2023年10月5日木曜日

“The Plot Thickens” Oliver Meech

The Plot Thickens (Oliver Meech, 2009)


「マジックには3本の柱がある。手法、演出、そして現象(プロット)だ。手法は皆がやってるし、演出もOrtizとBergerに任せておこう。だから、俺がやるべきはプロットだ。」と著者Meechは前書きで書いており、本書は現象/プロットの新規性にこだわった内容とのこと。内容はクロースアップで、カード5つ、コイン5つ、メンタル6つ、その他6つで計22のちょっと普通ではないトリックが収録されています。

 さてプロットとは何か。この辺りの言葉遣いは難しいところです。著者自身、3本目の柱としては現象(Effect)を挙げながら、途中からプロットの語にすり替わっている。プロットというと一般には「物語の筋立て」であり、手品の新たなプロットと言われたら、現象そのものより、そこにいく過程をイメージするだろう。リセットを例にとろう。まず位置交換というかなり範囲の広い現象がある。それが4枚ずつのパケットで1枚ずつ交換されていくとなると、だいぶプロットになる。最後に一瞬で元に戻るという「ひねり」があれば、これはもうプロットと言及して間違いない気持ちになる。

 で。本書が「プロット」の本かというと、特にそういうことはないんだよな。素材を変えたり、演出(アスカニオ的な意味での演出ではなくて、カバーストーリーという意味での演出)を変えたりというのが多いので、どちらかといえば新しい「現象」を探る本だろう。

 で。新規な現象と言ってもピンキリだ。単に素材を変えただけでも新しい現象と言うことはできるが、それではつまらない。その素材が特別に意外であるとか、素材変更によって裏側の負担が減ったりとか、あるいは新しい手法が見出されたりしていて欲しいわけです。

 で。本書にそれができているかというと出来はまちまちである。例えばOut to Lunchの原理を使って名刺の間違いを修正する“Correctional Facility”なんかは新規性からして相当に怪しい。ハンドリングも雑。一方で、コインと角砂糖のトランスポジション“Touching Transposition”なんかは、この構想でしか出て来ないだろう面白い手法が取られており、また観客の感じるだろう現象も単なるトランスポジションとは一線を画したものとなっている。

 全体を通して見ると、新規性もクオリティも高いわけではない。しかしこのアプローチでしか生まれないだろう作品が含まれており、また傑作としか言いようのない手順もある(自然発火現象“Flaming Voodoo”は、これは最大級の褒め言葉なのだが、Life Saversに収録されていてもおかしくない作品だ)。なんのかんの言っていろんな素材に触れられて刺激的であったし、非常に応援したくなる作者だった。


 ……ところで、Meechは前書きで演出についてはOrtizとBergerの本があるから、と言っていたけれども、プロットにも大天才がいるわけです。そうPaul Harrisです。プロットが新規で面白く、直感的で、さらに裏側の新規性にもつながっています。本当にすごい。もし現象やプロットに飢えているならまずはThe Art of Astonishmentを買いましょう。話はそれから。


※なおこれは第2版で、収録作が一個変わっており、“Free Money In Every Pack”が“Dripping Coin”になっています。

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