2014年11月18日火曜日
"MirACAAN" Dorian Caudal
MirACAAN (Dorian Caudal, 2014)
39 € 70 ppで 1作のACAAN のみを解説した冊子。
筆者はフランス生まれ、スウェーデンはストックホルム在住の若手マジシャン、Dorian Caudal。
なんとまあ神経科学でPh.Dを持っているらしい。うらやましい。
そしてカロリンスカ研究所にお勤めらしい。凄い。
凄いっていうか超絶エリートではなかろうか。
肝心のACAANについてだが、演者が配ったりする必要などなく、Berglas Effectに極めて近い。というかBerglasのオリジナルに対して、愚直に細部を詰めていった印象。手法としてはあんまり美しくはなく、特にBad Caseはいまいち。ただし実際にやられたらかなり気持ち悪そうだ。
またカードや数値が選ばれる確率については、文献引用をしたり、図に頻度をプロットして説明していたりとなかなか理系らしい所を見せている。自称メンタリストどもの『私の経験から~』なんぞよりよほどいい。
覚えたり暗算したりもそこそこあるので、私の手にはおえない感じだけれど、根性ある方は手を出してみてもいいのではと思う。
あとアウトやバーバル・コントロールでちょっと面白い箇所があったのでそれは覚えておこうと思います。
2014年11月8日土曜日
2014年11月5日水曜日
"小さいライジングカード" 辻川勝裕
小さいライジングカード (辻川勝裕, 2014)
小さいデックで行うライジングカード!
先頃、マジックマーケットといかいうイベントで販売されたそうなのですが、当方、基本的にとても引きこもりなので当然のように行きませんでした。でも大丈夫、下記のショップで販売されています。人と会わずに買い物できる。便利な時代です。
http://abuku.shopselect.net/
ハンドリングがとても自然であったり、シンプルだけど今だから実現できる機構、など色々と特色もあるのですが当ブログではあまりそういう点は取り上げません。
本題は解説の冊子。
もし普通のマジックショップがこのネタを買って量産したら、A4のコピー紙1枚でそれも片面のみ印刷のショボイ解説書になっていたでしょう。実際、マジックのためにはそれで十分とも言えます。
しかし付属するのはA5 13ppの冊子。その半分は手順の詳細な解説なのですが、残り内容はと言うと、このトリックを作るために行われた『ライジングカードに関する力学的な考察』なのです。いやーいいですね。同人誌という感じがしますね。まあ手品用品なんざほとんど同人制作物みたいなもんですが。
さておき。
カードをライジングさせるために必要な力の測定から、その力を掛けるために機構が実際に持つべき力や角度の設計などが解説されています。精密な計算・測定というよりは割とざっくりしたものですが、実際にかなりばらつきのある既製物を対象としているのでこのアプローチで問題ないと思います。
そして数式がたくさん載っています。実は数式があまり得意ではなく最初はちょっと引いてしまいましたが、判りやすく解説されておりますし、また比較的初歩的な物と思います(三角関数による力の分解が主)。我々の知っている具体物がぞろぞろ数式になっていく様を見ていると、どうしてか笑いが止まりませんでした。とても楽しい。
またリフィル的な物の入手経路なども書かれておりそこもよかったです。
ただ幾つか抜けているように感じるところもあり、たとえばせっかくなら××も種類を書いて欲しかったなーとか、計算が省略されているところでどうも検算が合わず、用いた具体的な初期値も書いて欲しかったなあなど。参考には成るけれど、そのものを追うのは無理かもしれません。
というわけで総合的に見ると書き漏らしや不親切に感じる箇所があり、詰めが甘いというか、純粋な力学設計とその考察と言うよりも覚え書きのような印象ですが、しかしこういったアプローチは大変素敵です。上述のように不満点もあるのですが、笑わせて頂きましたし、もっとこういう確たる見地からマジックを作り上げていく人が増えたらいいなと良いなと思いました。
たいへん面白かったです。
ついでのようになりますが手品自体もよいものです。
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