2022年8月24日水曜日

"Lorem Ipsum" Nathan Colwell

Lorem Ipsum (Nathan Colwell, 2021)


TheseusのNathan Colwellによる小ぶりのレクチャーノート。前著ではプロブレムへの取り組み方や緊密な考察と文章など、とても面白いながら肝心のテーマが謎過ぎたわけですが、今回は一般的な手順と技法です。手順が4つと技法(アイディア的なものも含む)が7つ。とても面白かったです。

手順4つは次のようなもの。

Ramon Riobooの某手順を応用したトライアンフっぽいもの

Greg Wilsonの免許証の入れ替わり

Tommy Wonderのお札を折るやつ

Royal Roadに載ってる数理寄りの4Aプロダクション

どれもやりたいことがはっきり示されており、完成度も高く、また面白い考察が含まれています。特にRiobooが用いる『記憶の操作』の説明とその実践は、簡潔でとてもよい言語化でした。なにせRioboo本人は実作で示すことしかしてくれなかったので。また観客に特別な才能があるという演出に対する葛藤なども読みごたえがありました。

技法の方はプロダクション、Optical Revolve、Convincing Control、謎カウント、ダブルリフト。何に使うのか良く分からない物もありつつ、Convincing Controlは久々に使用技法が更新されそうな出来。


革新的な原理とか超不思議だとかいったことではなく、また紹介されてる手品を実際に演じるかと言ったら微妙なところですが、組み立てや考察がとてもよく、読む手品としては久々に当たり。語彙はちょっと難しいが全体的に簡潔で、ボリュームもちょうどよかった。次回作も楽しみです。

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