Something Borrowed, Something New (Paul Curry, 1941)
Out of This Worldの作者としてマジック史に名を刻んでいるPaul Curryの最初期のノートである。Curryは1917年生まれなので、24歳の時だ。そう考えるとめちゃくちゃ若く、実際、この冊子の内容も(他作品と比べれば)若さを感じるものである。まあ天下のOOTWも翌年発表ではあるのだが。
16作品収録。この頃からよく考えられた手順が多いものの、Paul Curry Presentsよりは工夫に欠ける。CurryはBottom PalmとTurn Over Changeでカード技法史にも名前を刻んでいるが、それらが収録されているのも本冊子である。Sadowitzが褒めていたというHalf Passが収録されているのも本冊子。Lybraryで電子新版(2022)を買うとAppendixとしてもう1手順ついてくるのだが、それもちょっと面白い技法を使っている。一方で原理物はあまりない。
Turn Over Changeを使った2枚のカードのルーティンなどは、なんと9段からなっており、本人としても若気の至りではないだろうか。ただこれも、ゼムクリップで四方を留められた2枚のカードが、実は観客のサインしたカードだったというようなクライマックスであったり、ロードの不自然を軽減するための2段階の処理など見どころは多い。カード以外にも、ポケットにコインが移動したのが音でわかるClink!なんかは、この類の工夫としてはかなり早い時期の例ではないか。
この頃からよく考えられた手順が多く、見どころは多いながらも、Paul Curry Presentsよりは工夫に欠けるし、優秀な作品のほとんどはWorlds Beyondに収録されている。読んで楽しくはあったが、改めて買って読む意味はあまりないかというのが正直なところ。まずはWorlds Beyondを買おう。