2020年5月31日日曜日

“Versatile Card Magic Revisited” Frank Simon



Versatile Card Magic Revisited (Frank Simon, 2002)


Mike CaveneyのMagic WordsからEarl NelsonのVariationsとセットで再刊されました。正方形っぽい少し変わった判型も同じなら、ジャケットのデザインも同じ人です。そもそも元の本もEarl Nelsonの手引きで出たそうですし、再刊にあたって一緒に出たDVDでも実演はNelsonが務めています。まあともかく、ようやく読んだNelson本が大変面白かったので、セットのこちらも読まねばと購入しました。

正直なところ、そこまで面白くはありませんでした。Nelsonが洗練されたプロの手順だったのに対し、こちらはいかにもアマチュア的。そうであるが故に、どうしても古臭くなっています。Versatile Controlという技法が主軸にあり、これはいわゆるMarloのConvincing Controlの親戚です。この技法自体は非常によいし、解説も1983年とは思えないほどの丁寧さす。こんなところにまで気を使っているのか、という発見さえありました。

しかしConvincing Controlはあまりにも便利だったため、この40年ほどで大いに広まり、研究されてきました(むしろ広まり過ぎて、忌避される技法にすらなってしまいました)。そのため本書の、いかにもマニア的トリックは、見せる相手を想定しづらいものになってしまっています。

この本がカードマジック史に多大な影響を及ぼしただろうことは想像に難くないのですが、Nelson本のような不朽の名作というよりは、歴史的な意義のある史料という方が近いでしょう。特にトリック部分については、いまあらためて精読することはあまり無いかなと思います。ただVersatile Controlとその派生技法については大変興味深く、いまなおよい内容でした。