2023年5月31日水曜日

“The Esoterist” Allan Ackerman

The Esoterist (Allan Ackerman, 1971)

 Allan Ackermanの最初期の作品集。私が買ったのはLybraryのe-book版ですが、元々はページ数42、著者は当時24歳で、おまけに20ほどある収録作は1つをのぞいて1970年3月〜12月の短期間に作られたとのことで、それがハードカバーで出ていたのだから時代を感じます。

 実はこれが初Ackermanです。Ackermanというと緊密に構成された手順のイメージがあったのですが、本書は作成期間が短かったからか、それとも単に若かったからか、シンプルなアイディアや改変に基づく手順が多いです。古い本ですし、ことさら変なアイディアがあるという訳でもないのですが、一方で非常に切れ味がよく、とても楽しく読みました。

 この「切れ味の良さ」は手順もですが、個人的には解説にこそ感銘を受けました。解説は短く、写真やイラストも少ないのに、説明が不足することは殆どなく、淡々とした記述ながら著者の狙いが鋭く伝わってきて刺激的です。名作や迷作が眠っているというよりは、狙いの定まった改案が読者を刺激し、だったら自分はこうしたい、と思わず吊られて改案を考えてしまうような本でした。

 いちおう作品にも触れておくと、お気に入りは、テンポよくいつの間にかデックが消えるMinuscule Deckで、これは最近の作品と言われても信じてしまいそうでした。また趣味からは外れるものの、著者がすっきり演じたら追いきれなさそうなトラベラーズMass Transit、言語の問題がなかったら演じてみたかった21セントギミックを使った軽妙なSmall Changeがよかったです。カードでも結構ギミック使うのも意外でした。しかし、やはり個人的には、この読み味が一番のおすすめポイントです。Ackermanこんなに面白かったんだ。Las Vegas Kardmaも絶対読みます。


 ところでこの本、Paul DiamondによるGem of Magic Bookというシリーズの一冊らしく、他の巻も気になってきました。4冊ぐらい出たらしく、本巻がこれだけ面白いならDiamondが名伯楽なのでは、と思う一方で、なんか4冊中2冊がマグネチック・コイン本らしく、ずいぶん尖ってるシリーズだな……。

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