2014年1月7日火曜日
捨行、あるいはもう開く事のなかろう本について
あけましておめでとう御座います(今更)。
今年の投稿を見返すと、これが見事に冊子しか読んでない。
大判本もいくらか買って読んでるんですが、だいたい途中で止まって放置しておりこれは良くないです。
年度末までに何冊かは読み切りたい所存。
さて当たり前の事ではありますが、本ブログは"通読・読了"した本をレビューしています。
しかしこれまでには、読む事を断念した本や、流し読みして買わなかった本も存在します。読んでいないのだから語る資格はないのですが、しかし読み進めない選択をした理由も確固として存在する。たまにはそういう事を口にしても良いかなと思いましたので、今回は未読了のままもう開かないと決めた本についての雑感です。
なお記憶に頼って書いているので、間違ってるかも知れない事を先にお詫びしておきます。
Naked Mentalism Jon Thompson
文字通り裸で出来るメンタルマジック!との事。
結局は単語の頻度をベースにしてて、あとは即席の対応みたいな話だったと思う。中盤以降は単語頻度リストみたいなのがずっと続いている気配で、さすがに言語違うとどうにもなあと思って以降放置。
今ちょっと広告みたら、プライミングとかの話もちらほらあり、ひょっとして読み返したら面白いのか?
どなたかから好意的な意見があれば背中を押されて読み直すやも。
Enigmath Werner Miller
数理トリックが好きだ。トリックより数理部分が好きだ。
とか書いてありつまらない数理トリックの見本みたいなe-book。3トリック目あたりで読むのを断念。ある枚数目に返して貰って、ダウンアンダーしてアンダーダウンしてアンダーダウンしてダウンアンダーすると当たる、みたいなそこに何の意味も意義も見いだせない感じだった。
これが5巻まで続いているらしい。
続く=人気あるという頭で1巻を買ったのだが、電子出版(自費出版)では全然当てにならない指標だったと己がうかつさを呪った。
Mind Blasters 1&2 Peter Duffie 編
イングランドのマジシャンから集めたメンタルマジック集。
とにかく判ってない。何も判っていない。
読心術、と口先で言っておけばなんでもメンタルマジックになる訳じゃないんですよ。
予言もそう。T.A. Waters先生の薫陶を受けて育った私としては、とりあえず予言にしとこう、程度の予言マジックには我慢がならんのです。
特に酷かったのでいうと、トランプの表になにか書いて貰いそれをデックの真ん中に戻した状態から当てる、とかさ。まずトランプに書かせる理由がわからなくて不自然きわまりないし、デックの中に入れても演者がそれ持ってるわけだし隔離方法としてさっぱり機能してない。
とこういう駄作としか言いようのない駄作があまりにも多く、ページ数も多く、あまりにも不毛だったので途中で断念。2に至っては開いてすらいない。
基本的にこういうオムニバスとは相性が悪いようです。
もし面白い作品知ってる方が居たら教えてください、そこだけ読みます。
最新メンタル・マジック徹底解説! 林敏明
ウィザーズ・インの柳田昌宏が最も得意とするメンタルマジック作品集!
ウィザーズ・インの柳田氏、危険信号①。
オリジナル作品を年に200も作る、とか前書きに書いてあり危険信号②。
(ていうか個人選集なのかよ、タイトルから想像つかないよ。おまえの最新マジックなのかよ)
メンタルマジックと言いつつカード作品しかない、危険信号③。
クレジットが無くまるで全て一から考えましたという空気、失格。
主張ではなく空気なのがミソ。そういう誤解を招くように招くようにと計画的に記述されている気がする。なんかここまで来るとね、本人が書かず他者が筆を執るこの形式も、クレジット不備などについて責任の所在をはぐらかすため故意にやっているのではないかとさえ邪推してしまうね。
これは買わなかった本。まだ部室にあるはずだがいい加減破棄してしまえと思う。
いやちゃんとクレジット完備だったよ、とかだったら教えてください。買って詫びます。
ともあれ今年もよろしくお願いします。
最近はあまり欲しい本も出ないので、家に積んであるのをじっくり消化したい所存。
あと手品が出来るようになりたい。
もとい、不思議な手品ができるようになりたい。
切に。
2013年12月13日金曜日
"Missing" 新沼研
Missing (新沼研, no date)
"観客にトランプをよく混ぜてもらった後、自由に1枚のカードを選んでもらいます。
観客自身の手で、カードをデックの中に紛れ込ませてもらいます。
一見、観客のカードを探し出すことは、全く不可能に思われる状況の中、
マジシャンは確実に観客のカードを見つけ出します。
(観客から借りたトランプで即席に演じることができ、即座に繰り返し演技することができます。)"
マニアも騙す新原理、MKCLの発見!
そして思いも寄らぬ発展系までも解説。
MAGIC誌の名コラムTalk About Tricksでも特集が組まれた、新進気鋭のクリエイター新沼研の不可能すぎるカード当て。
観客が混ぜたにもかかわらず、というのがこのシリーズのコンセプトらしいです。前作は持っていないのですが、今回は対一人でしかも新原理を謳います。
これがちょっとすごい原理で
なんて。
言うとでも思ったかぁああああ!!!
何が!!
新原理だ!!!!
これは!! ただの!! Distant Keyじゃねえか!!!!!!!!
たたくと決めたのでコレは徹底的にたたきますけど、お粗末も良いところ。
今でこそ、ショップでは”古典原理の再発見”と唄ってますが、これ販売予約開始した時点では”新沼研の頭脳が産んだ新原理!マニアをも騙す!”みたいに唄ってましたからね。
いやさ確かに、これを独自に発見したこと自体は凄いと思います。それは並々ならぬマジックのセンスであろうと。そしてマジックにおいて、過去の発表作全てをチェックするというのもまた不可能です。特にこれなどは、あまり人気が無く使われない原理でもあります。仮にIbidemの××号とか、New Pentagramの△△号に載ってる、とかなら仕方ないですよチェック漏れは。でもこの原理の手近な参照元って、カードマジック事典、セルフワーキング・マジック事典 レベルですからね。
そして発覚の経緯もお粗末きわまりない。
クイズに正解した人に先行プレゼント!とやって当たった5人だか7人だか誰かにつっこまれて、発売の本当の直前、というか実質的にはリリースしてから判ったという次第。
つまり全国のマニアから7人をランダムピックアップした程度で、元ネタ重複が判るレベルによく知られた原理という事です。先例をあまり知らないように情報を絞った環境で創作する、というのは発想を柔軟にするためであれば、有りかも知れない。でもなんですか、発表前にまともに人に見せてもいなかったんですか新沼氏は。それで”新原理”なんて広告を大々的に打ったのですか?仮にもマニアを相手に商売している人ではなかったのですかあなたは。
本の内容自体は、そんな言うほど悪くはないです。
ただ発表までのプロセス、内部でのスクリーニングがあまりにお粗末であることが露呈しました。はっきり言ってこれは信用をなくすと思う。というか、僕は信用を完全になくした。3 Secrets とかは割と好きで好意的な印象も持っていたのですが、よほどの事がない限り、もう新沼研の関連作品は、”新沼”というだけで購入検討さえしないでしょう。
修正後の売り文句でさえ、"この“原理”を知らない方にとっては、この原理を知るだけでもこの解説書を読む価値は十分にあるでしょう。"と宣う始末だものなあ。それならセルフワーキング・マジック事典やジョン・バノン カードマジック、Card College Light Seriesとか読めばいいですよ。コスパ的にも内容的にも。
書いているうちに当時の怒りが再燃してしまいましたが、改めて公正に言っておくと、経緯が酷いだけで内容自体はそんな悪くもないです。
Missing:
Missing Effective:上記現象の舞那遊による演出案。典型的な「理由を後付けしている感じ」で、マジシャン側の都合が見え隠れしてあまり好きではない。文化的下地がない我国ではやはり難しいな、カット。
Hunter:Jokerが選ばれたカードをじわじわと追いつめていく。延々と配る必要があるが、配る理由はあるし、配りながら事態が進行していくのが見えるのであまり苦にならなそう。現象も面白い。
Mirror:相手が持っているファン(裏向き)の中から、相手のカードを見事に当てる。相当無意味にごちゃごちゃやるけど、それでも当たる瞬間は気持ち悪いだろう。
Distance(初回限定):Missingとは関係なし。相手がカードを混ぜ、選び、もう一度混ぜた状態からあてる。セット面倒だけど優秀な不可能パズル型マジック。
MirrorとHunterは、どちらも現象としてかなり気持ち悪いし、原理の応用としても面白く、出来は悪くない。というか良い。とても作業っぽいけど、作業っぽいけども、悪くない。ふつうDistant Keyから想定しないような現象で、こういう展開案を出せるのは凄い事です。
文章直して、Distant Keyの応用現象集 冊子として売れば良かったのにね。それだったらとても評価されたとおも
あーそれでも、この作品点数で2500円は、ちょっと、ないかな。
追記。
ところで、このタイプの手法を”観客に混ぜさせた”と謳うのは、すごく違和感有ります。
Six Impossible Thingsの時にも似たようなことを書きましたが、多くの手順は、どうにも制限がありすぎて堅苦しく、「私があれだけ混ぜたんだからもうどこにあるか本当に判らない」と観客に思わせるに至らないような気がします。
というか観客に混ぜさせてなお当たる、って書かれていたら、普通「選んで戻した後、混ぜる」と思いますよね。Missing 予約しちゃったのは、それを可能にする新原理を期待してたのです。大変に残念でした。
まあ、よく見たらそこは「紛れ込ませて」としか書いてないので、それは私の迂闊であり、逆恨みに過ぎないのですが。
2013年12月3日火曜日
Red Light: "Cards on the Table"
ほんとうならば、
ブログタイトルにも掛けて盛大に、
We Are Officially Greenlit!!
とでも叫びたかったところです。
しかし翻訳許可を求めたところ、
残念ながら、Sadowitz氏の答はNOでした。
というわけで、こっそりと8割方 訳してはいたのですが
Cards on the Tableの翻訳はストップです。
いや、一応最後まで訳しますが、これが世に出ることはありません。
法の抜け道的な物も考えなくは無かったのですが、
これが原作者の確固たる意思なのですから、
やはり私はそれを尊重しなければと思います。
気になる方は、是非、ご自身でお手にとって確かめてみて下さい。
非常に面白い作品が詰まっています。
ページ数も少なく、英語も平易です。
本書と、あとCard Zonesに納められた作品だけしか、
今は容易に手に入りませんが、
それらが後世に与えた影響は絶大です。
あるいは、もしどこかでお会いする機会があれば、
一つ二つ、演じれなくもないよう研鑽しておきますので、
お声かけください。
では。
2013年11月14日木曜日
"Small World" Patrick G. Redford
Small World (Patrick G. Redford, 2013)
引き続き、Out of This Worldのe-book。
そういやPrevaricatorは面白かったよなあ、と思い出してP G. Redfordのサイトを再訪したら、彼もOut of This Worldの冊子を出していたので購入。
こちらも少枚数&複数段だが、大分イメージは異なる。章題が凝っているので、とりあえずそれを引き写すところから始めてみよう。
Contents
The Man Who Sold The World (Introduction)
Tiny World (6 Cards)
Small World (10 Cards)
Mad World (10 Card variation)
Perfect World (10 Card Number Match)
Unexpected World (Prediction with 10 cards)
Full Routine
Bonus
Opposites (still) Attract
Wild World
Practical Applications
Addendum
Charlier Shuffle
Afterthoughts
It's the End of World
ホントーにこんな具合で二色刷になっているのだ。解説図のカードも赤黒表記。まあグレースケールで印刷して読んでたので、あまり関係ないけど。
少枚数で特徴的、とSeparation Anxietyで書いたが、後で調べると思ったよりは作例があった。Henderson/Armstrongの他に、Alex Elmsley、Michael Skinner、J.K. Hartmanなど。
しかし、ここまで刈り込んだ物は珍しいのではないだろうか(*)?初段は3+3のたった6枚、次も5+5の10枚で本当にTiny で Small。
3段からなる、相手にじっくりと"選択"させる手順。先のSeparation Anxiety内で、Out of this Blah Blah Blahの欠点として、10枚ずつに分けるのは直観的に困難、という話をしたがここでは何せ3枚or 5枚なのでその問題はクリア。
またスイッチのぎこちなさも、相当程度クリアになっている。手順の中間というか、比較的半端なところで唐突に”急ぐ”必要がある他の作例に較べ、3枚では中間が存在しない。そして3枚で既に一度現象を見せているため、5枚時にやや急いでも不自然は減じている。
さらに3段目では、観客が自由にカードを入れ替えた後、見ると数字の並びが一致しているというクライマックス。
元来、複層化された手順が好きなもので、これはかなり好み。
最終段に"Perfect"で畳みかける所もよい。が、ここの手法がいまいち。元々4枚用の策略を無理矢理5枚に当てはめているため、かなりごちゃついている。コンセプトは良いのですがね。Swindle Moveもちょっと違うしどうしたものか。
総じて面白く、"選択させる"演出が行ける人なら買って損無し。僕は断然好き。
ただし最終段はそのまま行うのはきついと思う。演者の負担も急に増加する。
variation手順はスイッチがちょっと違う程度の改悪で特筆することなし。
おまけ手順も少枚数Out of this WorldをQKで行うもので、さらにJを増やして同性のペアができてしまったりとかあるがこれも特筆するほどの事はないだろう。
*Behr Fileにあたったところ、どうも4+4の8枚は有るらしい。
2013年11月13日水曜日
"Separation Anxiety" Bruce Bernstein
Separation Anxiety (Bruce Bernstein, 2013)
Bruce BernsteinによるOut of This Worldのバリエーション単品ノート。実体版もあるらしいのですが、送料が嵩みそうだったので僕はe-book版で購入。
Out of This World、好きなんですがなかなか良い”答え”が見付からない。素晴らしい現象なんですが、ハンドリングもプレゼンも、あと一歩、消化しきれないところが有ります(*)。それで面白そうなのを見付けるとついっと手が伸びる。
ましてや、Bruce Bernsteinの作ですからね! 氏のUNREAL は、色々あって途中で置いてしまってますが、とても凄い本でしたのでこのSA も結構期待です。
ということで2段からなるOut of this World。現象の説明は今更でしょう。特徴的なのは、2回繰り返すこと、使用枚数が少ないことでしょうか。10+10で20枚。
カード構成はJon Armstrong/Brad HendersonのOut of This Blah Blah Blahと同じで、実際に相当意識しているらしく本文中で何度も言及されています。BBBは良い手順だけどここが難しい!その点SAは、みたいに仰られるのですがまあどっちもどっちかなと思う次第。正直大差ない。
BBBは、観客がちゃんと10枚ずつに配り分けるように、じっくり選択させていく手順。カードは演者が配ります。一方のSAは、完全に観客に渡してしまい、適当に配ってもらえます(適当に分けたはずなのに10枚ずつになってる!というちょっとしたおまけ現象あり)。
意識的なBBB、無意識的なSAという感じでしょうか。
スイッチ段を除けば、構成はSAの方が洗練されているような気もしますが、絶対的な優位性という程ではなく、どちらの演出が自分に合っているかという問題に集約されると思います。あとSAはちょっとした細工が必要です。逃げる必要のない細工なので個人的には許容ですが、人によっては嫌うかも。
ただBBBの20枚のカードを等分に分ける、という作業はなかなか面倒に思います。1つ2つ3つ、たくさん、と言いますかマジカルナンバー7的なそれと言いますか、非直観的な数量かなと。なので個人的にはSAの方がやや好み。
Out of this Worldの宿痾たるスイッチのぎこちなさは残るものの、前後段で編み込まれた構成の巧みさであったり、ハンズフリーな感じであったりが中々よい手順でした。演技時間も短めで済みますし、これはちょっと試してみたいです。特に構成によって生じる微妙なサトルティは、読んだだけだと、どれほどの効き目があるかちょっとピンときませんし。
ただ単品作品冊子・細工必要ということだけ留意した方がよいかもです。 またe-book版は動画埋込されているのですがBernstein氏は残念ながら下手です。動画では全く通用するように見えません。
*BBB対SAでも主眼になりましたが、誰が現象の主体なのか、その原理は?といったところが今ひとつ、僕の中で安定しません。透視?コントロール? うーん。
なお、手法はともかく現象としてはDerren BrownのUndertakerが最高峰であり異論は認めない。しかしながらDerrenレベルのオーラがないと、ただのチープなトリックに堕してしまうのでどうにも。いつか地下墓所で手品をする機会が巡ってきたら、トライしてみたいと思います。
2013年10月30日水曜日
"One In The Hand" Paul Brook
One in the Hand (Paul Brook, 2009)
UKのメンタリストPaul Brookによるコイン・メンタリズム。
(現実ではあんまり名前聞かないように思うんだけどネット上では)有名なメンタリストに多いのだけれど、たとえばJerome FinleyとかSean Watersとかね、このBrookもおまえそれ値段付け間違えてね?勢の一人。いやまあ自費出版の手品本なんて、価格は付ける側の自由だけれども、さすがに正体不明の方による80ドル700ページの本は手を出せないですよ。それも何冊もあるし。
ですが、まあ気にはなりますわな。
そんな中でこの単品作品は$30とお求めやすいです。まあ十分高いですが単品DVDでそれぐらいはするのでまあ許容範囲かなと。あと僕、この類のプロブレム好きなんですよね*。
現象:観客の前に、握った拳が出されている。相手に想像上のコインから一枚、好きなコインを言ってもらい、さらに片方の面に×印を書いてもらう。
演者が手を開くと、相手が選んだのと同じコインがそこに有り、ひっくり返すと正しい面に×印が付いている。
ってまあそんなことできるわけ無いんですよね。
少なくとも100%は。
色々なところから巧く組み合わせてきた感じで、各所にちょっとした工夫があり面白いです。解説も非常に詳細で、ドル、ポンド、ユーロの三種類を取り扱う丁寧さ。ただこの現象、確度は100%では無く、アウトがあります。そちらも詳細に解説されているのですが、問題はそのアウトありきのスタンスで始める必要があること。アウトと本現象で、現象が全然違うのです。つまり不可能性の高い予言(?)として十分に演出できない。
もちろんそういう後出しをうまくドレスアップするのがメンタリストの技術なのでしょうが。
アウトはいわゆるリーディング(占い)的な物。必ずウケるように、Reading+Factという構成を取っておりこの工夫も非常によい。
でも僕、Readingできません。
あなたが選んだ○円硬貨は~で、だからあなたは~みたいなトークが十分に必然でかつエンターテイニングなキャラクタしてないです。
そういう訳でお蔵入りです残念。
アウトを上手く変えれば、何とかなるかなあ。
原理はまあ想像の範囲を出ることはありませんでしたが、各所のちょっとした工夫は面白かったです。ただ円への適用、それから演出的な工夫について、けっこういじらないと演じるのは無理と思います。メンタル度が高い方向けです。
アウトのReadingが苦にならない人や、既にそういう手順を運用している方は、いろいろと面白い箇所があるでしょう。
でもまあ、他の本はいいかな……。
*Which Handエフェクトとその派生系。
Silver Swindle(Gerti 2.0) DVD、The Safran Papers(Boht)、Prevaricatorとか。
Prevaricatorは面白かったです。誰か面白いの知ってたら教えて下さい。
2013年10月25日金曜日
"BEBEL レクチャーノート" 二川滋夫

BEBEL レクチャーノート (二川滋夫,1996)
フランスの変態、Bebelの数少ない資料の一つ。
Bebel単体での作品集というと、手に入るのはこれと、あとDVD Enfin le(仏語)だけではないでしょうか?(*)
内容はああいかにもというbebel節全開で、DVDとの重複もReset (Retro Repro)くらいしかなく、大変楽しめました。パームやVernon Transferを濫用する感じがたまらないです。
全体的に高い難度。収録数は10とDVDより断然多いです。意外にセルフワークっぽいものも有りますが、それですら「二人で配りながら自分はずっとセカンドディールしろ」とかけっこうきつい事を要求されます。Kings Nightなど、現象が入り組んでて、何がやりたいのかさっぱり不明のものもあり。しかしハンドリングのせいか、あんまりややこしい印象がないのが不思議です。
Collectorはどちらにも収録されてますが、全然ハンドリングが違っていて別物。タイトルも違う。
DVD版はデックの中にAをいれて、もぬもぬしまくった後、何故か挟まれて現れるというもの。
こちらはよけておいたAを広げると、その瞬間、間に現れるパターンです。かなりダイレクト。
同じプロットと言えば繰り返しのサンドイッチもあります。DVD収録のものが二回連続のサンドイッチなのに対して、こちらは四回繰り返して、しかも最後はサンドカードが消えるというしつこいもの。全体としては、ノート版の方が好きなんですが、DVD版は初段がすばらしく、見比べたり組み合わせたりして楽しんでいます。
あとDVDではさっぱりわからなかったBebelの台詞ですが、同書ではなんと「フランス語で判らないので、つじつまが合うように想像で書きました」とか書いてあって、二川先生そりゃないですよ。いや、手順読めるだけで十二分に有り難いのではありますが少し残念。
というわけで、全体的にむずかしいし、イロジカル、しかし不思議な魅力があります。
Bebelのパフォーマンス環境などを加味すると、構成の利点なり狙いなり、色々判ってくるのかなあとは思いますが、それにしても独特で、そうとう無茶です。文章だけだったらちょっと敬遠するレベル。しかし氏のタッチを知った上で読み直すと、それらを成立させるだけの技量の裏打ちや呼吸を感じられます。
つくづく面白いマジシャンです。
*:他はVallarinoとのセッションを納めたInspiration DVD 1&2程度でしょうか。単品なら、DL作品や、Fat Brothersでの出演もあったかな。仏語ではノートとか本とか出しているのでしょうか。
とはいえ同工異曲というか同工同曲というか、作風にはあまり幅が無い気もします。や、Inspirationとかとても見たいんですけどね。
2013年9月29日日曜日
"Coins on Edge" Kainoa Harbottle

Coins on Edge (Kainoa Harbottle, 2003)
Kainoa Harbottleによるエッジグリップに焦点を当てた作品・技法集。
111頁にわたってみっちりコインの技法が詰まった作品集。はっきりいって尋常じゃ無いくらい難しい。確かにわたしゃコインマンではないのですが、そこまで不器用でも無いはず。なのに、なぞるのさえ困難な作品が幾つも。
Kainoa氏の作品、実はあまり好きでもないんですよ。なんか手付きが不自然に思えて。特に本書の集大成的手順Pendulum Hanging Coinsは、動画で見たけど労力の割にそこまで不思議にも見えないのだよなあ。
なのになんでこれを買ったか? だってKainoa氏、確実にヘンタイじゃないですか。
McClintockのおかしさが「なんでそういう発想に至ったのか判らない」だとすると、Kainoa氏は「何を考えたかは解るけど、なんで実行できた」という感じ。基本的には既存技法なのだが数がおかしかったり両手でやったり、とにかくとにかく難易度が高い。
本書は(ディープ)エッジグリップをメインに扱った技法・作品集。Soft Coin×4を推奨。
前半はずっと技法のみの解説。「本来の用途を知らないまま技法だけ読んで、自分のいま抱えている問題にどう組み込めるかを考えるとワクワクして溜まらないよね!」みたいな事が書いてあり、なるほどなあ。僕はそういう純粋な技法マニア的心を最近失いつつありますが、コインだと技法の解説自体が大変長くなるので、別個の解説は良い判断と思います。
Edgy Work:1枚のコインの消失、出現およびファン様にコインを持った状態からの消失など基本的な技法。Edge Flip Stealは非常に使い勝手が好さそうです。
Even Edgier:複数枚スタックのエッジグリップ、および複数枚のPalm Transfer。私は持っていないのですが、Soft Coinだとコインがスタックでまとまるので、だいぶ難度が下がるはず。この章は本書で一番有用性が高そうです。
Foreign Edges:六人部パームの章。Kainoa氏、ムトベパームが好きらしいです。技術のみでレイヴン現象(手をかざしただけでコインが消える)を起こすFlying Wombatは必見です。純粋な技法ごり押しの他に、こういうとんでもない手法を開拓することがKainoa氏の面白いところ。
Kainoaと言えば個人的には、このFlying Wombatと、ムトベパームを使った複数枚の消失(NYCMS DVD)が一番好きでした。残念ながら後者の手法は、同書では解説されてませんでしたが。
Down the Edge:複数枚のコインを隠した状態でのコインロール。むずかしい。
Edgy Transpositions:エッジグリップを用いた、CSトランスポの例。
Odd Edges:サトルティ他。
Over the Edge:手順集。ここまでの技法が全て、かなりの精度で、両手で、できている必要有り。
難しいです。難しいです……。
コインの出現、ハンギングコイン、コインズアクロス、3 Fly と言ったところで作品数自体は少なめ。
内容が難しい上に、ページ数も多く、Kainoa氏の文章も私程度の語学力ではやや厳しく、となかなかしんどい本でした。作品にしても技法ごり押しというか、あまりマジック的なひらめきを感られず、そういう点ではGarret TomasのDVDとか買った方が間違いなく楽しめると思います。Hanging Coinも、Garretのは不思議でしたし、そんな難しくも無かったし。
ただ、純粋にこれだけコインが操れるようになると、見える物が変わるだろうなあとは思いました。実は全然懲りて無くて、他の巻も読んでみたいです。自分にはなかなか出来ないレベルですが、こういう頭おかしい(褒め言葉)人の作品は大好きです。まだけっこうな量の本があるので楽しみ。
2013年8月30日金曜日
"Smoke and Mirrors" John Bannon

Smoke and Mirrors(John Bannon, 1991)
John Bannonのいや実にまったくクレバーなカードマジック作品集。
啓蒙されたので、引き続きJohn Bannonです。同書はどうも絶版ぎみのようで、版元にはありません。いくつかのお店ではまだ在庫があるようなのですので、見付けたら買うべきです。
買うべきです。
ぼくはこれ今までのBannon本のなかで一番好きです。一番好きって毎回のように言ってる気もしますが、人に勧めるなら、これかSix Impossible Things かなあと。
Kaufmanから出ていたようで、本の構成もKaufman社のあの感じ。だらだらと章立てなく改ページなく続いていて、それだけちょっと残念です。
んでまあそういう事はどうでもよい。
本書はBannonの他の本に較べると、かなりまっとうでおとなしい内容です。Impossibilia なんかは意外にコインその他の手順が多かったりもしたのですが、本書は75%がカード。しかも特殊なプロットやセルフワーキング、サトルティの限界を試すような手順はほとんど見られません。
どちらかというと既存のクラシック手順に対するBannonのバリエーションと言った感じ。僕は既存手順の自己流のハンドリングばかりを解説する本*はあんまり好きではないのですが、そこはBannon、ひと味もふた味も違いました。
*だってCard Dupery とか正直半分くらいに刈り込めない?
自己流ハンドリングって、既存の手順における主観的なひっかかりを主観的に解消しているだけだったり、適当な現象をくっつけたり、加えたり、というものが多く、それは粗製濫造にもなろうというもの。
しかしBannonは違いました。
なんというか目の付け所が凄いのです。よくある駄目改案って、手を加えた箇所も、置き換えた技法にも既視感を覚えることが多い。熱を込めて解説されても、「ここを変えます」「ああ、確かにそこ引っかかるよね」「この技法にします」「へー、そう」という感じ。
一方で今回のBannon先生だと、「ここを変えます」「え?そこを?」「するとこうなります」「え? な、なんで」。読み返すと、ああ確かになるほど、とは思うのですが、なかなか見付けられないよそんな箇所。
あからさまに”つまる箇所”っていうのは、実際にはそのはるか以前に問題がある場合が多いのだけれど、それは見えないのですよね。構成上のミスディレクションというか、目立つ傷にばかり気を取られて。
これは本当に凄い才能であるなあと思います。
ほんの小さな違いなのに、全体像が大きく変わって、びっくりするぐらい洗練されるのですよね。たとえば巻頭を飾るHeart of the Cityは、下手をするとHammanのSigned CardをベースにしたBannon流のハンドリング、といった程度と受け止められかねない作品。
しかしその構成、たとえばカードを示すタイミングの違いといった些細な変更が、手順全体の意味を変えてしまう。もちろんBannonのそれは自覚的に行われています。
そうした洗練、再構成が行き過ぎた例として、サインの移動 Tattoo you、カラーチェンジングデック Stranger's Gallery、カードスタブ (ナイフ、中空) Steel Convergenceなどは、一般的なプロットのはずなのに、初めからこの形であったかのような異常な完成度です。
もうひとつ、本書を人に勧めたい理由として、あつかう手順にクラシックが多いことを改めて強調しておきましょう。最近のBannon先生は、どちらかというと正道からはずれた、何が起こるか読めないサカー風味プロット*の研究に熱心です。
*Unorthodox "Garden Path" とご自身では定義されていました。
物によっては、マジシャンに見せると途中で見透かされるかも知れない。しかしやはりクラシックとして残っただけある、魅力的なプロットなのです。
奇を衒うよりも先に、こういうのをちゃんと練習し、人に見せられるようになるべきなのです。ぼくは。
改案と言いながら改悪になっている例は星の数ほどありますが、本書は間違いなく意味のある改案集です。ほんとうに、これくらいしてから”改案”を名乗るべきだなと思いました。
もちろん手順自体には主観的な好みもありましょうが、それを差っ引いても、純粋に手品読み物として面白い本です。
作品自体の洗練度と、その背後にあるたくらみに言及する筆致とが相まって、とても良い本になっています。おすすめです。個人的にはBannon先生によるCard under the Glassが読めて満足です。
そうこうしている内に、High Caliber が出ましたね!
Six Impossible Things とかMega' Wave とかの合本らしいですね! しまったって感じですね!
Triabolical とかは未読だったので、ダメージは少ない方ですか。
High Caliberまで読んだら、Bannon先生の単行本はいちおう全部目を通した事になります。それぞれの本ごとに特色があり、それも面白かったので、一度Bannon本をまとめた記事もつくってみようかと思います。
2013年8月27日火曜日
"The Best of Benzais" John Benzais

The Best of Benzais (John Benzais, 1967?)
エレガントさにかけては右に出る者のいないJean Pierre Vallarino先生がFISM ACTで用いて有名になった(と勝手に思っている)Benzais Spin Cut。そのBenzaisである。
Slip ShotとかSpin Outとかいろいろと変名・変種もあるが、手軽でビジュアルで、プロダクションとしては一つ確固たる地位を築いていると思う。
似たような見た目のプロダクションにPop-out Moveがあり、昔はよく見た気もするのだが、あれなかなか安定しないし、それに比べると非常に使いやすいのでほんとにもうお世話になっています。
Pop-outが出現”する”のに比べて、こちらは出現”させる”というニュアンスが強く、ギャンブルデモなんかとも相性がよい。
まあこれだけお世話になっている技法の創始者、他の作品も読んでみたくなる。しかし25歳という若さで死んでしまったらしく、作品集とてもこの自費出版の小冊子ひとつ。
内容はカードだけでなくコイン、ロープ、ボールと多彩。時代的な物もあるだろうが、あまり特殊なプロットはなく、特にカードはスタントよりの印象。コインはかなり挑戦的な事もしている。
・The Coin Through the Table(Complete)
どんどん使用枚数を増やしていくコイン・スルー・ザ・テーブル。
本来シークレットムーブとして有名なものをオープンにやってしまったり、非常にマニアックな”音”の技法があったり、空中で行うHPCがあったりとなかなか凄い。
Benzais Gripを使ったIt Doesn't Belong Hereは、片手に握った5枚のコインが、怪しい動作全く無しで、そのまま反対の手に移動するというもので上手く決まれば凄いが難しいです。
・Just a Few More "Coin Tricks"
章題ままに、もうあといくつかのコイントリック。
ものすごく難しいスリービングとかあって、これ非実在手品技法ではないかとたいへん疑わしい。や、僕ができなかったというだけですが。
全体的に単発現象だけれどインパクト重視。Coin through Cellophaneなどもある。
・Different Types of Card Tricks
スタント寄り? カードの剥がし方や、カードスリービングなど変な技術も解説。全体的にあまりぴんときませんでした。
なお例の技法が解説されているのはBewildermentという手順です。
・Stabbed in the Pack
カードスタブ。とだけ言っても多々あるが、カードをデックに投げ込むタイプのそれ。
雑誌掲載の順に沿って、お便りや改案寄稿なども載せられている。
ロレインとクレジット論争的な事になっていたようだが、あんま細かいニュアンスは私にはわからんです。
ただロレインの解説は大仰でめんどくさいなあ、とだけ。
・Mess-Cellaneous Tricks
その他のトリック。切ったロープの復活、3ボール(ScarneのClassc Ball Routine的なやつ)、結ばれるロープ。
この最後のがKaufmanもおすすめという逸品。結べるはずの無い状態で、結び目ができたり消えたりを繰り返す。テーブル使用を前提とした、その点でも面白いロープ手順。
いつぞやのMoeでも書いたように、このBenzaisの手順はほとんどが"死んでいる"。つまり現在では誰もやっていない、もとい、これをベースにした改案があまり発表されていないもので、だからこそ再読の価値はあると思う。特にコインはいろいろ面白いです。
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