2021年2月28日日曜日

"Hypnohole & Other Absurdities (2nd Edition)" Dale Hildebrandt

 Hypnohole & Other Absurdities (2nd Edition)(Dale Hildebrandt, 2006)


組版と表題作がイマイチでずっと積んでたのですが、ダリアン・ヴォルフ本でやたら褒められてるのでちゃんと読み直したところ想像以上にキツかった。

まず何よりも組版が酷くて、極めて読みにくいです。特殊なことをしてるわけじゃなくて、ベタ打ちをそのまま印刷した感じの読みにくさ。つらい。第2版だろうお前。

それで肝心の内容ですが、最初の手順Hypnoholeがいわゆる駄目なDual Realityもの。ただDual Realityって難しいし、そういった実験作が沢山載ってるならまだいいかな、と思ったら残りの手順はぜんぜんDual Reality使わないんですよ。シェル2枚使ったコインズアクロスとか、カラーチェンジング・ライターとか、ほんとうにまとまりが無い。缶の下に置いたコインが消える手順がなんと4通りもの手法で解説されてて、しかも手法に目新しさはなにもなくて、かなり心が折れそうになりました。いちばん酷いなと思ったのは、霊によってハイヒールを「ローファー」と呼ぶように強いられ、何かと思ったらハイヒールからファー(毛皮)がプロダクションされて「だからローファーと言わされてたのか!」というギャグなのかマジなのか何もわからないやつです。何書いてるのか分からんと思うでしょうが私も何読んでるのか全然わかんなかった。(※日本語でギャグが成立するよう実際の手順からは少し変えてます)

ただ100ページ過ぎたあたりから、ちょっとだけ面白い演出案もちょこちょこ載ってたりはしました。ビザーマジック寄りのひとのようで、Jerxにも通じるような、都市伝説の再現や、ちょっとロマンチックな現象なんかは、悪くなかったかも知れない。

手順未満のアイディアをただただ詰め込んだメモ帳みたいなものかな。どうしても読むというなら止めはしないが、細かい工夫とかは皆無なので流し読みが推奨です。ただひとつふたつ、かなりよい演出案もなくはなかった。

ここから良いやつだけを5~10個選んだものを読んだらかなり評価変わったろうと思います。

2021年2月18日木曜日

ダリアン・ヴォルフの奇妙な冒険/フロリアン・ズィヴァリン

[販売ページ]

翻訳しました。3冊目の訳本になります。

フロリアン・ズィヴァリン(Florian Severin)はドイツのマジシャンで、本書は13 Steps to Vandalismという2004年の本の訳本です。Vanishing Incから出た英語版What Lies Insideを底本にし、さらにおまけ手順を4つ加えました(フランス語版Ultra Mentalよりも1つ多いです)。全20章で手順は15個、主にステージ系のメンタルマジックを扱っています。

ショップでは2/11から買えるようになっていました。ここでの告知が遅くなってしまったのは、ひたすらにこの紹介文を書きあぐねていたからです。ステージのメンタルというと、それだけで多くの人の興味対象から外れてしまいそうで、しかし訳者としてはメンタル系に限定せず、広く人に読んでもらいたいと思っている内容で、なんとかそれを具体的に、しかし読む楽しみを削がずに伝える紹介文を書けないかと呻吟していたのです。

結局、一週間粘ってもうまく書き表せませんでした。だからここで言えるのは、とても面白いので読んでほしいな、ということくらいです。

できましたら、何も知らずこのささやかな小劇場の椅子に身を沈め、怪人ダリアン・ヴォルフが繰り出す突拍子もない現象や、あきれるほど無礼なジョーク、鋭い考察や、真摯な言葉を、そういった涙あり笑いありの冒険を、そのまま楽しんでいただけたらと思います。

2021/2/18