”答え”が見付からない。素晴らしい現象なんですが、ハンドリングもプレゼンも、あと一歩、消化しきれないところが有ります(*)。それで面白そうなのを見付けるとついっと手が伸びる。
ましてや、Bruce Bernsteinの作ですからね! 氏のUNREAL は、色々あって途中で置いてしまってますが、とても凄い本でしたのでこのSA も結構期待です。
ということで2段からなるOut of this World。現象の説明は今更でしょう。特徴的なのは、2回繰り返すこと、使用枚数が少ないことでしょうか。10+10で20枚。
カード構成はJon Armstrong/Brad HendersonのOut of This Blah Blah Blahと同じで、実際に相当意識しているらしく本文中で何度も言及されています。BBBは良い手順だけどここが難しい!その点SAは、みたいに仰られるのですがまあどっちもどっちかなと思う次第。正直大差ない。
BBBは、観客がちゃんと10枚ずつに配り分けるように、じっくり選択させていく手順。カードは演者が配ります。一方のSAは、完全に観客に渡してしまい、適当に配ってもらえます(適当に分けたはずなのに10枚ずつになってる!というちょっとしたおまけ現象あり)。
意識的なBBB、無意識的なSAという感じでしょうか。
スイッチ段を除けば、構成はSAの方が洗練されているような気もしますが、絶対的な優位性という程ではなく、どちらの演出が自分に合っているかという問題に集約されると思います。あとSAはちょっとした細工が必要です。逃げる必要のない細工なので個人的には許容ですが、人によっては嫌うかも。
ただBBBの20枚のカードを等分に分ける、という作業はなかなか面倒に思います。1つ2つ3つ、たくさん、と言いますかマジカルナンバー7的なそれと言いますか、非直観的な数量かなと。なので個人的にはSAの方がやや好み。
Out of this Worldの宿痾たるスイッチのぎこちなさは残るものの、前後段で編み込まれた構成の巧みさであったり、ハンズフリーな感じであったりが中々よい手順でした。演技時間も短めで済みますし、これはちょっと試してみたいです。特に構成によって生じる微妙なサトルティは、読んだだけだと、どれほどの効き目があるかちょっとピンときませんし。
ただ単品作品冊子・細工必要ということだけ留意した方がよいかもです。 またe-book版は動画埋込されているのですがBernstein氏は残念ながら下手です。動画では全く通用するように見えません。
*BBB対SAでも主眼になりましたが、誰が現象の主体なのか、その原理は?といったところが今ひとつ、僕の中で安定しません。透視?コントロール? うーん。
なお、手法はともかく現象としてはDerren BrownのUndertakerが最高峰であり異論は認めない。しかしながらDerrenレベルのオーラがないと、ただのチープなトリックに堕してしまうのでどうにも。いつか地下墓所で手品をする機会が巡ってきたら、トライしてみたいと思います。
2013年10月30日水曜日
"One In The Hand" Paul Brook

One in the Hand (Paul Brook, 2009)
UKのメンタリストPaul Brookによるコイン・メンタリズム。
(現実ではあんまり名前聞かないように思うんだけどネット上では)有名なメンタリストに多いのだけれど、たとえばJerome FinleyとかSean Watersとかね、このBrookもおまえそれ値段付け間違えてね?勢の一人。いやまあ自費出版の手品本なんて、価格は付ける側の自由だけれども、さすがに正体不明の方による80ドル700ページの本は手を出せないですよ。それも何冊もあるし。
ですが、まあ気にはなりますわな。
そんな中でこの単品作品は$30とお求めやすいです。まあ十分高いですが単品DVDでそれぐらいはするのでまあ許容範囲かなと。あと僕、この類のプロブレム好きなんですよね*。
現象:観客の前に、握った拳が出されている。相手に想像上のコインから一枚、好きなコインを言ってもらい、さらに片方の面に×印を書いてもらう。
演者が手を開くと、相手が選んだのと同じコインがそこに有り、ひっくり返すと正しい面に×印が付いている。
ってまあそんなことできるわけ無いんですよね。
少なくとも100%は。
色々なところから巧く組み合わせてきた感じで、各所にちょっとした工夫があり面白いです。解説も非常に詳細で、ドル、ポンド、ユーロの三種類を取り扱う丁寧さ。ただこの現象、確度は100%では無く、アウトがあります。そちらも詳細に解説されているのですが、問題はそのアウトありきのスタンスで始める必要があること。アウトと本現象で、現象が全然違うのです。つまり不可能性の高い予言(?)として十分に演出できない。
もちろんそういう後出しをうまくドレスアップするのがメンタリストの技術なのでしょうが。
アウトはいわゆるリーディング(占い)的な物。必ずウケるように、Reading+Factという構成を取っておりこの工夫も非常によい。
でも僕、Readingできません。
あなたが選んだ○円硬貨は~で、だからあなたは~みたいなトークが十分に必然でかつエンターテイニングなキャラクタしてないです。
そういう訳でお蔵入りです残念。
アウトを上手く変えれば、何とかなるかなあ。
原理はまあ想像の範囲を出ることはありませんでしたが、各所のちょっとした工夫は面白かったです。ただ円への適用、それから演出的な工夫について、けっこういじらないと演じるのは無理と思います。メンタル度が高い方向けです。
アウトのReadingが苦にならない人や、既にそういう手順を運用している方は、いろいろと面白い箇所があるでしょう。
でもまあ、他の本はいいかな……。
*Which Handエフェクトとその派生系。
Silver Swindle(Gerti 2.0) DVD、The Safran Papers(Boht)、Prevaricatorとか。
Prevaricatorは面白かったです。誰か面白いの知ってたら教えて下さい。
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