2022年3月23日水曜日

"More Secrets" Terri Rogers

More Secrets (Terri Rogers, 1988)


腹話術師でトランスセクシャルTerri Rogersの第二作品集。Lybrary.comのA4組み直し版で57ページ、15作品程度の小ぶりな本。第一集Secretsをかなり以前に読み、ずっと記憶に残っていたのだが、このたびふと続刊を手に取った。感想は第一集と大きく変わらないのだが、これがいま、とてつもなく面白かった。

いやだってそうだろう。観客が桁を自由に入れ替えた複数の数の合計が、あらかじめ堂々と書かれていた数と一致したり、消えた観客の指輪が砂時計の中から見つかったり、カット&リストアード・ロープをやろうとしたらハサミが見つからず、なんやかんやあってロープの真ん中にハサミが出現しロープは元より長くなったり、同じ物体を見ているはずなのに観客Aと観客Bの証言が食い違い、それが客席のその他の観客とも食い違ったり、そんなのみんなやりたいに決まってるのだ。

雑だったり大胆すぎたりする手順もあるし、コメディアンゆえか台詞のクセが強かったり、そもそもどう演じれば良いんだコレというものもある。けれどこんな愉快な手順がならび、それでいて時には、恐ろしく不思議な現象もぬけぬけと演じてみせる。ああ、僕の好きな手品ってこういう事なんだなあと心洗われる思いでした。

最近は出版が盛んで、出る本の質も本当に高く、それ自体は間違いなく良いことなのだが、どこか閉塞感のようなものも感じていた。それを、この底が抜けたような本は吹き飛ばしてくれた。

Terriの第三集Top Secretsも買って、もったいないけどもう読んでしまいました。かわり屏風や錯覚定規のようなカラクリ玩具が好きな人には特におすすめのシリーズ。

0 件のコメント:

コメントを投稿