Scott Robinson’s Pure Imagination (Andi Gladwin & John Campbell, 2018)
待ちに待ったScott Robinsonの大部の書籍。その割には結構な期間積んでしまったが、それはそれとしていい本でした。
クロースアップでカードとコインの47エントリ。ただしカードについては、紙幣とカードの貫通や、カード同士の貫通といった現象も含まれます。Paul Harrisほどの型破りではないものの、カードを物体として扱うことがうまい印象で、プロットも少し捻ったものが多い。一方では非常に洗練された怪しさのないハンドリングも特徴で、それが現象の鮮やかさ・ビジュアルさにつながっているという、こちらはEarl Nelsonも彷彿とさせます。……などと贅言を費やすまでもなく、動画作品が出てるのでとりあえずそのデモを見てよかったら買うのがいいです。
いや、というのも、解説の文章がRobinson自身のものではないためか、動機や背景といった部分の記述が薄めで、動画デモでは伝わらないようなおススメポイントというのがあまりないのです。解説が薄いといっても、手順は非常に良く練られ、作者の思想をよく体現しているので、操作の意図が測れないというような事は全くないのですが、少しもったいなくは感じるところ。そういう意味では、ノートVaried Methodsには今なお読む価値があると思うんだが、どうやらもう手に入らない? 内容は本書がカバーしてるとはいえ残念である。
これでは締まらないので、最後に備忘も兼ねて、面白かった作品でも書いておくか。
Bizarre Twistのようにカードを差し込むと、そのままカードが消えていくという氏の代名詞Willy Wonka Card Trick。Slap Exchangeをパームなし、難しい技法なしにデチューンしたのに、もたつかず現象も鮮やかなTrading Spaces。ワイルドコインで、最後に全て戻るところが、その戻る理由も、瞬間も観客に体感させられる、センスオブワンダーに満ちたDa Vince Coins。センスオブワンダーと言えば、3枚のコインが音もなくグラスに移動していくThe Sound of Silence。スプレッドを利用したカード・コントロールはどれも面白く、特にTotally Under ControlはVeeser-DingleのMultiple Bluff Shiftを明確に一歩押し進めています。他にも他にもあげればキリがないくらい佳作揃い。