2024年12月30日月曜日

"Remote Perception System" Ian 'Rasp' Cheetham & Michael Murray

Remote Perception System (Ian 'Rasp' Cheetham & Michael Murray, 2019)


Michael Murrayの新刊。もともとは2019のBlackpool Convention会場でソフトカバーで販売され、それがハードカバーになって一般販売されたのが本書(2024年末)です。40ページの薄い本で、Murrayにしては珍しく手順の数も少なくまとまっています。

タイトルがちょっとミスリーディングで、これはRock Paper Scissors(じゃんけん)との語呂合わせにすぎません。残念ながら汎用的な遠隔知覚システムとか原理が解説されているわけではない。タイトルのことはいったん忘れましょう。

それで、これはじゃんけんにまつわるメンタリズム手順です。宣伝文句にあるとおり、道具無しだったり、電話越しだったりでも出来るのですが、基本的には3枚の名刺にじゃんけんの手をそれぞれ書いて配るかたちになります。

ピンと来た方もいるのではないかと思います。じゃんけんというのは『3つの要素』で、それの配分で、それでMurrayというと、そうあの原理です。HammarとかGreen NeckとかTrojanとか、あれ。ただしTrojanのとき3つのオブジェクトは任意の物品でした。一方で今回、じゃんけんの3要素にはそれぞれの属性があり、また文化的な背景があります。それらをうまく使うことでTrojan Horse Projectよりも手順の完成度は高い。誰がなにを持っているか、誰が勝つのか、を予測するのはまず不可能に見えるかなりフェアな手続きであり、それでいて操作感もほとんど感じられないように仕上がっている。

3枚のカードを配ってじゃんけんさせる、という点にだけ目をつむれるのならかなり強力な手順と思いました。短い本ながら、手順の発展過程がうかがえる内容でそれも面白かったです。

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