Freedom of Expression (Dani DaOrtiz, 2022)
Dani DaOrtizのサイコロジカル・フォース本がやっと英訳されました。原著Libertad de Expresiónが出たのが2010年頃だったはずで、そのころ「英語に翻訳はされないんですか?」とメールして「近々出るよ」という返事を貰ってから、実に10年以上かかりましたね……。
本書は薄めの本ながらかなりよく書かれていて、Daniのあのスタイルが極めて意図的・自覚的に構成されている(あるいは分析されている)ことが分かります。序盤のクラシック・フォースや7th フォースについてはレクチャーなどでもよく喋っていたように思いますが、中盤以降のフィッシングや情報を歪ませるPM Methodといった独自色が強くて複雑な内容は、やはり文章で読めると理解がしやすい。また翻訳のせいでちょっとクセのある文章ではあるものの、全体的に簡潔であり、とても適切に実例が挟まれます。精神論や『理論』みたいな方向には行かず、あくまで実践的・実用的なスタイルでまとめられている印象。個別のフォースやフィッシングの実例とは別に、これらの手法を駆使した手順も最後に10作ほど収録されています。
ただしっかり書かれている分、この手法の問題も強く感じられる。Daniは要するに、観客との間にわざとコミュニケーション不全を作っているのですが、これはDaniを見ている時のあのなんとも言えないストレスの元になっているわけです。私にとってDaniは異国人なので、彼と多少すれ違いがあっても文化・言語の壁によるものだろうと割り引いて考えますが、たとえば同じ手法を同じ文化圏の人間が使ってきたら(彼・彼女がその手法を十分に内面化していたとしても)さてどう感じるものだろうか。
本書はよく出来た本で、現代マジックの巨人Dani DaOrtizのスタイルが、ここまでしっかり文章で解説されていることは素晴らしいことです。ではあるものの、実使用においては問題も大きいと思うので、用法用量には気をつけてください。
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