2014年4月22日火曜日

"Penumbra issue 11" 編・Bill Goodwin & Gordon Bean






Penumbra issue 11 (編・Bill Goodwin & Gordon Bean, 2009)


Goodwin編集の不定期雑誌。他とは一線を画す練度の高い作品は、今回も健在。



Color Shuffles (Part Two):Ronald Wohl

前号からの続き。
観客に一度混ぜてもらい、上1/3程度を取ってもらうがその中の色の状態をそれなりにコントロールする、という何に使うのかよく分からない原理、その応用編。

カード当てがメインですがBook Testなどにも拡張。わりと面白かったです。特に他の原理と組み合わせたカード当てはかなりやらしく、気持ち悪そう。

なおPart 3へ続くそうですが4年ちょっとたった今もまだ新刊は出てません。
ひどい。



A Spectator Named Kennedy:Michael Weber

Weber!
鮮やかなるセンターディール・デモ。広げたデックの中から演者が3枚適当に選び、それを覚えてもらったらデックを閉じる。そして配ると、覚えたカードが相手の手に来ているのです。

が! 演者の手にはさらに強力な役が!

凄いんですが要になってる技法が苦手でして。
高難度の技法を多用しますが、理想的には全く気配のない、素晴らしい構成の手順。
Weberやっぱり天才だなあ。



'N Synch:Raj Madhok, Gregory Wilson

電話越しにも行えるメンタル手順。相手が見ている腕時計を媒介として、相手の思い浮かべた数を当てる的なそれ。
キモイが相手について事前情報が必要。


Tell A Phony Too:Raj Madhok

'N Synchで必要な事前情報を、これまた電話越しに取得してしまおうという試み。物はEddie Fieldsの Tell A Phonyというカードマジックなんですが、一連の作業から選ばれたカード以外の情報も取得するというもの。
Tell A Phony自体がちょっと微妙。まあ電話越しに行うという制限を考えれば仕方ないんですが


'N Synch 2:Raj Madhok

フィッシングというかブラフというかを用いる事で、'N Synchから事前情報を不要にしたもの。
きもい。


The Open Ditch:Bill Kalush

Open Prediction。凄い。これもかなりの技量が必要だが、技巧系の解決としてはTalk About Tricksの傑作Llasser Open Predictionをも上回るクリーンさ。Llasserと違って観客がカードを配る。しかしこれも難しいなあ。

あとLasser OPは初めにちゃんと予言が提示され、観客に選択を迫るタイプなんですが、こっちは配って枚数が少なくなっていくうちに「あれ?さっきのは、もしかして……」となるタイプなので厳密にはOPからは外れる気もします。このへんはいずれOpen Prediction Project レビューの時にでも。


文中でもちょろっと触れられてましたが、この「もしかして……」という感覚を上手くあおってやらないと、観客はあんまり不思議に思わないかもです。そういう意味でも難しい。



The Two-Ton Prophet:Gordon Bean

観客が自由に言ったカードが、演者の言った枚数目から出てくる。

と、これだけなら何も不思議ではないのですが、問題は演者が枚数目を言った後で、観客がカードを言うという事。当たり前ですが紙に書いてもらったりとかはしませんし、変なフォースも用いません。
これが現象として『不思議』かというと、どこかつかみ所が無く、観客に受けるかは微妙に思います。でも面白い研究で、手法もかなり大胆ですが面白いです。

Stewart Jamesのある手順を、いち部分だけで演じられるように再構成したそうです。



と言うわけで実に面白かったです。
キモイ系メンタルの他に、不可視となるまで鍛える必要のある超絶技巧なカード・マジックが多く、インパクトのある巻でした。天上の世界をかいま見た感じ。

このレベルの冊子がもっと出てほしいなあ。

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