2014年3月17日月曜日
"Now I don't have a piece of thumbs in my pocket." 堂本秋次
Now I don't have a piece of thumbs in my pocket. (堂本秋次, 2014)
Gumroadで購入。使用中の混ぜられた一組の準備のないデック、いわゆるFASDIU条件から出来る5+1手順のカードマジック作品集。
収録はオープナー、2・2の水と油、Visitor、予言が2つ、そしてCollector。
FASDIUで出来るっていうのは、やはり素人にはうれしい。また全体的に面白いアイディアがちりばめられている。作者個人のアイディアもあるだろうが、クレジットを見るに、色々な映像媒体から最近の作風が取り込まれているのかなという感じ。
技法を分割したり見えないタイミングで堂々と行ったりなど、なかなかひねくれたやり口は大変好みである。
白眉はやはりDoppelgangerだろうか。非常によいオープナーであると同時に、かなり面白いロードのアイディアがとられている。ごく大まかなプロットで言うとDenis BehrのBrute Force Openingに似ているのだが、あちらはかなり強引で正面突破、僕にはちょっとできない感じだった。一方Doppelgangerはミステリーカードの要素による『不思議さ』があり、そして目の前で堂々とずるをするあの暗い喜びの感じが好みである。僕ではどこまで通用させられるものか判らないが、ちょっと練習してみたい。
難易度は全体的に高め。パームとか臆せず出来ること、技法名がある程度通じることが必須条件か。
本そのものとしては、まあ自費出版でもあるし仕方ないが、ちょっと残念なところもある。図無しの文章のみだし、誤字や文法的に変な箇所も散見される。手順解説自体は読みやすく、十分意味がとれるが、何ヶ所かは図で補助がほしい気もする。
またクレジットがやや曖昧。クレジットがあるのは素晴らしい事だが、作品名や人名のみの表記にとどまっており、どこでどの程度参照したのかが判然とせずに、もやっとした。もうちょっと具体的なレベルで、元にしたアイディアや経緯なども書いてくれたほうが、より狙いや工夫がわかりよくなると思うのだが。
とはいえ、全体的に巧妙さと技量とのバランスがとれており、大変面白い作品であった。裏で割とひねくれた事をしつつも、現象はすっきりしており、マニアックな楽しみと実用性とが上手く両立していると思う。値段も安め。次もあるそうなので、発売され次第買おう。
2014年3月10日月曜日
"Japan Ingenious" Steve Cohen & Richard Kaufman
Japan Ingenious (Steve Cohen & Richard Kaufman, 2013)
Five times Five Japan、New Magic of Japanに続く、Kaufman社による、3冊目の日本人コンピレーション。
和書Winners 厚川昌夫賞8人の受賞者 を底本としているが、訳しにくい作品は省略されているとか。Winnersではカズ片山によるコミカルな似顔絵などもあったそうなのだがそれもない。ちょっと残念。一方で雑誌などに散らばっていた日本人による傑作を集め再録している。
底本からの訳がSteve Cohen、それ以外がKaufmanおよびMax Mavenの筆。なおSteve Cohenのサイトから注文すると、サインをお願いできるようだ。
この本のレビューが載った号のGenii をたまたま購入していたのだが、David Britlandが大いに誉めている。曰く、「日本人ってどこか別の惑星から来たんじゃないの?」まあそういう定型文なのだが、それぐらい発想の特異さを強調していたという事。
若干のナショナリズムを自らの内に自覚しないでもないが、いや、やはりすごい内容であるよ、面白い。紹介されている手順は基本的にクロースアップ。カードやコインもちらほらあるが、それ以外の小物の方が多い。破いて復活する紙幣や、切っても復活するリボン、ドル札に書かれた建物が消える、紙に書かれたスプーンが曲がるなどなどヴァラエティに富んでいる。
準備が必要なものや、それなりに変わった道具を使うものも多いから、即戦力という点ではあまり望めないだろうが、読むだけでも大変楽しい。個人的には靴ひもの結び目が取れて、別の場所にくっつくSneaky Sneakerが好きだ。くっつけた後がすごいのですよこれ。演じるかとなると演じないだろうが、そんな事はどうでもよいくらいの素敵な解法である。解法と言えば、Cups and Ballsのオープニングでよく演じられるCupの貫通を、液体の入ったカップでやってしまうPhantom Drink Penetrationもすごかった。いや是非読んでみてほしい。
前述のように全体的に切ったり貫通したりが多く、なんかそういうフェティッシュなのだろうかとちょっと思えてきたりもするのだが、一方でAutomatic Ace Triumphのような即席でできるカードの傑作手順、Jet Coinsのような変態手順も、数こそ多くはないが含まれており、結局の所、読んで損になる層はちょっと思い当たらない。一応ステージ物まであるものな。
そして高木重朗のSlop-Shuffle Acesがきて、とどめに澤浩セクション(技法1、手順6)である。いやもうすごい。
褒めてるレビューを見つけたら、逆にアラを探す性分なのだが今回は歯が立たなかった。ともかく面白かったです。
ある種のマニア文化、大学の奇術部文化のようなものが根っこにあるのかどうなのか、実に手段を選ばず工作を厭わず、面白い創作群となっている。見た目にもシンプルで、現象がわかりやすいのも好い。
国でまとめたコンピレーションは他にもイギリス(スコットランド)のFive times Five Scotland やドイツのConcertos for Pasteboard などがあるが、巻を重ねているのは日本ぐらいの印象。Kaufmanが親日家というのを含めても、やはり相応の反響があるのだろう。実際ここまで多岐にわたり、工作含めてあの手この手している本って他にはなかなか思いつかない。
ダスト・ジャケットの下には、日本の独創性 と大書されており、誇らしい一方で、後続の我々としては身が引き締まる思いである。……いや、まあ私は別に手品創作屋ではないのだけれども。
2014年3月7日金曜日
"Diplopia" Paul Vigil
Diplopia (Paul Vigil, 2007)
Paul CumminsのTap a Lackの改案。
Cumminsの手順が雑誌発表(MAGIC Magazine, 2005, July)でちょっと買いにくかった事、またCummins手順のある制約を排除しているという触れ込みだったので購入したのだが、結局の所は台詞を一部を変えているだけと思われる。なので、これをオリジナルとして単売するのはなかなかすごいなと。いやすばらしい改良点だし、他にも色々と工夫はあるようなのだけれどもしかし。
というわけで、Tap a Lackは未所持なので正確には比較できていないが、そのレビューと思って読んでもおそらく問題はない。
なお現在はDiplopiaは販売中止だし、Tap a Lackはこの前のCumminsレクチャーのノートで日本語でも読めるしで、今となってはこの本を探求する必要は殆どないだろう。なお僕が勝手に萎縮していただけで、当時でも雑誌のバックナンバー購入は実は難しい事ではなかったはずだし、またCummins氏にメールすればTap a Lackのpdfをくれていたとかいないとか。
なおTap a LackはTalk About Tricks DVDで演技が見られるが何故か解説はない。
現象:
①:観客が一枚のカードを思い浮かべる。
②:演者も一枚のカードを思い浮かべる。
③:観客が演者のカードと思うカードをデックから取り出す。
④:演者も観客のカードと思うカードを抜き出す。
⑤:どちらも当たっている。
①②の後にそれぞれ若干の省略があるがまあこんな感じ。
演者が観客のカードを当てるだけなら、よくあるカード当てだが、加えて観客が演者のカードを当ててしまうというのが特色。しかも変な選ばせ方とかはなく実にフェア。これは知っていないと判らないタイプの手法で、結構練習いるけれど確実であるし、すごい。
この手法自体はわりと昔からあるのだが、それ単体ではどうしても怪しくなってしまうある要素が、このフレームに組み込まれる事によって見事に解消されている。Cumminsによるこの工夫は実に素晴らしい。
1組の、なんの準備もないトランプで出来る手品としては最高ランクに不思議であり、美しい構成。
……ただし、すごい手順ではある事は間違いないのだが、演じるのは、技術的にも演出的にも、ちょっと難易度高めだろうか。
まず物事の順序がいささか不整合で、シンプルな構造の割になんだかすっきりしない。
本来、③と④は逆であるべきではないかとか。現象の見せ方も若干半端というか、観客があてた様にはあんまり見えない。ここは演じ方でもう少し何とかなりそうではあるが。
それからまた報われない手順でもある。
この手順はあくまでDo as I doであり、カード当ては部品だ。マニアをもだますカード当てを行っていながら、それを最前面に押し出す事はできない。むしろ、そこに拘泥すると現象の全体像が歪んでしまうだろう。
近年まれに見る傑作である事は間違いないが、いろいろと注意して演じたい。
なおVigil氏は、僕の知る限りで他に2冊のe-bookを出しているがどちらも所有していない。
ICON コインのメンタル手順。読みたかったが販売中止してしまった。
H.C.E. カードのメンタル手順。10万円するので流石に買わない。
2014年2月27日木曜日
"Sympathy (for the devil) cards" Paul Vigil
Sympathy (for the devil) cards (Paul Vigil, 2007)
Paul Vigilによる単品e-book。
簡単にできるSympathetic Cardsと、プロットに沿った強烈なオチ。
メンタル寄りの手順でちょっと有名なPaul VigilのSympathetic Cards現象。同じ値のカードで構成された2つのパケットのうち、片方を観客が混ぜるが、ふれていないもう一方のパケットとなぜか同じ並びになる、という現象。
1-10などそろったカードでやるのが普通だが、Vigilの場合は相手が適当に取り上げた枚数のカードを使って行う。さらにそれを2つに分け、片方を観客にある特殊なやり方で混ぜてもらう。この部分が売りの一つなのだが、これ、どれだけ混ざったように見えるかなあ……。ただ表裏がある程度バラバラになるので、後で見たときに"混ざった"感は強いか。元ネタはHoward Adamsだそうです。
第二弾はさらにカードを混ぜてもらった後、その数字の並びを携帯電話に入力してもらうと……、というものでなかなか素敵に気持ち悪い。前後の整合性を合わせるのであれば、シンパセティックな変化現象というより一致現象なのだね。
技法要らずで簡単。混ぜる部分には流石にそこまでの説得力はないかもだが十分に面白い原理。
あまり扱われないプロットでもあり、覚えておいても損はない感じです。
ただ2つほど気にくわない所がある。
まず1段目だが、メイトの一致現象として演じるのはいささか不整合。観客が適当にとって分けた時点で、すでに両方の山の組成が同じだったという不可能が起こっていた事になるが、演者はその点を消化できない。第2段もある事だし、ここは色の一致程度に留めた方が良いのではないかな。最後の組だけメイトにするとフィニッシュ感もでるし。
また第二弾の手法として、Luke Jermayのアイディアが紹介されるのだけれど、これはちょっと通用しないので実用しないように。読んだ時点でこりゃ駄目だと気づきそうなものだけれど、「いやでも意外と通じるのかな……」とか思ってやったりしたら駄目。個人的な経験から断言できますがやっぱりこれは通用しないです。痛い目を見た。
追記
① Sympathy for the Devil(It's me!) って手順を読んだ記憶がなきにしもあらず。
思い出したらまたどこかで載せます。
②Vigil氏、これらのe-bookの販売やめたのですね。物質本と違って、こうなると(正規では)手に入らないのが痛い。
2014年2月26日水曜日
"Penumbra issue 10" 編・Bill Goodwin & Gordon Bean
Penumbra issue 10 (編・Bill Goodwin & Gordon Bean,2006)
碩学Goodwinの発行するPenumbra誌、その第10号。例によってよく練り込まれた手順や、ひと味違ったアイディアが光りますが、この刊は作品数すくないこともあってか、他の刊よりは軽いです。
The Sound Of One Coin Clinking:David Gripenwaldt
有名な禅の公案「隻手音声」めいたタイトルで、実際にそういう不条理は起こるのですが、それは現象として前に押し出している物ではないです。あくまで裏で起こっている事が不条理というか。そのためちょっと残念。
状況設定を書くとネタバレになりそうなので控えますが、応用範囲はごくごく狭そうなものの、マジシャン心をくすぐるおもしろいコイン・マジックのアイディアです。
Perfect Order:Shoot Ogawa
緒川集人のマニアックなトライアンフ。きわめてクリアーに表裏を混ぜた後、選んだカード以外の向きがそろうトライアンフ現象。その後、カードの順番もそろってしまう。
ここまでやるかというディスプレイ。ある意味ではJennings&Goodwin Displayを上回る物があります。また初期状態はPerfect Orderでないため、ちらっとですが表面を見せても大丈夫です。ただ全体的にハンドリングが難しいのでなかなか安定しなさそう。
Fat Brothers DVDのおまけで演じているのが、およそこれですが、しかしShootさん演技はいまひとつですね。平板で。
Triple Alliance:Roy Walton
Waltonの良さが僕にはどうもわからない。シンプルで力強い構成はよいのですが、1枚と4枚がトランスポ、その後おまけにデックの表裏が変わる!
という、おまけの意味がわかりません。
Color Shuffles (Part One):Ronald Wohl
前後編に分かれたColor Shuffleの前編。手法と、その基本的なアプリケーションを解説。
観客が(見た目上)よく混ぜた後、カットして上1/3程度を取り上げるのですが、そのパケットに含まれる赤いカードの枚数などを制御するというもの。
何の役に立つのだろうなあと思ったのですが、用法が色々あげられており、なるほどこういう使い方も考えられるのね、という事で創作の案出し過程として読んでておもしろいです。ただ現象が面白いかというとちょっと微妙かもな。
しかしまだ前半だそうで、これどう発展させるのか後半を楽しみにします。
なお次のissue 11が出たのは3年後だったようでこれは酷い。
2014年1月13日月曜日
"Troika:3 Mentalism Daydreams" Brad Gordon
Troika: 3 Mentalism Daydeams (Brad Gordon, 2008)
メンタルマジック3+1。
「元々カーディシャンだったけどメンタリズムにも興味が出てきたんだ!」 ということでそれはよく分かります。
意外にもカード技巧ぽい所は無く、割と度胸だよりというか雰囲気だよりの手順が多くて評価が難しい。どこまで通じるのかなぁ?
Purposive Reverie
デックの中にあるたった1枚の特別なカードを観客が選ぶ。外見としての自由度は高いが、あまり"選択"した様には見えないよなあ。MavenのFan Forceみたいなものでなかなか怖い。
Match Box
マッチの箱が重くなる。とあるギミックが利いている。
The Locket Connection
ロケットをペンデュラム代わりにしたカード当て。ここのフォースは前例有りそうだけど秀逸。ただ小道具を導入しすぎてよく分からない現象になっている気がする。
O.vert U.tility T.ranscript
純・サイコロジカル・カードフォースに失敗した時用のアウト。リーディングに逃げるのはよくある手口である。
うーん、あまり語ることが無かった。かなり場の雰囲気に左右される手順が多く、ちょっとでも挑戦的な相手とかだと端から成立しないような。Eugine Burgerとかなら出来そうですが、僕の手には余るかな。
面白くはあって、知っておいて損はない感じなのだが、強力な魅力には欠けた。所々の工夫は光るのだけれど、全体として半端な感じ。もうちょっとどちらかに振れて欲しかった。
"Penumbra issue 5" 編・Bill Goodwin & Gordon Bean
Penumbra issue 5 (編・Bill Goodwin & Gordon Bean,2003)
碩学Bill Goodwinによる不定期刊行冊子、Penumbraの第5号。
他の号のレビューでも既に書いたが、そんじゅそこらの個人誌とは異なり、大変面白く、そして十分に練り込まれた作品が掲載されている。
今回は純・カードの作品は少なめ。
A Double Shot:Jim Patton
エラスティック・ループを使った連続Aプロダクション。David BritlandのAngel Aces(Card Kinetics,1988)をベースにしており、2枚のカードがそれぞれ左右に飛び出す部分がJim Pattonによるアイディア。
またこの部分だけを用いたカード当ても解説。
カード当ての方では、このアクティブなギミックを見えない形で使用しており面白い。実体化現象の趣もあり、やられたら気持ち悪そう。
なおエラスティック・スレッドが同梱されている。
The California Angel:Bruce Cervon
Pattonの現象に対するCervonのハンドリング。よりマジックっぽい見栄え。またDouble Shotのセット別案あり。解説者も言及しているのだが、これが非常に省力化された方法で驚く。
The Cherry Control:Ricky Smith
見えないトップ・コントロール。
カードを差し込んだ後、ファンを広げ、閉じるともうトップに来ている。
個人的にはBow-To-Sternの方が好きだが、あれよりもだいぶ楽+角度などの制限もすくなそう。
Ricky Smithは露出が少ないが、Dan and Daveをフラリッシュの魔道に落としたり、Earickの手順を非マジシャン相手に演じたり、というド変態レベルの逸材らしいので、今後も注目したい。
Color Scheming:J.K. Hartman
Penumbra issue 3に掲載されたLee AsherのThe Continental DivideのHartman流バリエーション。Card Duperyにも収録されている。
色がバラバラのデックを示した後、怪しい動作無しで赤黒分かれてしまう。
Asherのものが、バラバラ→分裂→再びバラバラなのに対して、こちらはバラバラ→分裂でかつエンドクリーン。ただしセットアップが必要。
Asherのものもチェックしたいのだが、Penumbra issue 3 が手に入らないのですよね。動画販売もしているみたいだが高い上にOne on Oneみたいで尻込み。モダンなAsherのエフェクトの、クラシック手法での表現といったイメージか。簡単に見えて意外と難しい。
Business Trip:Patrick Schlagel
左手の掌に指輪を置き、右手をかざすと、指輪が左手薬指にはまっている。貫通・移動現象。癖が無くたいへん使いやすそう。
「指輪を自然に持ち歩くためにも結婚しましょう」うるさいですよ。
Centrifugal Nightmare:Scott SteelFyre
Professor's Nightmareの表現技法。同じ長さになった3本のロープが、カバー無しで目に見えて違う長さになっていく、というもの。なるほどなー。あんまりロープ詳しくないのですが手軽かつビジュアルで素敵です。
というわけでPenumbra面白いです。 なによりGoodwin(だと思う)の解説の筆が良い。個々のマジックが非常に奥行きのある物に見えます。誰か日本でもこういう冊子出してくれないかしら。
2014年1月7日火曜日
捨行、あるいはもう開く事のなかろう本について
あけましておめでとう御座います(今更)。
今年の投稿を見返すと、これが見事に冊子しか読んでない。
大判本もいくらか買って読んでるんですが、だいたい途中で止まって放置しておりこれは良くないです。
年度末までに何冊かは読み切りたい所存。
さて当たり前の事ではありますが、本ブログは"通読・読了"した本をレビューしています。
しかしこれまでには、読む事を断念した本や、流し読みして買わなかった本も存在します。読んでいないのだから語る資格はないのですが、しかし読み進めない選択をした理由も確固として存在する。たまにはそういう事を口にしても良いかなと思いましたので、今回は未読了のままもう開かないと決めた本についての雑感です。
なお記憶に頼って書いているので、間違ってるかも知れない事を先にお詫びしておきます。
Naked Mentalism Jon Thompson
文字通り裸で出来るメンタルマジック!との事。
結局は単語の頻度をベースにしてて、あとは即席の対応みたいな話だったと思う。中盤以降は単語頻度リストみたいなのがずっと続いている気配で、さすがに言語違うとどうにもなあと思って以降放置。
今ちょっと広告みたら、プライミングとかの話もちらほらあり、ひょっとして読み返したら面白いのか?
どなたかから好意的な意見があれば背中を押されて読み直すやも。
Enigmath Werner Miller
数理トリックが好きだ。トリックより数理部分が好きだ。
とか書いてありつまらない数理トリックの見本みたいなe-book。3トリック目あたりで読むのを断念。ある枚数目に返して貰って、ダウンアンダーしてアンダーダウンしてアンダーダウンしてダウンアンダーすると当たる、みたいなそこに何の意味も意義も見いだせない感じだった。
これが5巻まで続いているらしい。
続く=人気あるという頭で1巻を買ったのだが、電子出版(自費出版)では全然当てにならない指標だったと己がうかつさを呪った。
Mind Blasters 1&2 Peter Duffie 編
イングランドのマジシャンから集めたメンタルマジック集。
とにかく判ってない。何も判っていない。
読心術、と口先で言っておけばなんでもメンタルマジックになる訳じゃないんですよ。
予言もそう。T.A. Waters先生の薫陶を受けて育った私としては、とりあえず予言にしとこう、程度の予言マジックには我慢がならんのです。
特に酷かったのでいうと、トランプの表になにか書いて貰いそれをデックの真ん中に戻した状態から当てる、とかさ。まずトランプに書かせる理由がわからなくて不自然きわまりないし、デックの中に入れても演者がそれ持ってるわけだし隔離方法としてさっぱり機能してない。
とこういう駄作としか言いようのない駄作があまりにも多く、ページ数も多く、あまりにも不毛だったので途中で断念。2に至っては開いてすらいない。
基本的にこういうオムニバスとは相性が悪いようです。
もし面白い作品知ってる方が居たら教えてください、そこだけ読みます。
最新メンタル・マジック徹底解説! 林敏明
ウィザーズ・インの柳田昌宏が最も得意とするメンタルマジック作品集!
ウィザーズ・インの柳田氏、危険信号①。
オリジナル作品を年に200も作る、とか前書きに書いてあり危険信号②。
(ていうか個人選集なのかよ、タイトルから想像つかないよ。おまえの最新マジックなのかよ)
メンタルマジックと言いつつカード作品しかない、危険信号③。
クレジットが無くまるで全て一から考えましたという空気、失格。
主張ではなく空気なのがミソ。そういう誤解を招くように招くようにと計画的に記述されている気がする。なんかここまで来るとね、本人が書かず他者が筆を執るこの形式も、クレジット不備などについて責任の所在をはぐらかすため故意にやっているのではないかとさえ邪推してしまうね。
これは買わなかった本。まだ部室にあるはずだがいい加減破棄してしまえと思う。
いやちゃんとクレジット完備だったよ、とかだったら教えてください。買って詫びます。
ともあれ今年もよろしくお願いします。
最近はあまり欲しい本も出ないので、家に積んであるのをじっくり消化したい所存。
あと手品が出来るようになりたい。
もとい、不思議な手品ができるようになりたい。
切に。
2013年12月13日金曜日
"Missing" 新沼研
Missing (新沼研, no date)
"観客にトランプをよく混ぜてもらった後、自由に1枚のカードを選んでもらいます。
観客自身の手で、カードをデックの中に紛れ込ませてもらいます。
一見、観客のカードを探し出すことは、全く不可能に思われる状況の中、
マジシャンは確実に観客のカードを見つけ出します。
(観客から借りたトランプで即席に演じることができ、即座に繰り返し演技することができます。)"
マニアも騙す新原理、MKCLの発見!
そして思いも寄らぬ発展系までも解説。
MAGIC誌の名コラムTalk About Tricksでも特集が組まれた、新進気鋭のクリエイター新沼研の不可能すぎるカード当て。
観客が混ぜたにもかかわらず、というのがこのシリーズのコンセプトらしいです。前作は持っていないのですが、今回は対一人でしかも新原理を謳います。
これがちょっとすごい原理で
なんて。
言うとでも思ったかぁああああ!!!
何が!!
新原理だ!!!!
これは!! ただの!! Distant Keyじゃねえか!!!!!!!!
たたくと決めたのでコレは徹底的にたたきますけど、お粗末も良いところ。
今でこそ、ショップでは”古典原理の再発見”と唄ってますが、これ販売予約開始した時点では”新沼研の頭脳が産んだ新原理!マニアをも騙す!”みたいに唄ってましたからね。
いやさ確かに、これを独自に発見したこと自体は凄いと思います。それは並々ならぬマジックのセンスであろうと。そしてマジックにおいて、過去の発表作全てをチェックするというのもまた不可能です。特にこれなどは、あまり人気が無く使われない原理でもあります。仮にIbidemの××号とか、New Pentagramの△△号に載ってる、とかなら仕方ないですよチェック漏れは。でもこの原理の手近な参照元って、カードマジック事典、セルフワーキング・マジック事典 レベルですからね。
そして発覚の経緯もお粗末きわまりない。
クイズに正解した人に先行プレゼント!とやって当たった5人だか7人だか誰かにつっこまれて、発売の本当の直前、というか実質的にはリリースしてから判ったという次第。
つまり全国のマニアから7人をランダムピックアップした程度で、元ネタ重複が判るレベルによく知られた原理という事です。先例をあまり知らないように情報を絞った環境で創作する、というのは発想を柔軟にするためであれば、有りかも知れない。でもなんですか、発表前にまともに人に見せてもいなかったんですか新沼氏は。それで”新原理”なんて広告を大々的に打ったのですか?仮にもマニアを相手に商売している人ではなかったのですかあなたは。
本の内容自体は、そんな言うほど悪くはないです。
ただ発表までのプロセス、内部でのスクリーニングがあまりにお粗末であることが露呈しました。はっきり言ってこれは信用をなくすと思う。というか、僕は信用を完全になくした。3 Secrets とかは割と好きで好意的な印象も持っていたのですが、よほどの事がない限り、もう新沼研の関連作品は、”新沼”というだけで購入検討さえしないでしょう。
修正後の売り文句でさえ、"この“原理”を知らない方にとっては、この原理を知るだけでもこの解説書を読む価値は十分にあるでしょう。"と宣う始末だものなあ。それならセルフワーキング・マジック事典やジョン・バノン カードマジック、Card College Light Seriesとか読めばいいですよ。コスパ的にも内容的にも。
書いているうちに当時の怒りが再燃してしまいましたが、改めて公正に言っておくと、経緯が酷いだけで内容自体はそんな悪くもないです。
Missing:
Missing Effective:上記現象の舞那遊による演出案。典型的な「理由を後付けしている感じ」で、マジシャン側の都合が見え隠れしてあまり好きではない。文化的下地がない我国ではやはり難しいな、カット。
Hunter:Jokerが選ばれたカードをじわじわと追いつめていく。延々と配る必要があるが、配る理由はあるし、配りながら事態が進行していくのが見えるのであまり苦にならなそう。現象も面白い。
Mirror:相手が持っているファン(裏向き)の中から、相手のカードを見事に当てる。相当無意味にごちゃごちゃやるけど、それでも当たる瞬間は気持ち悪いだろう。
Distance(初回限定):Missingとは関係なし。相手がカードを混ぜ、選び、もう一度混ぜた状態からあてる。セット面倒だけど優秀な不可能パズル型マジック。
MirrorとHunterは、どちらも現象としてかなり気持ち悪いし、原理の応用としても面白く、出来は悪くない。というか良い。とても作業っぽいけど、作業っぽいけども、悪くない。ふつうDistant Keyから想定しないような現象で、こういう展開案を出せるのは凄い事です。
文章直して、Distant Keyの応用現象集 冊子として売れば良かったのにね。それだったらとても評価されたとおも
あーそれでも、この作品点数で2500円は、ちょっと、ないかな。
追記。
ところで、このタイプの手法を”観客に混ぜさせた”と謳うのは、すごく違和感有ります。
Six Impossible Thingsの時にも似たようなことを書きましたが、多くの手順は、どうにも制限がありすぎて堅苦しく、「私があれだけ混ぜたんだからもうどこにあるか本当に判らない」と観客に思わせるに至らないような気がします。
というか観客に混ぜさせてなお当たる、って書かれていたら、普通「選んで戻した後、混ぜる」と思いますよね。Missing 予約しちゃったのは、それを可能にする新原理を期待してたのです。大変に残念でした。
まあ、よく見たらそこは「紛れ込ませて」としか書いてないので、それは私の迂闊であり、逆恨みに過ぎないのですが。
2013年12月3日火曜日
Red Light: "Cards on the Table"
ほんとうならば、
ブログタイトルにも掛けて盛大に、
We Are Officially Greenlit!!
とでも叫びたかったところです。
しかし翻訳許可を求めたところ、
残念ながら、Sadowitz氏の答はNOでした。
というわけで、こっそりと8割方 訳してはいたのですが
Cards on the Tableの翻訳はストップです。
いや、一応最後まで訳しますが、これが世に出ることはありません。
法の抜け道的な物も考えなくは無かったのですが、
これが原作者の確固たる意思なのですから、
やはり私はそれを尊重しなければと思います。
気になる方は、是非、ご自身でお手にとって確かめてみて下さい。
非常に面白い作品が詰まっています。
ページ数も少なく、英語も平易です。
本書と、あとCard Zonesに納められた作品だけしか、
今は容易に手に入りませんが、
それらが後世に与えた影響は絶大です。
あるいは、もしどこかでお会いする機会があれば、
一つ二つ、演じれなくもないよう研鑽しておきますので、
お声かけください。
では。
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