2024年11月26日火曜日

”Outnumbered” John Bannon

 Outnumbered (John Bannon, 2024)


Barrageに続いて、フランスの3 Monkeys Pub.から出たJohn Bannonの新作ノート。100ページちょっとで今度は数理系のカードマジックが6手順です。

まず『数理マジックの復興』を歌い上げる序文が素晴らしい。現代だからこそ輝く数理マジックがあるという話には、なるほど、すっかり説得されたし、続いて提示される手順Game, Set, Match!もこの上なく嫌らしい。――のではあるが、全体で見ると序文の趣旨に合致する手順は半分くらいなのが冊子として勿体ないところ。手順はすべて原理系だし、総じて完成度は高いのですが、テーマとしてややブレてしまったところがある。序文で言ってた『現代の数理マジック』で固めて欲しかった。そうしたら傑作ノートだったでしょう。

手順の完成度はどれも高いし、数理縛りではあるがMentalissimoDestination Zeroのときほど堅苦しくもなく、実演して楽しそうな感じ。少枚数の調整やカードの選ばせ方なんかは、DaOrtiz(やJosheph Barry)以降の目で見ると、ややハンドリングに固い所はあるかもしれない。でも細やかな技巧や工夫はやっぱり流石Bannonである。

最近のBannon作品集として、Barrageとセットでおすすめ。薄いしね。また数理手品(特に観客にも負担を強いるタイプの)が好きなら、序文だけでも励まされるものはあるかも。

2024年11月25日月曜日

"The Art of Shaping Perceptions" Gabriel Werlen

 The Art of Shaping Perceptions -Impromptu Mentalism (Gabriel Werlen, 2023)


Á Double Tour (2022) 面白かったのでGabriel Werlenをもう一冊買ってみました。Á Double Tourと重複が1つありますが収録作は6つと倍に増えています。また個人的に気に入っていた彼のスタイル『即席メンタリズム』がタイトルにしっかと掲げられています。

では期待した内容だったか、というと……正直なところ微妙だった。6作品あるものの、素材の幅が狭く、中心になっている原理も同じなので、同工異曲の感じがある。同一手法が繰り返されることによって、この手法の「結局は二択」であることの窮屈さも強調されてしまった。言葉の扱いが難しい手順も多いし、パーラー/ステージ寄りの手順も多く、サブタイトルにまでなった割に即席感も前著よりは弱い。この原理(手法)のいろいろな応用の仕方という意味では勉強にもなるが、全体的な完成度ははっきりÁ Double Tourのほうが高いだろう。

そんな中、6枚の適当なカードから観客の選んだカードを当てるKnow-wayは良かった。こちらはGreen Neck Systemの応用とのこと。Mathematical Three Card Monteの親戚で、パズル感がありつつも、しっかり不思議さも高くなってると思う。

読むならÁ Double Tourの方が良い。それで、Heads I win, Tails you loseが面白かったら本書も読めばいいだろう。とはいえGreen Neck Systemを使った手順が面白かったのでGreen Neck Systemは読みたくなったし、今後の作品にも期待が持てます。