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2022年3月25日金曜日

"Top Secrets" Terri Rogers

Top Secrets (Terri Rogers, 1998) 

Terri RogersのSecretsトリロジー最終巻。

最終巻にふさわしく、かなり限定的な内容。というのも収録されている11作品のうち、かなりの部分を、単品販売されていた売りネタが占めるからだ。Paul HarrisのCardboard Connectionにトポロジカルなパズルを組み合わせて観客を煙に巻くBoromian Link、巧緻なブックテスト(実際には本ではなく半ぺらの紙を使う)Word of Mind、張り合わされた2枚の穴あきカードを折りたたむと表裏が入れ替わるStarGate、それから木製のブロックに通された紐をリングが貫通するBlockBuster*まで解説されている。もちろんその分、加工などの手間は増えるのだが、実に最終巻にふさわしい内容だ。

*ざっくり言うと、Tenyoのリングミステリーみたいな現象。

これら売りネタ以外にも、本当に長さの変わってしまう『錯覚定規』があったり、氏の創作をステップごとに追っていく内容があったりして、非常によかった。個人的なヒットは、切れ目のないベルトに通されたバックルが、表裏ひっくり返ってしまう現象。いかにもパズル的な解法と、それでは説明のつかない(しかしタネを知ってしまえば思わず脱力しちゃうほどシンプルな)解法の組み合わせは、これこそマジックの醍醐味ではないだろうか。

……ここまで書いて思ったが、SecretsMore Secretsが気に入った人であれば、俺が何を書こうが本書を買うだろうし、逆にそれらが肌に合わなかった人は俺がここで何を書いても買わないだろうし、……このエントリの意味とは?

……まあともかく、個人的にはたいへん満足。欲を言うなら、これに限らずもっともっと、さらに多くのRogersの作品が読みたかった。それほど面白かったです。

2022年3月23日水曜日

"More Secrets" Terri Rogers

More Secrets (Terri Rogers, 1988)


腹話術師でトランスセクシャルTerri Rogersの第二作品集。Lybrary.comのA4組み直し版で57ページ、15作品程度の小ぶりな本。第一集Secretsをかなり以前に読み、ずっと記憶に残っていたのだが、このたびふと続刊を手に取った。感想は第一集と大きく変わらないのだが、これがいま、とてつもなく面白かった。

いやだってそうだろう。観客が桁を自由に入れ替えた複数の数の合計が、あらかじめ堂々と書かれていた数と一致したり、消えた観客の指輪が砂時計の中から見つかったり、カット&リストアード・ロープをやろうとしたらハサミが見つからず、なんやかんやあってロープの真ん中にハサミが出現しロープは元より長くなったり、同じ物体を見ているはずなのに観客Aと観客Bの証言が食い違い、それが客席のその他の観客とも食い違ったり、そんなのみんなやりたいに決まってるのだ。

雑だったり大胆すぎたりする手順もあるし、コメディアンゆえか台詞のクセが強かったり、そもそもどう演じれば良いんだコレというものもある。けれどこんな愉快な手順がならび、それでいて時には、恐ろしく不思議な現象もぬけぬけと演じてみせる。ああ、僕の好きな手品ってこういう事なんだなあと心洗われる思いでした。

最近は出版が盛んで、出る本の質も本当に高く、それ自体は間違いなく良いことなのだが、どこか閉塞感のようなものも感じていた。それを、この底が抜けたような本は吹き飛ばしてくれた。

Terriの第三集Top Secretsも買って、もったいないけどもう読んでしまいました。かわり屏風や錯覚定規のようなカラクリ玩具が好きな人には特におすすめのシリーズ。

2018年5月31日木曜日

"Turnantula" Bob Farmer


Turnantula(Bob Farmer, 2018)

 作品自体はそこまで高く評価しないのだけれど、なぜか惹かれる著者というのがいて、たとえば僕の場合はBob Farmerがそうです。このTurnantulaという冊子は、Turnantulaというターンノーバー技法とそれを使ったさまざまな手順を解説した72ppの冊子で、先に言ってしまうけれど、手順自体はあんまり面白くありません。ただ本の構成は非常によかった。

 本書は技法とその使用例の解説書なのですが、販売ページに行くと、技法の実演動画が置いてあります。しかもこの動画、解説までします。つまり最初に裏を明かした上で、本書を売っているわけです。単体技法にフィーチャーした本として、非常に誠実な売り方でしょう。

 まあ……残念なことに肝心の技法は、動画で見てもそこまで魅力的ではありません。ハーフパスの亜種なんですが、自然な動作に擬態している割には、どうやっても気配が出そうというか……。ただ商品の売り方としては非常にいいと思いましたし、どういう現象に仕立てるのかという興味もあり買いました。

 まあ……残念なことに、技法自体がちょっといまいちなので、どの手順にもいまひとつ食指が伸びなかったです。ただパケットからフルデック、即席からガフ、有名プロットから特殊なものまで、かなりいろいろな方向性を示しています。ハーフパス技法なのにデックがケースになる変化現象までありました。他の人の作例も載せており、これも非常によいアクセントになっています。

 気に入ったのはDavid OestreicherのSympathetic Turnantulaで、赤4枚黒4枚で行う奇妙な同調現象。あとおまけで載っているRemraf Reversalという技法は、Turnantulaより用途は狭そうながら、非常に使えるやつではと思います。こちらはBraue Reversalの親戚みたいな技法です。上ではいろいろ言いましたが、Turnantulaそのものも、注視下でなければかなり使えるように思います。

 そんなわけで「単一技法をあつかった冊子」としては非常によいものでした。動画で見て技法が気に入った人はマストバイですし、そうでなくとも、単に読んだり研究したりするのにとてもいい内容です。

2013年3月21日木曜日

"Secrets" Terri Rogers






Secrets (Terri Rogers, 1986)



マジシャンで腹話術師でトランスセクシャルのTerri Rogers初作品集。この後 More SecretsTop Secretsが出ているみたい。

Trap Door Cardの改案、Star gateに惹かれたのがそもそもRogersに興味を持ったきっかけ。
Rogersの名前は知らなくても、ブロックに通した紐にリングが貫通するBlockbusterは、そのものでなくても、親戚筋を見たことある人は多いだろうと思う。テンヨーのリングミステリーなんかも似てるね。

ああこれぞマジックと思わせる、面白い作品が多かった。マジック、っても技巧、原理、など色々あるが、Rogersは、こう、いかにもな”タネ”のあるマジック。


初っぱながカミソリ呑みだったので、パーラーメインかと思ったが、意外にカードマジックが多かった。

技法的にはTip Over Change(Switch)によるフォースだけでつまらないが、選ばれたカード以外の表が真っ白というラストが鮮やかなBlank Amazement。
Bizarre Twistのバリエーションで、2枚と1枚のアンバランス交換現象Chinese Twist。
スプレッドするたびにカードが小さくなっていく、Smaller'n That。

などなど、シンプルでわかりやすい。ギミック多いし検めNGが多いし、解法としても、必ずしも美しくはないから、個人的にはそりの合わない方向性ではある。また、いささか盛りすぎというか、「消えて、別の場所から現れて、オマケに裏の色が変わって」いたら、そりゃもう移動じゃ無くて別のカードやんっていうね。
ただ、アイディアを見るだけでも楽しいし、不要は削げば良い。Chinese Twistは、肝の原理はギミックいらないし、なによりシュリンク、ストレッチ、バニッシュと既にHarris自身によって開拓され尽くしたかと思っていたBizarreに、こんな手口もあったのねーと感心。

あと、流行だったのか、 Pop out Move系の技法が2つ解説されて、技法的な手応えもある。


カード以外では、からくり屏風を利用したウォレットや、一瞬で向きが変わる矢印など、パズルちっくな原理をマジックに仕立て上げる手際が素晴らしかった。

この後者のパターンの創作群を期待していたのだけれど、思ったより数がなくて残念。向きが変わる矢印、Pirish Compassは、他のオブジェクトと組み合わせても面白そうなので、なんとか形にしてみたいねえ。


文章はあんまり読みやすくなかったけれど、いかにもマジックまじっくしていて、好もしい創作群。目当てだったトポロジ系、パズル系が少なくって不完全燃焼だが、次への期待は薄れていない。後の巻では、BlockbusterやStar gateも解説されているらしいしー。

2013年2月1日金曜日

"Parallax" David Britland





Parallax  (David Britland, ? )


トポロジカルなカードマジック。およびおまけ数題。



収録は4つ。
・Parallax トラップドアカード
・Hatch22 トラップドアカードのギミック版
・Twisted Sisters カードの貫通。
・Lady notes Tearing a Lady in Twoのハンドリング改案(部分的)



またまたBritlandの単品小冊子。発行年は表記されておらず、調べてもよくわかりませんでした。たぶん85~86年くらい? Lybraryにはお世話になっていますが、発行年しかりレイアウトしかり、もうちょっとしっかりして欲しいところです。


今回のお題はトラップドア・カード。誰でも出来るかんたんマジック的な本でも良く取り上げられるので、わりと馴染みがあるのではないでしょうか。僕が持ってるのだとMichael Weber LifeSavers にA Better Mousetrapが載っています。あと氣賀 康夫 ビギナーズマジック にも素敵なのが載っていましたな。

カードの真ん中を四角く切って、一辺だけ残し、ちょうど開き戸のようにしてある。そこをつかんでもらっている状態で、カードの表裏がひっくり返る、とそういう手品。マジックというよりパズルの要素が強いですねえ。

原理としてはこれだけで、ほとんど付け足すような要素もなく、うえに上げたのも基本的にはプレゼンテーションや道具立ての違いだけで、現象面でのヴァリエーションはあまり知りません。このParallaxでもそこは同じです。

とはいえ、いまになってから改めてやり方を読むと、なるほど不思議だなあと。「表裏、どっちを持っているっけ?」と、各段階で執拗に聞くのは、現象がはっきりするだけでなく、折る時間をカバーできて良いなと思います。
追加手順Hatch 22は、本当に不可能物体になってしまう(戸のところだけ裏返らない)というもので、通常のトラップドアからスイッチして行うべきもの。

あともう一つ、Twisted Sisters。これがなんとも気持ち悪くてよかったのです。表と表が向き合うようにした2枚のQを、別のカードに挟み、押し込むと、反対から裏と裏になって出てくるという物。KrenzelのTunnelとかJenningsのClose-up Illusion、HarrisのBushwackerに似てるね。即席じゃないのが残念ですが、ブリッジサイズであればこの後Card Warpにも繋げられるし、面白いと思います。視覚的にとても鮮明で不思議です。
マジックってどうしても、「前の状態を覚えていないといけない」時間をまたいだものが多く、ストレスなので、これみたく、今まさに明らかに目に見えておかしい、という手品をもっと仕入れたい。ただどうしても仕掛け物になってしまうのだよなあ。
処理のためにもCard Warp等につなげたい所ですが、あまり資料を持っていません。Card Warp Tour を買うか……いやしかし。


改めてトラップドアというのも何ですが、7ドルの価値はありでした。良い刺激になって、面白かったです。
Lady Through and Throughの記事で当たりが無いとか言ってごめんなさい。カード作品集が実験的なだけで、単品ノートは基本的にどれも面白かったよ。


なお、読んでいて人称であれ?となって調べたのですが、Terri Rogersはトランスセクシャルだったのですね。知りませんでした。どうもMilo & Rogersとごっちゃになってたみたい。
そしてついでに調べた、そのTerri RogersによるStar Gateは一般的なTrap Doorを発展させた素晴らしい物でした。
Trap Doorに発展性ないとか言ってごめんよ。あのときTop SecretsMore Secretsを買っておけば良かったよ。

2013年1月20日日曜日

"A Lady Through and Through" David Britland




A Lady Through and Through (David Britland, 1984)


David Britlandの小冊子。Lybraryで購入。
もうなかんべと思っていたが、最近また何冊か現れた。まとまった作品集ではない、例えばこれのようなのとか、ホーンテッドデックとか、そういう単品ノートはまだまだ結構あったみたい。


この冊子は貫通現象×2。
いずれもカードがカードを貫通するもので、作品はそれぞれApril、Juneと月名でありつつ女性名というちょいとセンスのいいタイトル。ついでに表紙もセクシー。

April:Qを、別のカードがするりと貫通する。折ったりなどせずノーカバー。Qの表面に溶け込むようにして貫通。一応、検めも可能。

June:スリットの空いたカード2枚で、カードを挟む。スリットに別のカードを差し込むと反対側から抜けてくる。もちろん、挟まれたカードは無傷。


どちらもギミック自作。うーん、今ひとつであるなあ。前者はきわどい。ノーカバーなので当たり前だが、限りなくぎりぎり。後者は貫通がわかりにくい。一般的な貫通物はペンなどを”直角に”突き立てるけれど、Juneでは全て同じ平面になってしまうので、今ひとつ貫通したっぽさに欠けるように思う。反対側も見せられないしなあ。

というわけで今ひとつでした。ふいと思い出したが、貫通2連続、しかも一つはノーカバー、もう一つは挟み物といえば、泡坂妻夫魔術館の一夜 所収の「影のごとく」「ジャンボペネトレーション」だなあ。ペネトレーション物は殆どしらないので何とも言えないけど、Britlandと泡坂妻夫なら泡坂先生の作品の方が断然おすすめです。魔術館の一夜は絶版だけど、まだまだ中古がお安く買えるので、未読の人は買っておいてもいいと思うよ。小ネタばっかりだし記述も癖があるけど、個人的には東京堂の泡坂妻夫 マジックの世界よりも好きだったり。

しかしBritland、思い返すとコレ!というアタリ作品は無いような。それでもついつい買ってしまうのが自分でも不思議。実験的でありつつも、品の良い洒落た感じが好きなんでしょうか。

2012年12月19日水曜日

"Cards on the Table" Jerry Sadowitz





Cards on the Table (Jerry Sadowitz, 1989)


奇人Sadowitzのカードマジック作品集。



Sadowitzはイギリスのマジシャンでありコメディアン。マジック界では、作品盗用についての偏執狂的な言動で知られるようになってしまいました。一部、彼と仲の悪い人々からは狂人扱いされたりもしています。
実際、Sadowitzのサイトなり、彼が発行するCrimp Magazineの表紙なりを見ると、かなり危険な空気が感じられますが、一方で作品自体の評価はとても高い。
日本では、実践カードマジック事典にMr.E.OZO名義の作品Out of Sight が載っていますがこれがまた素晴らしいのです。ただこれ、無断で掲載したみたいで、こういう諸々がSadowitz氏の他の作品に触れることを一層困難にしてしまっているわけなのですが……。

残念ながら、それやこれやがあって、Sadowitz氏は現在、極めて限定的にしか作品を発表していません。前述のCrimpも入手困難です。いまでも一般的に手に入るのは、このCard on the TableCard ZonesCards Hit などの冊子を合本、Peter Duffieとの共著)の二冊。
このCard on the Table、裏表紙には”彼の最初のハードカバー本だぜ”とか書いてあったのですが、私が入手したのはソフトカバーでした。2003年の復刊版だからでしょうか。ちょっと損した気分でありつつも、自らがハードカバーだと主張するソフトカバー本という撞着した物体に奇妙な愛着も覚えつつあります。
あとLybraryでe-bookも出ていますが、Sadowitz氏は、Martin Breeseに許可したのは実体版の販売のみで電子版は契約違反だと言ってたハズなので、e-book版の購入は控えました。

さて本書は二十と少しのカードマジック+技法を解説した本。
いやねえこれがめちゃくちゃ面白かったのですよ。比較的クラシカルなプロットに対して、どれも面白いアイディアやひねりが加えてあり、実に不思議に仕上がっています。

アニメイト、カード当て、スペリング(?)+マインドリード、Out of This Worldの変種、トランスポジション、時間逆行(?)、トライアンフ、財布に通うカード、ギャンブル、Out of Sight Out of Mind、ユニバーサル、トーンアンドリストア、マリッジ、ピプスの移動、アンビシャス、カード To ポケット、エスティメーション。

もうほとんどの現象を網羅している気がします。その上で、7~8割方が身につけてみたいと思わせる内容。なかなか無い事ですよこのクオリティ。

二つ三つ紹介を。
Aces in King 赤と黒のAのトランスポジション。でもAだけだと、畢竟、持ち替えるだけで交換できる。それじゃあ簡単だから、と、どんどん条件を足していく。まず赤のAは赤のKの間に、黒のAは黒のKの間に挟む。さらに赤はデックの中に入れて触れなくしてしまう。この条件下でも、黒のパケットがデックに触れた瞬間、黒のKから赤のAが現れ、デックを広げると赤のKの間に黒のAが挟まっている。
自分でハードルを上げていく辺りのセリフとやりとりが面白くて、お気に入りです。

The Backward Card Trick 一般的なカード当てを逆回しで行う。観客のカードを当ててから、観客にカードを引いて貰う。奇妙。

The Healers 破いたカードをQの間に挟むが、次の瞬間には元に戻っている。現象自体と処理が並列して行われ、ほとんどエンドクリーンなのが素敵です。

Name A Card Triumph 選ばれたカード、ではなく、相手が言ったカードで行うトライアンフ。Benjamin EarlがDVDで似たことをやっていますが、Sadowitz氏は自分へのクレジットが不十分だとえらくお怒りでした。

こんな感じでどれも面白いのです。こういう”不思議さ”やプロットとしての”求心力”のようなものは、プロとして実際に使う手順だからこそでしょうし、またセンスに依るところも大きいでしょう。すっかりファンになってしまいました。
ハンドリング、現象、演出に不合理な点が少なく、そこも好みです。

手法としてはターンノーバーパスや、ダブルディール、ボトム+トップのターンノーバーなどが多く、なかなか難しいものもあります。また解説されていない技法もあるので、ある程度の知識がないと大変かも知れません。
全体にWaltonの影響が顕著ですが、個人的な感想としてはWaltonよりもSadowitzの方が格段に面白かったです。
これは私自身の読み取り力と、Waltonの非常に簡素な記述スタイルのせいもあるのでしょうが、ひねりもアイディアも単発ぎみで実験的なWaltonより、それをしっかりとしたプレゼンテーションと構成でマジック仕上げているSadowitzの方が即戦力であるのは間違いないです。
なんで、Complete Walton 復刊の報も聞きましたが、まずはCards on the Table を手に取ることをお勧めします。決して、古本で集めた直後に復刊とかやめてくれよ、とかそういう僻みではありません。


という訳でSadowitzのCard on the Table でした。面白かったー。正道から外れた、ちょっとひねくれた感じがあるのですが、そのひねりが相手の興味を引くような形で上手く演出されているのが良かったです。
カードの本というとPit HartlingのCard Fictions という実にどうしようもなくハイレベルな本があって、それを超えるのは非常に難しく、このSadowitzの本もあれほどの不思議ではありません。手法もプロットも、一般的なカードマジックの流れにあるため、マニアも引っかけられる作品というのはあまり多くはない。
けれど、だからこそ、「いわゆるカードマジック」の本としてはCard Fictionsより優れていると言ってもよいかもしれません。

こういう本こそ和訳してほしい、なんなら和訳したいくらいなのですが、Sadowitz氏にこのあたりの話題を振る勇気は持ち合わせていません。

2012年10月29日月曜日

"Eni-Where"&"Therm-o-Chromic" Redek Makar




Eni-Where & Therm-o-Chromic (Redek Makar, 2011, 2011)








コインの資料は珍しいのですよね。
そんなわけでRedek Makarのe-bookをLybaryより2品。なんでまとめて取り上げるかと言えば、はっきり言って片方は単独記事書くのも面倒な作品だったんです。まあその点は追々。
あと今回、けっこう前に読んだっきりで、あまりちゃんと再読しないで書いています。
ご容赦ください。


Eni-Whereyoutube

っていうわけでこんな技法です。初めて見たときは魂消ました。
流石に何回も見ればわかるのですが、久々に綺麗でビジュアル。今風の、ややフレーム化程度が高い技法ですが、割に応用範囲も広そうだなあと思い作者への敬意も込めて購入。
黒白反転(黒字に白文字)という、e-bookでも印刷してしまう派にはキツい体裁なんですが、後でLybaryの方から「黒白って目がちかちかするよねー、よけりゃあ白黒版も送るけどー」とのことで印刷向きなのも手に入ります。

で、まあ何がこの作者の問題かというと、技法的には非常に良いのですが、解説がいまひとつ良くない。どういう状況なのかがわかりにくくて仕方が無いのです。コインだから仕方ない側面もあるのかも知れないですが……。

手順、オマケ手順は今ひとつ、というか文章ではたぶん良さが伝わらない所でしょう。
コンセプトとか書かれてあれば、文章での解説も意味はありましょうが、ハンドリング、それも大筋のハンドリングだけとあれば動画に勝てる要素はありません。写真も暈けていて、本としてはレベルが低い。

まあ技法は良いと思うのです。



それで


Therm-o-Chromic

こちらはスペルバウンドの手順。
プロモが超絶断片的でさっぱり像が見えなかったのと、Eni-Whereが少なくとも技法としては良かったので、よいスペルバウンドのアイディアがあればなあとこちらも買ってみました。

ダメです。
これはダメです。

序説の、「スペルバウンドはますますジャグリング的になっているが、そういう”見破れるか試してみろよ”的なものは嫌で、この手順は各段階が魔法に見えるようにしている」っていう所は共感できたし、期待も大きかったのですが……。

まずプロットがよくわからない。
2枚の同じコインの内、1枚だけが暖めるとポケットを抜けたり色が変わったりする、最後に財布が出てくる。同じように見えて1枚は特別な性質がある、というプレゼンでなんとか説明は付くのですが、無駄に複雑になっているような気がしてなりません。


だが何より、技法です。スペルバウンド時に、コイン同士をスライドさせながらチェンジする技法を使うのですが、音対策無し。音に対する言及もなし。無音でないスペルバウンドとかどうなんだろう。少なくとも個人的にはナシだなーと。


そんなわけでRedek Makarの2作品でした。他にも出してらっしゃいますが、動画も今ひとつだったし、買うことは無いかな。ちゃんとしたコイン技術と、アドリブ構成力を持った上で5回くらい読み返せば面白いような気もしてきましたが、僕にはその体力はありませんでした。

ただEni-Whereは良い技法です。練習、練習。



良い解説者と組んでくれたら良いのになあ。

2012年9月25日火曜日

"Moe's Miracles" Dodson(?)




Moe's Miracles (Dodson?, 1950?)


Moeと言えば、スタック系が好きな人だとMove A Card Trickで名前を知っていると思う。逆にそれ以外では名前を全く見たことが無かったので、Lybraryで本書をみつけて興味を引かれついつい購入してしまった。


後で判ったのだが、これがなかなか問題のある冊子であった。Moeのウェブページ(http://www.moesmagic.com/)によれば、この$5 冊子は1932年にFrank Laneと話が持ち上がったものの、結局発表を拒んだものらしい。その後、何人かの手によって勝手に出版され、いくつかのバージョンが海賊版的に出回ったとかで、当人は手に取ったこともないのだそうだ。なお、Lybrary版もどこから引っ張ってきたのか書かれていない。Dodsonなる人物の追加手順が載っているので、1950頃に発行されたらしいDodson版であろうと思われる。


で、内容だがこれがまたいろいろな意味で酷い。
11の手順が解説されているのだが、表紙以外はTextで打ち直したらしくて味も素っ気もなく、1ページあたりA4で8~10行程度、下2/3は完全に余白×11pという構成で、電子書籍じゃなかったらあまりの余白量に訴えても良いレベル。

トリックの方はというとこれはもう完全にマニア殺しであり、手品の歴史の中で完全に『死んでしまった』手法を用いたロケーション・オンリー。というかあまりにも無茶で、解説まちがっとるんちゃうかと疑心が生ずる。
というか、実際、間違ってるかもしれない。
Moe自身が書いた物の他に、同じタイトル同じ収録作ながら方法はFrank Lane が創作した物があるとかなんとか。しかしその証言をするMoeはもう92歳だし信憑性はどこまであるのか。僕の英語力ではちゃんと読み切れないので詳細は前掲URL内の記事を参照してください。誰か簡単にまとめて教えてくれ。


それでまあ一応読みましたが、理屈としてはぎりぎり理解できなくはないのだが、実現できるかというと……。ただ、前述のMoeが手順の発表を拒んだ理由が『自分にしか出来ないような手順を発表して、非難されても嫌』というのだから、この解説も当たらずとも遠からずなのかも。

手法についてキーワードを上げると、シークレットカウント、エスティメーション、複数枚キーカード、直感、借りたデック、演技者はデックに触らない、などなど。これだけでMoeの嗜好が判ろうというもの。またスタック関連の文献で名前を見ることが多かったが、ここでの作品は全て、デックを借りて即席にできるものであり、そういう意味でもマニア殺しを指向しているように思う。

十数枚、場合によっては26枚とかからPumpingで絞っていくとかいう物も多く正直まともに出来る気はしないです。

特に酷かったのは ↓
Moe's Fifteen Cards Trick
・15枚のカードを抜き出して表向きに広げ、5人の客に1枚ずつ心の中で決めて貰う。直感的に、選ばれてなさそうだと思った物を裏返していく。システム、バックアップ、無し。以上。

うーん……。



まとめ。
CanastaやBerglasを彷彿とさせつつ、それらよりさらにぶっ飛んでいる。
どれか一つでも、70%ぐらいの精度ででも出来たら凄いとは思うのだが、難しいうえに、どれだけ練習しても100%にはならない類のトリックばかりなのだよなあ。

ただ、例えばDaOrtizが怖ろしく不格好な原理をとびきりの不思議に仕立て上げ、マニアを煙に巻いているように、この本は完全に『時代遅れ』で『死んでしまった枝』だからこそ、再読の意味はあるやもしれぬ。特に、Outを自前で調達できるJazz 系、Trick that cannot be explainedが演じられる人は。
最初に解説されている”Look at a Card trick”は比較的安全そう(VernonのLook upと同系統だがより楽かと思う)なので、少しずつ練習してみようかな。


なお、Moe自身は、ほぼ全てのトリックを、エスティメーションと超人的な記憶力を複合して、様々な方法で演じていたらしい。


Moeは1920年後半~1930年に、IBM、SAMの大会に現れ、不可能きわまりないロケーションで数々のマニアを煙に巻き、姿を消した。
97年に消息が確かめられ、2001年のLinking Ling誌の表紙を飾る。そのころに開設されたとおぼしきWebサイトには、『いわゆるMoeの不可能が、実際はいかにして成されたか、少しずつ本当の秘密を明かしていきたいと思う』とあるが、残念ながらMoeは秘密のほとんどを抱いたままに、2003年、94歳で没した。

2012年6月5日火曜日

"Complete Torn & Restored Card" Stephen Tucker









Complete Torn & Restored Card  (Stephen Tucker, 2006)




英国のアイディアマンStephen TuckerのTorn & Restored Card作品集。


DaOrtizのCard Cemeteryを読んだので、BritlandのTearing A Lady In Twoの時から気になっていた本書も流れで読んでみた。

いくつかの異なった原理に基づくTorn & Restoredとそのヴァリエーションに加えて、1/4と3/4のカードでのトランスポジションなどが解説されている。大本の判は、半分に破れた冊子という、収集家垂涎の形体で出版されたそうで、なにそれ超欲しい。


これを読んでいて気づいたのは、Torn & Restoredという現象の表現方法の変遷だ。実はこのジャンルにはそう詳しくなく、またさほど興味もなかったので、ちゃんとした知識ではないのだが、簡単にまとめてみよう。

Charles Jordanの昔は、破ったカードをデックの中に入れて見えなくした上で、復活現象が起こっていた。

しかし、やはりデックに入れるのではすり替えのイメージをぬぐえないと思ったのだろう、手にはカード一枚しか持っていない(様に見える)状態での復活へと変わっていく。
おそらくこの時、『破られたカード』と『復活済みのカード』を互いに擬態させる必要が生じて、カードは折り目正しく4分割されるようになったのだろう。
HarrisのUltimate Lip Offや、J.C. Wagnerの手順などがこの時点での代表かな。この手法では『カードが常に視界にある』事で同一性が確保されるため、サインやお客さんに渡しておく一辺という証明方法には、必ずしも頼らなくて良くなった。

さらにここから発展し、Hollingworthに代表される『復活時の接合面を隠さず』『一片づつ復活していく』というパターンが生まれた。これはGarciaのTornによって一定の成熟を見たと思う。


現在は、さらに純化された道具立てであったり、復活後に色が変わったり、ちぐはぐな復活をしたりと、いろいろなヴァリエーションが模索されている。
個人的に、丁寧に1/4に破るのは今ひとつしっくり来ない。近年、DaOrtizによって、乱雑に破りつつ、デックなどのカバーを必要としない物がいくつか発表され、こちらの動向が気になる所。



さて前置きが長くなったが、この流れで言うと、本書の作品はHollingworth前夜に位置する。
つまり、今Torn & Restoredと聞いて期待するような、ヴィジュアルな現象はここには入っておりませんよ、という警告。

基本的には、カードは1/4に破られて、それを手に握り込んだ状態で魔法を掛けると、復活した状態になっているというもの。3/4まで復活し、完全には戻らない物が多いのもこの時代の特徴か。

またクラシック的なハンドリングからの脱却をはかって色々な事をしているため、癖も強い。




さすがは音に聞こえたアイディアマン、実に色々な事を考える。
ただ、これぞという物がないのが、今ひとつ有名になりきれない所以だろうか。

Wagnerの手順は破るプロセスが原理的な矛盾をはらんでいる。それが気に喰わず、1ピースずつ破り取っていく、という点にこだわったのが収録作のR.I.Pなのだろうが、そのこだわりがあまりエフェクトに貢献しているとは思えないのだよな。

パズルの解答としては面白いが、それがエフェクトを美しくしているかは疑問。


とはいえMy Preferred Routineでは余分一切無しでこの現象を達成する。破った分をポケットにしまっていくのは、あんまり好きでないけれど、完全即席で出来るので人によっては非常に良い武器になるかも。



個人的に一番面白かったのはQuarterMaster。これは実に奇妙な現象。
右上1/4を破り取った後、右下1/4を破り、ぐぐっと持ち上げると右上部分にくっつく。それを破り取ってまた下にぐぐぐっとずらすと、右下にくっつく。
白フチだと、破った物とくっついた物が明らかに別物になるので、よくわからない現象になってしまうのだが、Beeとかでやるとすげえ気持ち悪そう。仕掛け無しなのに、確実に破りとった部分が本当に復活する。他では見た事がない。



なお、期待していたCard WarpからのTorn and Restored Cardだが、これはちょっと違うだろう。確かにCard Warpを途中までやったうえで、何も足さず何も引かず、カードを破って復活はするんだけど。
っていうかこれでOKなら、別にBritlandのTearing A Lady In Twoでもええんちゃうのやろか。うーん。



まとめ。
Torn and Restored Cardという、実に目まぐるしく発展した分野であるため、全体的にどうしても古くさい印象。またStephen Tuckerの味なのか、今ひとつ決定打に欠けるのだが、アイディアは面白くヴァラエティに富んでいる。


今のTornなんかの知識と組み合わせれば、面白い物が出来るかも知れませんよ。
まあクリエイター向けでしょうね。


2012年4月20日金曜日

"Psychomancy" David Britland





Psychomancy (David Britland, 1986)




カードマンだけど、メンタルも興味あるんだ。(序文より、意訳)



その気持ち、よくわかります。
生粋のカードマニアDavid Britlandが、カードの技法を用いて創作したメンタルマジック集。

幸いにBritlandは趣味が良い方のマニアなので、カードの技法や原理を使っているとはいえ、なるべく見えないよう控えめな使用法です。
総じて、メンタルとしても通じる作品になっているかと思います。


最初の方こそ、VernonのChallengeを名刺で行い、オチに予言を加えたものや、デックの裏に人の名前が書いてあって、というカードマジックの演出だけ変えたような物が続き、いささか退屈もしたのですが、後半は立て続けに面白い現象が飛び込んできて、目が覚めました。


ふたつほど紹介しましょう。


Royal Decree
著者はPrincess Card Trickの変型と書いていますが、B'waveの親戚と言った方が判りよいでしょう。B'waveと比すると、どうしても少し不格好なのですが、プレゼンテーションが素晴らしい。細かいところはタネに直結するので書けませんけれども、B'waveよりクリアーな現象になっていて、僕はこちらの方が好きです。

B'waveは確かに傑作ですが、”あまりに確信が強かったから、この一枚だけ裏色が~”というくだりで、どうしても、じゃあ初めからその一枚だけを封筒に入れとけよ、と思ってしまい、演じる事ができませんでした。追い打ちもやりすぎな気がしますし。
その点、Royal Decreeは予言ではなく、リアルタイムでのテレパシーという演出で、最後にカードを見せる瞬間がクライマックスになるように上手く構成してあり、演出の点ではこちらに軍配を上げたい。

B'waveよりも負担は大きいのですが、これは演じてみたいです。


The Four Bit Machine
もう一つ、特に気に入った作品です。
4×4に並べた数字から一点選んでもらい、その縦横のラインにあたる物を消して、残りからまた選んでもらい、最終的な合計が予言されている、という有名な原理を使った現象なのですが、最後の予言の隠し方、現し方が非常にしゃれています。
ずっと目の前に置いてあった物が、実は予言だった、というものなんですが、その隠し方は――、ま、これも気になった方は、買って読んでみてください。

僕はWonderのCup and Ballみたいな”いつの間にか”現象が非常に好きなのですが、それに似た感覚でした。
これも演じてみたいですねー。


最初は外れかと思いましたが、どうして、なかなか楽しめました。




これで手元にあるBritlandの作品集は全てです。本棚にはBritland著のChan Canasta本とかもありますが、それはまたいずれ別枠ということで。





ところで魔法陣から十字に消していくフォース(Mel Stover Calender Forceとかいうらしい)ですが、どなたかこれをボンバーマンの演出でコミカルに演じて下さる方はいらっしゃいませんでしょうか?

日本でなら、このやや理不尽なフォースが非常に合理的に出来るんです。今がチャンスです。逃すと次はないですよ。さあ。

2012年4月16日月曜日

”Deckade” David Britland






Deckade (David Britland, 1983?)




David Britlandのカードマジック作品集。7つの手順を解説。


年号がないんですが、Cardopolisより前の発表のようです。
うーん、これは完全にアイディア集、しかもマニアックでなかなか有効な使い道が思いつきません。

「使い道はたくさんあるが基本原理だけ紹介するよ」とばかり言われて、かなり消化不良です。もちろん、これを作者からの挑戦と見て、いろいろといじくりまわしてみるのも良いでしょうけれど、Cardopolisのようなひねった手順を期待していたので残念でした。


例えば。
Sandswitch
サンドイッチでカードが間に現れると同時に、デックのトップのカードがカラーチェンジする。
With 4
一枚余分を隠した状態でのBizarre Twist。Twist後、真ん中のカードが実はDouble。


ううん……。前者は意味がよくわからない。後者は、何度か読んでみたんですが、どう考えても物理的に不可能というもの。



ちゃんと完成した作品もありますが、エレベーターカードの最後の一枚が、上に上がらず、先の二枚の間から出てくる、とか、それってどうなんだろう、という感じです。


ひとつ、非常に良かった事があるとすれば、クレジットです。
以前、Bizarre Twistに凝っていた時期に開発したオリジナル技法について、ちゃんとした先例が判明しました。掌Palm vol.21(2000)で金沢Cullこと山崎真孝がほぼ同一の技法を発表されていますが、さらに遡って初出はMarc Russellだったようです。
BritlandとStephen Tuckerが編集していた雑誌TALON(1978-1981)のIssue7に発表されたとか。Issue 7の発行が何年なのか、までは記載されてませんでしたが、積年のもやもやが晴れてすっきりしました。


総論、マニアックなアイディア自体は大歓迎なのですが、その調理例を見せてもらえなかったのが至極残念です。Cardopolisが面白かっただけに、内容的にもコスト的にも、どうしてもがっかり感がぬぐえません。



DeckadeCardopolisの後、Equinoxという作品集が出ているようです。Deckadeは、このとおり、今ひとつでしたが、しかし総合的に面白い作者と思うので、Equinoxも機会があれば手に入れてみたいと思います。

まあ何のかんの行って、Bizarre Twistの色々なアイディアとか、けっこう楽しめたのです。




Russellの技法はある問題さえクリアできれば、理論的には完璧なのですが、どうにもDaniel CrosのCros Twistや両手でやる原案に較べ、絶対的によい、というほどでもないのですよね。不思議なものです。


2012年4月14日土曜日

”Cardopolis” David Britland & Marc Russell






CARDOPOLIS (David Britland and Marc Russell, 1984)



David Britlandのカードマジック作品集。
非常にヴァラエティに富んだ内容で、かつそれぞれ、普通とはちょっと変わったアプローチを用いているので面白い。


いくつかご紹介。

Tunnel Sandwich
Card Tunnelを使ったサンドイッチ。カードがゆっくりと、目に見えて現れていくのが気持ち悪くてよい。ハンドリングがややテクニカル。

Flesh Eater
カニバルカード。4枚のKに裏向きのカード3枚を挟み込むが、一瞬で消えてしまう。Paul HarrisのInterlaced Vanishの系譜と見る事もできる。基本手順をベースに、3種類のバリエーションが考案順に記載されているあたり、Britlandのマニアさが伺える。



他にも、トライアンフ+Hofzinser Ace、Point of Departure、All Backなどなど多種多様。Flip Over Cutという技法を色々な箇所で使っていおり、創作法のセッションみたいで面白い。

もちろん、中にはどうだろうと頭をひねるような物もある。パケット毎の枚数が1、2、3、4で行うSlow motion Acesなどは、毎回デックを中継点に使うので、正直プロット倒れの印象。しかし実用云々は別として、カード好きとしては読んでいて参考になる作品ばかり。あまり見かけないマイナー技法が的確に使用されているのもためになる。


総合的に、いい意味でマニアっぽい。作品集でありアイディア集、カードマニアとのセッションが楽しめる。難易度は中級くらいでまとめてあるけれど、たまに平然と難しい事要求されたりして少し戸惑う。



Tunnel Sandwichは、加藤英夫がCard Magic Library Vol4でわりと簡単にできるハンドリングを解説している。ただ別の不自然さが出てしまうかも知れない。

ちょっとしたギミックを厭わないのなら、ヒロ・サカイのE-Z Tunnelが簡単でビジュアルでいい。A1のSecret Session DVDに解説されている。


Flesh Eaterのコンセプトは、Randy WakemanがRandy Wakeman Presents 中で使用し、それを読んだ松田道弘が刺激を受けて松田道弘のクロースアップ・カードマジックにて自作を発表している。
Britlandのアイディアは面白いが、なかなか危うく実用が難しい。そこを的確に指摘、改作した松田道弘の手順が、個人的には一番好み。

2012年4月11日水曜日

"Redoubling the Double Cut" Gene Castillon





Gene Castillon's Redoubling the Double Cut (Jon Racherbaumer, 2006)


Double Under Cutだけを使って、多種多様な現象を盛り込んだ手順を構成。
なんか面白そうだし、初心者に教える機会がないでもないので、教材としても良いかなーと思って買いましたが……。


読みづらいんだよっ。


ハンドリングを逐一追って書き、そのセクションの目的なり現象なりはほとんど最後に載せるRacherbaumerのスタイルは非常につらい。眠い。
特に、本手順はハーフスタックを使用していて、順番崩したりとか出来ないため、そのセクションなりブロックなりの目的をもうちょっと明確にしていて欲しかった。
欲を言えば、各段階でのシチュエーションチェックももう少し欲しかった。


さて、改めて内容ですが、Gene Castillonが70年代に、主にレクチャーで用いていた手順を再発掘、加筆したようです。

赤のAの出現、サンドイッチ、黒のAの出現、Aアセンブリ、四枚の7の出現、Aの出現(スペル)ポーカーデモンストレーション。
ここで、見逃した方のために最初から、と言ってハイペースで、Aの出現(スペル)、四枚の2の出現、Kの出現、7の出現、Qの出現、Jの出現、と立て続けに起こります。


Double Under Cutだけ、というのは厳密ではなく、Braue Reversalやフォールスカットも使いますが、基本的にカットだけで構成されています。そういう意味では凄い。なお最後をトライアンフでしめるバージョンも解説されています。途中から×××をロケーターにする構成も巧み。


しかし、単品の現象で言うと、いまひとつ。
とくにアセンブリは、正直なところ何一つDeceptiveではないように思えます。子供もだませないのではないか。
しかし最後にカードが揃っていくところは、自分でやっていてもけっこう不思議。

だからといって、気にくわないパーツをすげ替えようとすると、スタックを再構成しなくちゃいけないので相当に手間です。たぶんいちから構成し直した方が早い。

いわゆるDelayed Stackという物の威力は感じられたものの、それ以外にはあまり見るところはないと思います。Delayed Stackであれば、Denis BehrのHandcrafted Card Magic(vol.1 2007)に構成法が詳解してあるので、そちらを参考に、自分の好きな手順で構成すればいいでしょう。


しかしホントに読みづらかった。
どうやらただタイプしただけのようで、表題がちょうどページの最後、切れ目に来ていたりと紙面構成もなにもあったものではない。
Racherbaumerに手を出す事はもうないかも。
面白そうな本もあるだけに残念だが、ともかく読みづらくてかなわない。


追記 2012/4/12
Gene Castillon、知らない名前だなあと思っていたんですが、Spirit Countの考案者でしたね。Phil GoldsteinのFocus、もといパケットトリックを読んでいたら名前が出てきて吃驚しました。シンプルだが手の込んだややこしさ、という点ではなるほど、らしいなと思います。

2012年4月10日火曜日

"Master of the Game" David Britland

Master of the Game (David Britland,1988)

せっかくなのでしばらくBritland特集にします。
Lybrary.comで$5でした。

Poker Demoの一種です。
お客さん自身のデックを用い、お客さんがシャッフルし、両者が交互にカットしてカードを選んでいく。
この条件でなお、演者が勝ち、勝ち手も予言できる。
というものですが……。

宣伝文句にはふたつ、重大な抜けがあります。


お客さんがシャッフルした後、演技者はカードのフェイスを見る必要があります。
ただし順番を入れ替えたりする必要はありません。
これを致命的な欠陥とみるか、カバー可能なものとみるかで、本書の評価は大きく分かれるでしょう。
また予言も、実を言うと勝敗は扱えません。


配られるカードをコントロールする、ということは、当然ですがスタッキングが必要になります。
カルやスタッキングは、本来は非常に高度な技ですが、本書の眼目は、それを極度に簡易化できる、とある原理にあります。

言われてみれば大して不思議な原理ではないのですが、指摘されるまでは気付かない人、漠然と思っていてもその有用性に気付かない(僕のような)人は多いと思うので、Poker Demoに興味のある方は一読してみても良いんじゃないでしょうか。お値段もお安いですしね。

作例では互いにカットしてカードを選んでいますが、これはこの原理に必須の手法ではなく、原理自体はもっといろいろ応用が利くと思います。

また互いにカットしていく部分も、『言われれば当たり前だけど、あまり使われていない』たぐいの手法で、これ自体でも応用範囲が広そうです。

どちらも極めて単純ですが、その分だけ派生が考えられ、おもしろい冊子でした。
この記事を書いている今も、いくつか手順を思いついたので、練ってみたいところです。


Poker Demo、Jazz、Mentalが好きな方にはおススメです。
使える使えないは別としてもいい刺激になるでしょう。
テクニック系の方は肩透かしを食らうと思いますが……。

2012年4月4日水曜日

”Tearing a Lady in Two” David Britland




Tearing a Lady in Two (David Britland, 1989)


http://www.youtube.com/watch?v=gACD0tZ7ewM
動画はCharlie Fryによるヴァリエーション、Ripped and Fryedです。



人体切断のステージイリュージョンに見立てたQueenの切断と復活。

嫌みがない、無駄がない、不自然がない、
そして不可能性が高く不思議で、かつ面白い。


これは買いだっ!



と思ったんですけど、
ただこれ、Paul HarrisのTrue Astonishment Boxに入っていて、
セットで3万近くするので流石に衝動買いは無理でした。


一方、原案のTearing A Lady In TwoならLybrary.comで$6。
多少ハンドリングや構成が違いましたが、内容は基本的に同じです。


なかなかこじゃれた演出で、現象と演出の齟齬もなく、
色々な機会におもしろおかしく演じられそうです。


即席系ですが、ちょっとだけ前準備が必要になります
前もって折り目を付けるのは、即席っぽくなくて嫌、という僕のような方は、
Helder GuimarãesのReflectionsにいい解法があるのでそちらも読んでみてはいかがでしょうか。

元々はStephen Tuckerが、Roy WaltonのCard Warpの後にカードを復活させたい、
ということでプロブレムを発信し、Britlandはそこから着想を得たようです。
といっても、直接の解答ではないので、Card Warpからは続けられません。


Card Warpからの復活は、未見ですが、
Stephen Tuckerがそのテーマで冊子を出している他、
Michael CloseがDVDで発表していたように記憶しています。


余談になりますが、
Fryの演技は見ていて楽しいですね。

その後に続くWayne Houchinの演技は、David Blaine派というのか、
不可能をそのままぽんと放り出すようで、それはそれでいいのですけれど、
どうしても演技者の印象が薄くなってしまう気がします。