2013年5月17日金曜日

"Making the Cut" Ryan Schlutz






Making the Cut (Ryan Schlutz, 2011)





若手Ryan Schlutzの初作品集。

映像ダウンロード作品が2つくらいあるものの、初作品集をハードカバー本で、という時点で好感が持てる。

そのダウンロード作品、Sense-Sational、Pivotal Peekはどちらも不可能性の高いロケーション。だが本書はClub SandwitchやSignature transpoなど普通の題材が主で、そういう意味では期待と違った。

理論よりの人らしく、本書も観客へのアプローチ手順(Making the CutはBreaking the Iceと同じ意味で使用されている)から、より複雑かつ感情に訴えかける手順、相手に記念品を残せる手順、と章立てされている。

ただし作品には、John Guastaferroを筆頭に、Caleb WilisなどVanishing Incを中心に活動している面々に似通った、中庸というか、よく出来てはいるが、個性には乏しい点がある。


不可能ロケーションの人という印象、また第一章は大きなプロブレムである"アプローチ"の手順ということで期待していたが、これが面白くなく大いに落胆した(*)。
プレゼンテーションも理屈で作っている気味で、個人的にはあまり好まないタイプ。Club Sandwichなぞは、黒い渦模様のサンドカードを使い、ブラックホールだから選ばれたカードが吸い寄せられ云々言い出して、正直どうでもよい。

だがMisfit Queenでのシンプルかつ大胆なパームがなかなか良く、サイン移動の複合現象INSIGNIAもよく練られていた。最初の作例がつまらなかったPivotal Peekも、Treasure Huntという非常に良い手順が紹介されて救われた感じ。また特殊印刷のカードについては、自家プリント方法も載せてくれるなど丁寧で助かる。

終わってみれば、なかなかに良い本だった。
色々なプロットをそつなくこなすといった印象。



(*)When It Doubt, Read a Palmでは、自分は手相占い師なのだと言ってアプローチし、しかし手相を見る手を間違えたりジョークを言ったりと適当な対応をし続けたあげく、やっといや実はマジシャンなので今からカード当てする、と来る。
好みの問題ではあろうが、マジシャンの名乗りを上げるまでの間、手相占い師と自称する正体不明の男が場に存在しているわけで、これはだいぶ気色悪いと思う。

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