2013年2月1日金曜日

"Parallax" David Britland





Parallax  (David Britland, ? )


トポロジカルなカードマジック。およびおまけ数題。



収録は4つ。
・Parallax トラップドアカード
・Hatch22 トラップドアカードのギミック版
・Twisted Sisters カードの貫通。
・Lady notes Tearing a Lady in Twoのハンドリング改案(部分的)



またまたBritlandの単品小冊子。発行年は表記されておらず、調べてもよくわかりませんでした。たぶん85~86年くらい? Lybraryにはお世話になっていますが、発行年しかりレイアウトしかり、もうちょっとしっかりして欲しいところです。


今回のお題はトラップドア・カード。誰でも出来るかんたんマジック的な本でも良く取り上げられるので、わりと馴染みがあるのではないでしょうか。僕が持ってるのだとMichael Weber LifeSavers にA Better Mousetrapが載っています。あと氣賀 康夫 ビギナーズマジック にも素敵なのが載っていましたな。

カードの真ん中を四角く切って、一辺だけ残し、ちょうど開き戸のようにしてある。そこをつかんでもらっている状態で、カードの表裏がひっくり返る、とそういう手品。マジックというよりパズルの要素が強いですねえ。

原理としてはこれだけで、ほとんど付け足すような要素もなく、うえに上げたのも基本的にはプレゼンテーションや道具立ての違いだけで、現象面でのヴァリエーションはあまり知りません。このParallaxでもそこは同じです。

とはいえ、いまになってから改めてやり方を読むと、なるほど不思議だなあと。「表裏、どっちを持っているっけ?」と、各段階で執拗に聞くのは、現象がはっきりするだけでなく、折る時間をカバーできて良いなと思います。
追加手順Hatch 22は、本当に不可能物体になってしまう(戸のところだけ裏返らない)というもので、通常のトラップドアからスイッチして行うべきもの。

あともう一つ、Twisted Sisters。これがなんとも気持ち悪くてよかったのです。表と表が向き合うようにした2枚のQを、別のカードに挟み、押し込むと、反対から裏と裏になって出てくるという物。KrenzelのTunnelとかJenningsのClose-up Illusion、HarrisのBushwackerに似てるね。即席じゃないのが残念ですが、ブリッジサイズであればこの後Card Warpにも繋げられるし、面白いと思います。視覚的にとても鮮明で不思議です。
マジックってどうしても、「前の状態を覚えていないといけない」時間をまたいだものが多く、ストレスなので、これみたく、今まさに明らかに目に見えておかしい、という手品をもっと仕入れたい。ただどうしても仕掛け物になってしまうのだよなあ。
処理のためにもCard Warp等につなげたい所ですが、あまり資料を持っていません。Card Warp Tour を買うか……いやしかし。


改めてトラップドアというのも何ですが、7ドルの価値はありでした。良い刺激になって、面白かったです。
Lady Through and Throughの記事で当たりが無いとか言ってごめんなさい。カード作品集が実験的なだけで、単品ノートは基本的にどれも面白かったよ。


なお、読んでいて人称であれ?となって調べたのですが、Terri Rogersはトランスセクシャルだったのですね。知りませんでした。どうもMilo & Rogersとごっちゃになってたみたい。
そしてついでに調べた、そのTerri RogersによるStar Gateは一般的なTrap Doorを発展させた素晴らしい物でした。
Trap Doorに発展性ないとか言ってごめんよ。あのときTop SecretsMore Secretsを買っておけば良かったよ。

2013年1月23日水曜日

"オーディエンス・マネジメント" Gay Ljungberg 訳・米津健一





オーディエンス・マネジメント(Gay Ljungberg 訳・米津健一、2012)



日本では初(?)な一般流通の本格マジック理論書。


「株式会社 リアライズ・ユア・マジック」という胡散臭い社名に一瞬たじろいだが、マジックDVDの日本語字幕化などを手がけるスクリプト・マヌーヴァの元締めであるらしい。もう少し他に名前無かったのだろうかと思う。

同社によるTamarizのFive Points in Magic の邦訳と同時出版。Five Points はマジック・パフォーマンスにおける身体の使い方についての理論書。おそらく対として相補になるよう狙っているのであろう。こちらは演技それ自体、そして演技に臨む姿勢についての本である。
そこで大売れしたKen Weberとか持ってこないあたりが、まずなかなかおもしろい選択と思う。和訳されるまで存在知らなかったよ。理論本としてはどちらも良書なので、単純にページ数の問題かもしれない。本書は170頁程度の小冊子、理論書ではあるが他に比べればとっつき易い。

内容だが、前半は演技の作り方。演技技術とかではなく、ショー内容についてどうテーマ設計するかという話がメイン。具体的な話というよりも、ショーについての根本的な考え方、発想のスタートの仕方、発想の評価の仕方についてである。

後半は演者のあり方。演者自身のキャラクターの話もあるが、それよりも観客の選び方、問題のある客の扱い方、リハーサルの重要性などの実際的な話がしっかりしていた。

いちおうマジック全般にも通用する内容ではあるが、ステージの、特にキッズショーの多い人らしく、具体例はどうしても偏りがちなので少しぴんと来ないところもあったり。ただ内容はマジックにかかわらず広範なパフォーマンスに通ずるものであり、かの池田洋介さんが高く評価していらしたのも納得の内容。


オーディエンス・マネジメントということで観客に対する心理操作的な話かと思ったが、子供を走り回らせないとか、もっともっと実際的な話であった。理論部分では、いかに観客が楽しめる演技をつくるかという演技構築の根幹部分の話が多め。それ自体はよく出来ていると思うが、そこから実際までの間を埋める話は少なかったように思う。
楽しい演技とかそれ以前の問題として、Ken Weberが指摘したように”そもそも現象がよく見えない”マジシャンも、プロでさえ多数いる(らしい)ので、実践の内容が少ないのはちょっと残念ではある。


クロースアップがメインの趣味人にとってはやや乖離した内容だったが、実際に人前(特にパーラー以上)で演技をする人にとっては、マジックに限らず非常に面白いと思う。特に”お金を払っていない客”、”目的をもって見に来たわけではない客”、それらを含んだ環境で演技する人であれば一読の価値はある。
一方で、あくまでクロースアップがメインの趣味人にとっては、こう、かゆいところに手が届かない感じは否めなかった。マジック”そのもの”についての話は無い、と言ったらいいのだろうか。

あと、さすがに一般出版ということで、翻訳は流暢で、読みづらいとかそういう事は一切無いのだが、どうしても、英語での演出・やりとりを日本語訳した箇所は奇妙な感じがする。例題が精彩を欠いているのはそのせいも大きいのではないか。言語の壁はやはり大きいと思った。


最後に、これは書評ではなく単にちょっと面白かった箇所なのだけど、訳注が非常に詳細でありがたい本書、ゲーテにまで注釈を付けていたのはさすがに丁寧すぎるだろうよと思わなくもなかった。

2013年1月20日日曜日

"A Lady Through and Through" David Britland




A Lady Through and Through (David Britland, 1984)


David Britlandの小冊子。Lybraryで購入。
もうなかんべと思っていたが、最近また何冊か現れた。まとまった作品集ではない、例えばこれのようなのとか、ホーンテッドデックとか、そういう単品ノートはまだまだ結構あったみたい。


この冊子は貫通現象×2。
いずれもカードがカードを貫通するもので、作品はそれぞれApril、Juneと月名でありつつ女性名というちょいとセンスのいいタイトル。ついでに表紙もセクシー。

April:Qを、別のカードがするりと貫通する。折ったりなどせずノーカバー。Qの表面に溶け込むようにして貫通。一応、検めも可能。

June:スリットの空いたカード2枚で、カードを挟む。スリットに別のカードを差し込むと反対側から抜けてくる。もちろん、挟まれたカードは無傷。


どちらもギミック自作。うーん、今ひとつであるなあ。前者はきわどい。ノーカバーなので当たり前だが、限りなくぎりぎり。後者は貫通がわかりにくい。一般的な貫通物はペンなどを”直角に”突き立てるけれど、Juneでは全て同じ平面になってしまうので、今ひとつ貫通したっぽさに欠けるように思う。反対側も見せられないしなあ。

というわけで今ひとつでした。ふいと思い出したが、貫通2連続、しかも一つはノーカバー、もう一つは挟み物といえば、泡坂妻夫魔術館の一夜 所収の「影のごとく」「ジャンボペネトレーション」だなあ。ペネトレーション物は殆どしらないので何とも言えないけど、Britlandと泡坂妻夫なら泡坂先生の作品の方が断然おすすめです。魔術館の一夜は絶版だけど、まだまだ中古がお安く買えるので、未読の人は買っておいてもいいと思うよ。小ネタばっかりだし記述も癖があるけど、個人的には東京堂の泡坂妻夫 マジックの世界よりも好きだったり。

しかしBritland、思い返すとコレ!というアタリ作品は無いような。それでもついつい買ってしまうのが自分でも不思議。実験的でありつつも、品の良い洒落た感じが好きなんでしょうか。

2013年1月19日土曜日

"Secret Agenda" Roberto Giobbi





Secret Agenda (Roberto Giobbi, 2010) 


Giobbiといっしょに一年間。


カードカレッジ でおなじみ、碩学Giobbi先生のちょっと変わった御本。
各タイトル毎に日付が振られていて、それが365+1タイトル、つまり日めくり式みたいになっている。一日1タイトル、一年掛けて読破せよって事らしい。

それでまあ去年の1月から読み始めて、途中までは、ほぼ正確なペースで読んできました。10月くらいで一度中断、積みに入ったものの、先頃まとめ読みして何とか1年+数日で了。
いやーしかし1年も経つと、最初の方の話とかすっかり忘れてますね。


あらためてざっと読み直した上でレビュー。
内容は、エッセイ、技法、手順、逸話、クイズ、アイディア、ギャグ、記念写真などなど何でもあり。古くなったコニャックの飲み方とか、将来自分のお墓を作ったときの碑銘案とかそんなのまである。
各タイトル1~2頁という事で、基本的には小物。トリックも小品メインです。ビジネス的なアドバイスとか、テーブルへのアプローチの仕方とか、そういう読み物系統が多かった印象。マジックそのものの話はあまりしていないような……。実際に道具を持って手を動かすような記事は30%あったかなぁという感じ。ちなみに僕が「ああコレは覚えておこう」と思ったネタ物は30タイトル未満、10%以下でした。

カードはあんまり得る物がなかったというか、Card Colledge 5 のレビューでも書いたけれどGiobbi先生けっこう独特なのです。トップスタック・コントロールなど、シャッフル組み合わせの記事が複数あったので余計に今ひとつの印象。個人的な好みとして、シャッフルのコンビネーションにはあまりそそられない。
特に単枚数コントロールではそうですが、どれだけDeceptiveにシャッフル・コントロールできたとしても、マジシャンが触っている時点で「コントロールしているかも」という可能性は生じると思うのです。だからといって、おざなりで良いかと言えばそういう訳では無論ないのですが、それぞれの手法の違いとか利点が見えにくいので、いまいち入れ込めません。

閑話休題。

で、駄目な本だったかと言えば一概にそうも言えない。
テーブルに置いたデックを綺麗に取り上げる方法、とか、たくさんあるデックの整理方、など普通のマジック本ではお目にかかれないような、些末だけれど面白いTipsがあったり、マジシャンにしか通じない超内輪ジョークがあったり。

『ヘイ! スティーブ。エルムズレイの新しい4巻組DVDはもう見たかい?』
『もちろんさ。だけど、3巻だけ見れてないんだ。代わりに1巻を2回見てしまったよ!』
『HAHAHA!』 (Feb.18)

みたいなのとか。あ、訳は適当です。

中でも僕は、Aug.16のワイングラス・ベンディングが非常に気に入りまして、さっそく持ちネタに取り入れました。使いどころは限定されるし、実を言うとマジックでも何でもない小ネタですが、これだけで一冊読んだ時間は報われたかなあと思っています。
また以前、Lennart GreenがTEDでのパフォーマンスで使っていたネタを、個人的に盗用していましたが、本書のOct.15にてめでたく文書化されたので、誰を憚ることもなく使用できるようになりました。うれしい。
それから。Jun.29のBreast Pocket Ployは、出来ない服もありそうなものの、胸ポケットの口を開けておく手法としてはコロンブスの卵のような出色の方法でした。ただあまりに良い手法なので、ひょっとしたら僕が知らないだけで、割と一般的なのかも知れません。John Carneyの案だそうです。


そんなわけで、当たりは少なく、実用的な物となるとさらに少ないのですが、一方で必ずひとつふたつは大当たりが出てくるんじゃないかなーと思います。それが技法か、ギャグか、格言なのかは人それぞれになるでしょうけれども。


平均を取ると、どうにも退屈という評価になってしまいますが、益体もない(と思えてしまう)文章をだらだら読みながら、たまに判る話に出くわすとこれがはっとするほど面白い、そんな本でした。まあ言ってしまえばブログであるな。紙ブログ。


なお、本自体はやや四角に近い変形版、ダストジャケット無しの布装、箔押しも金と白の2色というとても素敵なもので、背も美しく、デザイン的には言うこと無しです。

最近出たConfidences も気にはなるんだけど……、やっぱりGiobbi先生とは相性が良くないみたいだし、しばらく見送りかなあ。

2013年1月6日日曜日

わたしの好きな本




色々と積んだままに新年を迎えてしまいました。明けましておめでとう御座います。



ただ積んでいるだけで無く、読みかけで放置しているのがかなり有るのが、我ながらたちが悪い。読んだけど記事が書けていなくて放置というのも何冊かあります。やれやれ。


それらについて読んだり書いたり練習したりすべきではありましょうが、ここでは全力で現実から逃避し、あまり頭を使わないまま私の好きな本Best 5を短評と共に挙げてみます。いちおう完読済みの「本」体裁の物のみ。なおBest 5ですがその中での順位はありません。



"Card Fictions" Pit Hartling
 拙ブログでも取り上げましたし、最近になって和訳もされてしまいましたが、最高度のカードマジック本。それ以上、言うことがありません。


"Mysteries In My Life" René Lavand/Richard Kaufman
 ひとつのアクトを完全に描写しきった希代の書。片腕のマジシャンにして詩人、René Lavandの演技に触れられる数少ない機会です。氏は演出がすごいのですが、スペイン語話者なので中々わからないのです。最近、DVD MAESTROが出たので迷うところではありますが、トリネタは本の手順の方が好きです。


"52 Lovers 1,2" Jose Carroll
 スペインのJose Carrollのカードマジック本。もし魔法が使えたら、かくもあろう、という奔放で夢溢れる現象にうっとりとなります。カラーチェンジひとつとっても、ピンに串刺しにしたカードが変化する、グラスの中に入っているカードが変化する、といった具合。Dai Vernonに"スペインのマドリッドにはとんでもないカードマジシャンが3人もいる、Tamariz、Ascanio、そしてCarrollだ"と言われながらも、現在、その作品があまり知られていないらしいのが残念です。
 ただ西語圏ではやはり有名なようで、近年のスペイン勢の台頭とともに、氏の代表的な作品Reflectionの現代的なハンドリングが見られたのは嬉しい限りでした。これなら!がんばれば できる!かも!


"Life Savers" Michael Weber
 現代のほんとうの魔法使いが身につけておくべき魔法の本。身の回りの物をつかった、シンプルでクリアな不可能。こういった即席(風味)マジックの本はもっとあってしかるべきと思うのですがなかなか。即席、とは言っても、破った雑誌を元に戻したり、指を弾くと火の玉がとんだり、あげく時間を巻き戻したりと、本当に魔法のようです。
 なお、先のコミケで配布された冊子「週末マジシャンまいけるウェーバーZ」はWeber氏とは一片たりとも関係なかったのが残念でした。まあ告知ページで氏の未見の動画が見られたからよいか。


以上。
あれ、4冊だ。
次点としてはいくつかあるのですが、あと一歩抜きん出るものがなかった感じです。
特にメンタルは、数を収録する本だとどうしても重複して退屈になりがちで損をしているような。
名前だけ挙げておくと、

"The Magic of Ascanio" Etcheberry/Artudo de Ascanio
"The Mental Mysteries of Hector Chadwick" Hector Chadwick
"Absolute Magic" Derren Brown
"Cards on the Table" Jerry Sadowitz
"Relfections" Helder Guimaraes

といった所でしょうか。
なお、影響を受けたという所で言うと、

"Mind Myth and Magick" T.A. Waters

が非常に忘れがたい本です。この本の話もまたいずれできればと思っています。

2012年12月26日水曜日

"The Paragon Move" Lewis Jones





The Paragon Move (Lewis Jones, 1992)




Lewis Jonesによる汎用技法Paragon Moveと、
それを用いたトリックを10コ。


名も知らぬ本である。
何で買ったのか、と言われればまあ、二つほど理由はある。
ひとつは今をときめくAragonの本でも買おうかと思って検索したらヒットしたということ。もうひとつは著者であるLewis Jonesの本Seventh Heavenを、あのIan Rowlandが褒めていて、ちょっと気になってたこと。

ああ、あともう一つ。
何となく技法に飢えていたのである。
たまにあるよね?


それで、JonesのParagon  Moveだが、うたい文句も華々しく、フォース、スイッチ、キーカードプレイスメントグライド、ラッピング、スチールに使用でき、現象はマッチングからOpen Prediciton、電話越しのトリック、ブックテストまで収録されている。

でもね。
それって言い方次第でさ。たとえばダブルリフトであれば、もっと広範な用途に使えると言っても良いわけで。
うんまあ何が言いたいかというと別にブックテストにトランプ使う必要は無いよ。特にトランプでマジックが一つでも出来る人、あるいはそう思われている人は。まあOpen Predictionとかは割と良かったのですけれども、使用できる現象の幅広さはわりと卑怯であるというか、全体的に、別にParagon必須とか、Paragonによる改善効果たるや、って程でも無いのだ。

そのうえParagon自体が簡易なMoveで有るくせに、手順はパーム使ったりして難しい。ちょっと見ないパーム保持でそこは少し面白かったけれどね。

作品自体は可も無く不可も無く。ちょっと理由の不明な回り道があったりするものの、ハンドリングが見えない綺麗な手順。ただ、綺麗ではあるのだが、予想を上回ったり予想を超えたりする箇所は無かった。


で、Move自体なのだけれど、これはKelly Bottom Placement/Ovette Master Moveから展開する技法。発展ではなく展開なのがポイント。

ぼくはあまり、というか殆ど発想力に恵まれた人間では無いのだけれど、それでも本書で解説されているのに似た動きはした事がある。なので、少し慣れた人なら絶対にやった事はあるはずであり、またその特別な用法が示されるわけでもないので、正直うん、読まなくて良いよ。この技法をこういう名前で発表した人が居たんだなあというくらい。


悪い技法、用法では無いが、あえて洋書にまで手を出して読む必要は無いかと思う。ただし初心者用の本などに収録されてあれば、けっこう便利で、マジック習得の一時期にお世話になったかも知れない。実際、似た技法はたまに使ったりする。
ボトムパームの速さと、あとStrokeっていうGlide的使用法はわりと良い。

技法の簡素さに較べて、手順はわりと度胸を要求されるので、その点でもちょっとバランスが不思議。誰に向けて書いた本なのだろう……。

2012年12月19日水曜日

"Cards on the Table" Jerry Sadowitz





Cards on the Table (Jerry Sadowitz, 1989)


奇人Sadowitzのカードマジック作品集。



Sadowitzはイギリスのマジシャンでありコメディアン。マジック界では、作品盗用についての偏執狂的な言動で知られるようになってしまいました。一部、彼と仲の悪い人々からは狂人扱いされたりもしています。
実際、Sadowitzのサイトなり、彼が発行するCrimp Magazineの表紙なりを見ると、かなり危険な空気が感じられますが、一方で作品自体の評価はとても高い。
日本では、実践カードマジック事典にMr.E.OZO名義の作品Out of Sight が載っていますがこれがまた素晴らしいのです。ただこれ、無断で掲載したみたいで、こういう諸々がSadowitz氏の他の作品に触れることを一層困難にしてしまっているわけなのですが……。

残念ながら、それやこれやがあって、Sadowitz氏は現在、極めて限定的にしか作品を発表していません。前述のCrimpも入手困難です。いまでも一般的に手に入るのは、このCard on the TableCard ZonesCards Hit などの冊子を合本、Peter Duffieとの共著)の二冊。
このCard on the Table、裏表紙には”彼の最初のハードカバー本だぜ”とか書いてあったのですが、私が入手したのはソフトカバーでした。2003年の復刊版だからでしょうか。ちょっと損した気分でありつつも、自らがハードカバーだと主張するソフトカバー本という撞着した物体に奇妙な愛着も覚えつつあります。
あとLybraryでe-bookも出ていますが、Sadowitz氏は、Martin Breeseに許可したのは実体版の販売のみで電子版は契約違反だと言ってたハズなので、e-book版の購入は控えました。

さて本書は二十と少しのカードマジック+技法を解説した本。
いやねえこれがめちゃくちゃ面白かったのですよ。比較的クラシカルなプロットに対して、どれも面白いアイディアやひねりが加えてあり、実に不思議に仕上がっています。

アニメイト、カード当て、スペリング(?)+マインドリード、Out of This Worldの変種、トランスポジション、時間逆行(?)、トライアンフ、財布に通うカード、ギャンブル、Out of Sight Out of Mind、ユニバーサル、トーンアンドリストア、マリッジ、ピプスの移動、アンビシャス、カード To ポケット、エスティメーション。

もうほとんどの現象を網羅している気がします。その上で、7~8割方が身につけてみたいと思わせる内容。なかなか無い事ですよこのクオリティ。

二つ三つ紹介を。
Aces in King 赤と黒のAのトランスポジション。でもAだけだと、畢竟、持ち替えるだけで交換できる。それじゃあ簡単だから、と、どんどん条件を足していく。まず赤のAは赤のKの間に、黒のAは黒のKの間に挟む。さらに赤はデックの中に入れて触れなくしてしまう。この条件下でも、黒のパケットがデックに触れた瞬間、黒のKから赤のAが現れ、デックを広げると赤のKの間に黒のAが挟まっている。
自分でハードルを上げていく辺りのセリフとやりとりが面白くて、お気に入りです。

The Backward Card Trick 一般的なカード当てを逆回しで行う。観客のカードを当ててから、観客にカードを引いて貰う。奇妙。

The Healers 破いたカードをQの間に挟むが、次の瞬間には元に戻っている。現象自体と処理が並列して行われ、ほとんどエンドクリーンなのが素敵です。

Name A Card Triumph 選ばれたカード、ではなく、相手が言ったカードで行うトライアンフ。Benjamin EarlがDVDで似たことをやっていますが、Sadowitz氏は自分へのクレジットが不十分だとえらくお怒りでした。

こんな感じでどれも面白いのです。こういう”不思議さ”やプロットとしての”求心力”のようなものは、プロとして実際に使う手順だからこそでしょうし、またセンスに依るところも大きいでしょう。すっかりファンになってしまいました。
ハンドリング、現象、演出に不合理な点が少なく、そこも好みです。

手法としてはターンノーバーパスや、ダブルディール、ボトム+トップのターンノーバーなどが多く、なかなか難しいものもあります。また解説されていない技法もあるので、ある程度の知識がないと大変かも知れません。
全体にWaltonの影響が顕著ですが、個人的な感想としてはWaltonよりもSadowitzの方が格段に面白かったです。
これは私自身の読み取り力と、Waltonの非常に簡素な記述スタイルのせいもあるのでしょうが、ひねりもアイディアも単発ぎみで実験的なWaltonより、それをしっかりとしたプレゼンテーションと構成でマジック仕上げているSadowitzの方が即戦力であるのは間違いないです。
なんで、Complete Walton 復刊の報も聞きましたが、まずはCards on the Table を手に取ることをお勧めします。決して、古本で集めた直後に復刊とかやめてくれよ、とかそういう僻みではありません。


という訳でSadowitzのCard on the Table でした。面白かったー。正道から外れた、ちょっとひねくれた感じがあるのですが、そのひねりが相手の興味を引くような形で上手く演出されているのが良かったです。
カードの本というとPit HartlingのCard Fictions という実にどうしようもなくハイレベルな本があって、それを超えるのは非常に難しく、このSadowitzの本もあれほどの不思議ではありません。手法もプロットも、一般的なカードマジックの流れにあるため、マニアも引っかけられる作品というのはあまり多くはない。
けれど、だからこそ、「いわゆるカードマジック」の本としてはCard Fictionsより優れていると言ってもよいかもしれません。

こういう本こそ和訳してほしい、なんなら和訳したいくらいなのですが、Sadowitz氏にこのあたりの話題を振る勇気は持ち合わせていません。

2012年11月29日木曜日

"Card College volume 5" Roberto Giobbi





Card College volume 5 (Roberto Giobbi, 2003)



碩学 Giobbi の開催するカードカレッジ最終巻。



このシリーズ、邦語版も4巻までは出ているのだが、最後の1冊は現在でも未訳のままである。日本語版の4巻刊行が2007年、これだけ待っても出ないのだから、たぶんもう出ることはないのだろう。リファレンスなどにも良く使用され、読み返す事の多いシリーズなので、できれば日本語がよかったのだが仕方ない。あきらめて英語版を購入した。

少々さかのぼって、カードカレッジそのものの紹介から始める。
著者のRoberto Giobbiはカードを得意とするプロのマジシャンであり、怖ろしいまでの勉強家としても有名である。多言語国家スイスの生まれ、マジシャンになる前は翻訳家をしていたというその技能を現職でも存分に活用し、有名無名の種々書籍はもちろんのこと、マジックの定期刊行誌も5~6ヶ国分は購読しているというからとんでもない。

そのGiobbiがカード大学の名で展開したのがこの一連のシリーズ。本編 全5巻と、セルフワーキングのみで構成されたライト・シリーズ全3巻の計8巻からなっている。
本編は、そもそものカードの持ち方、配り方、めくり方から始まり、シャッフル、ダブルリフト、パーム、カルから、果てはGreenのAngle Separationのようなマニアックな所まで押さえている。マニアックとはいえ、Krenzelの謎技法(Two Card Fan Lift Switch Reversal Palmとか)のようなものはなく、どれも使いどころは広い。ある一定区分の技法毎に章分けされており、章末にはその技法を使ったトリックがそれぞれ2、3品解説されているのが普通だ。
この本の内容をマスターすれば、それだけで世界のカードマジシャン上位20%に入れるというふれこみであり、その謳い文句がおそらく正しいという、とんでもないシリーズである。

かくも凄い本ではあるが、決して無条件に薦められる本ではない。目的が目的だから仕方ないのだが、殆どが技法の解説に費やされていてトリックはごく少なく、特に一巻のみだとその傾向は顕著である。カードカレッジだけからカードマジックが出来るようになるかというと、個人的には少しく疑問だ。比喩としてあまり適切でないかもしれないが、文法書だけでは外国語の小説が読めるようにならないのに似ている。
5巻を買ったのには、その間隙がこの巻をもって埋まるのかな、という興味もあった。

なにせ5巻は趣をがらりと変えて、その殆どがトリックの解説に費やされている。
解説されるのは34品のカードトリック。このために構成された物では無く、Giobbiのレパートリーからというのも期待が持てる。


結論から言うと非常に疲れた。
文字が小さいうえに、詳細なハンドリング解説も全手順でとなると流石に辛くなってくる。それぞれのトリックで焦点となる”コンセプト”だけを詳細に説明してくれれば、あとは勝手に応用するのだけれど。あるいは、単純な解説の後に、詳細な解説、という二段構えでもいい。全体像が見えないまま手順を微に入り細に入りやっていると、なにをやっていたのだか見失ってしまうし、手順を思い出したくても再読がしんどい。
ただしこれらについては、自分の語学力の問題もある。

もう少し本質的なところで問題と思うのは、トリックの全てがとんでもなくGiobbiタッチであり、かつそれぞれの完成度が高い点だ。Giobbiは一見するとクラシック主義、オーソドックスで美しいハンドリングなのだが、優等生のようにみえて実際は非常に個性的であると思った。
別所で読んだが「デックは可能な限り手から放しておく」というのが氏のルールとしてあり、同様に演技中に使う個別のカードもテーブル上に置くのを好む。スイッチはトップチェンジが多く、カウントよりもフォールスディール。
ここまでくれば判ると思うが、いまどき流行のマジックとはハンドリングの基底にある概念がかなり異なるし、難しい。単純に技術的な面もそうだが、これを平然と行うタイミングを作り出すのが大変だろう。
また微に入り細をうがつ説明によって、かえって手順に手の加えようが無く、息苦しい。

むろん、内容自体は一級品だ。
即席からしっかりした4A手順、メンタルにギャンブル、また最終章ではカラーチェンジングデックやルポール封筒も扱う。プロダクションやキッカーエンディングとして4Aの出現頻度がけっこう高いので、できれば4Aメインの手順がもう少し欲しい所ではあるが、総合的には実にヴァラエティに富んでいるし、スライト物から数理ものまでアプローチも幅広い。
ただしどれもGiobbiタッチ。

特に面白かった物を挙げよう。
・Knowledgeble Card, Coalaces Hofzinser Problemに基づいた2手順。どちらもあまり見かけない解法。一つはAがテーブルからほとんど離れない。もう一つはA4枚が1枚の選ばれたカードに変化する。
・Study for Four Aces 松田道弘べた褒めのChrist's Aces。確かに美しい。ただこれやGemini Twinsの改案なんかは、Bannonの方がより面白かった印象。
・The History of Playing Cards これは何というかちょっと凄い秘密だった。Giobbiならではというか、残念ながら日本語では出来ないが、うんちくとしても面白い。
・Fantasist at the Card Table 壮大なギャンブルデモ。さまざまなゲームでデモを行い、かつわかりやすい。手順が統一されていて簡単なのも良い。
・Happy Birthday Card Trick ハッピーバースデーを唄うとカードが出てくる。手法だけ見ると単なるスペリングトリックだが、こういうのを咄嗟に使えたらかっこいいだろうなあ。
・A Cardman's Humor 最終章が咄嗟の台詞やジョーク集になっている。文化に依存しない物を選考したとのこと。さすがに文法から違うとなかなか難しいが、"The cards are normal, but the magician is not"とか格好良すぎる。使う場所が無いが(笑


さてつまるところ、Giobbi個人の作品集なのだ、これは。
カードマジック事典後半のような、これまで学んだ技巧の発揮の場としての傑作集・素材集ではない。講義はまだ続いていて、いやむしろ基礎講座が終わってようやく、今度こそGiobbi先生の独演会が始まった感がある。
Giobbiの手順や構成に興味のある人は、買えばよいけれども、単純にカードマジックを、というのであればもっともっと刺激的な選択肢は他にある。Giobbiは比類無き知識の人であり、熟達した技巧と構築の人ではあるが、奇想の人では無い。
東京堂がこれを訳さなかった気持ちも、わからないではない。

また(一応)5巻で完結のはずなので、最後にひとつ結びの文句でもほしかったが、そういうのもなかったのでなあ。ざんねん。

2012年11月13日火曜日

"The Amazing Sally Volume 1 佐藤喜義作品集" 佐藤大輔






The Amazing Sally 1(佐藤大輔,  2012)




買いました。アンダーグラウンドの創作家、佐藤喜義の作品集第1巻。選りすぐりの15作品を解説。

カード14、コイン1、まあ作品内訳はべつにいいでしょう、ショップとかで見られるし。


紹介文で、”独自の世界観を形成している”というような記述が有りましたが、そのとば口として非常に考えられて構成された本であるなと思いました。

まず収録作が極めて少ない。創作家の作品集というと普通、JenningsしかりHartmanしかりWaltonしかり、とかく大ボリュームですが、実質、玉石混淆の状態になりがちです。その点、本書は点数こそ少ない物の、それぞれが、あるプロット、あるテーマ、ある仕掛けについて極限までバージョンアップさせた物になっていて、おまえこれ昨日思いついたんじゃねーのかと文句を付けたくなるような品は一品もない。どの作品も非常に深くまで作り込まれていて噛むほどに味がある。
ほとんど同一のハンドリングの作品もあったのですが、それはそれで、バリエーション毎に見え方が全く違っていて、改案手法などを考えさせられる物ばかりでした。


解説の筆を執るのはご当人ではないのですが、それが良い方に作用しており、微妙な箇所には突っ込みなり補足なりが入っていてわかりやすい。またクレジットも文句なしに詳細でした(※)。邦訳がある物は原著・邦訳版が併記されていて実に親切。


ただ、作品は、あくまで「トリック」と割り切られている印象。作品レベルはめちゃくちゃ高く、やっていて面白いし、マジックの友人を引っ掛けるには間違いなく即戦力で申し分ないのですが、一般の人に対して上手く見せるには難しい所も多いと思います。
夕暮れのステラが良い例ですが、「AとQが入れ替わる、重ねると表裏交互に混ざる、交互になったペアはマークが揃っている、さらにQの裏色が変わっている」。正直なところこれをどう演じれば良いのやら僕レベルの演技力では手が出ません。単なるびっくり箱にしかならない。

もちろん、不要であれば、演出力が追いつくところまで現象を削れば良いのですし、逆にこういう可能性を示してもらっているので、例えばトリネタにステラではなく、ステラの後にQの裏に「おしまい」の文字を出すというようなアレンジも可能なのでむしろ有り難くはあります。

ただ技法云々とは別のところで、初心者向きでは無いなーと思いました。
BannonのTwisted Sistersのような難しさと言ったら通じるだろうか?


噂のタウンゼント・カウントはカウントというよりディスプレイに近いモノを感じました。2回カウントせずともラフに両面見せられるのも良く、堅苦しいパケットトリックが急に軽やかになる印象。
現象面での効果も凄かったです。一読では見逃してしまいそうなカウントであり、実際カウント事典で読んだはずが全く覚えていないんですが、たった一面の差がここまで利くかと驚きました。
特にブラック・ポーカーは、自分でも不思議。他と違い変化が連続体であるというか、現実が歪むような感覚。普段なら扱いに困るギャンブル系ですが、裏色変化とは非常に相性が良いので、ElmsleyのA Strange Storyなど参考にしつつレパートリーに入れようかなーと考えています。


このカウントは、今まであまり活躍の場もなかったようですが、ここで可能性が示されたことで一気に流行るかも知れません。その際は皆様、どうかスピリットカウントのことも忘れないであげてください。
同書では触れられていませんが、スピリットカウントもタウンゼントと類似の面構成であり、よりカウント色の高い技法。互換性は高いと思います。ミッドナイト・スローモーションなどは、最初はスピリットでもよいかもなあと思ったり思わなかったり。この2種のカウントは最近読んだブランク (タナカヒロキ)などでも活きそうです。というかブランク はマイナー技法を使わないという縛りがあったようなので、ご本人は使っているのかもしれません。


対談も非常に面白かったです。御本人の口調を忠実に再現しているらしく、実にざっくばらんで、お人柄が伝わるような気がしました。



ともあれ。
確かに異世界の片鱗を見ました。自分のように家から出ないタイプの人間だと、なかなか触れる機会もないもので、書籍化は実にありがたかったです。


なおVolume.1と有りますが、今回の売れ行き次第で続刊も、とのこと。市場規模が小さいのでたくさん出すのは大変と思いますが、ソフトカバーでもいいので続刊希望。特に、インタビューなど読むと「俺は元々コインマンだったんだよ」との事なのでコイン比重が高いのがいいなあ。

いやーしかし面白かった。佐藤総、こざわまさゆき、そして東京堂からは澤浩(予定)と個性的な作品集が上梓されている昨今、この勢いが続くことを願います。Sally 続刊が怖い。ついでに、タナカヒロキ作品集とかアフェクションズ合本とかも怖い。怖い怖い。



※Jack-robats(J.J.J.J.Card Routine, 1985)はJACKROBATS(Deckade,1983)とは別ハンドリングなのでしょうか? 前者持ってないので何とも言えませんが。

2012年11月8日木曜日

”アウレリオ・パビアト レクチュアノート” Aurelio Paviato






アウレリオ・パビアト レクチュアノート(Aurelio Paviato,1989 ,前田知洋・訳)




マジックランド刊のPaviatoのレクチャーノート。大好きなんですよPaviato。氏のFISM Actは、比較的クラシックな手順にもかかわらず、初見ではまったく追えずに手ひどく幻惑されました。一歩先を行く巧妙さ、タイミングのずらし方などは何度見返してもほれぼれするほどで、氏の理論背景について著作を読んでみたいと長らく思っておりました。

で、なかなか扱っているお店がないこともあり遅くなってしまいましたが、先頃ようやく入手しました。邦語ではおそらく唯一の文献。洋書ではCarte E Moneteというまとまった本があるらしいのですがさすがにイタリア語には手が出せない。英語でもレクチャノートぐらいはあると思うのですが今まで見たことはないです。

で、内容に関してですが不満。

このレクチャーノート、技法二つ、手順二つ、エッセイであわせて12pと小ボリューム。
手順はサインされたコインで行うCoin Cutと、Fism Actでも演じていた3枚のコインの消失と出現。残念なことに手順は簡易な解説で、バニッシュ技法の解説などはなし。あの気持ち悪いレベルのヒンバーバニッシュ、なにかPaviato流のTipでもあるのかなあと期待していたのですが。

全体的に記述が散漫というか、文章構成が練られておらず、何を解説したがっているのかわかりにくい。議論としても重要なポイントが抜けていて、筆者の意図をくみ取るのにちょっと手間がかかります。

特にこのノートで最も重要な箇所であろう”手の検めについて”は、Paviatoがレッドへリングを用いて観客の思考を誘導するスタイル(未読ですがTamarizの言うMagic Wayと通底すると思われる)という知識がないと、この人は何を言いたいのだろうなあという感じ。
単純に僕の読解力不足もあるのでしょうが、どちらの手から検めるべきか、両手を検めるべきか、という点について、少なくとも文章だけでは議論がきわまっていないと思いました。
まあFism Actとか見返しながら読み直すと、氏の言いたいことも判ってくるのですが。

もちろんレクチャーノートってのは、その場で実演を交えて解説された物をあとで想起するためのメモ、という程度の役割なので、これはお門違いの難癖といわれても仕方ないですけれどもね。


あくまで副読本だと割り切れば、なかなか良かったです。じっくり読むといろいろと判ってくる。せっかくなのでもう一度くらいは読み返しましょうかね。日本語なので読むの自体は楽ですし。


しかし、もっと練られた文章で、
もっとたくさんの題材でもって、いろいろな話を聞きたかった。


イタリア語も勉強するしかないのかなあ。英語もままならぬというに。
スペイン語である程度置換可能とは聞くので、やはりネックはスペイン語なのだろうか。