2016年3月18日金曜日

"Hands Off My Notes" John Guastaferro






Hands Off My Notes (John Guastaferro, 2015)




演者が手を触れない事をテーマとしたJohn Guastaferroのレクチャーノート。10作品を解説。



こういう『縛り』タイプの創作群は往々にして無理な作品の詰め合わせになるんだがGuastaferroは結果至上主義というか良い意味でいい加減だ。

このノートも、実際に『ハンズ・オフ』かどうかではなく、そう感じられるかどうかという、悪く言えば主観的な基準でまとめられている。


世の中には『手を触れない』かわりに指示に非常に神経を使う手品とか、ややこしいセットアップが必要な手品とかあるけれど、本書はそういった裏側まで含めての『ハンズオフ』感を重視しており、結果的に、非常に手の掛からない、演じる側からも楽な作品群になっている。

逆に言うと電話越しラジオ越しに演じられるような本当の『ハンズオフ』を期待した人や、縛り条件での手品創作が好きな人にとっては酷いタイトル詐欺だろう。



手法的に半分くらいが、まったく同じ『トップ・スタックの保持とそのフォース』のような気もするんだけど、演出の仕方が多彩かつ軽妙なので読んでいてそんなに気にならない。主題はギャンブルが少し目立つが、主題と言ってもフレーバー程度の軽いもの。手続きは実際のゲームとはかけ離れていて、ギャンブルマニアの人は怒りそうだけど、もともと演出としても手品としても軽いので、これもそう気にはならない。

ちょっと面白かったのが、2作品ある4枚のカードの手品。4枚のカードをシークレットナンバーにあわせて操作して貰い、そこからカードを当てるという流れで、概要だけをこうして読むと怪しさ満点だしそもそも4枚からのカード当てってという感じだけれど、Guastaferroの軽妙なタッチの力なのかどちらも演じやすい小品に仕上がっていた。


収録は10作品。他にもひとつふたつ紹介すると、


ALL THREE KINGS
 スペリングによる4 of a Kind出し。グーグル検索すると出てくるという現代的な演出がGuastaferroによく合っている。

Time Will Tell
 観客がデックを混ぜ、3枚のカードを配り、そこから1枚を見て覚える。演者はそれを当てる。
 そして奇妙な事に、配られた3枚のカードをよく見るとちょうど現在の時刻を示している。

Gemini Squared
 再録。Gemini Twinsの拡大。観客がランダムに名刺を差し込んでいくが、なんと4枚のAを見つけ出してしまう。……と思いきや4枚のカードはバラバラ。なのだがその4枚が実は予言されており、さらに他のカードが全てブランクである事がわかる。
 例の古典手順から最大限まで現象を引き出した豪華な手順。演出のさじ加減がうまい。



そんなわけで、演者にとってとても楽な作品が多い。またその割に現象がはっきりしているし、演者が何をしたいのかが観客にもわかりやすい。けっこういいじゃないですかと思いました。

ひとつ引っかかったのはTriumphで、これはOne DegreeのBehind the Back Triumphをさらに『ハンズオフ』にしたものなのだけれど、単純に見たら前作の改悪にしかなってないような。
今作はどういった現象かの解説が不足しているから、そのせいかなあ。



日本語版が出るとか噂で聞きました。

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