2013年4月19日金曜日

"My Personal Stack" Dani DaOrtiz






My Personal Stack (Dani DaOrtiz, nodate)




Dani DaOrtizによるスタックデックの解説書。


Daniが12歳の頃から取り組み始めたというスタックデックの研究をまとめた西語の本 Mi Baraja Personal、その初版から6年後に書き直され、内容拡充とスリムアップが行われたのが本書の底本である。冗長な部分や、TamarizのMnemonicaと重複する部分が削除されたと聞き及んでいる。


まず、これがDaOrtizスタック。


ちょっと前に組んだやつだから、一枚くらいずれてるかも知れませんがご容赦ください。
そんで以下の特性を持っている。

①New Deck Orderに戻せる。
②前後のカードが簡単にわかる。
③一枚移動された場合も即座に判る。(Moe's Move a Card)
④飛んだ位置のカードもわかる。特定枚数目へのコントロールもできる。
⑤ミラースタックやサイクリックスタックに変化可能。
 またパリンドロミック・ミラースタックという変わり種にもなる。 

まだまだ挙げればキリがないくらい。
ただしいくつかは、正確には嘘。DaOrtiz流のずうずうしい策略でもって、「実用上はほぼ真」となっている項目がある。



実はこれ、流行のメモライズドではないし、特別なスタックでさえない。既存の某有名数理スタックに、ランダムさを演出するための例外ルールを2つ加えた変則スタック。
なので上記①~⑤を読んですげー何このスタック!と思ったら、そも基本スタックの性能をちゃんと掘り下げられていなかったと言うことだ。ちなみに僕は非常に驚いたくちで、こんな使い方もあるのかーと全編通して感心しきりであった。


あるトリックのためにスタックを使う、という場面はよく目にするが、スタックを常用するための解説というのは少ない。
スタック(特に数理)は初心者向きと思われがちだけれども、ギミックと一緒で、自由度を大幅に制限するため運用が難しい。結局、目的のトリックの前にデックスイッチするのが一番負担が少ないという結論に至り、けれどスイッチが面倒なのでスタックやっぱやめるわ、となったのは僕個人の話だが、似たような経緯の人は少なくないと思う。

私見だが、スタック常用には、カード位置の修正やミスしたときのフォローなど、Jazz Magicの技能がどうしても必要になる。そこで登場するのがJazz Magicの大家DaOrtiz。これ以上の適役は居るまい。

詳細なデック特性の研究から、基本的なカード当て、コントロール、枚数当て、4 of A Kindプロダクションの他、ポーカーデモ、スペリング、一致現象などがかなりの数、解説されている。またスタック変換で邪魔になる例外配列を解消するためのトリックも収録されており、いたれりつくせり充実の内容。

ただしもちろん、非常にDaOrtiz流であり、DVDなり生で見るなりしてあのスタンスを少しなりと感得していなければきついかもしれない。解説は丁寧だが、それでも「適当な理由を付けてカードを入れ替える」とか「スペードのKのところでカットする」「ハートのJとクラブの3をまずフォース」など、しれっと要求されたりするので注意。また抜け道が用意されているとは言え、例外ルールのせいで計算はちょっとややこしい。



幾度か書いたようにAronson読んでいないので確定的な事は言えないけれど、個人的にはこれ一冊でスタックデックのほとんどが、しかも効率良く学べると思う。
あとは MnemonicaのAppendix Ⅱ,About Order and Disorder があればスタックは十二分じゃないかな。

というわけで、非常に優れたスタックデック教本でありJazz教本。文章が散文的というか、全体にやや雑駁とした読み心地ではあったが、デック片手に本書の内容を5回くらい通せば、Jazz系の能力もかなり付くと思うよ。
ここから固めてゆけば、ゆくゆくはDaOrtizみたく、Evansの10 Exact Cutをレギュラーカード即興でやれる変態になれるかもしれない。今まで読んだDaOrtiz書籍の中ではもっともDaOrtizらしさが出ており、DaOrtizファンにもお勧めである。Utopiaとの重複もない。



Jazzyなハンドリングとは無縁、という人にはあまりお勧めしないが、数理スタックからサイクリックやミラーへの変換が割と容易に出来るので、これ1つセットしておけば実質3種のスタックとして働く。CurryのPower of ThoughtやRoy ShottのClanissh(発展版のTon Onosaka 偶然の一致にしては)などがかなり手近くなるので、そういう点でも非常に強力な武器と思う。

自分にとってかなり高度な内容だったのと、けっこうだらだら分割して読んでしまったのとで、また改めて再読したい所存。

2 件のコメント:

  1. DaOrtizスタック非常にそそられますね。
    The Art of Switching Decks by Roberto Giobbi を注文しているので、
    Justin,HighamのSecrets of Improvisational Magicとこのスタックをマスターできれば、、、妄想はどんどん膨らむんですが、、
    Fat Brothersのレクチャーまでお預けにしようかと思案中です。
    箱根クロースアップ祭での睡眠不足からやっと回復したと思ったら、手つかずのグッズや読みかけの本、DVDもたまりまくっているし、岡山まで出かけた卓球の試合でふがいなかったので、練習に力を入れようと八方美人になっています。

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  2. >いくともさん
    相当に高度ではありますが(いろんな意味で)、非常に良かったです。製本版で欲しかった。実践をこなさねば覚えられないと思うので、マジックをする機会が少ない私は後回しにしてしまっていますが良書ですよ。
    Giobbi新刊! これは買いですよね!
    Highamは冊数多くてなかなか手がでてませんねー。あとStackならHer Majesty The Magic of Cardsという本が気になっています。

    僕もDVD消化中です。Allegroいまいちでした……。

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