2013年8月27日火曜日
"The Best of Benzais" John Benzais
The Best of Benzais (John Benzais, 1967?)
エレガントさにかけては右に出る者のいないJean Pierre Vallarino先生がFISM ACTで用いて有名になった(と勝手に思っている)Benzais Spin Cut。そのBenzaisである。
Slip ShotとかSpin Outとかいろいろと変名・変種もあるが、手軽でビジュアルで、プロダクションとしては一つ確固たる地位を築いていると思う。
似たような見た目のプロダクションにPop-out Moveがあり、昔はよく見た気もするのだが、あれなかなか安定しないし、それに比べると非常に使いやすいのでほんとにもうお世話になっています。
Pop-outが出現”する”のに比べて、こちらは出現”させる”というニュアンスが強く、ギャンブルデモなんかとも相性がよい。
まあこれだけお世話になっている技法の創始者、他の作品も読んでみたくなる。しかし25歳という若さで死んでしまったらしく、作品集とてもこの自費出版の小冊子ひとつ。
内容はカードだけでなくコイン、ロープ、ボールと多彩。時代的な物もあるだろうが、あまり特殊なプロットはなく、特にカードはスタントよりの印象。コインはかなり挑戦的な事もしている。
・The Coin Through the Table(Complete)
どんどん使用枚数を増やしていくコイン・スルー・ザ・テーブル。
本来シークレットムーブとして有名なものをオープンにやってしまったり、非常にマニアックな”音”の技法があったり、空中で行うHPCがあったりとなかなか凄い。
Benzais Gripを使ったIt Doesn't Belong Hereは、片手に握った5枚のコインが、怪しい動作全く無しで、そのまま反対の手に移動するというもので上手く決まれば凄いが難しいです。
・Just a Few More "Coin Tricks"
章題ままに、もうあといくつかのコイントリック。
ものすごく難しいスリービングとかあって、これ非実在手品技法ではないかとたいへん疑わしい。や、僕ができなかったというだけですが。
全体的に単発現象だけれどインパクト重視。Coin through Cellophaneなどもある。
・Different Types of Card Tricks
スタント寄り? カードの剥がし方や、カードスリービングなど変な技術も解説。全体的にあまりぴんときませんでした。
なお例の技法が解説されているのはBewildermentという手順です。
・Stabbed in the Pack
カードスタブ。とだけ言っても多々あるが、カードをデックに投げ込むタイプのそれ。
雑誌掲載の順に沿って、お便りや改案寄稿なども載せられている。
ロレインとクレジット論争的な事になっていたようだが、あんま細かいニュアンスは私にはわからんです。
ただロレインの解説は大仰でめんどくさいなあ、とだけ。
・Mess-Cellaneous Tricks
その他のトリック。切ったロープの復活、3ボール(ScarneのClassc Ball Routine的なやつ)、結ばれるロープ。
この最後のがKaufmanもおすすめという逸品。結べるはずの無い状態で、結び目ができたり消えたりを繰り返す。テーブル使用を前提とした、その点でも面白いロープ手順。
いつぞやのMoeでも書いたように、このBenzaisの手順はほとんどが"死んでいる"。つまり現在では誰もやっていない、もとい、これをベースにした改案があまり発表されていないもので、だからこそ再読の価値はあると思う。特にコインはいろいろ面白いです。
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こんばんは。
返信削除ジョン・ベンザイスといえば個人的に、カードよりもコインのフリクション・パスが思い浮かびます。
25歳で夭折したというのは知りませんでした。
Stabbed in the Packは、カードマジック事典にも載っていますが、確かに演じているのは誰も見たことがないです。
返信削除そういえばフリクション・パスはBenzaisでしたか。不勉強故に言及もれで御座います。
Stabbed in the Packは手法自体は有名ですが、スタントの要素が強いせいか、だいたいロレインのスリップカット型からの改案でも多い印象です。
こうしてみるとちょっと問題のある記事かな……。
Coinには余り詳しくないので、ひょっとしたら世のコインマンから失笑を買っているかも知れません。
カンガルーコイン的にあれを足で挟んだ状態から、平然と両手を出してしまうのって、有名な手法だったりするのでしょうか?
問題のある記事ということはないですよ。
返信削除参考になる内容や、ちょっと笑わせてくれる記述も多く、いつも楽しく拝読させていただいています。
研究者として専門書を出すならともかく、ウェブサイトという媒体でならば、そこまで硬く考えることはないと思います。
関連事項を漏れなく盛り込まなければいけない、なんてことはないでしょう。
なるべく完全な方向を目指したい、という趣向は大いにアリだとは思いますけど、義務的に考えることは無いかと。
この本を読んでいないので、仰る状況が明確には想像できませんが、カンガルーコイン的な状況で両手を出してしまうというのは、見たことがないですね。
少なくとも有名な知られた手法ということはない気がします。
あんまり的はずれなこと言ってたらさすがに恥ずかしいなあと。
返信削除コインでShanlaさんが知らない策略なら、やはり独特なものという認識でよいのでしょう(笑
カンガルーコインの策略は非常に優れているので、それをあえてオープンに使うというのは面白い発想であるなあと思いました。