Variations Revisited (Earl Nelson, 2003)
1978年に出た本の増補改訂版。なんと40年以上前の本です。改訂が出たのも2003年なので、これまた20年近く前です。それでいながら内容はとてもビビッドでモダン。40年前の本にモダンと言うのもおかしな話ですが、とても洗練されたよい手順が載っています。
章分けはカード、コイン、指輪と紐、おまけ、新規収録となっています。本編部分に関していえば、非常に洗練されているのが特徴。突飛な動作や不要な改めがほとんどないため、カードでは特に、現象がたいへん映えます。一方コインでは、同じ動機がちょっと違った結果を生んでいて、シェルを駆使したりカードと組み合わせたりと、全体的に難易度が高くなっています。この辺は素材の差がそのまま出ているのでしょう。いずれにせよ今見ても古びない、非常に洗練された手順です。指輪と紐は、もはやこれがスタンダードですね。
カードもコインもプロットが豊富で、被りが少ないのも特徴です。薄い本で、収録作品数は少ないながら、カードではリセット、アニメーテッドカード、消失、サンドイッチなどなど。コインもベーシックなアクロスのほかに、マイザーズ・ミラクルや1枚のカードを使った3枚のコイン消しなどがあります。
一方で洗練の弊害もなくはない。リセットのバリエーションでは、もう一方のパケットの改めを捨ててしまったりしていて、これは松田道弘なんかが苦言を呈していたような記憶があります(ただNelsonも思うところがあったのか、そこをクリアしたBill Taylorの追加ハンドリングも載っています)。またコインズ・アクロスも、著者の狙い通りに「シークレット・トランスファーのために何度も何度も両手のコインの枚数を確認する」ことを大幅に排除できているのですが、いざやってみるとなんかこう味気なくも感じます。
オマケ部分では打って変わって結構荒いこともやっていたり、技法先行であんまり演じる気にはなれない手順もあります。本編がレパートリーで、オマケは研究中の内容といった感じでしょう。
いずれにせよ大変面白い本でした。とりわけ、落ち着いていながら実践的なカードのレパートリーが欲しい人、コインのいろんなプロットや工夫が読みたい人、指輪と紐を文章で抑えておきたい人、おすすめです。