2013年1月19日土曜日
"Secret Agenda" Roberto Giobbi
Secret Agenda (Roberto Giobbi, 2010)
Giobbiといっしょに一年間。
カードカレッジ でおなじみ、碩学Giobbi先生のちょっと変わった御本。
各タイトル毎に日付が振られていて、それが365+1タイトル、つまり日めくり式みたいになっている。一日1タイトル、一年掛けて読破せよって事らしい。
それでまあ去年の1月から読み始めて、途中までは、ほぼ正確なペースで読んできました。10月くらいで一度中断、積みに入ったものの、先頃まとめ読みして何とか1年+数日で了。
いやーしかし1年も経つと、最初の方の話とかすっかり忘れてますね。
あらためてざっと読み直した上でレビュー。
内容は、エッセイ、技法、手順、逸話、クイズ、アイディア、ギャグ、記念写真などなど何でもあり。古くなったコニャックの飲み方とか、将来自分のお墓を作ったときの碑銘案とかそんなのまである。
各タイトル1~2頁という事で、基本的には小物。トリックも小品メインです。ビジネス的なアドバイスとか、テーブルへのアプローチの仕方とか、そういう読み物系統が多かった印象。マジックそのものの話はあまりしていないような……。実際に道具を持って手を動かすような記事は30%あったかなぁという感じ。ちなみに僕が「ああコレは覚えておこう」と思ったネタ物は30タイトル未満、10%以下でした。
カードはあんまり得る物がなかったというか、Card Colledge 5 のレビューでも書いたけれどGiobbi先生けっこう独特なのです。トップスタック・コントロールなど、シャッフル組み合わせの記事が複数あったので余計に今ひとつの印象。個人的な好みとして、シャッフルのコンビネーションにはあまりそそられない。
特に単枚数コントロールではそうですが、どれだけDeceptiveにシャッフル・コントロールできたとしても、マジシャンが触っている時点で「コントロールしているかも」という可能性は生じると思うのです。だからといって、おざなりで良いかと言えばそういう訳では無論ないのですが、それぞれの手法の違いとか利点が見えにくいので、いまいち入れ込めません。
閑話休題。
で、駄目な本だったかと言えば一概にそうも言えない。
テーブルに置いたデックを綺麗に取り上げる方法、とか、たくさんあるデックの整理方、など普通のマジック本ではお目にかかれないような、些末だけれど面白いTipsがあったり、マジシャンにしか通じない超内輪ジョークがあったり。
『ヘイ! スティーブ。エルムズレイの新しい4巻組DVDはもう見たかい?』
『もちろんさ。だけど、3巻だけ見れてないんだ。代わりに1巻を2回見てしまったよ!』
『HAHAHA!』 (Feb.18)
みたいなのとか。あ、訳は適当です。
中でも僕は、Aug.16のワイングラス・ベンディングが非常に気に入りまして、さっそく持ちネタに取り入れました。使いどころは限定されるし、実を言うとマジックでも何でもない小ネタですが、これだけで一冊読んだ時間は報われたかなあと思っています。
また以前、Lennart GreenがTEDでのパフォーマンスで使っていたネタを、個人的に盗用していましたが、本書のOct.15にてめでたく文書化されたので、誰を憚ることもなく使用できるようになりました。うれしい。
それから。Jun.29のBreast Pocket Ployは、出来ない服もありそうなものの、胸ポケットの口を開けておく手法としてはコロンブスの卵のような出色の方法でした。ただあまりに良い手法なので、ひょっとしたら僕が知らないだけで、割と一般的なのかも知れません。John Carneyの案だそうです。
そんなわけで、当たりは少なく、実用的な物となるとさらに少ないのですが、一方で必ずひとつふたつは大当たりが出てくるんじゃないかなーと思います。それが技法か、ギャグか、格言なのかは人それぞれになるでしょうけれども。
平均を取ると、どうにも退屈という評価になってしまいますが、益体もない(と思えてしまう)文章をだらだら読みながら、たまに判る話に出くわすとこれがはっとするほど面白い、そんな本でした。まあ言ってしまえばブログであるな。紙ブログ。
なお、本自体はやや四角に近い変形版、ダストジャケット無しの布装、箔押しも金と白の2色というとても素敵なもので、背も美しく、デザイン的には言うこと無しです。
最近出たConfidences も気にはなるんだけど……、やっぱりGiobbi先生とは相性が良くないみたいだし、しばらく見送りかなあ。
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今の所、毎日1つずつ読んでいます。
返信削除このサイトを楽しみにしている知人もいることが判明、、自戒も込めて今年中に読了することを宣言します、、。
本日、Confidencesを入手、B6の小さい本で持ち運びに便利、装丁はとても奇麗、カードの他にカップ&ボールとコインの技法にも触れてあるようで、おもしろそうな本だと思います。
>いくともさん
返信削除読んでくださっている方なんて、きょうじゅさん、いくともさん、Shanlaさんの三人しかいないと思っていたのに!
Confidences、コインがあるのは良いですね。ついでがあったら買おうと思いますが、Hermeticの読みたいのはだいたい揃えてしまったのでいつになるか……。Bornの新刊も読みたいし、それより積んでいるのがこう、ね。