2026年9月17日木曜日

"Acts, Not Tricks" Luis Olmedo

 Acts, Not Tricks (Luis Olmedo, 2026)


スペインのマジシャンLuis Olmedoの理論本。手品業界ではトリックの解説よりも文章が主体になっている本をなんでもかんでも理論本と言うのでそう書きましたが、本書はそれほど『理論』は扱っておらず、アクトの作り方についてOlmedoが所感をつづった本になります。160ページありますが、かなり贅沢なレイアウトをしているため実質的には100ページくらいでしょうか。

名手Olmedoが自身の経験をもとに、ただのトリックの集合体を超えた、意味のあるアクトやショーを作り上げるために何が必要だったかを短くまとめてくれています。細かい章分け(10章+α)と、前述のレイアウトの関係で、ひとつのトピックごとに長くて6ページ程度なのでとても読みやすい。主張も簡明で真摯です。

さらに文章だけでなく、考えを反映したトリックも3つ解説されています。すべてカード手順で、これがとても良い。といっても、単独で見て優れた手順ということではないので、これらを目当てに買うのはやめましょう。

最初のYellowが顕著ですが、既知の技法やギミックの組み合わせで、演出もまあそんなもんかという程度。悪くはないけれど、既存作品にちょっと個人的な色をつけたくらいのものでしょう。しかしショーの要請――ショーのテーマ、雰囲気、構成上で求められる役割――から逆算され、組み立てられていて、なるほど彼のそのショーではぴたりと機能することが分かります。ショーの目玉手順は別にあるとして、それを支える手品ってこうやって作るんですね。残り2作はもう少し発展的で、映画や本などから受けた感銘を、トリックの形に落とし込む作例。こちらもとても良いです。


現代的でアーティステックなアクトやショーを構築するにおいて、とても参考になる本です。ただし本書でも繰り返し言われるように、すでに十分な技術、手法、現象のストックがあることが前提です。さらに言えば、アクトの核になりうる、新規で、独自で、不思議な、シグネチャー・エフェクトが既にあったうえでの本と言えるでしょう。

ただまあ、アクトまで行かないとしても、惹起したい感情や扱いたいテーマを手品に落とし込む作例として、シアトリカルな手品が好きならきっと参考になるはずです。

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