2013年12月13日金曜日

"Missing" 新沼研




Missing (新沼研, no date)




"観客にトランプをよく混ぜてもらった後、自由に1枚のカードを選んでもらいます。


観客自身の手で、カードをデックの中に紛れ込ませてもらいます。

一見、観客のカードを探し出すことは、全く不可能に思われる状況の中、
マジシャンは確実に観客のカードを見つけ出します。

(観客から借りたトランプで即席に演じることができ、即座に繰り返し演技することができます。)"

マニアも騙す新原理、MKCLの発見!
そして思いも寄らぬ発展系までも解説。

MAGIC誌の名コラムTalk About Tricksでも特集が組まれた、新進気鋭のクリエイター新沼研の不可能すぎるカード当て。


観客が混ぜたにもかかわらず、というのがこのシリーズのコンセプトらしいです。前作は持っていないのですが、今回は対一人でしかも新原理を謳います。


これがちょっとすごい原理で






なんて。

言うとでも思ったかぁああああ!!!




何が!!
新原理だ!!!!


これは!! ただの!! Distant Keyじゃねえか!!!!!!!!





たたくと決めたのでコレは徹底的にたたきますけど、お粗末も良いところ。


今でこそ、ショップでは”古典原理の再発見”と唄ってますが、これ販売予約開始した時点では”新沼研の頭脳が産んだ新原理!マニアをも騙す!”みたいに唄ってましたからね。

いやさ確かに、これを独自に発見したこと自体は凄いと思います。それは並々ならぬマジックのセンスであろうと。そしてマジックにおいて、過去の発表作全てをチェックするというのもまた不可能です。特にこれなどは、あまり人気が無く使われない原理でもあります。仮にIbidemの××号とか、New Pentagramの△△号に載ってる、とかなら仕方ないですよチェック漏れは。でもこの原理の手近な参照元って、カードマジック事典セルフワーキング・マジック事典 レベルですからね。


そして発覚の経緯もお粗末きわまりない。
クイズに正解した人に先行プレゼント!とやって当たった5人だか7人だか誰かにつっこまれて、発売の本当の直前、というか実質的にはリリースしてから判ったという次第。

つまり全国のマニアから7人をランダムピックアップした程度で、元ネタ重複が判るレベルによく知られた原理という事です。先例をあまり知らないように情報を絞った環境で創作する、というのは発想を柔軟にするためであれば、有りかも知れない。でもなんですか、発表前にまともに人に見せてもいなかったんですか新沼氏は。それで”新原理”なんて広告を大々的に打ったのですか?仮にもマニアを相手に商売している人ではなかったのですかあなたは。


本の内容自体は、そんな言うほど悪くはないです。
ただ発表までのプロセス、内部でのスクリーニングがあまりにお粗末であることが露呈しました。はっきり言ってこれは信用をなくすと思う。というか、僕は信用を完全になくした。3 Secrets とかは割と好きで好意的な印象も持っていたのですが、よほどの事がない限り、もう新沼研の関連作品は、”新沼”というだけで購入検討さえしないでしょう。

修正後の売り文句でさえ、"この原理を知らない方にとっては、この原理を知るだけでもこの解説書を読む価値は十分にあるでしょう。"と宣う始末だものなあ。それならセルフワーキング・マジック事典ジョン・バノン カードマジックCard College Light Seriesとか読めばいいですよ。コスパ的にも内容的にも。


書いているうちに当時の怒りが再燃してしまいましたが、改めて公正に言っておくと、経緯が酷いだけで内容自体はそんな悪くもないです。


Missing:新原理MKCL Distant Keyによるロケーション。ハンドリングはあまり好きではない。繰り返しの工夫などは良。

Missing Effective:上記現象の舞那遊による演出案。典型的な「理由を後付けしている感じ」で、マジシャン側の都合が見え隠れしてあまり好きではない。文化的下地がない我国ではやはり難しいな、カット。

Hunter:Jokerが選ばれたカードをじわじわと追いつめていく。延々と配る必要があるが、配る理由はあるし、配りながら事態が進行していくのが見えるのであまり苦にならなそう。現象も面白い。

Mirror:相手が持っているファン(裏向き)の中から、相手のカードを見事に当てる。相当無意味にごちゃごちゃやるけど、それでも当たる瞬間は気持ち悪いだろう。

Distance(初回限定):Missingとは関係なし。相手がカードを混ぜ、選び、もう一度混ぜた状態からあてる。セット面倒だけど優秀な不可能パズル型マジック。


MirrorとHunterは、どちらも現象としてかなり気持ち悪いし、原理の応用としても面白く、出来は悪くない。というか良い。とても作業っぽいけど、作業っぽいけども、悪くない。ふつうDistant Keyから想定しないような現象で、こういう展開案を出せるのは凄い事です。
文章直して、Distant Keyの応用現象集 冊子として売れば良かったのにね。それだったらとても評価されたとおも


あーそれでも、この作品点数で2500円は、ちょっと、ないかな。





追記。

ところで、このタイプの手法を”観客に混ぜさせた”と謳うのは、すごく違和感有ります。
Six Impossible Thingsの時にも似たようなことを書きましたが、多くの手順は、どうにも制限がありすぎて堅苦しく、「私があれだけ混ぜたんだからもうどこにあるか本当に判らない」と観客に思わせるに至らないような気がします。

というか観客に混ぜさせてなお当たる、って書かれていたら、普通「選んで戻した後、混ぜる」と思いますよね。Missing 予約しちゃったのは、それを可能にする新原理を期待してたのです。大変に残念でした。

まあ、よく見たらそこは「紛れ込ませて」としか書いてないので、それは私の迂闊であり、逆恨みに過ぎないのですが。

2013年12月3日火曜日

Red Light: "Cards on the Table"



ほんとうならば、
ブログタイトルにも掛けて盛大に、

We Are Officially Greenlit!!

とでも叫びたかったところです。


しかし翻訳許可を求めたところ、
残念ながら、Sadowitz氏の答はNOでした。


というわけで、こっそりと8割方 訳してはいたのですが
Cards on the Tableの翻訳はストップです。

いや、一応最後まで訳しますが、これが世に出ることはありません。

法の抜け道的な物も考えなくは無かったのですが、
これが原作者の確固たる意思なのですから、
やはり私はそれを尊重しなければと思います。



気になる方は、是非、ご自身でお手にとって確かめてみて下さい。

非常に面白い作品が詰まっています。
ページ数も少なく、英語も平易です。

本書と、あとCard Zonesに納められた作品だけしか、
今は容易に手に入りませんが、
それらが後世に与えた影響は絶大です。


あるいは、もしどこかでお会いする機会があれば、
一つ二つ、演じれなくもないよう研鑽しておきますので、
お声かけください。


では。