2019年5月30日木曜日

"Giacomo Bertini's System for Amazement" Stephen Minch





Giacomo Bertini's System for Amazement (Stephen Minch, 2019)


Giacomoの単行本が出ました! やった!

独自の技法で界隈をどよめかせたGiacomo Bertini。私はちょうど直撃ぐらいの世代で、氏の手順を初めて見たときはそれはもう驚きました。それから10年近く経って、とうとうHermeticから書籍が発売されました。収録作品自体はすでに冊子やDVDで発表されているものがほとんどらしいのですが、実は私はそれらを所有していないので比較はできません。

本書は技法の章と手順の章の2部構成。技法に関しては実演DVDも付いています。

技法は大きく2系統。例の小指を使ったコインのトランスファー各種と、エッジグリップからのプロダクションです。非常に曲芸的なことをしている印象があったのですが、丁寧な解説を追うと意外にもメカニカルで、一部手の相性がありそうなものを除けば、やればやったとおりにコインが動いて気持ちがよい。Geoff Lattaの言う”engineered move”であるように感じました。なるほど、これなら割とできるんでは、と思って次の章に入ると軽く絶望します。しました。

手順の章では、先の技法がとんでもない頻度とスピードで、手の左右を問わずに使われまくります。また手順は、コインズアクロスやマトリックスといったスタンダードなものから、ポータブルホールや磁化するコインといった面白い演出のものまで色々ありますが、どれも先の章の技法が相当できなけりゃ話にならないし、代用の方法もまずない。ハンドリングの癖が非常に強いので、一部だけ借用するのも難しいでしょう。

そう、Giacomoの技法は非常に癖が強い。それはまあ、あれだけセンセーションを巻き起こしながらも、ほとんどフォロワーらしい人がいないことからも知れましょう。効果は意表を突いたものですが、付随する動作による制限が非常に大きく、ネタ技法になっててもおかしくなかった。

しかし、Giacomoはそれを武器にした。そのために手順を演じるシチュエーションを限定し、全体のハンドリングをこの技法たちのために組み替え、いろいろな既存の技法や理論を捨て去った。そういうことが本書からは読み取れます。いやまあ、長いことひとりでコインマジックしてたそうなので、あくまで結果的にそうなったのかもしれないですが。

本書の技法や手順がそのまま役に立つ人はあまり多くないでしょうが、そういった、オリジナルの手順や体系を構築するという面からすると類い希な一冊です。

また補足しておくとエッジグリップ関係の技法と手順はあまり癖がなく、特に2作品収録されているシリンダー・アンド・コインなんかはかなり面白いかと思います。それからクラシックパームの解説は非常によかったです。自然でフラッシュしないクラシックパームが解説されています。

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