2016年3月18日金曜日
"Hands Off My Notes" John Guastaferro
Hands Off My Notes (John Guastaferro, 2015)
演者が手を触れない事をテーマとしたJohn Guastaferroのレクチャーノート。10作品を解説。
こういう『縛り』タイプの創作群は往々にして無理な作品の詰め合わせになるんだがGuastaferroは結果至上主義というか良い意味でいい加減だ。
このノートも、実際に『ハンズ・オフ』かどうかではなく、そう感じられるかどうかという、悪く言えば主観的な基準でまとめられている。
世の中には『手を触れない』かわりに指示に非常に神経を使う手品とか、ややこしいセットアップが必要な手品とかあるけれど、本書はそういった裏側まで含めての『ハンズオフ』感を重視しており、結果的に、非常に手の掛からない、演じる側からも楽な作品群になっている。
逆に言うと電話越しラジオ越しに演じられるような本当の『ハンズオフ』を期待した人や、縛り条件での手品創作が好きな人にとっては酷いタイトル詐欺だろう。
手法的に半分くらいが、まったく同じ『トップ・スタックの保持とそのフォース』のような気もするんだけど、演出の仕方が多彩かつ軽妙なので読んでいてそんなに気にならない。主題はギャンブルが少し目立つが、主題と言ってもフレーバー程度の軽いもの。手続きは実際のゲームとはかけ離れていて、ギャンブルマニアの人は怒りそうだけど、もともと演出としても手品としても軽いので、これもそう気にはならない。
ちょっと面白かったのが、2作品ある4枚のカードの手品。4枚のカードをシークレットナンバーにあわせて操作して貰い、そこからカードを当てるという流れで、概要だけをこうして読むと怪しさ満点だしそもそも4枚からのカード当てってという感じだけれど、Guastaferroの軽妙なタッチの力なのかどちらも演じやすい小品に仕上がっていた。
収録は10作品。他にもひとつふたつ紹介すると、
ALL THREE KINGS
スペリングによる4 of a Kind出し。グーグル検索すると出てくるという現代的な演出がGuastaferroによく合っている。
Time Will Tell
観客がデックを混ぜ、3枚のカードを配り、そこから1枚を見て覚える。演者はそれを当てる。
そして奇妙な事に、配られた3枚のカードをよく見るとちょうど現在の時刻を示している。
Gemini Squared
再録。Gemini Twinsの拡大。観客がランダムに名刺を差し込んでいくが、なんと4枚のAを見つけ出してしまう。……と思いきや4枚のカードはバラバラ。なのだがその4枚が実は予言されており、さらに他のカードが全てブランクである事がわかる。
例の古典手順から最大限まで現象を引き出した豪華な手順。演出のさじ加減がうまい。
そんなわけで、演者にとってとても楽な作品が多い。またその割に現象がはっきりしているし、演者が何をしたいのかが観客にもわかりやすい。けっこういいじゃないですかと思いました。
ひとつ引っかかったのはTriumphで、これはOne DegreeのBehind the Back Triumphをさらに『ハンズオフ』にしたものなのだけれど、単純に見たら前作の改悪にしかなってないような。
今作はどういった現象かの解説が不足しているから、そのせいかなあ。
日本語版が出るとか噂で聞きました。
2016年2月29日月曜日
"Gene Maze and The Art of Bottom Dealing" Stephen Hobbs
Gene Maze and The Art of Bottom Dealing (Stephen Hobbs, 1994)
ボトム・ディール!!
Gene Mazeによるボトム・ディール本。200ページ近くあるしっかりした本ですがなんと全部ボトム・ディールの話です。しかも色々なボトム・ディールを集めた事典とかそういう訳でもない。
基本のボトム・ディールはErdnaseタイプを発展させた形。グリップが少し特殊になるので常用するにはややハードルがあるが、よく考えられ磨かれたことがわかるハンドリング。『カバーが利いている』『つまらず連続で行える』など多くの利点をもっている。解説も非常に詳細かつ丁寧。さらに片手ボトム・ディール、センター・ディールも解説。
それからフォールスシャッフルのフィネスやコントロールもちょっと解説している。
ここまでが技法編で60pp。残りはボトム・ディールを使った手順集。
ボトム・ディール、たまにセカンド・ディール、時にはセンター・ディールを使った手順。しかもそれらを『見えない技法』として常用する。Daley's Last Trickにまでボトム・ディール使うんだから重症だ。ボトム・ディールの使い方は決して賢いわけではないが、そもそも賢く効率よく使おうという気が全く無い。
たとえば世の中にはトップカードをフォースするのにセカンド・ディールを用いる手順が存在するけれど、Mazeの場合はボトム・ディールでこれを行う。ボトム・ディールし続ける。観客と演者がふたりでカードを配っていく手順でもそうだし、なんなら演者が両手に半分ずつ持っている状態でもこれを行う。ほんとうですか。
ただ、賢くないとは言ったものの、手順の構築自体はよく考えられていて、ボトム・ディールが必要になるタイミングでは、必ずデック半分を持った状態になっている。本人はフルデックからでも全く問題ないとの事ではあるが、いちおう凡人のためにも配慮はされた創作。
巻末にはボトム・ディールの参考文献が5ppほど載っている。筆者は、「全く網羅的な物ではない」と書いてはいるけれど、それぞれにコメントが付された詳細なもので、たいへん参考になる。
そんなわけで一冊まるまるボトム・ディール。すばらしき力業の世界。いやあ、ちょっと無理でしょうとは思うのだけれど、これができたらかっこいいよなあ。ロマンだ。それから本書で解説されているセンターディールは、かなり大胆だけど他に比べると簡易で有用な方法と思う。フォールス・ディール好きなら是非手にとって欲しい一冊。
2016年1月21日木曜日
あけましておめでとうございます
あけましておめでとうございます2016
昨年は翻訳・自費出版などしまして、そのThinking the Impossibleですがまずまずご好評のようで嬉しい限りです。
一部で誤解があったようですが、当方はきちんと作者および権利者と連絡を取り、印税を払ったうえで出版しておりますので決して海賊版ではございません。
なんでショップで売らないの?という声もありましたが、私自身思うところがありまして、今後もしばらくそういった事はしない予定です。
本当の所を申しますとハードカバーなどと豪華な装幀にしたせいで利率がかなり低いので御座います。
いちおう初期費用くらいはペイできましたが、まだかなり在庫ありますのでよろしくお願いします。というかもうちょっと減ってくれないと次を出しても部屋に置く場所が無いのです。
次、そう、次があるんですよこちら。
Pepe Carroll's WONDER LAND
30年くらい前に活躍したスペインのマジシャンPepe Carrollの、52 amantes(52 Lovers)という本の全訳になる予定です。予定です。
いつになるかちょっと分からないんですがまあ今年中には出せるんではないでしょうか。著作権料をかなり取られそうなので、ちょっとお高めになると思います。まあ原著が€75くらいしますのでね。
そんなわけで本年もよろしく。
2015年12月31日木曜日
”Diverting Coin Magic” Andrew Galloway
Diverting Coin Magic (Andrew Galloway, 2006)
John Ramsayの直弟子として知られるAndrew Gallowayのコイン・マジック作品を集めた小冊子。本書と対になるDiverting Card Magicっていう本もあるのだけれどそちらは手に入ってない。読んでみたい。
GallowayはRamsayの弟子という事で、Ramsay作品を演じたDVDで有名。またミスディレクションについても名高い。この本についても、ミスディレクションの勉強になると聞いたので読んでみた次第。あとまあ単純に、コイン本は少ないので、いい物が無いかといろいろ探しているのですよ。
内容は2つに分かれていて、前半は基本的な技法を丁寧に解説。そして後半はそれを用いた現象。飛行、銀銅入れ替わり、パース、グラスなどなど、異なった7作品でおおよその範囲をカバーしている。曲芸的な難しさは無く、シンプルでよい手順が多い。またミスディレクションについてもそれぞれ言及されている。
さて、ミスディレクションと言えばマイルストーンであるBooks of WonderがVol. 2でも1996年だから、数字だけ見ればGalloway本の方が後ではあるんだが、でもこれは『古い』ミスディレクションの本だ。それは注意を発散させるミスディレクションであり、重要な箇所を『見せない』ミスディレクションでもある。
なのでこの本の手順は、面白んだけれども、どうにも決定力に欠けてしまう感じはある。現象を形作るために必須の瞬間がぼやけてしまうから。いやどうだろう。Gallowayが演じたら気にならないのかもしれないんだけれども……。
クラシック・パスやトップ・チェンジの瞬間に一瞬気をそらす、というのは有効で、それは直前と直後で状態と近いからだ。しかしフェイク・パスはそうはいかない。どうしても曖昧さが出る。
……かといって、その瞬間をはっきりと示すには非常に高い技量が必要になるわけで、コイン・マジックって難しいなあ。
本書のアプローチは、ひとつのツールとしては十分に強力なのだが、これをコイン・マジックの主柱に据えるのはちょっと違う気がする。面白い副読本といったところか。
2015年11月30日月曜日
"The Essential Sol Stone" Stephen Hobbs
The Essential Sol Stone (Stephen Hobbs, 2012)
1995年あたりに企画され、1997年にはおよそ書き上がっていたものの、例によってKaufmanがGeniiを買い取って忙しくなった関係で塩漬けになっていたもの。権利があっちこっちに行った末ようやく出版されたかと思ったら、部数が少なかったのか割と早々に売り切れになってしまいました。私も買い逃していたのですが、先ごろ運良く入手できました。コピーライトの記載は2010になってますが、序文の日付からすると2012発行ですかね。
買って良かった。名著です。
副題はIntimate Magic with the Sol Stone Touch。Intimateは辞書によると親密な、個人的な、くつろげる、とかみたいです。Intimate Magicを適切に訳すのは私の手に余りますが、マジックを見せる側が商売人でない、極小規模のクロースアップで、バーで隣に座った人がふいに見せてくれるような、そんな『日常』と地続きの、しかしながら素人芸ではない非常にハイレベルの手品、といった印象を受けました。
カード、ペンと指輪、ロープなどがちょっとありますが、メインはコイン・マジックです。
しかしながら全体的に、2つの意味で現代的ではなく、『仕掛け』にのみ興味がある方は失望するかもしれません。
ひとつは自然な検め以上の検めが無い事。せいぜいが付随的なラムゼイ・サトルティ程度で、シャトルパスやユーテリティ・ムーブ、ディスプレイなど我々が心血を注いでいるような検めはほとんど存在しません。
もうひとつは基本的に現象を繰り返さない事。MyMagicから出ているDVDがQuick and Casualでしたが、そのタイトル通りに本書も非常にあっさりしています。いわゆる『マジック』を期待して見ると、拍子抜けかも。
ただしこれらは『古いから』とか『難易度を下げるため』では決してなく、非常に計算され洗練された結果としてこの形になっている事が、読むにつれて分かってきます。
解説するのはStephen Hobbsですが、この人の解説がとても上手い。
あまりくどくどと理屈を述べたりはしない淡々とした文章なのですが、これらの手順がどうしてこの形になったのか、Sol Stoneが演じるとどう見えるのか、といった手品の背景が自然と感じられます。描写や観察の細かさではなく、文体そのものによって、Sol Stoneのタッチを伝えていると言いましょうか。
また忘れてはならないのが、巻頭に10ppほどある略伝です。これが非常におもしろい。
1922年のお生まれで、大恐慌、WW2での従軍から戦後まで、正に激動の時代を生きてきた方。記述は極めて簡素ながら、エピソードの選び方と、各時代の物価への言及などによって、それぞれの時代の生活を彷彿とさせるものになっています。
そしてまた、単純に面白いだけでなく、氏がどのようなお人柄なのか、その理解も深まります。人物を描くことは、手品の解説本において必ずしも有用という訳ではないですが、本書の場合は非常によい効果を生んでいると思います。
難があるとすれば、せっかく文字媒体であるのに、演出や台詞の解説が少なかった事でしょうか。DVDで台詞が聞き取れなかったから本を買おう、という人はちょっとあてを外すかも。
また写真も不足しています。解説はイラストで、それは分かりやすくてよかったのですが、ポートレイトなんかも欲しかったなあ。ファン心理も多分にありますが、Sol Stoneの演技を想像するためにも、もうちょっと写真は欲しかったです。
ともかく。内容も、解説の文も素晴らしい、よい本でした。
世界のコインマジックの印象で敬遠される方もおられるかとは思いますが、いや実際に本書でもバック・クリップの章は異様な難度(しかも効果には疑問が残る)でしたが、全体としては落ち着いた、美しい手順ばかりであり、あの本からのイメージで避けるのはもったいないです。こういう手品を演じられる老人になりたいものです。
ほとんどのショップで売り切れの本書ですが、版元では通常版も特装版も若干数ながら在庫があるようなので、気になる方はお早めに。
2015年10月29日木曜日
"Open Prediction Project" Thomas Baxter 編
Open Prediction Project (Thomas Baxter 編, 2008, 2010)
Magic Cafe発、Open Predictionのオムニバス。
私が読んだのは最初に出たe-book版だが、右写真のような単行本にもまとまっている。異同はしらない。
最近日本の某ショップがこれに和訳を付けて販売するとか聞いたので、途中で放り出していた記事をあわててまとめている。
悪い事は言わない。ここには(ほとんど)何もない。やめておきなさい。
なお公正のために先に言っておくと、この本には私がむかし考えた手順も入っており、だから私の発言にはいろいろのバイアスが掛かっているかもしれない。
Open Predictionは、ACAAN程ではないにしろ有名なプロブレムで、発案はPaul Curry。Berglasのそれと違ってプロブレムが先行している。つまり、
「予言を先に開示した状態で、相手が選んだカードが予言と一致する」
オープンな予言というのはそういう意味だ。なお本来のCurryのプロブレムでは、観客が裏向きデックからカードを1枚ずつ表向きに配っていき、好きなところで1枚だけ裏向きのまま別に配り、残りを最後まで表向きで配っていく。表向きの中に予言されたカードはなく、裏向きのカードを見てみると、……というものなのだが、本書ではそこまでプロブレムを限定してはいない。
またこのプロットの発展型として、Stewart Jamesによる51 Faces Northというのがある。
これはOpen Predictionの制限をより厳格化した18の条項から成るものだが、全部書き出すのは面倒だ。言ってしまえば、借りたデックで、相手が混ぜて、演者は触らないで……といったOPの究極版である。
これら『オープンな予言』というプロットは、直接的には「予言側のスイッチ」という解決策を制限しているのだが、先ほどのCurryの現象描写を見れば分かるとおり、それだけに留まらない。――はずなのだが……。
Thomas Baxterというカナダのメンタリストが発起人で、彼はこのプロブレム(しかも51 FNの方)に対する完璧と言っていい解を作り上げたらしい。しかしそのDianoetic Rageという手順は本書には納められていない(他でも発表もされていない)。その彼がMagic CafeにてOpen Predictionを、51 Faces Northに因んで51作品募って電子出版した。その後、同スレッドで投票が行われ、1位の作者には$1000払われた。
勝者のお遊びというか掌の上というかそういう気がしないでもない。
さて肝心の内容だがこれがまー酷い。本当に酷い。
それはそうだ、ネットを徘徊する名も無きアマチュア・マジシャンから幾ら募ったところでこの程度だろう。『オープンな予言』というプロブレムは、技術的には「予言をスイッチしない」という事でしかない。そしてそのような変更を許容する手順は、既存の予言トリックや一致トリックにもたくさんある。ただそれらの手順で予言を表向きにする事が効果的かどうかは別の話であり、考え無しに『オープン化』すればいいものではない。当たり前の話だ。
当たり前の話なのだが、しかし、本書の多くの作品は手法的・制約的な面にのみフォーカスしており、現象面を全く無視している。結果として、非常に浅く、不格好で、意味のない作品ばかりになってしまっている。
それでもまともなフィルタリングが出来ていれば話は別なのだろうが、今回は「51FNにかけて51作品」という趣向を打ち出し、それを優先したがために、作品の質は二次的なものになっている。もちろん50以上もあれば、面白い作品のひとつやふたつ、ないわけでもない。無名マニアばかりではなく、私の好きなQuinnやChadwickの提供した作品もある。だが全体的な質の低さはいかんともしがたい。
繰り返すがここには見るべきものはほとんどない。フィルタリングがほとんど機能していないのだから当然だ。マジックのイベントで、いきあたった全てのひとから『オリジナルの』Aアセンブリを見せられるようなものだ。もちろんひとりふたり上手い人や、非凡なアイディアをもった人はいるだろう。だが大半はうんざりするほど似通っているか、思慮の浅いものだ。
ただ、私自身について言うなら、この本を読んで非常に良かったと思っている。こうして書き連ねているように、絶望的にフラストレーションがたまった結果、違う、こんなものはOPじゃないという気持ちが高まり、自分の考えている『OPという現象』の輪郭が明確化された。その効果は非常に大きい。
よほどの物好きにしかお勧めしない。
ただ、私自身について言うなら、この本を読んで非常に良かったと思っている。こうして書き連ねているように、絶望的にフラストレーションがたまった結果、違う、こんなものはOPじゃないという気持ちが高まり、自分の考えている『OPという現象』の輪郭が明確化された。その効果は非常に大きい。
よほどの物好きにしかお勧めしない。
2015年10月17日土曜日
”Crimp issue 2" ”Crimp issue 3” 編・Jerry Sadowitz
Sadowitzに殺されるんじゃないかと思いながら、あと手に入らない(極めて手に入りにくい)本を紹介するのもどうかと思いながらも備忘として書いておきます。今回はふたつまとめて。
Crimpそのものについてはissue 1についての記事などを見て頂ければ。
Cripm issue 2
・My professional routine for "SPOTTY"
裏返したり戻したりすると色が変わる巾着的な売りネタを用いる手順。カード・マジックばかりかと思いきや、意外とそうでもないんですよねこの雑誌。
・Random Fashion
ふたりの観客がピークしたカードを、ブレイク、グリンプス、クリンプなど一切なし、表も見ず、一度の質問だけで当てるカード当て。と書くと不思議そうだがあまりそうでもない。Cards on the Tableに載っている某手順と考え方が似ています。
・One Hand (Complete) Coin Vanish
タイトルのまま。やや大ぶりな動きなのでパーラー以上向きか。
・Bottom Deal Colour Change
なかなか難しいです。
・その他のジョーク
【読者からのお便り】
前号のお勧め本でHofzinser's Card Conjuringを上げていましたよね。入手先として「良いマジックショップならどこでも扱っている」と書いてありましたが売っている所が見つかりませんでした。
【編集者の返事】
それこそマジック業界のかかえている問題です。
あとHam Shankerという人のCart At Any Numberが解説されていますが、すごいです。
Cripm issue 3
・A John Ramsay Pastiche
なんとGallowayの寄稿。タバコの先からコインを出現させる×4→全部消える。
タイミングの人なのでこの紙面だと読みづらいですがなかなか大人でかっこよい手順。
・Off-Beat Crimp
手法自体はオーソドックスだが、意表を突いたタイミングで行うクリンプ。
・Everywhere & Underwear
前田さんのに似ているパンツの予言。最高に酷い検めができる。
・Jerry Sadowitz is Shit
Sadowitzを貶しながらカードを当てる。その他、Waltonを崇めたり、日本を嫌ったり、マーローの死を喜んだりしながらでも可能。
・The Weight Lifter
こちらはJack Avisの寄稿。カード当てと枚数当ての複合なんですが、覚えさせたあとにいろいろ別の事をする手順はどうもあまり好きではない。
あとHam Shankerという人のSecond Dealが解説されていますが、すごいです。
2,3はあまりぱっとしない感じでした。
2015年9月16日水曜日
"Joseph Barry 2015 Japan" Joseph Barry
Joseph Barry 2015 Japan (Joseph Barry, 2015)
2015年4月おこなわれたJoseph Barry日本レクチャーでの限定ノート。
酷い本です。
A5、実質13pp、3トリックで5000円というのも近頃あまり見ない値段設定ではありますが、まあ紙も印刷もおしゃれで上質ですし、いま問題にしている酷さはそこではありません。では内容かというと内容も悪くありません。3つしか解説がなく、さらにそのうちひとつがDVD手順の改案という点をさっ引きましても、最後のトリックだけで5000円(は言い過ぎにしてもそのくらい)の価値は有ろうと思います。
でも、とても酷い本なのです。
訳が。
「The Modusの全部の品物をデザインする友達とマジシャン同士であるジョン・コッテル氏」
「参加者に対してポーカーを遊んでいるような上演で参加者にデックの上半分を渡してその半分は参加者はカットした上で」
「テーブルにデックがちゃんとシャッフルされたようにフェイスアップにしてリボンスプレッドで観客に見せる」
うーんしんどい。
手順の再現が不可能であったり、意味が全く分からなかったりという事はありませんが、非常に体力を使います。また冊子本体がやたら格好いいだけに余計に残念さがあります。
おまけにレクチャーの主催者が、こちら方面を売りにしている方なのですよね。監修するタイミングを逃してしまったんだろうとは思うのですが、そのあたりは企画を持ちかけた段階でしっかりしておくべきだったのではないでしょうか。売りにしてるはずの分野でこれですと、やはりちょっとまずいんじゃないですかね。
あと細かいツッコミどころで言うと、レクチャーでのノートの売り方がちょっと狡かったり、嘘が入っていたり(この手順はこのノートでしか発表していません!→英語で単体ノートが売られている*)、レクチャーで駆使していた幾つかの補助的なサトルティが省かれていたり、といった問題もあるのですがまあそれはありがちな事ではあります。
*ただ、現在品切れのようではあります。絶版かどうかは不明
なおご本人の演技は目茶苦茶に不思議で、しかも面白く、ラフ・スタイルの現象とそれを演じるキャラクターについてはDaOrtizよりも好みでした。珍しくBarryはDVDも購入・視聴済みだったのですが、映像で見るよりずっとずっと素敵で、久しぶりの外出でしたが行ってよかったなと思いました。
【収録作】
STOCAN バージョン2
・DaOrtizの流れを汲んだ筋の通らないプロセスで、違和感なく演じるのはかなり難しいです。DVD収録作の改案。
初心者の運
・お互いデックを混ぜてから手札を配るが、観客がフラッシュで勝つ。繰り返すがやはり観客が勝つ。シャッフル部分、実際にはかなり制限があるのですが、とてもそうは見えません。実にフェアに見えます。
OOMW -Out of My World
・みんなが度肝を抜かれたOut of This World。実演を見ました。デックが何度も混ぜられ、自由な選択が繰り返されても、なお赤黒分かれるという途轍もなく不思議な手順ですが、一番凄かったのはカードを配るあいだ全く飽きさせなかった氏の演出かと思います。ショーなどでは必ず演じると書かれてますんで、OOTW好きの人はどうにか機会を得てご本人の実演を見るといいと思います。
読んで済ますのはもったいないです。
2015年8月26日水曜日
”Renovations” Guy Hollingworth
Renovations (Guy Hollingworth, 2015)
FISM2015で頒布されたGuy Hollingworthのレクチャーノート。ありがたい事に通販でも買えるという事で飛びつきました。新作2つと、旧作3つを解説。
あの頃と変わらない俺たちのガイ様が堪能できます。
新作
Topless Change
技法Topless Changeとそれを用いた Minimalist Ace Assembly。Aと3枚のカードだけを持った状態から、3枚が1枚ずつAになっていくという――Ace Assemblyと呼んでいいのかはともかく――面白い手順。理想的には実現できるものなので練習意欲が湧きます。なぞるのはそこまで難しくありませんが演じるのはとても難しいです。
Cards to Pocket
Drawing Room Deceptionsでも用いられたギミックをさらに発展させたCards to Pocket。とにかくフェアで、消失もクリーンなら、ポケットから取り出すときも直前まで手が空である事を見せられる。もちろん例によってとても難しいです。なぞるのも難しければ演じるも難しいです。またスーツを着ていないような者はお断りという紳士向き手品でもあります。
再録
Waving the Aces
Universal Card Scam
Voodoo Card
きっとたぶん皆様ご存じであろう著名な手順。うえ2つは過去のレクチャーノートからの再録。3つめは既刊Drawing Room Deceptionsから。基本的には全部DRD本で読めます。ノートのタイトルこそRenovations(修復,、刷新)ですが、特に大きく違う所はなかったと思います。隠しコンテンツだったVoodoo Cardにタイトルと図がついたぐらい。再読しましたがやはり凄いなこの人は。
この前DVDがやっと出まして、その新規撮り下ろし分を見た時にも思ったのですが、Hollingworth氏がVHSやDRDの頃と変わっていなくて私はとても嬉しいです。本書の新作もDRDに載っていてもおかしくない、よい意味で、あのスタイルのままです。
非常に難しいのですが、いわゆる『テクニカルなマジック』と異なり、きっちりと完璧に演じれば(理論上は)何もしていないように見える構成で、練習意欲が湧きます。手順全体としてはやや単調ですが、マニアックでテクニカルで上品で私は大好きです。
文章は時折ユーモアを挟みつつも、独特の長い言い回しで、たぶん非常に洗練された高級な英語なんだろうと思いますがちょっと読みにくいやもしれません。そんな意味でもDRD買う前にこっちを試してみるのはよいかと思います。
うん、良いものを読みました。
2015年7月31日金曜日
”Close-Up Elegance” David Costi
Close-Up Elegance (David Costi、2004)
イタリアのマジシャン、David Costiの作品集。
AscanioとRene Lavandが推薦文を書いているとかそれはもう買いだろう、という事で買ったのですが結果としてはいまいちでした。『マジックはアートである』派で、作品はちょっとした部分での改案がメイン。パターだけの解説というのもあります。それはもちろん、構わないのですけれど、その肝心の細かな部分があまりちゃんと記述できていないのです。特に収録されている某Double Liftなどは、この文章だけから正しく全体像が理解できる人がいるとはちょっと思えない代物。
手順はクラシカルでシンプル。またワーキング・プロらしく極めてずるいものも有ります。
たとえばCard Collegeにも採られているAmex(The Credit-Card Force)を用いたCard on Back。観客が自由に選んだカードが、デックの中から消え、演者の背中にピンで留められているというもの。これはToo Perfectに近い美しい手順です。
上では『細部の描写が不十分』と書きましたが、それはあくまで徹底されていないという意味であって、たとえばこのCard on Backでは非常にさりげない検めが入っていたりなど、為になる箇所はそこそこあります。Amexも非常に微妙な細部にこだわっており面白い。
その他、Reverse Matrixではいまやみんなが使っているタイミング差によるミスディレクションが明記されていて、Costiがオリジナルかは分かりませんが、かなり古い使用例と思います。特殊なClick PassやEmpty Dealなど面白い技法も出ていますが、出版が遅かったせいもあってちょっと新奇性はないですかね。クレジットマニアなら面白いかもしれませんが。あ、Charlie FlyeがDVD演じていた(気がする)指先にゆっくりコインが現れるやつも、どうも本書の技法のようです。
そこそこ面白い技法、そこそこ面白い手順がありながら、解説がちょっとざっくりしすぎていて上手くまとまっていないと思いました。せめて内容がどれかに偏っていたら、筆者の考えも捉えやすくなっていたかもしれません。もったいない本でした。
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