2014年4月23日水曜日
CRIMP買いました。
俺、CRIMP 買いました。
◆CRIMPって?
カードをほにゃららしてロケーターにする、っていう技法ですが、今回のは単にその名を冠してるだけの個人出版の雑誌です。別にCrimp使う手品縛りとかそういう事でもないです。掌 誌がくさぐさのパームについて熱く語る雑誌でないのと一緒です。
◆じゃあCRIMP誌って?
いまも発行されている雑誌の中では、おそらく最も毀誉褒貶が激しく、しかしその悪名の割に最も入手の困難な雑誌です。あと最も読みにくい雑誌(推定)でもあります。千金に値すると言う人がいる一方で、「ケツを拭く紙にこんな金を払うヤツがいるとは信じがたい」と塵紙扱いする人もいます。なお後者の発言はRichard Kaufman氏のものです。
まあKaufmanの意見には多分に私怨が込められている気がしますけど。
◆どうして手に入らないの?
発行人がSadowitzだからです。全然売ってくれないんです。
◆どういうこと?
いつかも触れたように、元々キ○ガイじみたペルソナのSadowitzが、近年はアイディア盗用に対して偏執狂のようになっていて、Cards on the Tableの日本語版も許してもらえませんでした。このCRIMPも刊行中なのに、身元の分かっている信用できるマジシャンにしか売られていないのです。いちげんさんお断りなのです。
◆いくらするの?
初期の物は£1.37です。今のレートで300円もしません。
最近のは£10のようです。
◆を、一冊いくらで買ったの?
X000円です。てへ。
◆……馬鹿なの?
仕方ないのです。金に物を言わせるしかなかったのです。
◆面白いの?
Peter DuffieやRoy Walton、Andrew Gallowayなどイギリスの有名マジシャンが寄稿者として名を連ねていますし、VernonやMarloの未発表作品も出てたりしたみたいです。
僕はまだ1冊目しか読んでませんが、面白かったですよ?
A3厚紙2枚を折った、8ppの冊子で、手順が2~3と、後はパロディ広告だったり、ジョーク記事(らしきもの)だったりです。
全体的に読みにくいです。
◆さっきも言ってたよね、それ。
手書きなんですよね。しかも罫線とか下書きとかも無しで、白紙に思うさま書いたような。
加えて文章が(たぶん)俗語とか使ってるし、変な言い回しもあるし、というか文字が小さくなりすぎてつぶれており、物理的に見えなかったりします。
まあでも手順はちゃんと読めました。おもしろかったです。
◆集めるの?
できたらそうしたいですけど、さすがにお金が続かないですねえ。そもそもほとんど出回らないですし。 1992年から今までで80冊ぐらい出てるみたいですけど、特に最近のは「いちげんさんお断り」ルールのせいで、手に入らないどころではないですから。
まあ手頃な価格で買えそうな限りで、オークション探そうかなと思います。
ただイギリスからの出品が多くて、そういう人って国内のみ発送だったりしてなかなかめんどうです。
とまれ、噂のCRIMP、やっとさわれました。
2014年4月22日火曜日
"Penumbra issue 11" 編・Bill Goodwin & Gordon Bean
Penumbra issue 11 (編・Bill Goodwin & Gordon Bean, 2009)
Goodwin編集の不定期雑誌。他とは一線を画す練度の高い作品は、今回も健在。
Color Shuffles (Part Two):Ronald Wohl
前号からの続き。
観客に一度混ぜてもらい、上1/3程度を取ってもらうがその中の色の状態をそれなりにコントロールする、という何に使うのかよく分からない原理、その応用編。
カード当てがメインですがBook Testなどにも拡張。わりと面白かったです。特に他の原理と組み合わせたカード当てはかなりやらしく、気持ち悪そう。
なおPart 3へ続くそうですが4年ちょっとたった今もまだ新刊は出てません。
ひどい。
A Spectator Named Kennedy:Michael Weber
Weber!
鮮やかなるセンターディール・デモ。広げたデックの中から演者が3枚適当に選び、それを覚えてもらったらデックを閉じる。そして配ると、覚えたカードが相手の手に来ているのです。
が! 演者の手にはさらに強力な役が!
凄いんですが要になってる技法が苦手でして。
高難度の技法を多用しますが、理想的には全く気配のない、素晴らしい構成の手順。
Weberやっぱり天才だなあ。
'N Synch:Raj Madhok, Gregory Wilson
電話越しにも行えるメンタル手順。相手が見ている腕時計を媒介として、相手の思い浮かべた数を当てる的なそれ。
キモイが相手について事前情報が必要。
Tell A Phony Too:Raj Madhok
'N Synchで必要な事前情報を、これまた電話越しに取得してしまおうという試み。物はEddie Fieldsの Tell A Phonyというカードマジックなんですが、一連の作業から選ばれたカード以外の情報も取得するというもの。
Tell A Phony自体がちょっと微妙。まあ電話越しに行うという制限を考えれば仕方ないんですが
'N Synch 2:Raj Madhok
フィッシングというかブラフというかを用いる事で、'N Synchから事前情報を不要にしたもの。
きもい。
The Open Ditch:Bill Kalush
Open Prediction。凄い。これもかなりの技量が必要だが、技巧系の解決としてはTalk About Tricksの傑作Llasser Open Predictionをも上回るクリーンさ。Llasserと違って観客がカードを配る。しかしこれも難しいなあ。
あとLasser OPは初めにちゃんと予言が提示され、観客に選択を迫るタイプなんですが、こっちは配って枚数が少なくなっていくうちに「あれ?さっきのは、もしかして……」となるタイプなので厳密にはOPからは外れる気もします。このへんはいずれOpen Prediction Project レビューの時にでも。
文中でもちょろっと触れられてましたが、この「もしかして……」という感覚を上手くあおってやらないと、観客はあんまり不思議に思わないかもです。そういう意味でも難しい。
The Two-Ton Prophet:Gordon Bean
観客が自由に言ったカードが、演者の言った枚数目から出てくる。
と、これだけなら何も不思議ではないのですが、問題は演者が枚数目を言った後で、観客がカードを言うという事。当たり前ですが紙に書いてもらったりとかはしませんし、変なフォースも用いません。
これが現象として『不思議』かというと、どこかつかみ所が無く、観客に受けるかは微妙に思います。でも面白い研究で、手法もかなり大胆ですが面白いです。
Stewart Jamesのある手順を、いち部分だけで演じられるように再構成したそうです。
と言うわけで実に面白かったです。
キモイ系メンタルの他に、不可視となるまで鍛える必要のある超絶技巧なカード・マジックが多く、インパクトのある巻でした。天上の世界をかいま見た感じ。
このレベルの冊子がもっと出てほしいなあ。
2014年4月2日水曜日
"7 Card Effects" Gabi Pareras
7 Card Effects (Gabi Pareras, 2014)
Gabi Parerasによる7手順。
先に行っておくと、私はGabi Parerasのファンだ。
Gabiの手順は巧妙かつよどみなく、スペインにおけるクラシックの体現者と言った風格がある。
本書以外にもいくつかダウンロード商品を出しており、これらはできれば秘密にしておきたいほどの逸品。
その上で、本書はいまいち。
収録は、タイトル通りに7手順。簡単にだけ紹介。
◆Sandwich's Vallarino
Jean-Pierre VallarinoのSandwich Volant(いわゆるFlying Sandwich)
◆Card in the box
ごくシンプルなカードの入れ替わり。Doug EdwardsのPack a Wallop?
◆Sandwich at number
サンドイッチと消失。
◆The Time Machine
Steve FreemanのTime Machine、ガフ使用。
◆Pure Touch
相手が選んだカードとカットした枚数を当てる的なあれそれ。
◆Triple Divination
三人の観客が選んだカードを当てる。
◆Poker Prediction
ポーカースタッキング。
全体的に小品な事もあるが、なにより記述がまずい。
私がGabiに期待する所というのは、微妙なタッチであったり、緻密な構築やその背景の論理であったりなのだが、本書の記述は動作の箇条書きであり、手順の最低限の骨子だけしか書かれていない。レクチャーの覚え書き程度の内容と言えばいいか。
手順自体は小粒ながら悪くない感じだし、実際にGabi Parerasが演じたら不思議なのだろうけれど、この情報だけからGabiの特徴や空気を読み取るのは難しい。
そんなわけで、Gabiの作品自体は今後も追いかけたいのだが、少なくともGabi Parerasの作品集としては、本書はあまりお薦めしない。クレジットもないし。
一風変わった(スペイン風の)レパートリーを増やしたいというなら、やや読みづらいものの悪い内容ではないかもしれないが。
もし氏があの洗練されたタッチを記述する術を持たないのだとしたら、あまりにも残念だ。次の作品の英訳を待つ。
2014年3月17日月曜日
"Now I don't have a piece of thumbs in my pocket." 堂本秋次
Now I don't have a piece of thumbs in my pocket. (堂本秋次, 2014)
Gumroadで購入。使用中の混ぜられた一組の準備のないデック、いわゆるFASDIU条件から出来る5+1手順のカードマジック作品集。
収録はオープナー、2・2の水と油、Visitor、予言が2つ、そしてCollector。
FASDIUで出来るっていうのは、やはり素人にはうれしい。また全体的に面白いアイディアがちりばめられている。作者個人のアイディアもあるだろうが、クレジットを見るに、色々な映像媒体から最近の作風が取り込まれているのかなという感じ。
技法を分割したり見えないタイミングで堂々と行ったりなど、なかなかひねくれたやり口は大変好みである。
白眉はやはりDoppelgangerだろうか。非常によいオープナーであると同時に、かなり面白いロードのアイディアがとられている。ごく大まかなプロットで言うとDenis BehrのBrute Force Openingに似ているのだが、あちらはかなり強引で正面突破、僕にはちょっとできない感じだった。一方Doppelgangerはミステリーカードの要素による『不思議さ』があり、そして目の前で堂々とずるをするあの暗い喜びの感じが好みである。僕ではどこまで通用させられるものか判らないが、ちょっと練習してみたい。
難易度は全体的に高め。パームとか臆せず出来ること、技法名がある程度通じることが必須条件か。
本そのものとしては、まあ自費出版でもあるし仕方ないが、ちょっと残念なところもある。図無しの文章のみだし、誤字や文法的に変な箇所も散見される。手順解説自体は読みやすく、十分意味がとれるが、何ヶ所かは図で補助がほしい気もする。
またクレジットがやや曖昧。クレジットがあるのは素晴らしい事だが、作品名や人名のみの表記にとどまっており、どこでどの程度参照したのかが判然とせずに、もやっとした。もうちょっと具体的なレベルで、元にしたアイディアや経緯なども書いてくれたほうが、より狙いや工夫がわかりよくなると思うのだが。
とはいえ、全体的に巧妙さと技量とのバランスがとれており、大変面白い作品であった。裏で割とひねくれた事をしつつも、現象はすっきりしており、マニアックな楽しみと実用性とが上手く両立していると思う。値段も安め。次もあるそうなので、発売され次第買おう。
2014年3月10日月曜日
"Japan Ingenious" Steve Cohen & Richard Kaufman
Japan Ingenious (Steve Cohen & Richard Kaufman, 2013)
Five times Five Japan、New Magic of Japanに続く、Kaufman社による、3冊目の日本人コンピレーション。
和書Winners 厚川昌夫賞8人の受賞者 を底本としているが、訳しにくい作品は省略されているとか。Winnersではカズ片山によるコミカルな似顔絵などもあったそうなのだがそれもない。ちょっと残念。一方で雑誌などに散らばっていた日本人による傑作を集め再録している。
底本からの訳がSteve Cohen、それ以外がKaufmanおよびMax Mavenの筆。なおSteve Cohenのサイトから注文すると、サインをお願いできるようだ。
この本のレビューが載った号のGenii をたまたま購入していたのだが、David Britlandが大いに誉めている。曰く、「日本人ってどこか別の惑星から来たんじゃないの?」まあそういう定型文なのだが、それぐらい発想の特異さを強調していたという事。
若干のナショナリズムを自らの内に自覚しないでもないが、いや、やはりすごい内容であるよ、面白い。紹介されている手順は基本的にクロースアップ。カードやコインもちらほらあるが、それ以外の小物の方が多い。破いて復活する紙幣や、切っても復活するリボン、ドル札に書かれた建物が消える、紙に書かれたスプーンが曲がるなどなどヴァラエティに富んでいる。
準備が必要なものや、それなりに変わった道具を使うものも多いから、即戦力という点ではあまり望めないだろうが、読むだけでも大変楽しい。個人的には靴ひもの結び目が取れて、別の場所にくっつくSneaky Sneakerが好きだ。くっつけた後がすごいのですよこれ。演じるかとなると演じないだろうが、そんな事はどうでもよいくらいの素敵な解法である。解法と言えば、Cups and Ballsのオープニングでよく演じられるCupの貫通を、液体の入ったカップでやってしまうPhantom Drink Penetrationもすごかった。いや是非読んでみてほしい。
前述のように全体的に切ったり貫通したりが多く、なんかそういうフェティッシュなのだろうかとちょっと思えてきたりもするのだが、一方でAutomatic Ace Triumphのような即席でできるカードの傑作手順、Jet Coinsのような変態手順も、数こそ多くはないが含まれており、結局の所、読んで損になる層はちょっと思い当たらない。一応ステージ物まであるものな。
そして高木重朗のSlop-Shuffle Acesがきて、とどめに澤浩セクション(技法1、手順6)である。いやもうすごい。
褒めてるレビューを見つけたら、逆にアラを探す性分なのだが今回は歯が立たなかった。ともかく面白かったです。
ある種のマニア文化、大学の奇術部文化のようなものが根っこにあるのかどうなのか、実に手段を選ばず工作を厭わず、面白い創作群となっている。見た目にもシンプルで、現象がわかりやすいのも好い。
国でまとめたコンピレーションは他にもイギリス(スコットランド)のFive times Five Scotland やドイツのConcertos for Pasteboard などがあるが、巻を重ねているのは日本ぐらいの印象。Kaufmanが親日家というのを含めても、やはり相応の反響があるのだろう。実際ここまで多岐にわたり、工作含めてあの手この手している本って他にはなかなか思いつかない。
ダスト・ジャケットの下には、日本の独創性 と大書されており、誇らしい一方で、後続の我々としては身が引き締まる思いである。……いや、まあ私は別に手品創作屋ではないのだけれども。
2014年3月7日金曜日
"Diplopia" Paul Vigil
Diplopia (Paul Vigil, 2007)
Paul CumminsのTap a Lackの改案。
Cumminsの手順が雑誌発表(MAGIC Magazine, 2005, July)でちょっと買いにくかった事、またCummins手順のある制約を排除しているという触れ込みだったので購入したのだが、結局の所は台詞を一部を変えているだけと思われる。なので、これをオリジナルとして単売するのはなかなかすごいなと。いやすばらしい改良点だし、他にも色々と工夫はあるようなのだけれどもしかし。
というわけで、Tap a Lackは未所持なので正確には比較できていないが、そのレビューと思って読んでもおそらく問題はない。
なお現在はDiplopiaは販売中止だし、Tap a Lackはこの前のCumminsレクチャーのノートで日本語でも読めるしで、今となってはこの本を探求する必要は殆どないだろう。なお僕が勝手に萎縮していただけで、当時でも雑誌のバックナンバー購入は実は難しい事ではなかったはずだし、またCummins氏にメールすればTap a Lackのpdfをくれていたとかいないとか。
なおTap a LackはTalk About Tricks DVDで演技が見られるが何故か解説はない。
現象:
①:観客が一枚のカードを思い浮かべる。
②:演者も一枚のカードを思い浮かべる。
③:観客が演者のカードと思うカードをデックから取り出す。
④:演者も観客のカードと思うカードを抜き出す。
⑤:どちらも当たっている。
①②の後にそれぞれ若干の省略があるがまあこんな感じ。
演者が観客のカードを当てるだけなら、よくあるカード当てだが、加えて観客が演者のカードを当ててしまうというのが特色。しかも変な選ばせ方とかはなく実にフェア。これは知っていないと判らないタイプの手法で、結構練習いるけれど確実であるし、すごい。
この手法自体はわりと昔からあるのだが、それ単体ではどうしても怪しくなってしまうある要素が、このフレームに組み込まれる事によって見事に解消されている。Cumminsによるこの工夫は実に素晴らしい。
1組の、なんの準備もないトランプで出来る手品としては最高ランクに不思議であり、美しい構成。
……ただし、すごい手順ではある事は間違いないのだが、演じるのは、技術的にも演出的にも、ちょっと難易度高めだろうか。
まず物事の順序がいささか不整合で、シンプルな構造の割になんだかすっきりしない。
本来、③と④は逆であるべきではないかとか。現象の見せ方も若干半端というか、観客があてた様にはあんまり見えない。ここは演じ方でもう少し何とかなりそうではあるが。
それからまた報われない手順でもある。
この手順はあくまでDo as I doであり、カード当ては部品だ。マニアをもだますカード当てを行っていながら、それを最前面に押し出す事はできない。むしろ、そこに拘泥すると現象の全体像が歪んでしまうだろう。
近年まれに見る傑作である事は間違いないが、いろいろと注意して演じたい。
なおVigil氏は、僕の知る限りで他に2冊のe-bookを出しているがどちらも所有していない。
ICON コインのメンタル手順。読みたかったが販売中止してしまった。
H.C.E. カードのメンタル手順。10万円するので流石に買わない。
2014年2月27日木曜日
"Sympathy (for the devil) cards" Paul Vigil
Sympathy (for the devil) cards (Paul Vigil, 2007)
Paul Vigilによる単品e-book。
簡単にできるSympathetic Cardsと、プロットに沿った強烈なオチ。
メンタル寄りの手順でちょっと有名なPaul VigilのSympathetic Cards現象。同じ値のカードで構成された2つのパケットのうち、片方を観客が混ぜるが、ふれていないもう一方のパケットとなぜか同じ並びになる、という現象。
1-10などそろったカードでやるのが普通だが、Vigilの場合は相手が適当に取り上げた枚数のカードを使って行う。さらにそれを2つに分け、片方を観客にある特殊なやり方で混ぜてもらう。この部分が売りの一つなのだが、これ、どれだけ混ざったように見えるかなあ……。ただ表裏がある程度バラバラになるので、後で見たときに"混ざった"感は強いか。元ネタはHoward Adamsだそうです。
第二弾はさらにカードを混ぜてもらった後、その数字の並びを携帯電話に入力してもらうと……、というものでなかなか素敵に気持ち悪い。前後の整合性を合わせるのであれば、シンパセティックな変化現象というより一致現象なのだね。
技法要らずで簡単。混ぜる部分には流石にそこまでの説得力はないかもだが十分に面白い原理。
あまり扱われないプロットでもあり、覚えておいても損はない感じです。
ただ2つほど気にくわない所がある。
まず1段目だが、メイトの一致現象として演じるのはいささか不整合。観客が適当にとって分けた時点で、すでに両方の山の組成が同じだったという不可能が起こっていた事になるが、演者はその点を消化できない。第2段もある事だし、ここは色の一致程度に留めた方が良いのではないかな。最後の組だけメイトにするとフィニッシュ感もでるし。
また第二弾の手法として、Luke Jermayのアイディアが紹介されるのだけれど、これはちょっと通用しないので実用しないように。読んだ時点でこりゃ駄目だと気づきそうなものだけれど、「いやでも意外と通じるのかな……」とか思ってやったりしたら駄目。個人的な経験から断言できますがやっぱりこれは通用しないです。痛い目を見た。
追記
① Sympathy for the Devil(It's me!) って手順を読んだ記憶がなきにしもあらず。
思い出したらまたどこかで載せます。
②Vigil氏、これらのe-bookの販売やめたのですね。物質本と違って、こうなると(正規では)手に入らないのが痛い。
2014年2月26日水曜日
"Penumbra issue 10" 編・Bill Goodwin & Gordon Bean
Penumbra issue 10 (編・Bill Goodwin & Gordon Bean,2006)
碩学Goodwinの発行するPenumbra誌、その第10号。例によってよく練り込まれた手順や、ひと味違ったアイディアが光りますが、この刊は作品数すくないこともあってか、他の刊よりは軽いです。
The Sound Of One Coin Clinking:David Gripenwaldt
有名な禅の公案「隻手音声」めいたタイトルで、実際にそういう不条理は起こるのですが、それは現象として前に押し出している物ではないです。あくまで裏で起こっている事が不条理というか。そのためちょっと残念。
状況設定を書くとネタバレになりそうなので控えますが、応用範囲はごくごく狭そうなものの、マジシャン心をくすぐるおもしろいコイン・マジックのアイディアです。
Perfect Order:Shoot Ogawa
緒川集人のマニアックなトライアンフ。きわめてクリアーに表裏を混ぜた後、選んだカード以外の向きがそろうトライアンフ現象。その後、カードの順番もそろってしまう。
ここまでやるかというディスプレイ。ある意味ではJennings&Goodwin Displayを上回る物があります。また初期状態はPerfect Orderでないため、ちらっとですが表面を見せても大丈夫です。ただ全体的にハンドリングが難しいのでなかなか安定しなさそう。
Fat Brothers DVDのおまけで演じているのが、およそこれですが、しかしShootさん演技はいまひとつですね。平板で。
Triple Alliance:Roy Walton
Waltonの良さが僕にはどうもわからない。シンプルで力強い構成はよいのですが、1枚と4枚がトランスポ、その後おまけにデックの表裏が変わる!
という、おまけの意味がわかりません。
Color Shuffles (Part One):Ronald Wohl
前後編に分かれたColor Shuffleの前編。手法と、その基本的なアプリケーションを解説。
観客が(見た目上)よく混ぜた後、カットして上1/3程度を取り上げるのですが、そのパケットに含まれる赤いカードの枚数などを制御するというもの。
何の役に立つのだろうなあと思ったのですが、用法が色々あげられており、なるほどこういう使い方も考えられるのね、という事で創作の案出し過程として読んでておもしろいです。ただ現象が面白いかというとちょっと微妙かもな。
しかしまだ前半だそうで、これどう発展させるのか後半を楽しみにします。
なお次のissue 11が出たのは3年後だったようでこれは酷い。
2014年1月13日月曜日
"Troika:3 Mentalism Daydreams" Brad Gordon
Troika: 3 Mentalism Daydeams (Brad Gordon, 2008)
メンタルマジック3+1。
「元々カーディシャンだったけどメンタリズムにも興味が出てきたんだ!」 ということでそれはよく分かります。
意外にもカード技巧ぽい所は無く、割と度胸だよりというか雰囲気だよりの手順が多くて評価が難しい。どこまで通じるのかなぁ?
Purposive Reverie
デックの中にあるたった1枚の特別なカードを観客が選ぶ。外見としての自由度は高いが、あまり"選択"した様には見えないよなあ。MavenのFan Forceみたいなものでなかなか怖い。
Match Box
マッチの箱が重くなる。とあるギミックが利いている。
The Locket Connection
ロケットをペンデュラム代わりにしたカード当て。ここのフォースは前例有りそうだけど秀逸。ただ小道具を導入しすぎてよく分からない現象になっている気がする。
O.vert U.tility T.ranscript
純・サイコロジカル・カードフォースに失敗した時用のアウト。リーディングに逃げるのはよくある手口である。
うーん、あまり語ることが無かった。かなり場の雰囲気に左右される手順が多く、ちょっとでも挑戦的な相手とかだと端から成立しないような。Eugine Burgerとかなら出来そうですが、僕の手には余るかな。
面白くはあって、知っておいて損はない感じなのだが、強力な魅力には欠けた。所々の工夫は光るのだけれど、全体として半端な感じ。もうちょっとどちらかに振れて欲しかった。
"Penumbra issue 5" 編・Bill Goodwin & Gordon Bean
Penumbra issue 5 (編・Bill Goodwin & Gordon Bean,2003)
碩学Bill Goodwinによる不定期刊行冊子、Penumbraの第5号。
他の号のレビューでも既に書いたが、そんじゅそこらの個人誌とは異なり、大変面白く、そして十分に練り込まれた作品が掲載されている。
今回は純・カードの作品は少なめ。
A Double Shot:Jim Patton
エラスティック・ループを使った連続Aプロダクション。David BritlandのAngel Aces(Card Kinetics,1988)をベースにしており、2枚のカードがそれぞれ左右に飛び出す部分がJim Pattonによるアイディア。
またこの部分だけを用いたカード当ても解説。
カード当ての方では、このアクティブなギミックを見えない形で使用しており面白い。実体化現象の趣もあり、やられたら気持ち悪そう。
なおエラスティック・スレッドが同梱されている。
The California Angel:Bruce Cervon
Pattonの現象に対するCervonのハンドリング。よりマジックっぽい見栄え。またDouble Shotのセット別案あり。解説者も言及しているのだが、これが非常に省力化された方法で驚く。
The Cherry Control:Ricky Smith
見えないトップ・コントロール。
カードを差し込んだ後、ファンを広げ、閉じるともうトップに来ている。
個人的にはBow-To-Sternの方が好きだが、あれよりもだいぶ楽+角度などの制限もすくなそう。
Ricky Smithは露出が少ないが、Dan and Daveをフラリッシュの魔道に落としたり、Earickの手順を非マジシャン相手に演じたり、というド変態レベルの逸材らしいので、今後も注目したい。
Color Scheming:J.K. Hartman
Penumbra issue 3に掲載されたLee AsherのThe Continental DivideのHartman流バリエーション。Card Duperyにも収録されている。
色がバラバラのデックを示した後、怪しい動作無しで赤黒分かれてしまう。
Asherのものが、バラバラ→分裂→再びバラバラなのに対して、こちらはバラバラ→分裂でかつエンドクリーン。ただしセットアップが必要。
Asherのものもチェックしたいのだが、Penumbra issue 3 が手に入らないのですよね。動画販売もしているみたいだが高い上にOne on Oneみたいで尻込み。モダンなAsherのエフェクトの、クラシック手法での表現といったイメージか。簡単に見えて意外と難しい。
Business Trip:Patrick Schlagel
左手の掌に指輪を置き、右手をかざすと、指輪が左手薬指にはまっている。貫通・移動現象。癖が無くたいへん使いやすそう。
「指輪を自然に持ち歩くためにも結婚しましょう」うるさいですよ。
Centrifugal Nightmare:Scott SteelFyre
Professor's Nightmareの表現技法。同じ長さになった3本のロープが、カバー無しで目に見えて違う長さになっていく、というもの。なるほどなー。あんまりロープ詳しくないのですが手軽かつビジュアルで素敵です。
というわけでPenumbra面白いです。 なによりGoodwin(だと思う)の解説の筆が良い。個々のマジックが非常に奥行きのある物に見えます。誰か日本でもこういう冊子出してくれないかしら。
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