2017年1月2日月曜日

"F for Fiction" Benjamin Earl




F for Fiction (Benjamin Earl, 2015)


カードとポケットにまつわる3作品を収録したBenjamin Earlの小冊子。せっかくなら4作にして韻を踏めばよかったろうに。

・Four-Card Impossible
 Prefiguration。Earlは最高のバリエーションだと宣いますが、そして確かにカードの数値に合わせて配るとかそういうセルフワーク臭い要素は無くなっていますが、代わりに導入されたフォースは怪しい動作がない代わりに説得力微妙。

・Finish 52
 観客が自由にカードを言う。複数枚のカードをポケットから取り出すと、その数値の合計が観客の言った値と合致する。
 ――という、昔からあるけれども不思議さや面白さの弱い現象に、うまくフォローアップする第二段を加えてた作品。これは確かに面白く、またこんなつまらない現象をよく拾い上げ、よく現代的な形にできたなと関心しました。もっとこういう方向性で創作してくれればいいのに。

・Followers
 VernonのThe Travelersから冗長さをぎりぎりまで削ったような作品。原案の狙いやテンポは無視しているので賛否両論有ろうが、非常にスピーディーで現代的な手順になった。ただかなりダイレクトである。
 最後にデックが溶けるように消えるというThe Fade Away Deck Vanishが載っているが、これはあんまり真に受けない方が良いのかなと思う(観客は××のように感じる、というのは検証が非常に難しい)。


という3作品。このところ販売されたBen Earlの冊子の中ではもっとも手品らしい企みがある。技法を前面に出してはいないのに、不思議でも面白いでもなく「上手い」という印象になってしまいそうな手順構成・演出ではあるが、その辺は料理次第でどうにでもなるかな。

クラシックをよく研究していて、そのリライトの腕もなかなか。最近のEarl冊子の中では1番地に足が付いておりよかった。例によって演技権が厳しく設定されているので買われた方は注意。

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