2018年7月25日水曜日

"The Top Change" Magic Christian




The Top Change ~Monarch of Card Sleights
(Magic Christian, 2017)


 トップ・チェンジの達人の、点睛を欠いた小ぶりな技法書。

 本書はHofzinserの研究家でも知られるMagic ChristianがTop Changeとその類例の技法を解説する本。たいへんによい内容でありつつ、読む価値のほとんどない文章も多分に含み、是非とも読みたかった情報が欠けている、残念な一冊。

 本書は七章立てになっている。
1 A Sleight History
2 The General Concept
3 The Basic Changes
4 My Top and Bottom Change Variations
5 New Ideas for the Exchange of Four Aces
6 Other Techniques
7 The Literature

 歴史の章は、レジナルド・スコットの記述したグライドから始まり、トップ・チェンジが広まるまでを要領よくまとめている。また同時に、Hofziner研究家である著者が、『正統な』トップ・チェンジの使い手であることも匂わせている。

 2章では「トップチェンジ」とその周辺に位置する技法について、そしてこれら技法をうまく行うための理論的な事が手短に語られる。3章、トップチェンジとその周辺技法について、丁寧に解説する。この類いの技法で重要になる視線や注意の誘導に関しても、簡素にではあるが、非常に参考になる内容が解説される。

 ここまでこの本は素晴らしい。
 ここ以降は斜め読みで構わない。

 4章、バリエーション技法集なのだが、これは実際のところ3章で行った技法の組み合わせである。デックを表向きに持っているか裏向きにもっているかの違いだけで別項目を立て、まったく変わらないハンドリングをなんども解説する。そんなの「同じ事はデックを表向きに持っていてもできる。」の一行ですむのに。
 ありがたいことに、これらの技法にはとても直接的な命名法が適用されているので、技法名を見ればおおよその内容はわかる。あとは写真を流し見れば十分だ。

 5章、エースのスイッチへの応用。6章、なぜ章分けしたのか分からないが、7章のための扉文である。7章、文献一覧だが、Behrのfileから絞り込み検索した結果を貼ったもの。

 そしてトリックの解説はなく、終わる。

 悪い本ではないし、序盤は特に素晴らしいのだが、さてこの技法をどんな文脈で用いれば良いのか、どう手順に適用するといいのか、タイミングや観客のコントロールには基本の他にどういったものがあり得るのか。そういった事には殆ど触れられていない。デックスイッチなんかとは違って、手順の『中』でどう使うかがとりわけ重要な技法であるのに。いい手順や導入手順が5つぐらい、いや3つでも、なんならPat PageのThe Unknown Soldier’s Card Trickが載っているだけでも、全然違ったと思うのだが。

 DVDを作っていると書かれていたので、そちらに期待すれば良いのだろうか?