2024年6月30日日曜日

”Session Notes 2024” Tom Stone

Session Notes 2024 (Tom Stone, 2024)


Tom Stoneが2024年のSessionコンベンションで行ったレクチャーのノート。Tom Stoneといえばクロース~パーラーでの強力な現象の探求と、そのために手段を選ばないというのが私の印象。そしてかなり凝ったことをやるかと思えば、急に力業でぶち抜いたりという独特のバランス感覚がある。このノートでもそれは相変わらずです。またColwellのTheseusの改案もあるなど、最近の現象も旺盛に取り入れている。一方でこのノート、6手順でわずか12ページしかなくて、そのため解説はかなり簡素です。往年のファンには物足りないかもしれないけど、Tom Stoneの手品をライトに摂取できるのはちょうどよかった。ねちっこい解説が読みたいならまだまだたくさん本はノートはありますしね。

以下収録作

Mittens:両手に分厚いミトンをはめた状態でのCard to Impossible Location。2枚の選ばれたカードが、それぞれのミトンの内側から出てくる。力業だけどスマートで、いかにもTom Stoneっぽい。

The Suss:Theseusの改案で、絵はがきを使ったもの。パフォーマンスとしては格段にしっかりしたが、手法はごく単純になってしまった。言われてみれば確かにこれでいいんだけれども……。

A Handy Gift:小さなプレゼントの箱にリボンがかかっている。ハサミでそれを切って中身を取り出すと、いま使っていたハサミが出てくる。最高にTom Stoneなトリック。理論的には面白いが、実際に演じたときどこまで思惑通りに成立するかちょっと危うそうなあたりもTom Stone。

Flatworm Fry:記憶の移動現象。観客Aにカードを見せたあと、観客Aがカードを忘れ、観客Bがカードを思い出す。この類の現象の常として、成立はしてるけれどあんまりおもしろく見えない気がする。

Color Deaf: 小ネタで解説も半ページもない。Out to Lunchギミックのアイディアが主体で、現象はおまけかな。確かにちょっと面白いギミックで、なにかしら使い出はありそう。

White Death:流氷に見立てたブランク・カードを並べ、観客に自由に渡ってもらうが、観客の選んだルートはことごとく氷が薄くて、どうあがいても死であることがわかる。急にクロースアップの売りネタっぽい手品だが、解決策にはおよそ面白味がない。演出や道具立てはすてき。

Tom Stoneは謎技法も技法ゴリゴリ手順もけっこうあるのだけれど、このノートではそういうのは無い。基本ギミックでパーラーよりなので、それだけは注意してください。でもまあ短くてすぐ読めるし、現象もやり口も面白いので、誰が読んでも楽しめるでしょ。いいノートです。

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