2026年5月16日土曜日

"The Expert" Michał Kociołek

The Expert  (Michał Kociołek, 2019)


Michał KociołekのAny Poker Hand Called Forプロットのノート。観客が自由に言った役を配ってみせるというこのプロットは、単売トリックPolish Pokerから最新作Extra Plots & Methods所収の50/50 PokerやPoker Player's Dreamまで、Kociołekのライフワークのひとつです。本書はとてもマニアックで研究書と呼ぶにふさわしい内容。大きく3つの内容からなっています。スタック、シャッフル、手順。個別に見ていきましょう。


スタック:このプロットとスタックの歴史が子細に解説され、そのうえでKociołekの改案が示さます。歴史はとても面白かったのですが、Kociołekによる改善点は、正直なところ私にはそこまでピンと来ませんでした。このプロットにちゃんと取り組んでる人や、この類いの場合分けスタックに明るい人じゃないとありがたみが分からなさそう。

シャッフル:この冊子の宣伝には”Everything from a genuinely shuffled deck(完全に混ぜられたデックから)”とあるんですが、これはまあ嘘です。前の項で『スタック』と書いた通りこのプロットはスタックを使います。しかしながら、たぶん本人から見せられたら「完全に混ぜた」と思わざるを得ないと思います。例の『デックをいくつかに分けてそれぞれ混ぜてもらう』策略を使うんですが、これまで見た中で一番納得のいく使い方でした。これはすごい。だいぶ難しいんですが、でもすごい。

手順:Any Poker Hand Called Forは、しかし現象としてどうなんだという問題があります。トップからそのまま配るのは雑だし、かといってポーカーらしく複数人のハンドを配ると時間が掛かる上にフォールス・ディールで上手くやったのでは感が出てしまう。……そういった問題意識がKociołekにもあったのかは分かりませんが、ここでは2つの表現形が提示されます。ひとつめの"Odds"は観客がカードを選んだ後にリフル・シャッフルをすると、観客のカードの周りに選ばれた役のカードが集まるというもの。もうひとつの"The Wisdom of Crowds"は観客がカットする趣向(BannonのDirected Verdict)。特に後者はすばらしく面白くて、私は初めてAny Poker Hand Called Forをやりたくなりました。ただいちばん厳しい場面に厳しい技法を連続で持ってくる構成なのはどうなのか。確かに自由度は極めて高いのですが……前者と後者のあいだくらいが私の性には合っています。そうしたらカットした観客にそのままめくらせることも出来るし……どうですかね?


というわけでMichał KociołekのAny Poker Hand Called For冊子でした。高度ですがとても面白かった。私は十分には享受できていないのですが、それでもこのプロットの良さがやっと感じられた気がします。このプロットのマニアには怒られるかもしれませんが、エース・プロダクションよりは観客の自由選択があり、任意の4 of a kindプロダクションよりは演者側の負担が少ない。

このプロットに興味があるなら必読ですし、プロットのマニアも必読でしょう。そうでなくとも、現代の巧妙な小スタック手品をやるなら大いに勉強になります。

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