The Holistic Approach to Magic: 7 Possible Ways to Perform the Impossible!(James Hope, 1982)
古いが面白い、本格的な入門書。
500部限定。
Holisticは全体的、全体論的、包括的という意味。この本では完全な初心者を対象に、7つの手順を通じて、クロースアップ・マジックを多面的に解説していきます。つまり単なるやり方(メソッド)だけでなく、手順の狙いやセリフ、ミスディレクションなども含めた内容です。特に、誘導的なセリフ、現象が起こる場所と技法を行う場所を離すディスタンスの考え、タイム・ミスディレクション、技法と同じ操作を先に行うことで観客を慣れさせること、基本技法からどう自分らしいエフェクトを作るかなど、とても高度な内容も含みます。
重要な理論や考えが詰め込まれた前半が特に秀逸です。前半手順はグラススルー・ザ・テーブル、紐への指輪の貫通、コイン技法を援用したクラッカーの消失。後ろ半分はカードですが、ミニ・カードが出てきたり、カードが半分に切れたりなど。全体を通してほぼ技法を使わない代わりに、全体的に現象のバリエーションが豊富で、また少人数からかなりの大人数まで通じるプロっぽい高い実用性の手順です。一方で、ちょっとサカー風味が多かったり、ネタか本気かわからなかったり、という欠点はあります。セリフも大事なものしか抑えていないので、本当に初心者向きだとしたら、ちょっと不親切ではある。
1982年としては出色のできでしょう。流石にいま、わざわざ洋書で取り寄せてまで読む意味があるかとまでは思いませんが、入門書などを書こうと思っている方がいるなら大いに参考になると思います。