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2017年10月29日日曜日

52 Lovers 日本語版:発売




José Carroll(ホセ・キャロル)の著作52 Amantes(52 Lovers)の和訳本となります。

2巻ある原著を1冊にまとめ、収録順を変更しました。翻訳はできる限り誠実に行い、省略や改変は最小限に留めたつもりです。翻訳は英語版からの重訳で、不明箇所については西語版にあたりました。他、一部の誤っている図を修正し、またクレジットなどの情報を脚註のかたちで加えました。

リンク先のBASEサイトにてご購入下さい。
当サイト以外で発売する予定はありません。

B5ハードカバー:232頁 6,000円
版権交渉済み



スペインの偉大なマジシャン、Pepe Carrollのカードマジック作品集です。

Dai VernonはコラムVernon Touchの中で、スペインの偉大なカードマジシャンとしてAscanio、Tamarizと並べてCarrollの名前を挙げています。しかし若くで亡くなってしまったこと、書籍52 Loversの英語版があまり出回らなかったらしいこと(そして手順がやたら難しかったこと)から、本邦におけるCarrollの知名度は他二人にくらべて不当と言っていいほど低いものでした。

個人的な見解になりますが、Vernonが挙げた3人のうち、Ascanioが理論、Tamarizが演技とすると、Carrollはその現象が秀でています。本書に収められた手順は技術的にも道具の準備的にもハードルが高く、属人性の強いものですが、そのプロットは鮮やかで魔法的なセンスに優れ、現在のスペイン・マジシャンに受け継がれているものも少なくありません。

また本書の冒頭で解説されるサスペンスの理論は、いかに観客を巻き込み、スリリングな体験を提供するかといった観点で非常に優れた内容です(Tamarizも、ここを読まなければ本書の価値は半分になってしまう、と序文の中で激賞しています)。

この理論は実際に、本書で解説されている手順のなかに見ることができます。またサスペンス理論のみならず、TamarizやAscanioの理論(途中の動作、視線の交差、減コントラスト区、プレゼンテーションとカバー)などの、いわゆる『スペインのツール』が随所で用いられており、精読に値するものと思います。

お楽しみ下さい。

*宣伝のためにしばらく未来の日付にします。
元の公開日時は2017/10/29 。

2017年1月24日火曜日

Thinking the Impossible 日本語版:発売

 

Thinking the Impossible:日本語版

Ramón Riobóo

 



もし騙されるのがお嫌なら、何があってもRamón Riobóoに会ってはいけません。


Riobóoが1組のトランプを手に取したら――、疑い深い観客から世界的な碩学のマジシャンまで、最早だれ一人として安全ではありません。彼がポケットからくたびれたトランプを取り出し、ぎこちない手つきで混ぜ始めたら、――その間ずっと彼が少し上の空に見えたとしても、心しておくように、あなたが知っているこの世界の物理法則はねじ曲がり、あり得ない結末へと雪崩込むでしょう。

Ramón Riobóoは引退したTVディレクターで、スペインが誇る最上級のマジシャンJuan Tamarizの近しい友人です。彼はその本業から、ドラマ、簡潔さ、娯楽性、そして観客の注意を操る技を学びました。そしてTamarizとの親交を通じて、彼は愛想良く、しかし容赦なく相手を騙す術を学んだのです。彼の手の内を見抜いたと思ったそのとき、あなたは正に彼のマジックの陥穽にはまり込んでいるのです。人を袋小路に導くことにかけてRamón Riobóo程の手練れは居ないでしょう。

 Riobóoの専門は数理的な原理と心理的なサトルティの芸術的なまでに巧みな使用です。それらは巧妙に隠されており、理解を超えた現象を生み出すように計算されています。そして彼は、あなたが予想すらしていないタイミングで、技法やギミック・カードをそっと忍ばせて来ます。これらの組み合わせは、あっけにとられるような不思議さと心地のよい楽しさを生むでしょう。

Steve BeamのSemi-automatic Card Tricks シリーズに露出し始めた事で、 英語圏のマジシャン達の間でRiobóo作品に対する関心が高まってきました。このThinking the Impossibleで、彼はその名声に期待されるものすべてを解放しています。39のトリックと手順には彼の賢さと狡猾さがたっぷりと染み込み、そこに心理的な側面についての3つの信条がステアされて、―― くらくらするほどに不思議なカード・マジックがここにあります。

 Hermetic Press版より





 長らくお待たせしました。Thinking the Impossible 日本語版、発売と相成りました。リンク先のBASEサイトをご使用頂くか、私個人にメールで連絡のうえ銀行口座振り込みなどでお買い求めください。本業がありますので、場合によっては発送が週末までずれ込む場合もあるかと思いますが、ご理解頂きますようお願い致します。


 さて本の内容を紹介したいのですが、ここでいくら褒めちぎっても宣伝にしか聞こえないでしょう。しかし幸いにして、本書を訳す事になるなど夢にも思っていなかった頃のレビューがあるので、そちらを参照ください。


 緑の蔵書票:"Thinking the Impossible"Ramón Riobóo



 翻訳に際しては、基本的には元々の文章に手を加える事はしていません。中にはやや理屈に合わない操作であるとか、わかりにくいような説明もあるのですが、大きな改変や、注や図を補うような事はしませんでした。ただし現象説明と手法解説とで若干内容に食い違いがある場合があり、それは統一のうえ、その旨を注にしてあります。


 またページ数や構成の関係で、数点の図が削られたり、加工されたりしています。削られたのはとある文房具の写真や、ごくごく基礎的な技法の図であり、他の問題と天秤に掛けたうえで、無くても問題ないと判断しました。


 技法名、手順名、人名、書籍名については、ダブル・リフトやシャッフルなどの基本的な用語を除いて、英語表記のままにしてあります。これは私が音を上手くカナに起こせなかったからですが、いちおう検索が容易にできるようにという意図もあります。基本的には固有名詞なので、通読には問題ないかと思います。

 なおRamón Riobóo氏について言うと、ラモン・リオボーという音が近いようです。


 カバー、表紙、および章題のイラストは日本語版オリジナルのもので、原著とも英訳書とも違った雰囲気になっています。




 本書がそれなりに売れて、というか割とかなり売れて、運良く黒字になりましたら、次に用意している本が出しやすくなります。皆様何とぞよろしくお願いいたします。


*宣伝のためにしばらく未来の日付にします。
元の公開日時は2015/01/24 19:31。

2016年1月21日木曜日

あけましておめでとうございます



あけましておめでとうございます2016



昨年は翻訳・自費出版などしまして、そのThinking the Impossibleですがまずまずご好評のようで嬉しい限りです。



一部で誤解があったようですが、当方はきちんと作者および権利者と連絡を取り、印税を払ったうえで出版しておりますので決して海賊版ではございません。

なんでショップで売らないの?という声もありましたが、私自身思うところがありまして、今後もしばらくそういった事はしない予定です。
本当の所を申しますとハードカバーなどと豪華な装幀にしたせいで利率がかなり低いので御座います。


いちおう初期費用くらいはペイできましたが、まだかなり在庫ありますのでよろしくお願いします。というかもうちょっと減ってくれないと次を出しても部屋に置く場所が無いのです。



次、そう、次があるんですよこちら。


Pepe Carroll's WONDER LAND

 30年くらい前に活躍したスペインのマジシャンPepe Carrollの、52 amantes52 Lovers)という本の全訳になる予定です。予定です。
 いつになるかちょっと分からないんですがまあ今年中には出せるんではないでしょうか。著作権料をかなり取られそうなので、ちょっとお高めになると思います。まあ原著が75くらいしますのでね。


そんなわけで本年もよろしく。

2015年1月18日日曜日

まだ出ないんですか? あるいはいつまで経っても来ないものについて。




相済みません。




あ、明けましておめでとうございます。

更新履歴を見かえしてみますと、まあ年々、読む本が減っておりますね。
買う数はあんまり減ってないのにね。不思議だ。

しかしその一方で、今年は翻訳などというものに手を染めてみた次第。
まあその前にも1冊ありましたがあれは怒られて沙汰止みになったので、最後まで行けそうなのは今回が初でございます。



それでいつ出るのという話ですが、いやもうほんとあと少しで出ます。

まあマジック業界で言いますとGuy HollingworthがVHSのDVD化をComing soonと告知してから8年近く出なかったであるとか†、特装版$300予約完売!出版直前!通常版$150がいまなら予約特典で$100!と告知してかなりの金額を集めたと思しいMiracle FactoryのMartin Gardner's Impromptuがこっちはまた9年くらい出ていなかったりとか‡、ほんと色々あるわけですが、当方のあと少しは本当にあと少しです。

ほんとです。


いや実際、私の手を離れてもう印刷屋さんが作業中ですし、月末までには届いて、販売体制を築けるんじゃないですかね。うん。

どれくらいの方がここを見ておられるのか、Bloggerの解析ツールがしょぼいせいで僕は余りよく分かっていないのですが、どうか発売の折にはよろしくお願いいたします。



いつまでも来ないと言えば、手品の洋書って言うとまあ当然ですが海外に発注することになるわけで、わたしあまり、というか全然英語ができないものですから、最初の頃はそれはまー緊張したものです。

最近は自動化されたフォームの大手ショップが沢山あるので、大体のものはクリックだけで買えますし、surface便も見かけなくなってまあ遅くても2週間で届きます。日本のショップもたまに仕入れていたりして、そうすると大量仕入れのせいですか分かりませんが国内から買った方が安かったりするのでこれも便利です。

しかし特殊な本や古い本、あとページには上がっていないけど実はちょっと在庫がある、という場合もあったりしてそういうときは直にメールして色々尋ねて振り込んで、としなくてはならないわけです。まあ今は、これもおよそPaypalで済むので楽ですが。


そうして注文した本の中には未だに届いていない物があります。


ひとつはスペインの某ショップで買おうとした本で、なんかすったもんだあってお金だけ払って品物は発送すらされなかったような感じになりました。

もうひとつはまず郵便為替でお金を送って、と言われたので送ったところ「これ処理できないみたい」とだけ言われておしまいになったやつ。


ついでにいま正に3度目の事案に突入しそうでして、送ったよと言われてから一ヶ月、まだモノが届いていません。不安だ。



注文フォームでは国際発送を扱っていないショップでも、メールで聞いたら「大丈夫送れるよー」と言ってくれることは結構あって、非常に助かるんですが、同じだけ事故率も高いように思います。あとあれだ、スペイン。


ただそういう形式でさらにスペインであっても、いい思いをしたこともあって、「2巻組の本だけど1巻しか在庫が無い」と言われて「残念だー残念だー」と返したところ、2巻のゼロックス・コピーをおまけしてくれた事があります。
版元によるコピーなのでまあセーフでしょう。しかも只だったし。

すっげー信じられないオファーだよサンキューとか片言の英語で書いたっけなあ。


ちょっとだけスペイン株が持ち直したところでこのへんで。




† 正確な年数はちょっと忘れました。この間、やっとDan and Daveの所から出まして、見ましたがこれがまー素晴らしかったです。

‡ 楽しみにしてるんですがねぇ。なお何となく予約しなかったのですが大正解でした。

2014年11月8日土曜日

COMING SOON



Thinking the Impossible

日本語版





もし騙されるのがお嫌なら、何があってもRamón Riobóoに会ってはいけません。

Hermetic Press版より


SNEAK PREVIEW




※画面は作成中の物です。

2014年4月23日水曜日

CRIMP買いました。





俺、CRIMP 買いました。




CRIMPって?

カードをほにゃららしてロケーターにする、っていう技法ですが、今回のは単にその名を冠してるだけの個人出版の雑誌です。別にCrimp使う手品縛りとかそういう事でもないです。掌 誌がくさぐさのパームについて熱く語る雑誌でないのと一緒です。



◆じゃあCRIMP誌って?

いまも発行されている雑誌の中では、おそらく最も毀誉褒貶が激しく、しかしその悪名の割に最も入手の困難な雑誌です。あと最も読みにくい雑誌(推定)でもあります。千金に値すると言う人がいる一方で、「ケツを拭く紙にこんな金を払うヤツがいるとは信じがたい」と塵紙扱いする人もいます。なお後者の発言はRichard Kaufman氏のものです。
まあKaufmanの意見には多分に私怨が込められている気がしますけど。



◆どうして手に入らないの?

発行人がSadowitzだからです。全然売ってくれないんです。



◆どういうこと?

いつかも触れたように、元々キ○ガイじみたペルソナのSadowitzが、近年はアイディア盗用に対して偏執狂のようになっていて、Cards on the Tableの日本語版も許してもらえませんでした。このCRIMPも刊行中なのに、身元の分かっている信用できるマジシャンにしか売られていないのです。いちげんさんお断りなのです。


◆いくらするの?

初期の物は£1.37です。今のレートで300円もしません。
最近のは£10のようです。


◆を、一冊いくらで買ったの?

X000円です。てへ。



◆……馬鹿なの?

仕方ないのです。金に物を言わせるしかなかったのです。



◆面白いの?

Peter DuffieやRoy Walton、Andrew Gallowayなどイギリスの有名マジシャンが寄稿者として名を連ねていますし、VernonやMarloの未発表作品も出てたりしたみたいです。
僕はまだ1冊目しか読んでませんが、面白かったですよ?


A3厚紙2枚を折った、8ppの冊子で、手順が2~3と、後はパロディ広告だったり、ジョーク記事(らしきもの)だったりです。
全体的に読みにくいです。



◆さっきも言ってたよね、それ。


手書きなんですよね。しかも罫線とか下書きとかも無しで、白紙に思うさま書いたような。
加えて文章が(たぶん)俗語とか使ってるし、変な言い回しもあるし、というか文字が小さくなりすぎてつぶれており、物理的に見えなかったりします。

まあでも手順はちゃんと読めました。おもしろかったです。



◆集めるの?

できたらそうしたいですけど、さすがにお金が続かないですねえ。そもそもほとんど出回らないですし。 1992年から今までで80冊ぐらい出てるみたいですけど、特に最近のは「いちげんさんお断り」ルールのせいで、手に入らないどころではないですから。

まあ手頃な価格で買えそうな限りで、オークション探そうかなと思います。
ただイギリスからの出品が多くて、そういう人って国内のみ発送だったりしてなかなかめんどうです。


とまれ、噂のCRIMP、やっとさわれました。

2014年1月7日火曜日

捨行、あるいはもう開く事のなかろう本について


あけましておめでとう御座います(今更)。



今年の投稿を見返すと、これが見事に冊子しか読んでない。
大判本もいくらか買って読んでるんですが、だいたい途中で止まって放置しておりこれは良くないです。

年度末までに何冊かは読み切りたい所存。


さて当たり前の事ではありますが、本ブログは"通読・読了"した本をレビューしています。
しかしこれまでには、読む事を断念した本や、流し読みして買わなかった本も存在します。読んでいないのだから語る資格はないのですが、しかし読み進めない選択をした理由も確固として存在する。たまにはそういう事を口にしても良いかなと思いましたので、今回は未読了のままもう開かないと決めた本についての雑感です。

なお記憶に頼って書いているので、間違ってるかも知れない事を先にお詫びしておきます。


Naked Mentalism Jon Thompson
文字通り裸で出来るメンタルマジック!との事。
結局は単語の頻度をベースにしてて、あとは即席の対応みたいな話だったと思う。中盤以降は単語頻度リストみたいなのがずっと続いている気配で、さすがに言語違うとどうにもなあと思って以降放置。
今ちょっと広告みたら、プライミングとかの話もちらほらあり、ひょっとして読み返したら面白いのか?
どなたかから好意的な意見があれば背中を押されて読み直すやも。


Enigmath Werner Miller
数理トリックが好きだ。トリックより数理部分が好きだ。
とか書いてありつまらない数理トリックの見本みたいなe-book。3トリック目あたりで読むのを断念。ある枚数目に返して貰って、ダウンアンダーしてアンダーダウンしてアンダーダウンしてダウンアンダーすると当たる、みたいなそこに何の意味も意義も見いだせない感じだった。

これが5巻まで続いているらしい。
続く=人気あるという頭で1巻を買ったのだが、電子出版(自費出版)では全然当てにならない指標だったと己がうかつさを呪った。


Mind Blasters 1&2 Peter Duffie 編
イングランドのマジシャンから集めたメンタルマジック集。

とにかく判ってない。何も判っていない。
読心術、と口先で言っておけばなんでもメンタルマジックになる訳じゃないんですよ。
予言もそう。T.A. Waters先生の薫陶を受けて育った私としては、とりあえず予言にしとこう、程度の予言マジックには我慢がならんのです。

特に酷かったのでいうと、トランプの表になにか書いて貰いそれをデックの真ん中に戻した状態から当てる、とかさ。まずトランプに書かせる理由がわからなくて不自然きわまりないし、デックの中に入れても演者がそれ持ってるわけだし隔離方法としてさっぱり機能してない。
とこういう駄作としか言いようのない駄作があまりにも多く、ページ数も多く、あまりにも不毛だったので途中で断念。2に至っては開いてすらいない。

基本的にこういうオムニバスとは相性が悪いようです。
もし面白い作品知ってる方が居たら教えてください、そこだけ読みます。



最新メンタル・マジック徹底解説! 林敏明
ウィザーズ・インの柳田昌宏が最も得意とするメンタルマジック作品集!

ウィザーズ・インの柳田氏、危険信号①。
オリジナル作品を年に200も作る、とか前書きに書いてあり危険信号②。
(ていうか個人選集なのかよ、タイトルから想像つかないよ。おまえの最新マジックなのかよ)
メンタルマジックと言いつつカード作品しかない、危険信号③。
クレジットが無くまるで全て一から考えましたという空気、失格。

主張ではなく空気なのがミソ。そういう誤解を招くように招くようにと計画的に記述されている気がする。なんかここまで来るとね、本人が書かず他者が筆を執るこの形式も、クレジット不備などについて責任の所在をはぐらかすため故意にやっているのではないかとさえ邪推してしまうね。
これは買わなかった本。まだ部室にあるはずだがいい加減破棄してしまえと思う。

いやちゃんとクレジット完備だったよ、とかだったら教えてください。買って詫びます。




ともあれ今年もよろしくお願いします。
最近はあまり欲しい本も出ないので、家に積んであるのをじっくり消化したい所存。


あと手品が出来るようになりたい。
もとい、不思議な手品ができるようになりたい。

切に。

2013年12月3日火曜日

Red Light: "Cards on the Table"



ほんとうならば、
ブログタイトルにも掛けて盛大に、

We Are Officially Greenlit!!

とでも叫びたかったところです。


しかし翻訳許可を求めたところ、
残念ながら、Sadowitz氏の答はNOでした。


というわけで、こっそりと8割方 訳してはいたのですが
Cards on the Tableの翻訳はストップです。

いや、一応最後まで訳しますが、これが世に出ることはありません。

法の抜け道的な物も考えなくは無かったのですが、
これが原作者の確固たる意思なのですから、
やはり私はそれを尊重しなければと思います。



気になる方は、是非、ご自身でお手にとって確かめてみて下さい。

非常に面白い作品が詰まっています。
ページ数も少なく、英語も平易です。

本書と、あとCard Zonesに納められた作品だけしか、
今は容易に手に入りませんが、
それらが後世に与えた影響は絶大です。


あるいは、もしどこかでお会いする機会があれば、
一つ二つ、演じれなくもないよう研鑽しておきますので、
お声かけください。


では。

2013年6月20日木曜日

Six. Impossible. Things.のおまけ


よくトップから2枚目とかにリバースカードがあって、それをデックの真ん中から出現させたいシチュエーションがありますが、そこでCharlier Cutするの嫌なんですね。S.I.T.だとCounterpunchの状況がまさにそれ。

特にHead Over Heelsとか、かなり効率的な技法なので、ここから余分な動作をしたくないなと。で、ここは以下のように変えています。

技法としては基本的な物で、この用法もどこで読んだか思い出せないです。


2013年4月13日土曜日

Waters先生なにやってんすか。




私淑するT.A. Waters 先生の新作DVDが出るとの報を受け、良い機会と大著Mind Myth and Magickの評を書きがてら、そういえば先生の本職はライターで、SFとかも書いておられた筈だよなあと思い出して調べてみたところ、こんな著作を見つけました。








そのスパイを愛せ

色事はシーン・パトリックの
あまり自重しない武器ではあるが
時として彼の方が
ヤられちまう事もある

(※訳は適当)





先生なにやってんすか!?

表紙が実にセンスがあってアレですが、内容もたがわず、ハニートラップ満載のスパイ物だそうです。敵のKGBハニートラップ要員に逆ハニトラを仕掛けろとかいう話。




……まあ実際は、John A Keelという人が書いたみたいで、Watersの名前も勝手に借用したようではあります。以下を参照。
http://permissiontokill.com/blog/2010/07/18/love-that-spy/

しかしただのパルプ本かと思ったら、パルプではあるけども意外と評価が高くって、読んでみたくなりました。私の英語力だと小説は到底無理なのですが、しかし表紙と筆者名だけでもネタとして所持しておくのはありか。



DVDの話に戻ると、WatersはMaven並みにスゴ味のある人だと思うていますので、動く先生にも期待です。EMCで放送されたという雰囲気たっぷりな映像は、さすがにL&Lに求めるのは無理が有りましょうが。

まじかっこいい。(http://img.skitch.com/20100716-1u7e47dss2wjqt5wg1gqkrjf1b.png)
怖いですよ。(http://littleegyptmagic.com/emc_ta1.jpg)
またひとつEMCを買わねばいかん理由ができてしまった。そしてビデオ提供者がBritlandだ。

しかし没後15年たって新作DVDかぁ。
没後DVDといえばWonder先生のレクチャーDVDが権利関係でなにやらややこしい事になっていましたが、そこは天下のL&Lですし、収録スタジオもまんまL&Lのようなので安心しててよいかな。

2013年4月1日月曜日

緑の蔵書票の一年目。分類が緑ではない話も

当ブログを開始して丁度一年なので、
総括とマジック以外の話をつらつら。


●手品本

書評55冊分あり我ながらどうかと思いました。
実際はパンフも多いのでそう大した量ではないはずですが、
そこからどれくらいレパートリーになったかと聞かれたら、
聞かなかったふりをしたくなるような費用対効果です。

まあ読み物として読んでる側面もあるので、よいのです。
ええ、よいのです。
ランキング的なモノにするとまあ以下のような感じ。

洋書:"Thinking the Impossible" Ramón Riobóo
和書:"The Amazing Sally vol.1 佐藤喜義作品集" 佐藤大輔 
冊子:"Tearing A Lady in Two" David Britland、"ブランク" タナカヒロキ

グランプリ:"Cards on the Table" Jerry Sadowitz



●ブログ的にふりかえって

もともと文章力をどうにかしたいというのが始めた動機のひとつだったわけで、
Ramón Riobóoあたりはまずまずですが、最近は長文化したり構成が定型化したりして、
それが故に筆が滞ることも多いので、本末転倒の様相を呈しはじめています。
なんで今年度はもっとざっくりとした短評指向にしたいと思います。

開設後、私の好きなマジックブログの筆者であられるきょうじゅさんからコメント頂戴したものの、
とんちんかんなツッコミをしてしまったことがしっかりログとして残ったり、
1度お会いしただけの大先輩に一瞬で身元特定されたりして、
ああ、ネットって怖いなと思いました。


マジック的に

Dani DaOrtizを生で見まして大変感銘を受けました。
あのスタンスの問題点なり、限界も同時に感じるところではありましたが、
それらさっ引いてもレベルが段違いの化物で、しかもまだ30歳ということで、
え、ほんとにそんなに若いの、
とか思ったのですがよく考えたらこれは2011年のことであり誰だ時間を吹き飛ばしたのは。

以来、外には出ておりませぬので、マジックイベント的なもので人と目を合わさず
ひたすら書を愛でている人がいてもそれは辛うじてぼくではないです。


その他

小説:
皆川博子の初期作品再選集が刊行されてしかも今後隔月で5巻を数えるとか、
短編集も文庫化に際して収録数増えるとか聞きまして、
私はいまうっかり解脱しそうなほどの法悦の極みにいます。

その皆川博子からみで西條八十の「砂金」を読みまして非常にたんびーで良かったです。
西條先生の自重しない女性遍歴「女妖」も楽しく読みました。
ファインマン先生とは別の方向で、
どう足掻いても埋まらないだろう経験値の差を感じました。

あとはディヴァインの新訳がやはり素晴らしい出来だったり、
マクロイ女史のサスペンスが面白かったりといった所でしょうか。
特に後半戦は、手品本ふくめあまり本読みに時間を割けない
読む体力が残ってない、で歯がゆいです。
読みたい本、山ほどあるんだけどなあ。


漫画:
八十八良「ウワガキ」がSFでラブコメで素敵でした。
この作者、長期連載は初と思われるのですが、
しっかり当初の予定通り(と思われる)巻数で完成していて、
アレなネタかと思ったのが実は伏線だったりなど構成も巧みでありましたが、
なによりそれら小難しいこと考えずとも、
ただただニヤニヤできるラブコメ度の高さがよかったです。
次回作にも期待。

あとは、九井諒子「竜のかわいい七つの子」の「犬谷家の一族」がミステリ好きとしては
笑い無しに読めない素敵な短編だったり、石黒正数の元アシさんだったという
つばな「第七女子会彷徨」もよかったり。二宮ひかるもちゃんと単行本が出て安心したり。



今年一番おもしろかった文章はコレ

clavisさんの時をかける少女(アニメ)評
http://clavis.info/wiki/The_Girl_Who_Leapt_Through_Time

同氏のアマガミインプレッション、アマガミssレビューもたいへん素敵でした。
文章が面白く、衒学も調査もぶち込み、んで、内容がアイオープニングであり、
もうすっかり憧れの人です。

またそれに絡んで、というわけでもないですが、
こんな映画は見ちゃいけない! の「けいおん!」評
http://d.hatena.ne.jp/otello/20120104
を読みまして、いままでぴんと来なかった「けいおん」の魅力というか、
けいおんと前述の時かけにおいて、ある種、共通な現代的キャラ造形に対して、
少しく理解が深まった気がします。


その他

4/1なので
「雑誌出します !」
「DVD撮りました !」
「Sadowitz訳したYO !」
とか考えないではなかったですが、気が付いたら、とき既に4/1で間に合うはずもなく、
特に最後のなどは自分がやられる側だったらぬか喜びも良いところであり、
場合によっては殺意すら湧くと思われたので自重しました。

来年までには何かしらユーモアも身につけておきたいところです。


どっとはらい。

2013年1月6日日曜日

わたしの好きな本




色々と積んだままに新年を迎えてしまいました。明けましておめでとう御座います。



ただ積んでいるだけで無く、読みかけで放置しているのがかなり有るのが、我ながらたちが悪い。読んだけど記事が書けていなくて放置というのも何冊かあります。やれやれ。


それらについて読んだり書いたり練習したりすべきではありましょうが、ここでは全力で現実から逃避し、あまり頭を使わないまま私の好きな本Best 5を短評と共に挙げてみます。いちおう完読済みの「本」体裁の物のみ。なおBest 5ですがその中での順位はありません。



"Card Fictions" Pit Hartling
 拙ブログでも取り上げましたし、最近になって和訳もされてしまいましたが、最高度のカードマジック本。それ以上、言うことがありません。


"Mysteries In My Life" René Lavand/Richard Kaufman
 ひとつのアクトを完全に描写しきった希代の書。片腕のマジシャンにして詩人、René Lavandの演技に触れられる数少ない機会です。氏は演出がすごいのですが、スペイン語話者なので中々わからないのです。最近、DVD MAESTROが出たので迷うところではありますが、トリネタは本の手順の方が好きです。


"52 Lovers 1,2" Jose Carroll
 スペインのJose Carrollのカードマジック本。もし魔法が使えたら、かくもあろう、という奔放で夢溢れる現象にうっとりとなります。カラーチェンジひとつとっても、ピンに串刺しにしたカードが変化する、グラスの中に入っているカードが変化する、といった具合。Dai Vernonに"スペインのマドリッドにはとんでもないカードマジシャンが3人もいる、Tamariz、Ascanio、そしてCarrollだ"と言われながらも、現在、その作品があまり知られていないらしいのが残念です。
 ただ西語圏ではやはり有名なようで、近年のスペイン勢の台頭とともに、氏の代表的な作品Reflectionの現代的なハンドリングが見られたのは嬉しい限りでした。これなら!がんばれば できる!かも!


"Life Savers" Michael Weber
 現代のほんとうの魔法使いが身につけておくべき魔法の本。身の回りの物をつかった、シンプルでクリアな不可能。こういった即席(風味)マジックの本はもっとあってしかるべきと思うのですがなかなか。即席、とは言っても、破った雑誌を元に戻したり、指を弾くと火の玉がとんだり、あげく時間を巻き戻したりと、本当に魔法のようです。
 なお、先のコミケで配布された冊子「週末マジシャンまいけるウェーバーZ」はWeber氏とは一片たりとも関係なかったのが残念でした。まあ告知ページで氏の未見の動画が見られたからよいか。


以上。
あれ、4冊だ。
次点としてはいくつかあるのですが、あと一歩抜きん出るものがなかった感じです。
特にメンタルは、数を収録する本だとどうしても重複して退屈になりがちで損をしているような。
名前だけ挙げておくと、

"The Magic of Ascanio" Etcheberry/Artudo de Ascanio
"The Mental Mysteries of Hector Chadwick" Hector Chadwick
"Absolute Magic" Derren Brown
"Cards on the Table" Jerry Sadowitz
"Relfections" Helder Guimaraes

といった所でしょうか。
なお、影響を受けたという所で言うと、

"Mind Myth and Magick" T.A. Waters

が非常に忘れがたい本です。この本の話もまたいずれできればと思っています。

2012年8月20日月曜日

"Dear Mr Fantasy" のおまけ/あるいは”Beyond Fabulous”における位置関係


Dear Mr Fantasyに収録されているChrist Acesのヴァリエーション、Beyond Fabulousを練習している時に思いついたことがあるので記録がてら。

第2段はダイヤのエースが表になる現象だが、事前に一回、7をカウントした際のカードを集めるときにカットしておくと、より”ひっくり返った”感が強くなるように感じた。

これはカードの出現位置が異なるからと思う。
原案通りに行っていると、7のカードとダイヤのAが現れる箇所は同じである。




一方、一度カットしておくと、ダイヤのAが現れるのはスプレットの別の箇所になる。



現時点では、別にどちらがよいという話ではないが、後者の利点として、
A「操作していない箇所に現れる」
B「最初のカードとは別の箇所に現れる」
ことから、
① カードが表になった
② Aはバラバラの位置にちらばっている
という印象は強まると思う。


一方で、現象の起こる箇所が散らばるので、やや散漫になる。個人的には気に入っているアレンジだが、ハイペースで演じる場合には向かないかな。

2012年6月24日日曜日

製本しました。/あるいは電子化による時代逆行。


L&Lが電子出版部門サイトL&L e publishingを立ち上げており、$50以上かけて手に入れたJ.C.Wagnerの本が僅か$9.95で発売されてしまった事には、別記事でも触れました。(値段改定がされたのか、現在は$14程度)

実は$300近くかかったCollected Works of Alex Elmsley も併せて$40で販売されており、心の痛手は癒えるどころかますます深みを増しておりますが。


ともかく、送料が掛からず絶版本が手軽に手に入るというのなら、これを利用しない手はない。とはいえ数十頁のノートならともかく、百頁を越える本をディスプレイで読むのは中々たいへん。あと蒐集家としての欲望も満足されません。

ということで、自家製本に挑戦。
今回は簡単な無線綴じで。



まず初トライ、J.C.Wagnerの7 Secrets



外見。
表紙を作らなかったのでとても無愛想。













見開き。
工作用紙で、しかも色々あって裏面剥いだので汚い。

印刷はモノクロレーザー。
紙は普通のコピー紙。

まあ実用には問題有りませんです。

























2冊目。
John BannonのImpossibilia

これも一発作製ですが、前よりは材料にこだわっています。
元々はハードカバーの本ですが、今回は残念ながらソフトカバー。



ちゃんと表紙を作った。
元デザインを真似て、Power Pointで作製。

白黒しか印刷できないので、真ん中部分をシールに印刷、ぺたっと貼り付け。


水色の光沢のある厚紙は、Loftで購入。
全切りサイズで100円くらいした。







中身。

撮影の関係でグレーにしか見えませんが、クリームシフォン紙(72kg)で、いかにも本っぽい質感と色に。




中身拡大。


頁右余白の真ん中当たりに、うっすらゴミ。
これは元データに載ってました。

親指で紙の腹が黄ばんだのを、そのままスキャンしたのでしょうかね。










タイトル拡大。

元のデータで、スキャン後に白黒二値化しているらしい。
上のゴミ問題もそうだが、文字もエッジが荒い。









誰だお前!ってなった若いBannon。

写真に変な濃淡が乗っているのは、L&Lではなく、おそらくうちのプリンタのせい。

イラスト本ならいいですが、今後図版が写真の本で製本するときは問題になりそう。





いずれハードカバーや綴じ本にも挑戦したいが、そうなると、A3ノビのプリンタや寒冷紗などが必要になるわけで、どう考えても元は取れない。シフォン紙もそこそこ高く、材料費だけでも結構かかる。


オルファのカッターナイフを買ったら嘘みたいに良く切れて感動。
やはり高い物には高いだけの性能が付随するのだな。


あまり器用ではないので、その上でどう精度を上げるかが今後の課題。
今回は一発作製で、しかも材料の性質をちゃんとしらべないままやったので、Bannon本とかは背表紙が一度ふやけて波打った感じに。美しくない。



活版印刷が出来て本は超高級品では無くなったが、しかし産業革命が軌道に乗るまでは、やはりとても高価だった。
その頃の本屋は本を売るのでは無く本を作るお店だったそうな。

本屋に行くと、本の中身がばらの状態で置いてあって、立ち読みとかして買うか決める。
そしたら革や綴じ方の種類を決めて、製本をお願いする。というような流れだったとか。


いま、正に時を遡っている心地。


2012年6月9日土曜日

自発性(観客)に関する小さな覚え書き




J.C. Wagnerの7 Secrets に収録されているAce-Two-Three-Fourという作品で気に入った箇所があったのだが、本記事の流れでは何となく書きづらかったので別枠で紹介。


この作品は小枚数でやるアンビシャスカード、いわゆるAmbitiou Classicというやつ。


個人的にはあまり好きなプロットではなく、(と言い出したら殆どのプロットは嫌いなのだが)特にアンビシャスクラシックはオチが今ひとつ整合が取れておらず、それをカバーする台詞も思い浮かばなくて、据わりが悪い。
自らを自明の窮地に追い込みつつ、効果的なエンディングがないという印象で、Wagnerの作品についてもその点は同じ。


じゃあ何が気に入ったかというと、3枚目。本記事の方ではそこで使われるMarloの技法について簡単に書いたが、ここではそれが使われる文脈に注目する。


というのは、それが実に効果的な”ひっかけ”だからだ。


2が上がってきた後、それをテーブルに捨てる。
次は3、と言いながらトップカードを”表を見せずに”ボトムに入れる。

『いや、ちゃんと3を底に入れたからね?』とここでMarloの技法を使ってボトムの3を見せるのだが、このタイミングと構成が妙。


というのも、このとき見ている人は”本当に3を底に入れたか?”という疑問をほとんど”自発的に”抱かざるを得ない。
しかもそれは演者がどうこう言ったり示したりするのよりも先行する。


そこに続く演者の動作、特にMarloの技法は、実にタイミング良く観客の疑問を解消する形になっていて、いわゆる”途中の動作”化していると同時に、緊張と緩和のコントロールにもなっている。



んで、これの逆が何かというと、例えばMaxi Twist系。

『こんな事が出来るのは実は5枚のカードを使っているから』

などと、別にこちらが疑問にも思っていない事を、マジシャンは突然言い出す。この台詞自体は観客にとって殆ど意味を持たない。マジシャンの都合だけで言われている台詞だ。

無論、ちゃんと演技に組み込めていればいいのだけれど、ただ台本を読むみたいに上記の台詞を言っちまうと、観客のメンタリティとしては置いてきぼりだなと思う。

こういう意味のない台詞の氾濫が、マジックのパフォーマンスとしての地位を貶めている。



そのへん、Wagnerのこの手順は実にうまいメンタル・フックが仕込んであると思う。
「現象のための動作」を、先にひっかけを掛ける事で、あたかも観客のリクエストで行った動作のように見せかける。

また、観客を食いつかせるという意味でも良い戦略。お客さんが”ただ見てるだけ”の客体としてしまうのはあまり好ましくないだろう



ちなみに、個人的にこの類のフックの最高峰はAscanio演じる、Ross BertramのAssembly。あれには気持ちよくだまされたなー。

2012年4月24日火曜日

レパートリー・ゼロの呪い。あるいは、Tommy Wonderの手品は簡単。

唐突に、手品がしたいという熱がわき上がり、しかし出来る手品をリストアップしようとして1,2個しか浮かばず、一気に熱が冷める。反動で厭世的な気分になる。


マジックを初めてかれこれ7年近くにはなると思うのだが、最初の半年ほどを除けばずっとこんな状態。レパートリーは一向に増えない。


手順を追える、技術的に問題なく、なめらかに行える、ばれずに行える、
という事と、
演じられる、人に提供できる、人を楽しませられる、人に伝わる、
という事の間には天地ほどの開きがあり、自分にはそれを埋める才覚が少ない、努力が足りない。
あるいは、実際以上に”開き”を大きく見てしまっているのだろうか。


実際、手品が不思議かどうかがよくわからん。
なぜ自分がそういう動作をしなければいけないのだったか、すぐに判らなくなる。

ただ不可能性があるだけで、そこに演者としてどう関与すればいいのか、難しい手順が多い。
というか、殆どの手順は、とりつく島もないほどだと、自分にはそう見える。


Tommy Wonderの手品は技術的にも演技的にも難しいのだが、しかし各動作について”マジシャンがどう感じているべきか”という点まで細かく設計されていて、共有できる楽しい不思議としてしっかりと完成している。

だからWonderの演技をまねするのは楽しい。
各動作にちゃんと、動機がある。体がいとも簡単に動く。


ただし、Wonderの通りに行ったら、自分は楽しくとも、コピーキャットのそしりは免れまいし、なによりただただWonderとの格の差を思い知らされるばかりでもある。


パフォーマーとしてのペルソナを形成せい、という話なのだろうが。
ああ、マジックできるようになりたいなあ。

2012年4月5日木曜日

”The Berglas Effects” Richard Kaufman / あるいは聖杯の虚像



”完璧な手法が存在したとしても、'ACAAN'は聖杯ではないということです。すなわち、手法を求めるマジシャンから見たら聖杯であるかもしれないが、現象から見る観客にとっては、聖杯と呼ぶほどの現象ではないと、私は信じているということです。”
加藤英夫 Cardician's Journal No.225


本書、The Berglas Effects (Richard Kaufman, 2011)はACAANという現象の伝説を作った男David Berglasの、カードの手順に焦点を当てた本になります。
伝説のACAAN / Berglas Effectの解説を含む、400頁にも及ぼうという大冊で、さらにDVDが3枚、赤青フィルムを張ったいわゆる3Dメガネが付いてくる豪華本です。


ACAANはAny Card At Any Numberのアクロニム。
相手の自由に言ったカードが、相手の自由に言った枚数目から出てくる、という不可能極まりない現象で、ここ最近ブームになっているようです。

さらに本書では、
『カード、数字の選択に一切の制限が無く』
『演者は最初からデックに全く触れない』
という限定条件を持って、Berglas Effectと区分しています。

ACAANは実に毀誉褒貶激しく、究極の不思議と言われる一方で、マニアのためのトリックでしかないと糾弾されてもいるようです。
後者の代表として、冒頭に加藤英夫の文章を引かせてもらいました。


また本書自体も非常に評価の分かれる本で、『退屈きわまりない』『Kaufmanは伝説を開示するというエサをちらつかせて、紙屑を高く売りつけた』などと、一部では酷い言われ様をしています。



本書を読了した上で、僕は、この本を傑作だと思いますし、
ACAANは究極の不可能の一つであると思いますが、
一方で、反対の立場の意見もよく理解できます。



Kaufmanは冒頭で次の様な事を述べています。
”70頁に及ぶ、Berglas Effectを解説した項はある。しかしそれ単品で読んでもきっと意味はないだろう。400頁ある本書全体を読んで初めて、Berglas Effectを理解できる可能性がある。”

タネを割ってしまうと、Berglasが用いたACAANの”仕掛け”は、おそらく誰もが一度は考えた解法ではないか思います。


他の手順、Think A Cardにしても、「相手が心の中で決めたカードを当てる」というのではなく、「相手が心の中でカードを決め、口にした後で、そのカードが現れる」という形です。
プロブレムへの解答としてみた場合、及第点はとても無理でしょう。
技法も手順構成も、洗練されているとは言い難く、はっきりと言えば原始的です。


だからトリックを、秘密を求めてこの本を手に取ったら、たくさんの方は失望されるでしょう。
実際、僕も失望感を覚えたのは確かで、本書を駄作と呼びたくなる気持ちもわからいではありません。






しかし、こんな原始的な手段が通用し、かつ世界でも有数の名声を獲得しているというのもまた真実です。ほんとうの”秘密”はそこにあるのだ、というのが本書の、本当のテーマでしょう。


『ない』を『ある』ように見せる、伝説の作り方です。


もちろん本書で解説されるのはDavid Berglasの個人的な手法であり、彼にしか実現できません。しかも明確な”手法”としては表記されず、読者はきれぎれのエピソードや、エッセイ、繰り返される古くさい手順の行間を読まなければいけません。


手品の解説を通じてBerglasの哲学を描写しようとした本書は、どちらかといえば伝記に近い一冊です。
だから、払った対価に見合った”機能”を求めるのは間違いでしょう。






僕は楽しめました。感じるところも多くありました。
あなたがどう感じるかは、残念ながら判りません。








本のレビューは以上ですが、「ACAANは聖杯ではない」「ACAANは魅力的な現象ではない」というような意見に対する現在の見解も述べておきます。


ACAANは聖杯ではない、というのは、警句としては正しいでしょう。現象だけをなぞった、昨今氾濫しているACAANには僕も辟易しています。


一方で、ACAAN以外にカードマジックの聖杯と言えば、あとはOpen Predictionか、Think A Cardくらいしか思い浮かびません。たとえばTriumphは、どれだけ魅力的な現象で、どれだけ不思議でも、相手の知性によっては露見し得えます。
考えたら解る、というのでは、伝説としては弱い。
仮にTriumphに究極の手法があったとしても、観客にとっては他人事の現象にとどまってしまうでしょう。


Berglas Effectは、絶対に見抜けず、それでいて、あのとき違う数字を言っていたら、違うカードの名を口にしていたら、と観客を思考させ続け、決して解けない謎を相手の人生に刻みつけます。


こう言うと、今度は「パズルはマジックじゃない」という声が聞こえてきそうです。
なるほど、マジックではないかも知れない。
だったらどうしたと言うのでしょうか。
Berglasは伝説を演出したかったのであって、マジックは手段に過ぎません。




「現象から見る観客にとっては、聖杯と呼ぶほどの現象ではない。」
「ACAANは魅力的な現象ではない」
これについては、なんというか、ここまでの伝説になっているという実例がある以上、それだけのポテンシャルを秘めた現象であるのは自明ではないのか、としか言えません。


現象が魅力的ではない。それは正しいかもしれません。
しかし、プレゼンテーションと手法次第によっては、たとえ現象の本質がつまらなかろうと、伝説として語られるほどの『体験』を残せる。
それがBerglasの伝説だと、僕は思っています。








追記
Think A Cardの手法について、確かに原始的と言いましたが、
その分、信じられないくらいに柔軟です。
カードあての最も単純で、理想的な形かも知れません。
練習中です。

Berglasのメンタル手順を解説した The Mind and Magic of David Berglas (David Britland, 2002)という本も出ていますが、
こちらは既に稀覯本になり、オークションで5~10万円に跳ね上がっていて、とても手が出ません。

2012年4月2日月曜日

はじめに / 水と油だって?

この頃あまりに文章を書かざれば、
構成力の落ちたる事、目を覆わんばかり。

というわけで、じゃあ頭使わずになんか書こう、
取り敢えず書こう、という見切り発車ブログです。



趣味である奇術書のレビューをメインに据えるつもりです。
洋書のレビューってあんまり見ないし需要があるんちゃうかな、
という目論見だったのですが、需要がないからあまり見ないのかもしれません。
まあいいや。



あと奇術の雑感もつらつら書こうかと思います。
好みが非常に偏っており、また創作型ではなく改案型である以上、
特定の作風に対して辛辣な事を書くかも知れません。



例えば、僕は水と油という手品が嫌いです。


赤より黒のインクの方が重いとか、
いい歳して馬鹿馬鹿しい事を言わないでくれません?


無論の事、ユーモアとしてちゃんと成立させられていれば、
大変楽しいトリックでしょう。
でも、それが出来ていない事例もかなり多いように感じます。


だから、
「単なる赤と黒の分離ではただのトリック、
『水と油』というプロットがあって初めて、意味を持ったマジックになる」

という実に画一的なプレゼンテーション論も嫌いですし、
くだらない思考停止的な『プレゼンテーション』を量産するという意味では、
害悪ですらあると思っています。





そもそも、Oil And Waterの名手として知られるRene Lavandは、
水と油のプレゼンテーションを使用してないですしね。





さて、早速口が汚くなってしまいましたが、
僕はこんな感じの人間です。

何かしら、あなたの刺激になれたらば、
これ以上ない幸いです。