2025年10月29日水曜日

"Openers"

Openers (Magicseen Magazine, 2024)


イギリスのマジック雑誌MagicSeenのプロデュースで、Phil Shawが編んだ、42人のマジシャンのオープナー手順を集めた本。

こういったオムニバス作品集はテーマ設定が非常に大事です。ただカードマジックを集めただけの縛りの弱い本は確実に失敗作。Open PredictionとかOut of This Worldといった難しいプロットも十中八九、失敗します。縛りはゆるすぎても、きつすぎてもいけない。成功が見込めるのはCard Warpや10 Card Pokerといった多彩なアプローチが許容されるテーマでしょうか。それでいうと今回の縛り「オープナー」は絶妙です。一見すると広すぎる縛りですが、一口に「オープナー」と言っても、環境、舞台の広さ、観客の数、演者のスタイルなど様々な要素が含まれています。参加者がそれをどこまで読み取り、作品を提供しているかが、本書の読みどころと言えるでしょう。

参加者は、

Matt Baker, Chris Congreave, Michael Murray, Luca Volpe, Ryan Schlutz, Steve Gore, Kev Gregson, Phill Smith, Steve Dela, Gary Jones, Iain Moran, Paul Gordon, Paul Brook, Jasper Blakeley, Carl Royle, Sean Carpenter, John Guastaferro, Alan Rorrison, David Regal, R Paul Wilson, Steve Cook, Liam Montier, Lawrence Hass, Mark Elsdon, Christian Grace, Boris Wild, Etienne Pradier, Rafael Benatar, Chad Long, Shaun McCree, Michael O’Brien, Mark James, Woody Aragon, Daniel Chard, Henry Evans, Fraser Parker, Harry Robson, Peter Pellikaan, Wayne Fox, Peter Nardi, Danny Goldsmith

の42人。カードがメインですがコインとメンタルもそこそこ居ます。どうでしょう、好きなマジシャンや気になっていたマジシャンが何人かは居るのではないでしょうか。自分の演技環境や狙い、制限をちゃんと示す人も居れば、「オープナー」だって言ってるのにぜんぜん関係ない手順を出してくるアレな人も居ます。説明が丁寧な人もいれば下手な人もいる。「オープナー」という繊細な縛りであるからこそ、参加者の程度が浮き彫りになります。

そんなわけで「オープナー」を求めると収穫はないかもしれませんが、上記42人の中に気になるマジシャンが何人か居るのであれば、その品定めや、新しい出会いを探るにはとても良い本になっています。

有名どころ以外で言うと、私はDavid Forrest(Cameron Francisの構成協力で登場)、Phil Smith、Michael Murrayはやっぱり良いなあと思いましたし、Alan RorrisonやKev Gregsonは気になりました。あなたにもよい出会いがあらんことを。